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努力家なスクラムマスターが陥る「傍観者」という罠と乗り越えた先に信頼があった話 / 20250...

努力家なスクラムマスターが陥る「傍観者」という罠と乗り越えた先に信頼があった話 / 20250830 Takahiro Sasaki

2025/8/30 Scrum Fest Sendai 2025
https://www.scrumfestsendai.org/

株式会社SHIFT
アジャイル推進部

佐々木 孝博

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SHIFT EVOLVE PRO

August 28, 2025
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Transcript

  1. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 2025 / Copyright SHIFT

    Inc, All Rights Reserved. 1 Scrum Fest Sendai 2025 佐々木 孝博 努力家なスクラムマスターが陥る 「傍観者」という罠と乗り越えた先 に信頼があった話 株式会社SHIFT アジャイル推進部 30 8 15:30-15:50
  2. 2 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 自己紹介 • すたか(@staka_ts)

    • CSP-SM(Certified Scrum Professional®️ ScrumMaster) • GCS認定プロフェッショナルコーチ 経歴:10年ほど品質管理部でテストやマニュアルつくったり 6年ほどフィールドSEで顧客と折衝したり 3年ほど開発(Python)でスクラムやったり、資格とったり 保険・証券案件のPM/SMや、アジャイルコーチやったり 日経記事寄稿したり、アジャイルトレーナーやったり 心意気:偉大なるスクラムマスターに俺はなる!!! 佐々木 孝博(ささき たかひろ)
  3. 3 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. AGENDA ① 失敗談までのスクラムマスターとしての生い立ち

    ②「傍観者」として失敗した話 ③「傍観者」から脱した話 まとめ
  4. 4 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. アジャイルと は無縁の技 術サポートや

    SEなど 開発者とし て、アジャイ ルに触れる 開発者兼、 スクラムマス ターとして動 き始める 新型コロナウ イルス流行 ※オンライン の勉強会に 参加しまくる SHIFTに 転職する スクラムマス ターとして新 プロジェクトに 参加 立ち上げな ど、コーチ寄 りの仕事が 増える 今日お話しすること 2018 2020 2021 2022/9~10 ① ③ ②
  5. 6 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. アジャイルと は無縁の技 術サポートや

    SEなど 開発者とし て、アジャイ ルに触れる 開発者兼、 スクラムマス ターとして動 き始める 新型コロナウ イルス流行 ※オンライン の勉強会に 参加しまくる SHIFTに 転職する スクラムマス ターとして新 プロジェクトに 参加 立ち上げなど、 コーチ寄りの 仕事が増え る ① 失敗談までのスクラムマスターとしての生い立ち 2018 2020 2021 2022/9~10 ① ③ ②
  6. 7 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 自社製品のR&D ◼

    明確な期限も内容も「確定していない」 ◼ アジャイル経験者がチームに いない ◼ PO(という名のテックリード。スクラム マスターも兼ねていた) ◼ 佐々木はプログラマーとして入っていたが、 スクラムマスターに抜擢(兼任)、という 流れ ①の体制図、状況、何をしていた xx プログラマー xx PO兼 スクラムマスター xx プログラマー 佐々木 プログラマー xx プログラマー 赤色:プロパー 緑色:BP xx 部長 xx プログラマー xx PO xx プログラマー 佐々木 プログラマー兼 スクラムマスター xx プログラマー xx 部長 人の移動あったり 佐々木がスクラムマスター兼任になったり
  7. 8 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 「情報」のインプット(=How)だけでできると思い込ん でしまい、「実地経験(特に泥臭いところ)」が不足して

    いることに気づけなかった ◼ 期限もやることも確定していない「ぬるい」状態で、なんとなく型通りにで きている。うまくスクラムマスターをやれている!(と感じていた) ◼ スクラムマスターを学び始めた直後に新型コロナウィルス流行に伴い環境変 化も実地経験不足を後押し ◼ 世の中がオンラインでの勉強会にシフトし、気軽に参加できるようになったがゆえに、 インプットが多くなり、「ちゃんと勉強できている」と思い込んでいた ◼ 現場の空気が相手にも伝わらなく、こちらにも伝わりにくかったことが、気づきを促し にくかった どうして「傍観者」になっていった?
  8. 10 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. アジャイルと は無縁の技 術サポートや

    SEなど 開発者とし て、アジャイ ルに触れる 開発者兼、 スクラムマス ターとして動 き始める 新型コロナウ イルス流行 ※オンライン の勉強会に 参加しまくる SHIFTに 転職する スクラムマス ターとして新 プロジェクトに 参加 立ち上げなど、 コーチ寄りの 仕事が増え る ②「傍観者」として、失敗した話 2018 2020 2021 2022/9~10 ① ③ ②
  9. 11 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 体制 ◼

