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事業ロードマップを意識してアジャイルに向き合ってるSREがメンバーのキャリアマップを考えて1o...

事業ロードマップを意識してアジャイルに向き合ってるSREがメンバーのキャリアマップを考えて1on1をやったら、自ら成長して窮地を切り抜けてくれた話 / 20251126 Naoki Shimada

2025/11/26 株式会社SHIFT、東京ガス株式会社、日鉄ソリューションズ株式会社3社共催OST 第2回
株式会社SHIFT
アジャイル推進部
島田直樹

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SHIFT EVOLVE PRO

November 26, 2025
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Transcript

  1. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 2025 / Copyright SHIFT

    Inc, All Rights Reserved. 1 チームと組織の人材育成施策について共有しあおう 株式会社SHIFT ソリューション本部 ソリューション事業部 アジャイル推進部 NAOKI SHIMADA 26 11 18:10 ~ 18:15 島田 直樹 事業ロードマップを意識して アジャイルに向き合ってる SREが メンバーの キャリアマップを考えて 1on1をやったら、 自ら成長して窮地を切り抜けてくれた話 (センリツSRE)
  2. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 2 大阪で誕生 事業側SREになる SHIFTに参加する

    結婚&2児の父になる 誰かのSREをアシストするSREになる エンジニア経歴すごろくを 自己紹介にかえて SREを愛し、 センリツSREという名前で 執筆・登壇活動しています。
  3. 3 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 1. とあるSREの嘆き~なんちゃってはつらいよ~ (2分)

    2. ロードマップを意識した1on1で活路を開け! (2分) 3. まとめ (1分)
  4. 4 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 1. とあるSREの嘆き~なんちゃってはつらいよ~ (2分)

    2. ロードマップを意識した1on1で活路を開け! (2分) 3. まとめ (1分)
  5. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 5 アジャイルとSREの関係 引用元 David

    N. Blank-Edelman: Becoming SRE, 1st ed., O’REILLY, 2024, 285p オライリー出版の「SREを始めよう」という本には、以下のSRE、DevOps、アジャイル戦略のLimoncelli モデルが載っています。 SREはプロダクションでの運用に集中し、最 終結果を改善する手段としてパイプラインの それに先立つ段階に対応 DevOpsはここからスタートして左から右へステッ プを自動化。完了したら最初に戻ってボトルネック を最適化 アジャイルは ここの問題を解決
  6. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 6 アジャイルとSREの関係 オライリー出版の「SREを始めよう」という本には、以下のSRE、DevOps、アジャイル戦略のLimoncelli モデルが載っています。

    SREはプロダクションでの運用に集中し、最 終結果を改善する手段としてパイプラインの それに先立つ段階に対応 DevOpsはここからスタートして左から右へステッ プを自動化。完了したら最初に戻ってボトルネック を最適化 アジャイルは ここの問題を解決 う~ん、 なんか違う・・・
  7. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 7 アジャイルとSREの関係 実際、私がSREとして働くとき、多くの場合は以下の通り、Limoncelliが提唱したモデルよりも広い領域 の対応をする傾向が強いです。

    SREはプロダクションでの運用だけではなく、信頼 性に関わるすべてのことに関わる DevOpsはここからスタートして左から右へステッ プを自動化。完了したら最初に戻ってボトルネック を最適化 アジャイルは ここの問題を解決 Naoki Shimada: 日本のSREの多くの実態
  8. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 9 「なんちゃってSRE」本当につらいです・・・ 今の時代、素早く開発して素早く市場に投入し、また次の新しいリリースをどんどん投入しつづけるというこ とができなくては勝てません。⇒

    だからアジャイル、DevOpsが必要 運用が開発リリースのブロッカーにならないように、ボトルネックをうまく移動させながら、素早さと品質にト レードオフを生じさせることなく、サービスを成長させていく必要があります。 ⇒ だからSRE が必要
  9. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 10 今の時代、素早く開発して素早く市場に投入し、また次の新しいリリースをどんどん投入しつづけるというこ とができなくては勝てません。⇒ だからアジャイル、DevOpsが必要

