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エネルギーの情報化 -電力のパケット化とルーティング技術-

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December 21, 2020

エネルギーの情報化 -電力のパケット化とルーティング技術-

講義での発表資料です。
This is my presentation material of lecture.

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rpaka

December 21, 2020
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  1. 愛知県⽴⼤学 情報科学研究科 神⾕幸宏研究室 † ⼩久保 律樹‡ Rev. エネルギーの情報化 第3章:電⼒のパケット化とルーティング技術 I

    LEC 20F CNC01 2 2020/12/21
  2. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 1 ⽬次 「情報処理」Vol.51, No.8, 2010年8⽉ 「特集:エネルギーの情報化」

    1. エネルギーの情報化とは(2020/11/16, 中川) 2. スマートタップの共有仕様化に向けて 3. 電⼒のパケット化とルーティング技術(2020/12/21, ⼩久保) 4. オンデマンド型家庭内電⼒ネットワークのためのQnEnを考慮した経路制御 5. ホームネットワークモデルに基づく家庭内エネルギーマネジメント(2020/12/14, 筒井) 6. DCエコハウスにおけるエネルギーマネジメント 7. 「エネルギーの情報化」を実現するソーシャルエンジニアリングに関する⼀考察 8. ⽶国を中⼼としたスマートグリッドの動向 ※ 敬称略
  3. エネルギーネットワークの概要と 情報化の動き 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 2

  4. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 3 エネルギーネットワーク 1次変電所 発電所 配電⽤変電所 消費者

    ⼤⼯場など 消費者 中⼯場など 消費者 住宅・オフィスなど 発電部⾨ 送配電部⾨ ⼩売部⾨ 参⼊⾃由 参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当
  5. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 4 エネルギーネットワークの運⽤の難しさ(1) 発電所 消費者 発電部⾨ 送配電部⾨

    ⼩売部⾨ 参⼊⾃由 参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 変電所 負荷 電源 電気エネルギーネットワークは 単に電源、送電線路、負荷から なるアナログ回路。 発電された電気は漏れなく瞬時 に消費される†。需給のバラン スが常に保たれる必要がある。 †過剰な電⼒も何らかの形で消費される。 例えば、左の電球の回路で考えれば、電 球が過剰に光ることで消費される。
  6. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 5 エネルギーネットワークの運⽤の難しさ(1) 発電部⾨ 送配電部⾨ ⼩売部⾨ 参⼊⾃由

    参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 発電事業者 ⼀般送配電事業者 (政府が指定) ⼩売事業者 +10 +20 +10 40 -30 -5 -5 発電計画 需要計画 A: 10 A: 20 A: 10 30 総発電量: 40 5 5 総需要量: 40 配電の過程では電気に区別は無い ⼈間が電気を区別して考えている 送配電システムを線形 システムと捉えている 実世界の 物理量 仮想世界 の計算値
  7. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 6 エネルギーネットワークの運⽤の難しさ(1) 発電部⾨ 送配電部⾨ ⼩売部⾨ 参⼊⾃由

    参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 発電事業者 ⼀般送配電事業者 (政府が指定) ⼩売事業者 発電計画 需要計画 総発電量: 40 総需要量: 40 ・・・ 新エネルギー発電, 蓄電器 などによる発電の多様化 電⼒⼩売り⾃由化による ⼩売事業者の多様化 ・・・ 需給バランスの調整が難しくなった
  8. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 7 エネルギーネットワークの運⽤の難しさ(2) 発電所 消費者 発電部⾨ 送配電部⾨

    ⼩売部⾨ 参⼊⾃由 参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 変電所 同期現象: 発電機を電⼒を送る線路で接続すると同⼀の周波数に収斂 これが乱れると⼤規模停電につながることもある メトロノームの同期現象 最初はバラバラだった振り⼦が 互いの影響を受けて同じ動きに なっていく。
  9. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 8 エネルギーネットワークの情報化 発電部⾨ 送配電部⾨ ⼩売部⾨ 参⼊⾃由

    参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 発電 送配電 ⼩売 発電計画 需要計画 総発電量: 40 総需要量: 40 ・・・ ・・・ 電⼒⼩売り⾃由化・発電⽅法の多様化により 需給調整・周波数調整が煩雑化:ICT化が不可⽋ 需給調整 周波数調整
  10. A: 20 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 9 電⼒のカラーリング 発電部⾨ 送配電部⾨