    ステークホルダー(PO)、 SIer(PM)、 SHIFT(開発者、スクラムマスター) ◼ マルチベンダー ◼ 佐々木はスクラムマスター ◼ POほぼ不在 ◼ 新規プロダクト開発 ◼ 関係会社があった ◼ 「期限」が決まっていた ②の体制、状況、何をしていた 青色:ステークホルダー 黒色:SIer 赤色:SHIFT xx プログラマー 佐々木 スクラムマスター xx プログラマー xx プログラマー xx プログラマー xx 部長 xx PO xx PM xx テックリード xx UI/UX 開発者 スクラムチーム 報告 報告 プロダクトの 関係会社 プロジェクトメンバー
  10. 12 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. スクラムマスターである佐々木は何をした? 開始から1ヶ月、それぞれどういうことがあり、 佐々木がどういう思考で何をしていたか説明していきます。

    ※存分に「傍観者」としての失敗談をご覧ください スプリント0 案件参加 1か月 スプリント1 週次報告① 週次報告② 週次報告③ 週次報告④ スプリント2
  11. 13 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. スクラムマスターである佐々木は何をした? スプリント0 案件参加

    1か月 スプリント1 週次報告① 週次報告② 週次報告③ 週次報告④ スプリント2 アジャイル勉強会、星取表、 ドラッカー風エクササイズ POが参加できておらず、MVPの検討が 進んでいない。ログイン画面とスキル 不足解消のためのバックログを 「とりあえず準備して進める」 PO不在は問題、開発者のアジャイ ルや開発のスキルも足りないなぁ でも「まだ最初だし」「MVP検討 はPOの仕事だし」「週次報告でリ スクあるよと報告してるし」、 やることはやってる! 行動、状況 思考
  12. 14 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. スクラムマスターである佐々木は何をした? スプリント0 案件参加

    1か月 スプリント1 週次報告① 週次報告② 週次報告③ 週次報告④ スプリント2 PO不在気味。引き続きログイン画面を 作ることを「チャットベースだけで」 進める。まだ「MVPは見えない」 スプリント1は「ベロシティが0」。 PO不在問題は専用チャットグループを 準備。開発者のスキル不足は勉強会開 催や有識者にフォローを依頼 ベロシティは0だったけど、開発者のス キル不足も対応したし 「開発者が頑張るしかないよね」 PO不在問題は「お願いしたし」 「PO自体が時間つくるしかないよね」 まだMVPも決まってないけど、 「手を打ってる報告もしてるし」、ちゃ んとやってる! 行動、状況 思考
  13. 15 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ステークホルダー、PMからはどう見えていた? スプリント0 案件参加

    1か月 スプリント1 週次報告① 週次報告② 週次報告③ 週次報告④ スプリント2 • 1か月近く経とうというのに先はわかりませんという報告だけで、 「いつどうなるか何も見えてこない」 • コーチングなど開発者に対してやってることはわかるが「開発者 しか見てない」 • こいつにスクラムマスターをさせておいても「チームがよくなっ てる感じがしない」
  14. 16 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 開発者しか見ていなかった ◼

    見ていない外は「他責」にしていた ◼ 他責ということに「気づいてすらいない」 プロダクトを前に進めるために泥臭くとも動くというよりは、 プロジェクトの「傍観者」であった つまり、このときの佐々木は、
  15. 18 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. アジャイルと は無縁の技 術サポートや

    SEなど 開発者とし て、アジャイ ルに触れる 開発者兼、 スクラムマス ターとして動 き始める 新型コロナウ イルス流行 ※オンライン の勉強会に 参加しまくる SHIFTに 転職する スクラムマス ターとして新 プロジェクトに 参加 立ち上げなど、 コーチ寄りの 仕事が増え る ③「傍観者」から脱した話 2018 2020 2021 2022/9~10 ① ③ ②
  16. 19 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. プロジェクト後半、どうなっていった? 1か月 2か月

    プロジェクトとしては佐々木は2ヶ月で交代となったのですが、、、 経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)と自分は何が異なっており、 何を学んだ結果、「傍観者」から脱したのか、を説明します ここまでの通り、 ・開発者しかみていなかった ・みていない外は、「他責」にしていた ・他責ということに「気づいてすらいない」 PM、SHIFTマネージャーが相談し、1ヶ月過ぎから、 ・経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)をアサイン ・佐々木の伴走(実質スクラムマスター) ・佐々木との1on1 ③ 『傍観者』から脱した話
  17. 20 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ スピードが違っていた ◼

    見ている範囲が違っていた ◼ 見ている方向が違っていた 経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)と違っていたこと学んだこと
  18. 21 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ スピードが違っていた ◼

    Aさんは「課題があったら当日中に解決するくらいやらないとダメだ」と言 い、行動までしていた (学んだこと) ◼ 「これぐらいでいいかな、つづきはあとでいいよね」が他責につながること ◼ いま、決めること、決めてすぐ行動することが、周りにいい影響となること ◼ 見ている範囲が違っていた ◼ 見ている方向が違っていた 経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)と違っていたこと学んだこと
  19. 22 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ スピードが違っていた ◼