    運用が開発リリースのブロッカーにならないように、ボトルネックをうまく移動させながら、素早さと品質にト レードオフを生じさせることなく、サービスを成長させていく必要があります。 ⇒ だからSRE が必要 「なんちゃってSRE」本当につらいです・・・ <宣伝です> 本日は時間制約のなか、語り切れないことがたくさんありますので、 以下の過去登壇アーカイブや弊社技術ブログもご参照いただけますと大変幸甚です。
  10. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 11 アジャイル開発もできていなくて、DevOpsも形式なものになっている・・・ リリース頻度も変わってないのに、SREを立ち上げたときに起こること・・・ それは、信頼性向上というお題目を掲げながらも、

    その実態は、CloudNativeな便利屋さんなんだろうと思います。 この状態は「なんちゃってSRE」の1例であり、 そのSREチームのメンバーが次々と倒れてしまい、チームが崩壊するでしょう。 だからこそ、本質に根差したアジャイルはSREにとっての救世主です。 またその逆も然りではあります。 「なんちゃってSRE」本当につらいです・・・
  11. Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 12 以下の登壇イベントでご一緒させていただきましたX-Tech5の馬場さんが、 イベントの後日談として「なんでも屋さん」に対しての肯定的なコメントを出されています。 私も馬場さんのご意見には、マインドとしては365%賛成です。

    その一方で、アジャイルもDevOpsも回っていない状況なら、SRE立ち上げの前に 優先的にやるべきことがきっとあるはず、と思っています。 補足:なんでも屋さんを否定しているわけではありません
  12. 13 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 1. とあるSREの嘆き~なんちゃってはつらいよ~ (2分)

    2. ロードマップを意識した1on1で活路を開け! (2分) 3. まとめ (1分)
  13. 15 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. Task Task Task

    Task Task Task Task Task Task Task Task Task ITシステムでは、コネクションリークがメモリリークを引き起こし、最終的にCPU張り付きに至り、どの処理もでき なくなるということが起こりますが、私が率いるSREチームが崩壊し始めたとき、私たち人間の脳にも同様の事 象が発生していたと思われます。 (思考の停止、行動選択の停滞) SREチームが崩壊するときに見えるもの
  14. 16 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. Task Task Task

    Task Task Task Task Task Task Task Task Task ITシステムでは、コネクションリークがメモリリークを引き起こし、最終的にCPU張り付きに至り、どの処理もでき なくなるということが起こりますが、私が率いるSREチームが崩壊し始めたとき、私たち人間の脳にも同様の事 象が発生していたと思われます。 (思考の停止、行動選択の停滞) SREチームが崩壊するときに見えるもの ・人間の脳はマルチタスクを行うことが苦手 ・マルチタスクを行うには、タスクの切り替えに伴う「切り替えコスト」が発生する ・頻繁にマルチタスクを行う人は、注意力、記憶力、作業効率、精神力、免疫力、体力が低下する (参考文献:Eyal Ophir, Clifford Nass, Anthony D. Wagner ,"Cognitive control in media multitaskers", Proceedings of the National Academy of Sciences Vol. 106 | No. 37 September 15, 2009 PubMed: 19706386) スタンフォード大学の脳科学研究結果
  15. 17 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. アジャイルマニュフェストにも記載がありますが、 SREも対話を重要視します。 事業ロードマップとキャリアマップをリンクさせることを意識しながら、

    会話をすることで、思考の停止・行動選択の停滞から抜け出す 意志を取り戻すことができました。 それではさっそく、当時の1on1の再現をご覧ください。 それでも私たちは、会話をやめない https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html アジャイルマニュフェストHPより
  16. 18 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景 ところで、あなたはなぜ、アジャイルの部署に配属を 希望したのですか?

    小さなサイクルを回して、ゴールに近づいていくという考 え方が、自分にあっていると思ったからです。 なるほど、とても良い分析ですね。 このアジャイル開発プロジェクトの成功と あなた個人のステップアップが重なる点があるんですね。 やる :別の話題の中で、事業のロードマップとキャリアマップの共通項を見つけること やらない:ロードマップの絵を描いて見せることではない(見せても別に構いはしないけれど) ロードマップとキャリアマップをリンクさせる
  17. 19 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景 そのためにどんなスキルが必要だとお考えですか? ソフトスキルの向上についてはイメージつくのですが、

    テクニカルスキルのイメージがわかず、 自分の強みと弱みが自分でわかっていない状態です。 ソフトスキル向上についてイメージが付いていることが とても素晴らしいです。 やる :その人が欲したタイミングで、その言葉を伝える(タイミングじゃなかたら伝えない) やらない:一般論を押し付けない(ソフトスキルの方が抽象度高で習得困難だったとしても) 何をいつ伝えるかは、相手がそれを欲した時
  18. 20 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景 強みと弱みを知る必要があるとお考えのようですが、 その理由や背景があれば、ぜひ教えてください。

