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地図のある国におけるOpenStreetMapと災害対応

 地図のある国におけるOpenStreetMapと災害対応

2016/05/26 Civic Tech Live!にて発表させていただいた内容です

Satoshi IIDA

May 26, 2016
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Transcript

  1. 団体としてのHOT ❖ HOT(Humanitarian OpenStreetMap Team) ❖ 米国501(c)(3)取得団体、英国OSMFとは別団体として活動 ❖ 2016年理事長 Mikel

    Maron (元U.S. Innovation Fellow) ❖ 主な活動 ❖ 地図のない国での地図づくり、地図作成を通じた減災ワークショップの実施 ❖ Missing MapsやMapGiveなどの活動と共同作業、現地コーディネート実施 ❖ HOTの強み ❖ 全世界的なネットワーク ❖ 1つの箇所に対して、オンライン地図作成リソースを集中投入が可能 ❖ 日本からは、いいだ、古橋、東の3名がVoting Memberとして参加
  2. 日本における 2団体 ❖ 一般社団法人 OSMFJ(OpenStreetMap Foundation Japan) ❖ 日本地域のOSMコミュニティ有志により運営 ❖

    OpenStreetMap(全体)の発展に資する活動を実施 ❖ 特定非営利活動法人 Crisis Mappers Japan ❖ 地図情報を迅速に作成・共有するクライシスマッピング活動を 中心とした事業(団体概要より)
  3. ❖ 通常フェーズ: 防災、減災活動 ❖ 第一段階:ベースマップ作成 ❖ 遠隔からの参加者による、航空写真を使ったベースマップ(背景 地図)の作成 ❖ 道路、建物、緑地、河川など航空写真から判別可能な地物が対象

    ❖ 第二段階:現場調査 ←こっちが重要 ❖ 現地参加者によるPOI情報収集など、細かい情報の充実 ❖ 地図作り活動を通じて「地図データの充実」「デジタル地図を使 える人材」「海外とのコネクション人材」の育成を実施
  4. ❖ 緊急フェーズ: クライシスマッピング ❖ 災害対応に必要となる情報をウェブ地図にしてゆく活動 ❖ 対象の地域にベースマップが無い場合、ベースマップの作成からスタート ( HOT公式ページでは Disaster

    Mappingと記載) ❖ 地域を絞れば、国際機関(赤十字 や国境なき医師団など)が現地入 りする時までに、あらかたの地図 作成を作成できているくらいのス ピード感 ❖ 発災後「72Hのリミット」に間に 合わせることができるかどうか? という課題 →逆に、エボラなど長期対応の 際には地図の有無が非常に重要
  5. ベースマップ作成の 限界 ❖ 航空写真から得られる情報には限界あり ❖ 航空写真からは「その航空写真に写った、空から見た情報」しか得ることができない ❖ 例:主に道路、建物など。Droneでの撮影も、空撮だけであれば同様 ❖ OSMデータをGIS的に扱い、避難者の推定作業などを行うにあたっても、「建物が吹

    き飛ばされる前のデータが無いと被災者数の推計ができない」という意見がでている ❖ フィリピン台風災害(Haiyan, Yolanda. 2013)の際には、航空写真を基にした建物 への被害アセスメント実施の試みがあった ❖ 米国赤十字による最終結論としては「あまり役に立たなかった」という判断 ❖ http://americanredcross.github.io/OSM-Assessment/ ❖ At present, damage assessment data in OpenStreetMap falls short of the reliability rates needed to make it a credible, useful source for damage analysis. ❖ だからこそ、Missing MapやMapGiveなど、事前の地図作成に力が入れられている
  6. ベースマップ作成の限界 ❖ 航空写真から得られる情報には限界あり ❖ 航空写真からは「その航空写真に写った、空から見た情報」しか得ることができない ❖ 例:主に道路、建物など。Droneでの撮影も、空撮だけであれば同様 ❖ OSMデータをGIS的に扱い、避難者の推定作業などを行うにあたっても、「建物が吹 き飛ばされる前のデータが無いと被災者数の推計ができない」という意見がでている

    ❖ フィリピン台風災害(Haiyan, Yolanda. 2013)の際には、航空写真を基にした建物 への被害アセスメント実施の試みがあった ❖ 米国赤十字による最終結論としては「あまり役に立たなかった」という判断 ❖ http://americanredcross.github.io/OSM-Assessment/ ❖ At present, damage assessment data in OpenStreetMap falls short of the reliability rates needed to make it a credible, useful source for damage analysis. ❖ だからこそ、Missing MapやMapGiveなど、事前の地図作成に力が入れられている 現在のところ、OpenStreetMapを使った被害アセスメントは実用レベルの信頼度を 有しておらず、有益な情報ソースではない。
  7. ベースマップ作成の 限界 ❖ 航空写真から得られる情報には限界あり ❖ 航空写真からは「その航空写真に写った、空から見た情報」しか得ることができない ❖ 例:主に道路、建物など。Droneでの撮影も、空撮だけであれば同様 ❖ OSMデータをGIS的に扱い、避難者の推定作業などを行うにあたっても、「建物が吹