    見ている範囲が違っていた ◼ 自分はチームだけ(※実際には開発者だけ)を自分の責任範囲ととらえていた が、Aさんはすべてを捉え、関わりがあろうがなかろうが、できることをつね に探し行動していた (学んだこと) ◼ ここまで、と線を引いた時点で、線の外は他責と考えてしまうということ ◼ 線を引かず自分が何ができるか?を考えて行動することで前に進むということ ◼ 見ている方向が違っていた 経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)と違っていたこと学んだこと
  20. 23 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 見ている範囲の違い xx プログラマー

    佐々木 スクラムマスター xx プログラマー xx プログラマー xx プログラマー xx 部長 xx PO xx PM xx テックリード xx UI/UX 開発者 報告 報告 プロダクトの関係会社 事業部長 からの期待 さらに関係会社 POが忙しい 他の業務 会社から の期待 経験豊富なアジャイルコーチ (Aさん)が見ていた範囲 見ていたというのは気にして いただけではなく、「部長、 事業部長や会社からあなたに どのような期待があります か?」と明確にする行動をし、 さらにそれを満たすために何 ができるかを考え、そのため の行動をとっていた そもそもプロダクトを 作ろうと思った背景 佐々木が見ていた範囲
  21. 24 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ スピードが違っていた ◼

    見ている範囲が違っていた ◼ 見ている方向が違っていた ◼ 自分は、ステークホルダーやPM「を」見て行動していた ◼ Aさんは、ステークホルダーやPM「が見ている方向を」見て行動していた (学んだこと) ◼ 「忖度しない」「伴走する」「目的志向」ということが何もわかってなかった ◼ 本当に同じ方向を向いて行動することができると、仲間として見てもらえるよ うになること 経験豊富なアジャイルコーチ(Aさん)と違っていたこと学んだこと
  22. 25 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ アジャイルの理解が足りてなかっただけだった ◼

    小さく素早く動く、とか ◼ 他責にせず自律的に行動する、とか ◼ 顧客との協調を、とか ◼ 忖度しない、とか ◼ 目的志向で考える、とか 言葉としては理解していたが、実現(行動)できてなかった つまり、
  23. 26 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ アジャイルの理解が深まったのを受け、色々なものを見返すことで、 違った理解になることもたくさんあるのでは!?ということでまず

    はスクラムガイドから読み直した ◼ スクラムガイドには、スクラムマスターは「サーバントリーダー」 ではなく「真のリーダー」である、とあった ◼ 自分の行動は、開発者のためのサーバントリーダーではあったが、 チーム全体のためのリーダーではなかった、と気づかされた その後、その1
  24. 27 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 仕事に関係なく、アジャイル思考で行動するようになった ◼

    約束をその場で決めるとか、即行動が増えた ◼ つねに目的を考え、目的と手段を気を付けるようになった ◼ 知らないことであっても、広い目で見て、できることを小さく行動し、 フィードバックを得るような動きをするようになった 結果として、何かわかんないけど、いい感じに回ってる気がした。 今も継続している。 その後、その2
  25. 28 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ ステークホルダーから信頼されることが増えた ◼

    こいつは俺が進みたい方向を助けてくれる「仲間」だ ◼ アジャイル思考で行動するようになってから、会社の評価 が上がった ◼ 上司から軽い相談をされたり、「信頼されている」と感じることが増えたよう にも思う ◼ 色んなことに興味を持つようになった ◼ 知ってるつもりでも、本質はわかってないことがたくさんありそうだ ◼ 目的志向で広く捉えたら、コレとコレは実は同じこと言ってるんじゃ!? 失敗を通じ、自分の何が変わった? (大げさにいうと)人生観が変わった
  26. 30 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ (失敗談を自分事ととらえて、) ◼

    すぐ行動する、他責にしない、目的志向で動く ◼ その先には信頼があるということ ◼ 、、、という話を立ち止まって、受け止めてみること ◼ 「そんなことわかってる」と思った時点で成長は止まる ◼ だからこそ「謙虚さ」が大切、というのも学びました まとめ
  27. 31 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ◼ 何となく向かってる先はあってそうなんだけど、場当たり 的な対応に見える

    ◼ 迅速な行動が増えたのはいいが、そこで行った思考が「周りに見えない」。 全部許可取って、というのは違う気がするけど、もうちょっとなんとか、、、 ◼ つまり、「透明性」の話ですね ◼ いつまでたっても課題っていうのはなくならないなぁ 目の前のことに真摯に向き合ってがんばるしかないか! ◼ みなさんならどうしますか?とか、課題ありますか?とかぜひお話したいで す! 「傍観者」に関するお話はおしまい。今の課題