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テックピッチ 新技術のインパクトを構造的に言語化する / tech pitch

moriyuya
January 13, 2020

テックピッチ 新技術のインパクトを構造的に言語化する / tech pitch

テックピッチ 新技術のインパクトを構造的に言語化する
新技術がうまく活用できずに悩んでいる意思決定者に向けた技術評価フレームワークを共有します。

問いに答えていくことで新技術のインパクトを明らかにでき、既存のエレベーターピッチと異なり、ロジック検証をしたり、プレゼンの骨子を同時に作ることができます。

とりわけて未成熟市場での展開や、他社よりもスペックが圧倒的に高いにもかかわらず、売上や利益に転換できず悩まれている場合に効果的です。

moriyuya

January 13, 2020
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Transcript

  1. 2020/01/13 森 雄哉/witch&wizards inc.
    テックピッチ
    新技術のインパクトを構造的に言語化する

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  2. 2
    概要
    新技術がうまく活用できずに悩んでいる意思決定者に向け
    た技術評価フレームワークを共有します。
    問いに答えていくことで新技術の本質価値を明らかにで
    き、既存のエレベーターピッチと異なり、ロジック検証や
    プレゼンの骨子を同時に作ることができます。
    とりわけて未成熟市場での展開や、他社よりもスペックが
    圧倒的に高いにもかかわらず、売上や利益に転換できず悩
    まれている場合に効果的です。

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  3. 3
    はじめに
    対象の方
    ・技術と制度の評価をする方
    ・企画者、プロダクトオーナー
    ・技術選定者
    ・技術販売担当、マーケター
    ・制度設計者

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  4. ※注 登場する言葉
    「技術」は「サービス」に
    置き換えて利用できます
    4

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  5. 技術の時代
    私たちは日常的に
    新技術と接している

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  6. 新技術に溢れる
    時代だからこそ
    技術の善し悪しを巡る
    目利きが重要

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  7. 自己紹介
    森 雄哉
    witch&wizards inc. 代表取締役
    仕事:デザイナー/プロダクトオーナー
    製品開発/マーケティング/組織開発
    スキル:制約理論(TOC)/アジャイル/カ
    ウンセリング/コーチング/ファシリ
    テーション/コピーライティング
    興味:システム思考/認知科学/文化人
    類学

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  8. 新技術への期待
    8
    自社の問題解決
    顧客の問題解決

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  9. この技術は問題を
    解決できるだろうか
    私たちは評価している
    9

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  10. 新技術の特徴
    10
    今までの評価基
    準が通用しない

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  11. 2008年
    iPhone3G
    日本発売したとき
    11
    社内になんといって
    提案する?

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  12. 12
    発売直後のiPhone3Gを何と提案するか
    iPhone、Apple
    が作ったケータイ
    ですよ!
    こんなに画面おっ
    きいんですよ!
    Appleってパソ
    コン屋だろ?
    電池が一日しか
    持たないって聞
    いたぞ。役に立
    たないじゃない
    か。

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  13. 13
    新技術を相手が理解できるように伝えるのは難しい
    技術に強い人は新技術を直感的に判断できるが、相
    手に魅力が伝わるように表現するのは難しい。専門
    的な言葉では通じない。
    ここでありがちなのは、本当は魅力的とは感じてい
    ないけれども説明しやすい「画面が大きい」等と伝
    えてしまうこと。

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  14. 今までの評価基準が
    通用しない
    新技術のための
    評価が必要

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  15. 技術の是非に関わる
    因果関係を用いた評価
    技術評価の定義

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  16. テックピッチ
    新技術のインパクトを構造的に言語化する

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  17. 17
    テックピッチ13の問い
    1.既存技術のユニークな特徴は何か
    2.新技術のユニークな特徴は何か
    3.新技術の特徴によって取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    4.既存技術の限界によって引き起こされている顧客の夜も眠れない問題は何か
    5.限界が取りのぞかれた結果、顧客にどのようなアウトカムを約束できるか
    6.そのアウトカムが顧客にとって重要な理由は何か
    7.限界による悪影響を抑えるためにしてきた慣習、ルール、行動は何か
    8.上記の慣習、ルール、行動のまま新技術を取り入れると何のロスがあるか
    9.新技術による新たな限界は何か
    10.新技術による新たな限界まで便益を徹底的に絞り出すために、
    どのような慣習、ルール、行動に変える必要があるか
    11.ルールの変化を抵抗なく実現するために、技術にどのような変化が必要か
    12.10倍以上変化したこと、または非連続的変化は何か
    13.どのように変化を起こすか