    ⼩売部⾨ 参⼊⾃由 参⼊⾃由 政府が許可した 企業が担当 販売計画 調達計画 総発電量: 40 総需要量: 40 ・・・ ・・・ カラーリング:電気の発電源の区別 現在は物理的な区別ではなく⼈間同⼠の合意に基づく計算上の区別 電気そのものを物理的に区別できれば確実性が⾼まる 需給調整 周波数調整 +20 +10 +10 40 -30 -5 -5 A: 10 A: 10 30 5 5 実世界の 物理量 仮想世界 の計算値 ⼈間が電気を区別しているだけ 物理的に区別していない
  11. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 10 家庭内における利⽤:家庭内電⼒の確実な区別 外部の電⼒供給網 ⾃家発電 (太陽光発電など) 蓄電器

    電気⾃動⾞ 家庭内 蓄電器や電気⾃動⾞、太陽光発電などを設置する家庭が増加 電⼒供給網の電⼒と家庭内でのそれら設備による電⼒を区別:電⼒のカラーリングが必要 家庭内の電⼒負荷や蓄電器等の電気設備の状況に応じた運⽤:Energy on Demand(EoD)の実現の⼀助となりうる
  12. 電⼒パケットおよびルータの概念 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 11

  13. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 12 電⼒パケットの概念 コンピュータネットワーク のパケット データ (下位層のデータ)

    ヘッダ (付加情報) データをある⼤きさの箱(パケット)に詰めて付加情報(ヘッダ)を付与 電⼒ネットワーク のパケット 電気 ヘッダ (付加情報) 電気をある⼤きさの箱(パケット)に詰めて付加情報(ヘッダ)を付与 付加情報:消費先や発電源など 付加情報:宛先アドレスや送信アドレスなど 010110110 101101110 111001001
  14. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 13 電⼒ルータの概念(1) 電⼒ルータ 電⼒パケットをその宛先に応じて複数ある電⼒線のうちいずれかに振り分ける

  15. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 14 電⼒ルータの概念(2) 電⼒ルータ 電⼒ネットワーク 電⼒消費先 例えば電⼒の消費先に応じて電⼒パケットを振り分けることが出来る

  16. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 15 電⼒ルータの概念(3) 家庭内 家庭内の 蓄電器, EV

    ⾃家発電 ⼀⽅通⾏ではなく 双⽅向に流れうる 複数の電⼒ルータを⽤いてコン ピュータのネットワークのよう に電⼒ネットワークを構築する ことも考えられる。 ネットワークは⼀⽅通⾏でなく、 ネットワーク内の蓄電器や太陽 光発電などの設備から電⼒パ ケットが流れうるので、双⽅向 に流れることも考えられる。
  17. 電⼒パケットおよびルータの実現 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 16

  18. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 17 豊⽥による研究で提案された電⼒パケット 電⼒パケットによるエネル ギー伝送の概念は1990年 代に豊⽥により提案されて いる。

    豊⽥の提案する電⼒ルータ 電⼒ネットワーク 情報ネットワーク 貯蔵装置 電⼒を単位毎に分けてタグ 付けを⾏うが、その情報は 情報ネットワーク上でやり 取りする。 電気の振り分けは貯蔵装置 に貯めた電気を情報ネット ワークでのやり取りに応じ て⾏う事で実現。 1 2 2 1
  19. 電⼒を制御タグに基づいて 振り分けるが、その情報は やはり情報ネットワーク上 でやり取りする。 1 2 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術

    18 鎌倉らによるマトリクスコンバータを⽤いた電⼒ルータ 鎌倉らが提案する電⼒ルータ 電⼒ネットワーク 情報ネットワーク 1 マトリクスコンバータを⽤い た電⼒ルータ アナログ電話のクロスバー交 換機の概念を適⽤したもの。 ⼩容量で多⼊⼒多出⼒ (MIMO)の⾃由度を確保する ことができる。 2
  20. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 19 引原らが提案する電⼒パケット 電線 情報 ネットワーク 電線

