三菱UFJ銀行におけるスマートフォンアプリ開発とスクラムの歩み / The Journey of Smartphone App Development and Scrum at MUFG Bank

2023/11/16〜11/18に開催されたカンファレンス「OGIS Forum 2023」に登壇した際の資料です。
https://www.ogis-ri.co.jp/event/e106754.html

Transcript

1. 三菱ＵＦＪ銀行における スマートフォンアプリ開発と スクラムの歩み OGIS Group Forum 2023
2. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2 MUITってどんな会社？ 2 三菱ＵＦＪ銀行、並びにＭＵＦＧグループ各社の IT・デジタル戦略を先導する、「金融×IT」のプロフェッショナル集団 三菱ＵＦＪインフォメーションテクノロジー（ＭＵＩＴ）
3. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. MUIT 業務共通開発部 / リテールチャネル部 所属 2015年 入社 2018年 かんたん手続アプリの開発に参画 2020年 Licensed Scrum Master資格(現RSM)取得 現在 スクラムコーチ、リードエンジニア チーム運営支援、技術支援等 横山 広樹 3 自己紹介 3
4. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 4 かんたん手続アプリの概要 4 デジタライゼーション ご来店のうえ事務で対応していた手続を、アプリから非対面で デジタルトランスフォーメーション 印鑑レス・通帳レス口座なら、更に多くの手続がアプリで完結
5. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. • 使用できないキャッシュカードの再発行 • 紛失したキャッシュカード、通帳 • 利用停止、利用再開、再発行 • 紛失した印鑑 • 利用停止、印鑑レス口座への切替 • 住所変更 • 氏名変更 • 限度額変更 • 残高証明書発行 • 口座解約 上記含め、合計13メニュー 5 かんたん手続アプリの概要 5 使用できないキャッシュカードの再発行 利用チャネルの割合 iOSストア評価 Androidストア評価 ※いずれも2023年9月時点
6. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2018年度 使用不能カードの再発行 紛失したカード・通帳の再発行 住所変更 2019年度 紛失したカード・通帳の停止・再発行 利用限度額変更 2020年度 氏名変更 2021年度 eKYC認証導入 口座解約 紛失した通帳の再発行(定期預金) 2022年度 残高証明書の発行 警察に届けられたカード・通帳の利用再開 2023年度 紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替 デビットカードの解約 6 かんたん手続アプリのリリースの歩み 6 スクラムによる開発 2018年の初回リリース以降、 機能拡充を継続的に実施
7. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. プロジェクトの構造 7 かんたん手続アプリのリリースの歩み • 予算確保 理想： 半年や一年の単位の予算でメンバーを維持し、都度バックログに対応していく 現在： プロジェクトごとに予算を取り、必要なメンバーを集めてチームを組成 • チーム体制 7 業務部門 システム部門 PMチーム 開発チーム プロダクトオーナー ステークホルダー スクラムマスター スクラムチーム
8. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2018年度 使用不能カードの再発行 紛失したカード・通帳の再発行 住所変更 2019年度 紛失したカード・通帳の停止・再発行 利用限度額変更 2020年度 氏名変更 2021年度 eKYC認証導入 口座解約 紛失した通帳の再発行(定期預金) 2022年度 残高証明書の発行 警察に届けられたカード・通帳の利用再開 2023年度 紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替 デビットカードの解約 8 かんたん手続アプリのリリースの歩み 8
9. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 9 ①紛失したカード・通帳の再発行(2018) • 当社の五年目以下の若手社員＋アジャイルノウハウを持つ協力会社社員でのチーム組成 • 当社社員 ： コーディング経験あり、アジャイル経験なし、業務知識なし • 銀行内の他システムとの接続は一切なし ✓ 顧客利便性を最優先、事務コスト削減は除外 → 早期のデリバリー 9 As-Is MVP(必要最小限の製品) To-Be
10. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2018年度 使用不能カードの再発行 紛失したカード・通帳の再発行 住所変更 2019年度 紛失したカード・通帳の停止・再発行 利用限度額変更 2020年度 氏名変更 2021年度 eKYC認証導入 口座解約 紛失した通帳の再発行(定期預金) 2022年度 残高証明書の発行 警察に届けられたカード・通帳の利用再開 2023年度 紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替 デビットカードの解約 10 かんたん手続アプリのリリースの歩み 10
11. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 11 ②紛失したカード・通帳の停止・再発行(2019) • 銀行内システムとAPI経由で通信、後続事務処理を自動化するプロジェクト ✓ 事務コストの削減 ✓ 利用停止やカード解約といった新たな手続も可能に • 当社内他部署によるウォーターフォールのAPI開発と共に進行する、ハイブリッド型開発 ➢ 並行開発部署を考慮したスケジューリング、役割分担 ➢ 他システムとの接続に伴う仕様の複雑化 11 2018(前回) 2019(今回)
12. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 並行開発部署を考慮したスケジューリング、役割分担 12 ②紛失したカード・通帳の停止・再発行(2019) 12 基本設計 詳細設計/ コーディング 内部結合テスト API仕様確定 Sprint1 Sprint2 Sprint3 Sprint4 Sprint5 Sprint6 Sprint7 Sprint8 Sprint9 API (WF) アプリ (スクラム) 設計不良判明 API関連開発不可 設計不良対応 ➢ API呼出処理開発の待ちが発生 ➢ 終盤にAPI側の設計不良が判明 → プロジェクト全体のリリース予定日遵守のため、スクラム側で対応
13. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. ✓ 品質の優先度が高い場合は、アジャイルであっても結合テストフェーズを設けて精緻な検証が必要 • 開発チーム ： コーディング経験あり、アジャイル経験あり、業務知識なし ➢ 「銀行システムの常識」の見落とし Sprintテスト APIの提供前はモックで動作確認 他システムとの接続に伴う仕様の複雑化 13 ②紛失したカード・通帳の停止・再発行(2019) 13 結合テスト 実際の挙動はより複雑、モックでの表現は限界あり 検証精度の差異 口座情報 預金残高 契約情報 XXX支店 普通 1234567 定期 1234567 仕様書を元に自作
14. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2018年度 使用不能カードの再発行 紛失したカード・通帳の再発行 住所変更 2019年度 紛失したカード・通帳の停止・再発行 利用限度額変更 2020年度 氏名変更 2021年度 eKYC認証導入 口座解約 紛失した通帳の再発行(定期預金) 2022年度 残高証明書の発行 警察に届けられたカード・通帳の利用再開 2023年度 紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替 デビットカードの解約 14 かんたん手続アプリのリリースの歩み 14
15. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 15 ③氏名変更(2020) 15 • コロナ禍突入後初のプロジェクト ✓ フルリモートで完遂 ✓ いつでも相談・発信・状況確認できる環境づくり • 電話会議常時接続(マイクオフ、カメラオフ) • 雑談、息抜き用チャットルーム • 業務仕様の複雑性・関係先の多さにより、31種類もの他システムAPI呼出が必要に • 10部署に渡る相手先 → 仕様確認・認識合わせに苦戦 ➢ ドキュメントの必要性
16. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. ドキュメントの必要性 16 ③氏名変更(2020) 16 • 「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」 • 顧客の価値となるものに比重を置く • ドキュメント不要論とは異なる ✓ 互いの共通言語で、正確な認識合わせ ✓ テスト品質の向上、省力化 テストケースとして流用可能 共通言語 スクラム ビジネスサイド 他システム ステークホルダー
17. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 2018年度 使用不能カードの再発行 紛失したカード・通帳の再発行 住所変更 2019年度 紛失したカード・通帳の停止・再発行 利用限度額変更 2020年度 氏名変更 2021年度 eKYC認証導入 口座解約 紛失した通帳の再発行(定期預金) 2022年度 残高証明書の発行 警察に届けられたカード・通帳の利用再開 2023年度 紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替 デビットカードの解約 17 かんたん手続アプリのリリースの歩み 17
18. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 18 ④紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替(2023) 18 • 開発期間1年半にわたる、当システム史上最大規模のプロジェクト • リリース期日遵守のために要員投入が繰り返され、最多時は開発者だけで16人に • 異動・離任のタイミングも重なり、チームのリズムが安定しない • チームの機動力向上を企図し、新たな方法を導入 ✓ LeSSの導入 ✓ 心理的安全性を確保するための工夫 0 5 10 15 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 ▪ 開発チーム人数 ▪ 助走期間中の人数 Sprint22まで キャッチアップ中のメンバーが常にいる状態
19. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. LeSSの導入 19 ④紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替(2023) 19 • LeSS ： Large-Scale Scrum • バックログを分割、サブチームごとに割り振り ✓ 関心事が減ることで理解速度が上がり、自信獲得・パフォーマンス向上 ✓ 打合せの参加姿勢改善、コスト削減 Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint リーディングチーム トラベラー 若手メンバーの チーム間留学 Sprintごとの 設計・実装共有会
20. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 心理的安全性を確保するための工夫 20 ④紛失した印鑑の停止・印鑑レス切替(2023) 20 ✓ 分報(times) • 全員が見られる、自分専用の独り言チャットルーム • 人数の多さ → 新規参入者は会話での相談にハードルあり ✓ モブ作業 • プログラミングだけでなく、コードレビューや仕様検討も • 複雑な仕様整理 → 観点の相互補完による質の向上 プロセスを発信することで助言を得られる 些細な疑問も誰かしらが拾ってくれる 息抜きの雑談
21. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 21 おわりに 21 ✓ 「心理的安全性」「モチベーション」「カイゼン」といったテーマと常に向き合える(向き合わねばならない) • Sprint毎の達成感と、「次はどうしよう」という前向きな意思 • 変革の結果をすぐに測定でき、良くなっている実感を得ることができる • 1.01 ^ 20 ≒ 1.22 Sprint プロジェクト Sprint Sprint Sprint Sprint Sprint スクラムの意義 反映 測定 反映 測定 反映 測定 反映 測定 反映 測定
22. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. • MUITにはスキルを高める事ができる様々な開発案件、ロールがあります。 • キャリア採用は随時募集中ですので、ご興味を持たれましたらお気軽にコンタクト下さい。 https://www.it.mufg.jp/recruiting/fresh/index.html 三菱UFJインフォメーションテクノロジーに興味を持った方へ 22 UXデザイナー UIに関する知見をもと に、システムのユーザ ビリティを向上させ、 UIデザインも含めた高 品質のUXを提供 テクニカルリード 高度な技術力、創造 的・革新的な志向、 リーダーシップ等を活 かして、組織全体のIT をリード ビジネスデザイナー 多岐にわたる関係者の橋渡 しをし、複雑なビジネス要 求を実現可能なソリュー ションへと落とし込む ITスペシャリスト 専門技術領域に関する 広く深い知見と技術力 を活かし、難易度の高 い課題を解決 PMエキスパート PM関連知識等をもとに、 立上げ・計画・設計・ 実行・監視・終結等の 各プロセスをコント ロール アーキテクト 組織のビジネス戦略に 対する最適なシステ ム・サービス群を根本 から企画・提案・計画 etc. 技術力
23. Copyright(C) 2023 Mitsubishi UFJ Information Technology Ltd. All rights reserved. 本プレゼンテーションにより、視聴者と三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社の間には何ら委任その他の契約関係が発生するものではなく、当社 が一切法的な義務・責任を負うものではありません。 本資料は信頼できると考えられる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示したす べての内容は、当社の現時点での判断を示しているに過ぎません。 また、本資料に関連して生じた一切の損害については、当社は責任を負いません。その他専門的知識に係る問題については、必ず貴社の弁護士、税理士、 公認会計士等の専門家にご相談の上ご確認下さい。 23 免責事項 23
24. 三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 業務共通開発部 / リテールチャネル部 横山 広樹 〒164-0001 東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス https://www.it.mufg.jp/ ご清聴ありがとうございました