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  18. 1.現行技術の
    特徴
    3.既存技術の
    限界
    4.既存技術の
    限界による
    悪影響
    2.新技術の
    特徴
    5.新技術の限界
    を絞り出した
    良影響(期待)
    6.顧客のニーズ
    を満たす理由
    7.既存技術の
    ための制度や
    慣習
    既存技術の
    抑制された
    悪影響(現状)
    8.抑制された
    新技術の好影響
    10.新制度や
    慣習
    18
    9.新技術の限界
    11.新技術の調

    View Slide

  19. 1.現行技術の
    特徴
    3.既存技術の
    限界
    4.既存技術の
    限界による
    悪影響
    2.新技術の
    特徴
    5.新技術の限界
    を絞り出した
    良影響(期待)
    6.顧客のニーズ
    を満たす理由
    7.既存技術の
    ための制度や
    慣習
    既存技術の
    抑制された
    悪影響(現状)
    8.抑制された
    新技術の好影響
    10.新制度や
    慣習
    19
    9.新技術の限界
    11.新技術の調

    12.10倍以上の
    変化、非連続的
    変化

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  20. 過去の革新的製品を
    評価してみよう
    20

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  21. 21

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  22. 22
    ミニ四駆
    “タミヤが発売している小型の動力付き自動車模型である。
    モーターを搭載した四輪駆動の模型で、単3型乾電池を動力
    源として走行する。
    モーターと電池はスイッチで直結されており、スイッチを
    入れたら全開出力で前進し、軌道上で走行させる仕様であ
    る。走行中の出力調整は出来ないため、走行したら技能介
    入は全く出来ない。” 参考:wikipedia
    1982年当時の状況を元に考えてみます。

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  23. 23
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か
    2新技術のユニークな特徴は何か
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

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  24. 24
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

    View Slide

  25. 25
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か 操作できない
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

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  26. 26
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か 操作できない
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    コストがかかるという限界
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

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  27. 27
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か 操作できない
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    コストがかかるという限界
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    子供には余りに高くて買えない
    (当時のラジコン24000円)
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

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  28. 28
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か 操作できない
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    コストがかかるという限界
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    子供には余りに高くて買えない
    (当時のラジコン24000円)
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    自分のお小遣いでまかなえる
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か

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  29. 29
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 電波で操作するラジコン
    2新技術のユニークな特徴は何か 操作できない
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    コストがかかるという限界
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    子供には余りに高くて買えない
    (当時のラジコン24000円)
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    自分のお小遣いでまかなえる
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か
    レースを楽しみたい

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  30. 30
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    9新たな限界は何か
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か

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  31. 31
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    9新たな限界は何か
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か

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  32. 32
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    すぐとまって切ない
    9新たな限界は何か
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か

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  33. 33
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    すぐとまって切ない
    9新たな限界は何か まっすぐ走る
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か

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  34. 34

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  35. 35
    ものすごく
    遊びづらい!

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  36. 36
    遊びづらいミニ四駆
    ・走らせるとどこまでもいってしまう。子供の足
    よりはやいのでおいつけない。道路に飛び出て危
    ないし、ぶつかると割れてしまう。
    ・せっかくのレースマシン。子供は走っている様
    子をみたい。だけど、手を離してすぐにみえない
    ところにいってしまう。
    ・1982年の発売当初もこんな悩みがあり、バケ
    ツの中を走らせて遊んでいたとのこと。

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  37. 37
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    すぐとまって切ない
    9新たな限界は何か まっすぐ走る
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    自走するだけでレース体験ができる
    コースの開発と提供
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か
    重要!

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  38. 38
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    すぐとまって切ない
    9新たな限界は何か まっすぐ走る
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    自走するだけでレース体験ができる
    コースの開発と提供
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    コースやミニ四駆が傷まないように
    ローラーを加える
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か
    重要!

