Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

Meraki MRのClient Balancing機能による「たらい回し」事例

MyHomeNWLab
November 29, 2020

Meraki MRのClient Balancing機能による「たらい回し」事例

-- 情報の追記 (2022年08月11日) --
Client Balancingの機能が強化されたため、今後は「たらい回し」が軽減される可能性があります。

Client Balancing - Cisco Meraki
https://documentation.meraki.com/MR/Other_Topics/Client_Balancing#Client_Balancing_Behavior_-_MR_29.X_and_Newer_Firmware
【Client Balancing Behavior - MR 29.X and Newer Firmware】セクションより
> An AP can only attempt to load balance the client or reject an association request two times for both active and passive client balancing.
>
> Suppose a client sends an association request the 3rd time (passive client balancing). In that case, the AP will a) accept the association request and b) mark this client as persistent and won’t attempt to load balance this client even with active client balancing for the duration of the client’s association.
>
> If a client does not move to a different AP after two attempts (active client balancing), the AP will mark this as persistent and won’t attempt to steer this client for the duration of the client’s association.

MyHomeNWLab

November 29, 2020
Tweet

More Decks by MyHomeNWLab

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 筆者情報 • Name • MyHomeNWLab • Blog • https://myhomenwlab.hatenablog.com/ •

    Twitter • https://twitter.com/MyHomeNWLab • 座右の銘 • 仕事で触れないなら、自宅に導入して遊べばいいじゃない。 2 興味の赴くまま、技術を食い散らかします。
  2. 資料の概要 • Cisco社のMeraki MR(無線AP)での無線LANトラブルの一例を紹介します。 • 端末の無線LAN接続時に、 Client Balancingの機能を有効化していると” たらい回し”が発生する事例です。 •

    “たらい回し”とは、とある無線APに接続を試みた際に、その接続先から拒否 (Reject)されるのを繰り返すのを表現しており、ドキュメントなどで定義されてい る用語ではありません。 3
  3. Client Balancing の情報源 • 本資料では公式ドキュメントを読む上でのポイントとなる要素を紹介します。 • より正確で最新の情報は公式ドキュメントにてご確認ください。 • Client Balancing

    - Cisco Meraki • URL: https://documentation.meraki.com/MR/Other_Topics/Client_Balancing • 日本語での情報はiDATENの記事が参考になります。 • iDATEN(韋駄天)| 第23回 MRシリーズのクライアントの負荷分散機能 • URL: https://www.idaten.ne.jp/portal/page/out/cisco/meraki/blog_20171024.htm l 4
  4. 誘導のイメージ Meraki MR AP01 負荷が高いから AP0Nに繋ぎに行って! Meraki MR AP02 負荷が高いから

    AP0Nに繋ぎに行って! Meraki MR AP03 負荷が高いから AP0Nに繋ぎに行って! Meraki MR AP04 負荷が高いから (以下略) 6 Meraki MR AP0N 現在は接続なし! 受け入れ準備OK! ニホンゴ、ムズカシイ... ※誘導に従うか?は別問題 1 2 3 4
  5. Client Balancing の機能の要素 • Per-client AP resource group • 端末に対して、無線AP間でグループを作り、そのグループ内で最も負荷の少ない無線AP

    へ誘導します。 • グルーピングの条件: 端末に対するRSSI値が30以上の無線AP同士です。 • BSSID blacklist protect • 誤動作防止のためのFailsafeなメカニズムです。 • 端末が誘導に従うとは限らないため、“同じ無線AP”に対して、1回目の接続で失敗して も、2回目の接続があった際に許可するための機能です。 • 注意すべき点は、”同じグループ内の無線AP”では無い点になります。 • そのため、常に他の無線APに接続試行を行えば、延々と拒否される可能性があります。 7
  6. Client Balancing IEEE 802.11 Reason Code 17 方式 9 Meraki

    MR AP01 RSSI: 20dB Load: 12 Meraki MR AP02 RSSI: 45dB Load: 39 Best AP: AP0N Meraki MR AP03 RSSI: 40dB Load: 40 Best AP: AP0N Meraki MR AP0N RSSI: 30dB Load: 30 Best AP!! 端末 802.11v非対応 Per-client AP resource group ・・・・・・ 1 2 3 4 Association Reject Reject Best APに選出されても、 IEEE 802.11 Reason Code 17方式では 端末が接続しに来ない可能性があります。 【グループ内の他の無線AP】への2回目以降の接続では たらい回しされる可能性があります。 端末に対するRSSI値が30未満になっているため、 端末向けのグループには所属されません。 Association
  7. 11 【凡例】 ・中心の緑の円は無線AP ・外枠の青色の点線は カバレッジ エリア 端末 ・無線LAN端末 端末 高密度環境の例

    (同一フロア内) 無線APの設置間隔が狭くなっていると、 端末が多くの無線APのカバレッジ エリアに含まれます。
  8. 考えうる対策案 • 無線LANのカバレッジ エリアを小さくする。 • 端末が任意の場所に居るときに、RSSI値が30以上となる無線APが少なければ、同じ無線APに2回目の接続を 行って接続が許可される可能性が高くなると想定されます。 • Client Balancing機能を無効化した状態で、接続数の偏りが出ても耐えうるようにモデル選定や無