    き飛ばされる前のデータが無いと被災者数の推計ができない」という意見がでている ❖ フィリピン台風災害(Haiyan, Yolanda. 2013)の際には、航空写真を基にした建物 への被害アセスメント実施の試みがあった ❖ 米国赤十字による最終結論としては「あまり役に立たなかった」という判断 ❖ http://americanredcross.github.io/OSM-Assessment/ ❖ At present, damage assessment data in OpenStreetMap falls short of the reliability rates needed to make it a credible, useful source for damage analysis. ❖ だからこそ、Missing MapやMapGiveなど、事前の地図作成に力が入れられている
  8. ボランティアは無償の労働力ではない ❖ HOT Mapperはボランティア活動であるからこそ、参加者に対して誠 意のある対応が重要 ❖ 例えば、メールなどフィードバックへの迅速な回答とか ❖ 日常的なコミュニケーションの実践や、信用貯金の蓄積がちょう大事 ❖

    見えない相手のことを信頼できるかどうか? ❖ NPO活動の継続において、活動が成果につながっている、という実感 は大きな要素 ❖ 特にボランティアの継続性、参与段階のステップアップにおいて必 ず考慮される項目
  9. 災害と地図 ❖ 災害の4つの段階と、そこで使われるベースマップ デジタル オンライン デジタル オフライン 紙地図 予防 (防災・減災)

    日常使い 日常使い 地図帳 救助 利用不可を想定 自衛隊など プロユース 住宅地図レベル の細かさ必要 復旧 日常使い ???? 社協・支援団体 による利用 復興 日常使い 都市計画図 都市計画図
  10. いわゆる”地図”の裏返し ❖ 日常使いできる「オンライン地図」を要素分解すると ❖ オンラインで利用することができ ❖ 無料で利用することができ ❖ 利用者が読むことのできる言語で書かれており ❖

    他者との情報共有を簡単に行うことが可能で ❖ 細かい情報が掲載されている ❖ 見やすいレイアウトで掲載されている Google MapsやYahoo!地図は、上記の要件を満たすように最適化されている ただし、利用には 十分な速度の出る通信環境が必要
  11. いわゆる”地図”の裏返し ❖ いわゆる「紙地図」を要素分解すると ❖ インターネット環境が無くても利用可能で ❖ 紙に書かれており ❖ 一度支払いを行えば、後の利用は無料 ❖

    利用者が読むことのできる言語で書かれており ❖ 隣人との情報共有が楽 ❖ 読み手にとって必要な主題が掲載されている ❖ 家のどこかにある 紙地図は、必要な情報が載っているとも限らず、普段から持ち歩くものではない ただし、もし持っていれば非常に強い力を発揮する
  12. 災害と地図 ❖ 災害の4つの段階と、そこで使われるベースマップ デジタル オンライン デジタル オフライン 紙地図 予防 (防災・減災)

    日常使い 日常使い 地図帳 救助 利用不可を想定 自衛隊など プロユース 住宅地図レベル の細かさ必要 復旧 日常使い ???? 社協・支援団体 による利用 復興 日常使い 都市計画図 都市計画図
  13. いわゆる”地図”の裏返し ❖ オンライン地図は、オンラインでしか利用することができない ❖ 通信環境制限下でウェブ地図をつかう、という行為の不便さ ❖ 簡単なテスト1:通信量超過による通信速度制限下(128k)でGoogle Mapsなどを使ってみる ❖ 簡単なテスト2:携帯を家において2駅移動してみる

    ❖ 紙地図は、いつも持ち歩いているわけではない ❖ 避難所においておくなどは重要 ❖ でも、普段持ち歩くものの中に備えてあったほうがよくない? ❖ 中間的な役割としての「オフライン・デジタル地図」 ❖ 災害発生時は、オンライン環境が一時的に劣悪化 ❖ 地理院地図やOSMといった、オフラインで利用可能な地図の必要性
  14. オフラインでも使えるデジタル地図 ❖ 日常使いの地図としてのOSM・地理院地図 ❖ 例: 福岡市、防災アプリとしてYAMAPを採用 ❖ 山登り(基本オフライン)のアプリの防災利用は、今後検討の価値あり ❖ 例:

    MAPS.ME(海外旅行アプリ)にKMLで避難所情報を重ね合わせ ❖ 旅行アプリとして多言語表示の仕組みあり、流用可能なのでは? ❖ こうしたサービスの延長として使われてゆくのがよいのでは? ❖ 他、データ利用形式による選択 ❖ タイル、ベクトルデータなど
  15. 伝えたいこと再掲 1. オフライン地図ちょう重要 ❖ 日常的にオフライン地図を使ってみるのオススメ ❖ 缶詰食料やアルファ米の試食に似てる感 ❖ 多言語わりと重要 2.

    救助段階では、既存の地図を使い、現場のフローを優先 ❖ 災害対応の目的は、特定のデータを使ってもらうことではない ❖ 人命や財産が適切に保護され、生活の中で感じる痛みを和らげる活動をすること