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  39. 39
    ミニ四駆1982年発売時の考察
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    ゼンマイ式オモチャなどで
    ごっこ遊びをする
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    すぐとまって切ない
    9新たな限界は何か まっすぐ走る
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    自走するだけでレース体験ができる
    コースの開発と提供
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    コースやミニ四駆が傷まないように
    ローラーを加える
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か
    レース体験 1/40の値段
    (24000円 > 600円)
    スゴイ

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  40. 40

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  41. 41
    ミニ四駆のテックピッチ
    現在の技術の特徴は「電波で操作するラジコン」であり、「コストがかかる」という
    性質によって「子供にとって(欲しくてたまらないが)あまりに高くて手に入れられない
    」という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「自分のお小遣いでまかなえる」が実現でき、顧
    客が渇望していた「レースを楽しみたい」という重要ニーズを満たせられる。
    私たちは「操作できない」という特徴をもった「ミニ四駆」を実現した。「まっすぐ
    自走する」という性質を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズ
    を初めて満たすことができる。一言で「40分の1の値段」という革新的な強みを顧客に
    提供する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「ゼンマイ式のオモチャでごっこ遊びをする
    」という慣習をしてきた。そのまま用いると真価を発揮できない。新しい技術の特徴
    を存分に活かすため「自走するだけでレース体験ができるコースの提供」という慣習
    を浸透させる必要がある。一方で技術にも、新しい制度で十分に効果が発揮できるよ
    うに「コースやミニ四駆が傷まないように、ローラーを加える」を実施する。

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  42. 42
    ミニ四駆のテックピッチ
    現在の技術の特徴は「電波で操作するラジコン」であり、「コストがかかる」という
    性質によって「子供にとって(欲しくてたまらないが)あまりに高くて手に入れられない
    」という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「自分のお小遣いでまかなえる」が実現でき、顧
    客が渇望していた「レースを楽しみたい」という重要ニーズを満たせられる。
    私たちは「操作できない」という特徴をもった「ミニ四駆」を実現した。「まっすぐ
    自走する」という性質を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズ
    を初めて満たすことができる。一言で「40分の1の値段」という革新的な強みを顧客に
    提供する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「ゼンマイ式のオモチャでごっこ遊びをする
    」という慣習をしてきた。そのまま用いると真価を発揮できない。新しい技術の特徴
    を存分に活かすため「自走するだけでレース体験ができるコースの提供」という慣習
    を浸透させる必要がある。一方で技術にも、新しい制度で十分に効果が発揮できるよ
    うに「コースやミニ四駆が傷まないように、ローラーを加える」を実施する。
    付加的なパーツや壁コースというアイデアが
    客単価を十数倍にした。ミニ四駆本体以上に重要な発明。

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  43. SSD (Solid State Drive)
    43

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  44. 44
    SSD 2010年時の考察
    1当時の技術のユニークな特徴は何か 磁気記憶(HDD)
    2新技術のユニークな特徴は何か 半導体記憶
    3
    その特徴によって
    取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    機械動作という限界
    4
    限界によって引き起こされている
    顧客の夜も眠れない問題は何か
    機械動作時間の累計が
    待ち時間となる
    5
    限界が取りのぞかれた結果、
    顧客にどのようなアウトカムを約束でき
    るか
    レスポンスタイムが
    極めて短くなる
    6
    そのアウトカムが
    顧客にとって重要な理由は何か
    動作待ちの時間がなくなり、システム
    全体の稼働時間が増える

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  45. 45
    7
    限界による悪影響を抑えるためにしてき
    た慣習、ルール、行動は何か
    様々なテクニックを使う。(デフラグ
    を避けるためにパーティション分割を
    する。RAMドライブを設ける等)
    8
    上記の慣習、ルール、行動のまま新技術
    を取り入れるとどのようなロスがあるか
    SSDの寿命を縮めたり、DRAMの容
    量が制約になりがちになる。
    9新たな限界は何か 電気回路の動作
    1
    0
    新たな限界からの便益を徹底的に享受す
    るために、どのような慣習、ルール、行
    動に変える必要があるか
    SSD、HDDのそれぞれの特性に合わ
    せて利用する
    1
    1
    上記のルールの変化を抵抗なく実現する
    ために、技術にどのような変化が必要か
    規格の高速化
    SATA=>M2
    1
    2
    10倍以上変化したこと、または非連続
    的変化は何か
    IOPS 500倍
    (100 => 50000)
    SSD 2010年時の考察

