PHP カンファレンス沖縄 2021
自分たちのコードを Composer パッケージに 分割して開発する 2021/05/29 PHP カンファレンス沖縄 2021 @okashoi
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岡田 正平/おかしょい Twitter: @okashoi GitHub: @okashoi 所属:株式会社ウィルゲート 登壇: 寄稿:
目次 • 導入(問題提起、提案) • ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う方法 • パッケージを分割する際の考え方 • こぼれ話
開発についてまわる問題 何も意識せずにフレームワークを使って開発していると 巨大なひとつの構造物となっていく 結果、次のような状態を引き起こしやすい ● Controller に書き下される一連の詳細な処理 ● 責任の境界が曖昧なクラス ● あちらこちらに出てくる同じような手順 ● フレームワークの機能に過度に依存したコード → 可読性や再利用性の低下、バグの原因
ソフトウェア設計の領域において古くから存在する 「モジュール化」というアプローチ →しかし PHP は言語機能としてモジュールに相当するものを備えていない ※「モジュール」という語彙自体は「拡張モジュール」で使われるが別物 モジュール化
PHP における依存関係管理ツール 依存関係を「パッケージ(※)」単位で扱う ※Composer におけるパッケージとは composer.json が存在するディレクトリ Composer
PHP における依存関係管理ツール 依存関係を「パッケージ(※)」単位で扱う ※Composer におけるパッケージとは composer.json が存在するディレクトリ Composer 本発表で紹介する方法Composer パッケージを「モジュール」に近い概念として扱う
Packagist
Packagist からパッケージを持ってくることだけが選択肢ではない Composer には「リポジトリ」という概念があり、 GitHub のリポジトリやローカルに存在するディレクトリを composer install や composer require の対象にできる Composer におけるリポジトリ
Packagist からパッケージを持ってくることだけが選択肢ではない Composer には「リポジトリ」という概念があり、 GitHub のリポジトリやローカルに存在するディレクトリを composer install や composer require の対象にできる Composer におけるリポジトリ 今回はこっち
ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う ...├── apps│ └── my-app│ └── composer.json├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...
ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う {..."repositories": [{"type": "path","url": "../../packages/my-package"}],...}...├── apps│ └── my-app│ └── composer.json├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...
ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う ...├── apps│ └── my-app│ └── composer.json├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...$ composer require "my/package:*@dev"
ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う ...├── apps│ └── my-app│ └── composer.json├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...$ composer require "my/package:*@dev""name": "my/package"
ローカルのディレクトリを Composer パッケージとして扱う ...├── apps│ └── my-app│ └── composer.json├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...apps/my-app/vendor/my/package から packages/my-package へとシンボリックリンクが張られる → Composer の autoload 機能を経由して my-app から my-package を利用できるようになる
Laravel におけるディレクトリ構造の例 ├── app│ ├── ......├── composer.json...├── app│ ├── ......├── packages│ └── my-package│ └── composer.json...├── composer.json...※ “my-package” はあくまで例なので、 適切な名前をつけてあげてください。
後藤知宏, “Laravel Package Development”, Laravel JP Conference 2019,https://speakerdeck.com/mikakane/laravel-package-development 参考資料
パッケージに切り出す(モジュール化する)こと = インターフェースをデザインすること ポイントは ● (特にフレームワークとの)依存関係 ● 凝集度と結合度 どうやって分割していくか?
フレームワークに依存している状態 = 「フレームワークのその場所」から動かすのが困難な状態 ● コードの再利用性が下がっている ● フレームワークのバージョンアップに追従しにくくなる ● 長期運用するアプリケーションではフレームワークを乗り換えることも ○ 過度に依存しているとほぼ書き直しになる 「フレームワークに依存させないこと」の動機
Laravel の例を挙げれば ● Illuminate に依存しない(use したり、完全修飾名で利用しない) ○ extends、implements、引数、戻り値に出てこない ● グローバルヘルパ関数や Class Alias(\Log とか)を使わない これらを取り除いて残るのは、自ずと「自分たち」固有のコードになるはず ※ここでいう「自分たち」とはサービスやビジネス フレームワークに依存していない状態
自分たち固有のコードとは? • 見積もりの計算ロジックかもしれない • マッチングのアルゴリズムかもしれない • データのアクセス権限に関する条件式かもしれない • 税金の計算かもしれない これら正しく抽出するには開発する対象領域への深い理解が必要 →この過程こそがモデリング 「自分たちのコード」
@77web, “そのコード、フレームワークの外でも動きますか?”, PHPerKaigi20201,https://speakerdeck.com/77web/sofalsekodo-huremuwakufalsewai-demodong-kimasuka 参考資料
モジュールの設計において古くから用いられている尺度 凝集度:責任範囲が明確でそこに集中しているかどうか。高い方が良い。 結合度:モジュール間でのデータの共有度合い。低いほうが良い。 凝集度と結合度
@sonatard, “オブジェクト指向その前に凝集度と結合度”, Object Oriented Conference2020, https://speakerdeck.com/sonatard/coheision-coupling 参考資料
型情報の上でフレームワークに依存しなくなっても 「見えない依存関係」が存在しているケースがある ● 型宣言がない箇所で、フレームワーク固有のクラスを想定している ● 関数の呼び出しに暗黙の前提条件が存在している ● 型は int や string だが、その値の意味がフレームワークに特化している ○ 例)フレームワークで使われるクラス名の文字列 このような実装は「結合度が高い」と言える →そのクラスや関数を使うのに、型から得られる情報以上の知識が 必要になってないかを意識する 見えない依存関係
パッケージに切り出す(モジュール化する)こと = インターフェースをデザインすること ポイントは ● (特にフレームワークとの)依存関係 ● 凝集度と結合度 どうやって分割していくか?(再掲)
パッケージに切り出す(モジュール化する)こと = インターフェースをデザインすること ポイントは ● (特にフレームワークとの)依存関係 ● 凝集度と結合度 →いきなり「自分たちのコード」を網羅的に切り出すのは難しい まず、1 つの関数だけでいいので切り出してみよう どうやって分割していくか?(再掲)
「自分たちのコード」を 依存の束縛から解き放とう
「同一パッケージ内からのみアクセスできるクラス」は定義できない パッケージの詳細を(仕組みとして)隠蔽できないため、運用でカバーする必要がある PHP のクラスは全て public
ルートパッケージの vendor ディレクトリ内に全ての依存関係が フラットに集約されるため、例えば次のような場合もエラーにならない 依存関係を厳密にチェックできるわけではない ルートパッケージパッケージ A パッケージ Bルートパッケージパッケージ A パッケージ B■ composer.json に定義した依存関係 ■本来依存していないパッケージにアクセスできてしまう パッケージ B からパッケージ A のコードを利用
私はやったことはないが、想定できるのは 🙆 分離することで CI のサイクルが早くなる 🙆 共通のコードを複数のプロジェクトから使える 🙅 運用やデプロイ(ローカル開発環境含む)が複雑になる 🙅 インターフェースの決定や変更について取り決めが必要になる 相当の規模の開発でないか、運用上のノウハウが無い限り デメリットの方が大きい気がする(経験・知見のある方の意見求ム) パッケージごとに Git リポジトリを別にすべきか?
「フレームワークにどこまで依存するのか?」は必ずどこかで線引きが必要 フレームワークに依存しないコードは • フレームワーク側から適切に呼び出すために、 フレームワークの一歩踏み込んだ理解が必要になる • コードの量が増える傾向にある あるいは Carbon や Guzzle 等のライブラリへの依存も同様 最終的にどこまでやるかは「さじ加減」