    情報 ネットワーク 従来 引原らによる提案 電線には普通に電気が流れるが、情報ネットワーク上で やり取りしている情報に基づいて制御される。 情報ネットワーク上で仮想的に電⼒にタグ付けしてやり取り 利点 ⽋点 ハードウェアは実現が容易 既存の設備でパケット化が可能 結局は電⼒を仮想的に分けてい るだけで、物理的に流れている 電⼒との齟齬が⽣まれる可能性 を排除できない 情報ネットワークは⽤いず、電線のみで電気とタグ付けを同時にやり取り 電線にて送信する電気と共に、その電気に対するタグ付けの情報が流れる。 電線を電気と情報が同時に流れるインフラとして活⽤する。 利点 ⽋点 電⼒そのものを物理的に区別 できるのでタグ付けとの齟齬 が⽣まれない 新たな機器を開発する必要がある 現状、⾼電圧の電⼒には使えない
  21. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 20 引原らが提案する電⼒パケット 電線 情報 ネットワーク 引原らによる提案

    制御データ ヘッダ 制御データ フッタ 電⼒ペイロード 開始信号 +宛先アドレス +etc... 終了信号 電⼒ 電 圧 時刻 電⼒線に流れる電気を変調してデータを送信(PLCのようなもの?) 制御データヘッダと制御データフッタでパケットを構成 ヘッダとフッタの間に流れる電気を使ってもらう (コンピュータのパケットであればデータが⼊る所が電気になっている)
  22. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 21 変調⽅式 Pulse Density Modulation(PDM, パルス密度変調)

    単位パルスの密度をアナログ値に対応させる 利点 スイッチング回路があれば実現可能 1 瞬時電⼒を細かく調整可能 2 電⼒の経路選択や切り出しを実 現するのにスイッチング回路を ⽤いるため、これをそのまま変 調にも⽤いる事が出来る。 電⼒源 電線A 電線B 電⼒パケットのペイロード部に PDMを⽤いれば、要求される電 ⼒を正確に送信する事が出来る。
  23. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 22 電⼒パケットの実現に必要な技術 ≫ 引原らが提案する電⼒パケットを実現する上で肝要なハードウェア 電圧の⾼い電気を⾼速・⾼効率でスイッチングしなければならない ≫

    電気の経路選択・切り出し・パルス密度変調に必要 スイッチング速度 電⼒効率 速度が遅いと経路切り替え に時間がかかってしまう 速度が遅いとパルスの間隔 が⻑くなってしまい、デー タの送信に時間がかかる スイッチング回路 ⾼速である事が必要 ⾼効率である事が必要 直流交流変換に⽤いられるSiのパワー デバイスでは90%程度の効率 変換を複数回減ると効率が極端に悪化 なるべく損失の無いようにする必要あり
  24. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 23 次世代半導体素材:SiC バンドギャップが⼤きいワイドバンドギャップ半導体素材の⼀つ Siに⽐べて・・・ 1/10 導通抵抗

    1/10 スイッチング損失 x10以上 動作周波数 360℃以上 動作温度 流れやすい ⾼効率 ⾼速 ⾼温もOK Silicon Carbide SiC, 炭化ケイ素 ⾼周波・⾼効率で電⼒変換やスイッチングを⾏える機器の開発に期待 引原らの提案する電⼒パケットの提案の社会実装の実現に近づくか? しかし・・・ 1-2kW程度 デバイス容量 電⼒ルータに応⽤した際に適⽤可能な容量範囲に限界 家庭内や事務所内での利⽤が現実的な範囲
  25. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 24 引原らが開発した電⼒ルータのプロトタイプ 交流版電⼒ルータ 直流版電⼒ルータ 引原らが提案する電⼒パケットについて原理の実現性を確認 電源側・負荷側の相互の通信により、負荷による電源選択および、

    電源による送電先制御が回路的に可能である事を確認 引原らはこれらの回路にSiCパワーデ バイスを実装する段階に研究を進め ているとの事(2010年の状況) 複数のスイッチを⽤いて効率的に電 ⼒パケットを⽣成できるようにして いた(2020年3⽉の論⽂†) † https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/9047901
  26. 今後の課題 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 25

  27. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 26 課題:より広範囲への適⽤ 家庭内 発電所 変電所 引原らが提案する電⼒ルータが使⽤可能な範囲はまだ限定される

    技術的にどこまで広げていくことが可能かの検証が今後の課題 • 既存の電⼒供給網との間には電圧や電流の位相調整を⾏い電⼒供給網 に負担を与えないようにするインターフェースが必要 • 社会実装の為には法律⾯での規制といった技術⾯以外の課題もある インターフェース
  28. 2020/12/21 エネルギーの情報化 | 電⼒のパケット化とルーティング技術 27