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  46. 46
    SSD
    因果図

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  47. 47
    現在の技術の特徴は「磁気記憶」であり、「機械動作」という性質によって「機械動
    作時間の累計が待ち時間となる」という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「レスポンスタイムが極めて短くなる」が実現で
    き、顧客が渇望していた「ある種の業務ではHDD動作待ちの時間がほぼなくなり、PC
    の有効活用時間が増える」という重要ニーズを満たせられる。
    私たちは「半導体記憶」という特徴をもった「SSD」を実現した。「電気回路動作」と
    いう特徴を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズを初めて満た
    すことができる。一言で「IOPS 500倍(100->50000)」という革新的な強みを顧客に提供
    する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「様々なHDD用テクニック」という慣習をして
    きた。そのまま用いると真価を発揮できない。新しい技術の特徴を存分に活かすため
    「それぞれの機能特性に合わせて利用する」という慣習を浸透させる必要がある。一
    方で技術にも、新しい制度で十分に効果が発揮できるように「規格の高速化。SATA-
    >M.2」を実施する。
    SSDのテックピッチ

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  48. 他の例

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  49. 49
    現在の技術の特徴は「ROMからデータを読み込む」であり、「ROMはデータ容量が大きくても
    3Mbyte~4Mbyteである。データ容量の大きな音楽データや動画データを入れることが実質でき
    ない」という性質によって「音楽、音声、映像といったほかのツールで制作した高品質データ
    を利用できず、コンテンツ制作に制約がある」という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「他の産業で発達したコンテンツ制作技術をゲームの表現
    に用いる」が実現でき、顧客が渇望していた「より高品質なコンテンツを提供したい」という
    重要ニーズを満たせられる。
    私たちは「CDからデータを読み込む」という特徴をもった「playstation」を実現した。「ROM
    の200倍となる650Mbyteのコンテンツデータ(悪い例:データの読込速度は300k/byteである)」と
    いう特徴を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズを初めて満たすことが
    できる。
    一言で「データ量が200~600倍、売価1/2」という革新的な強みを顧客に提供する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「職人芸を用いたり、高圧縮させて使う。」という慣
    習をしてきた。そのまま用いると真価を発揮できない。新しい技術の特徴を存分に活かすため
    「音声、音楽、映像制作の産業のノウハウを活かす」という慣習を浸透させる必要がある。
    初代Playstationのテックピッチ

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  50. 50
    現在の技術の特徴は「通信のUSBと、電力供給アダプタ」であり、「通信と電力は分かれてい
    る」という性質によって「PCや周辺機器の利用にいくつものケーブルを用いる必要がある。」
    という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「ケーブル本数が半分になる。ケーブル規格が大幅に減
    る。」が実現でき、顧客が渇望していた「機器の周りをすっきりさせたい。」という重要ニー
    ズを満たせられる。
    私たちは「大容量の電力、通信速度を持ったユニバーサルコネクタ」という特徴をもった
    「USB-PD」を実現した。「5A20Vの給電と20Gbpsの通信を一つの有線ケーブルで実現する」と
    いう特徴を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズを初めて満たすことが
    できる。
    一言で「給電40倍の100w (電力2.5w->100w)」という革新的な強みを顧客に提供する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「たこ足配線をする。ケーブル取り回し用の配線をす
    る。」という慣習をしてきた。そのまま用いると真価を発揮できない。新しい技術の特徴を存
    分に活かすため「周辺機器のIOをUSB-Cに合わせる」という慣習を浸透させる必要がある。
    一方で技術にも、新しい制度で十分に効果が発揮できるように「USB-C給電非対応周辺機器の
    給電のため、USB-CからAC電流を供給できるようにする」を実施する。
    USB-PDのテックピッチ

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    現在の技術の特徴は「固定機能シェーダー(DirectX7以前)」であり、「グラフィックス
    の表現はGPUメーカーが実装したハードウェア機能に依存している」という性質によっ
    て「プログラマーが新しい表現をしたくても、ハードウェア側の実装を待たなければ
    ならない」という現実に苦しんでいた。
    この性質を取りのぞくことによって「シェーダープログラムによって、ハードウェア
    に依存しない新たな表現ができる」が実現でき、顧客が渇望していた「表現をコンテ
    ンツ開発会社が主導する」という重要ニーズを満たせられる。
    私たちは「表現をプログラミングできる」という特徴をもった「プログラマブル
    シェーダー(DirectX8、OpenGL1.5以降)」を実現した。「シェーダープログラミングによ
    る表現」という特徴を持ち、今まで応えることができなかった重要な顧客のニーズを
    初めて満たすことができる。
    一言で「固定->可変」という革新的な強みを顧客に提供する。
    ただし既存の性質の悪影響を抑える工夫「テクスチャの描写を工夫する」という慣習
    をしてきた。そのまま用いると真価を発揮できない。
    プログラマブルシェーダーのテックピッチ