    線LAN設計を行う。 • 展開済みの場合、機能の無効化は無線LAN通信への影響が計り知れないため、設計段階で考慮が必要になりま す。 • 端末側でIEEE 802.11vをサポートしていれば有効化する。 • WirelessアダプタとOSレベルで対応している必要があります。 • PCであればWindowsやmacOS、スマートフォンであればApple iOSやAndroidが主流ですが、POSレジやハン ディーターミナルなどの多種多様なデバイスが存在するため万能策ではありません。 13
  9. IEEE 802.11vのサポート状況の参考資料 • インテル ワイヤレスアダプタによる Windows10での BSS 遷移の高速ローミングのサ ポート •

    URL: https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/support/articles/000021562/net work-and-i-o/wireless-networking.html • 引用: 8や8.1 などの以前のバージョンの Windows では、802.11 r、802.11 k、および 802.11 v を使用した高速ローミングはサポートされていません。 • 802.11 k、802.11v、および 802.11r による高速ローミング - Windows drivers | Microsoft Docs • URL: https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows- hardware/drivers/network/fast-roaming-with-802-11k--802-11v--and-802- 11r 14
  10. 16 参考Webサイト 802.11 k、802.11v、および 802.11r による高速ローミング - Windows drivers |

    Microsoft Docs https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/network/fast-roaming-with-802-11k--802-11v--and-802-11r
  11. “たらい回し”の確認方法 • 実際に”たらい回し”が起こっているかは、イベント ログから推察できます。 • ログのEvent typeは「802.11 association rejected for

    load balancing」(英語表 示時)になります。 • 【同じClient】からの接続で【短時間】にこのログが【大量】に出ていると「たらい回し」された疑いがありま す。 • 筆者の確認時では、Event typeの欄が表示が空白になっていましたが、Event type includeの指 定による検索にはマッチしました。 • ログのDetailには load, best_ap, best_ap_load, best_ap_rssi が表示されます。 17
  12. ログの出力例 Time(JST) Access point SSID Client Event type Details 2020/11/18

    11:05 00:00:5e:00:53:0e TEST_SSID TEST-CLIENT 802.11 association channel: 44, rssi: 34 2020/11/18 11:05 00:00:5e:00:53:0e TEST_SSID TEST-CLIENT WPA authentication 2020/11/18 11:05 00:00:5e:00:53:0d TEST-CLIENT ※Event Typeの表示なし load: 14, best_ap: 192.0.2.123, best_ap_load: 9, best_ap_rssi: 30 2020/11/18 11:05 00:00:5e:00:53:0c TEST-CLIENT ※Event Typeの表示なし load: 13, best_ap: 192.0.2.123, best_ap_load: 9, best_ap_rssi: 30 2020/11/18 11:05 00:00:5e:00:53:0b TEST-CLIENT ※Event Typeの表示なし load: 19, best_ap: 192.0.2.123, best_ap_load: 9, best_ap_rssi: 30 2020/11/18 11:05 00:00:5e:00:53:0a TEST-CLIENT ※Event Typeの表示なし load: 21, best_ap: 192.0.2.123, best_ap_load: 9, best_ap_rssi: 30 18 短時間に、異なる無線APに、同じ端末が接続を試みています。 その際にClient Balancingの機能が働いています。
  13. イベント ログのDetailsの意味 ※公式ドキュメントの原文と、日本語の説明を併記 • Load • Number of current clients

    on the Client Balancing AP • 接続試行対象の無線APに接続されていたクライアント数です。 • best_ap • IP address of most preferred AP for client to join • より好ましい状態であると判断された無線AP(Best AP)のIPアドレスを指しています。ホスト名は表示されないため、適宜、ダッシュ ボードから確認する必要があります。 • best_ap_load • Number of clients connected to the most preferred AP • より好ましい状態と判断された無線AP(Best AP)のクライアント接続数です。 • best_ap_rssi • Client probe request signal strength measured by preferred AP • より好ましい状態と判断された無線AP(Best AP)のRSSIの値です。 19
  14. Client Balancing の設定箇所 • 設定は、メニュー: Wireless > Radio Settings よりProfile内で

    Client balancing の On/Off の切り替えを行えます。 • 本番環境での設定変更は十分に検討した上で行って下さい。 22
  15. Client Balancing の設計 • “たらい回し”は、無線LANの高密度環境と切っても切り離せない関係に あるため、無線LAN設計を適切に行えば、”たらい回し”の発生を抑制で きる可能性があります。 • そのため、最初からClient Balancingの

    On/Off で解決しようとせずに、 無線LAN設計を適切に行うのが重要になると筆者は考えております。 • 以上より、”たらい回し”が発生するのを理由に、Client Balancingを Off にするのを推奨しているわけではありません。 25