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  52. 52
    コツは異常値を見つけること
    滑らかな連続的変化ではなく、今までの評価基準を見直
    さざるを得なくなる異常値をみつけよう。
    スペックは性能の連続的変化
    スペックは製品カテゴリーで標準として使われる性能指
    標である。非連続的変化の技術はスペックに現れないこ
    とがあり注意が必要。

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  53. 53
    非連続変化がもたらすインパクトの例
    ・QCDS 1桁以上の向上
    ・リードタイム 2/3 以上
    ・業務費用(コスト) 2/3 以上
    ・有効スペック 10倍
    ・容積1/2
    ・固定->可変
    ・個別->統合
    ・非制御->制御

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    重要な顧客のニーズ(B2B)の例
    ・納期遅延に苦しむ<-信頼性
    ・過剰在庫と欠品に苦しむ<-在庫回転日数
    ・可用性と在庫のバランスに苦しむ<-在庫適正配置
    ・設備は欲しいが、投資は怖い<-リスク排除

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    練習する
    馬>車>飛行機
    蒸気機関車>電車
    windows98->windowsXP
    データセンター->クラウド型データセンター
    ガラケー>スマホ / CRTディスプレイ>液晶ディスプレイ
    ファミコン>スーパーファミコン>プレステ
    携帯ゲーム機>スマホ

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  56. 56
    すぐ試せるスプレッドシート
    ・質問に回答すると因果図とプレゼントークを作るスプレッドシートです。
    ・ご自身のGoogleアカウントにコピーしてご利用ください。
    https://docs.google.com/spreadsheets/d/1utlWAGO5997N58_8NzyH6vlbHwm18giOch
    d0QcpUU44/edit?usp=sharing

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  57. テックピッチ
    新技術のインパクトを構造的に言語化する

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  58. おまけ

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  59. 社会
    実装
    Social Implementation

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  60. 技術的
    イノベーション
    x
    社会的
    イノベーション

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  61. View Slide

  62. 社会的
    イノベーション

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  63. 社会的
    イノベーション
    非連続的制度変化

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  64. 非連続的制度変化
    社会的
    イノベーション
    制度革新/規制緩和

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  65. 制度ピッチ
    新制度のインパクトを
    構造的に言語化する

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    技術を制度に言い換えて
    1.既存制度のユニークな特徴は何か
    2.新制度のユニークな特徴は何か
    3.新制度の特徴によって取りのぞかれた「今までの限界」は何か
    4.既存制度の限界によって引き起こされている顧客の夜も眠れない問題は何か
    5.既存制度の限界が取りのぞかれた結果、顧客にどのようなアウトカムを約束で
    きるか
    6.そのアウトカムが顧客にとって重要な理由は何か
    7.既存制度の限界による悪影響を抑えるためにしてきた技術は何か
    8.上記の技術のまま新制度を取り入れると何のロスがあるか
    9.新制度の新たな限界は何か
    10.新制度の新たな限界から便益を徹底的に享受するために、
    どのような技術に変える必要があるか
    11.技術の変化を抵抗なく実現するために、新制度にどのような変化が必要か
    12.10倍以上変化したこと、または非連続的変化は何か
    13.どのように変化を起こすか

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    参考文献
    ・チェンジ・ザ・ルール! エリヤフ・ゴールドラット 2002
    ・イノベーションのジレンマ クレイトン・クリステンセン 2002
    ・キャズム ジェフリー・ムーア 2002
    ・ブルー・オーシャン戦略 W・チャン・キム/レネ・モボルニュ 2005
    ・Never Say “I KNOW” Eliyahu M. Goldratt 2011
    ・Management Attention Rami Goldratt 2011
    ・TOCの鳥瞰と思考プロセスについて 金田光人 2012
    ・The Most Important Insights Eli Schragenheim 2016

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