    誰かに評価をしてもらう時、自分の強みと弱みが わかっていないと、アピールすることが難しいからです。 なるほど、自分で目標を定める時も、 自分の適性は重要な指標の1つですよね。 やる : 「わからないことがわからない」 から 「”それが” とにかくわからない」のフェーズにSHIFTする やらない:深堀りの内容が本人の口から出る前に言ってしまう アクションプランの背景や理由を深堀する
  19. 21 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景 ちなみに、強みと弱みでは、あなたはどちらを 伸ばすべきだと考えますか?

    今の私は強みを伸ばすべきだと考えています。 ですがその伸ばすべきものが何かについて悩んでいます。 それはたくさんのやるべきことが目の前にある。 一方で自分の時間や体力には限りがある。 いったいどの順番で、どれくらいのパワーをかければ 正解かわからない、ということであってますか? やる :このように進めてはどうか?という提案をする やらない:こちらから決めてしまわないこと(自分で決めてもらう共通体験が大切) 背景や理由に対する方向性は示す
  20. 22 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景 はい、その通りです。 あなたがアジャイルの小さなサイクルを回すプロセスが

    自分にあっていると言った理由がわかった気がします。 まずはタイムマネジメントとタスクの重み付けから学んで いきましょう。その上でマルチタスクにせずにシングルタス クに集中して消化することを心がけましょう。 やる :具体策を練るが、細かい進め方は本人に委ねる(試行錯誤してもらう) やらない:否定をしない(当たり前) 方向性がすり合わせられたら具体策を練る OKです。
  21. 23 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景(その後、立てたアクションプラン) STEP1: すべてのToDoをリストアップする

    STEP2: すべてのToDoを重要度×緊急度のマトリクス表で分類する STEP3: タイムブロッキングの方法で決めた優先順位別に対応していく バラバラのタスクを種類ごとに整理をする
  22. 24 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景(その後、立てたアクションプラン) 重要度:低 緊急度:高=錯覚の領域

    重要度:高 緊急度:高=必須の領域 重要度:低 緊急度:低=浪費・過剰の領域 重要度:高 緊急度:低=効果性の領域 重要度(高) 緊急度(高) 緊急度(低) 第1象限 第2象限 第3象限 第4象限 STEP1: すべてのToDoをリストアップする STEP2: すべてのToDoを重要度×緊急度のマトリクス表で分類する STEP3: タイムブロッキングの方法で決めた優先順位別に対応していく 重要度(低)
  23. 25 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景(その後、立てたアクションプラン) 重要度:低 緊急度:高=錯覚の領域

    重要度:高 緊急度:高=必須の領域 重要度:低 緊急度:低=浪費・過剰の領域 重要度:高 緊急度:低=効果性の領域 重要度(高) 緊急度(高) 緊急度(低) 第1象限 第2象限 第3象限 第4象限 STEP1: すべてのToDoをリストアップする STEP2: すべてのToDoを重要度×緊急度のマトリクス表で分類する STEP3: タイムブロッキングの方法で決めた優先順位別に対応していく 重要度(低)
  24. 26 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. とある1on1の風景(その後、立てたアクションプラン) STEP1: すべてのToDoをリストアップする

    STEP2: すべてのToDoを重要度×緊急度のマトリクス表で分類する STEP3: タイムブロッキングの方法で決めた優先順位別に対応していく 月 火 水 木 金 06:00-07:00 07:00-08:00 08:00-09:00 09:00-10:00 10:00-11:00 11:00-12:00 12:00-13:00 13:00-14:00 14:00-15:00 15:00-16:00 16:00-17:00 17:00-18:00 18:00-19:00
  25. 27 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 実は、SREを提唱したGoogleも同様に、SREsがどのように時間を使っているかを計測しているそうです。 オライリー出版の「Site Reliability

    Engineering: How Google Runs Production Systems」には、 以下の記載があります。 それで、どうなった? Googleにおけるおおまかなルールは、SREチームは残りの50%の時間を実際に 開発を行うために使わなければならないというものです。 このルールはどのように一考されるのでしょうか。 まずはSREがどのように時間を使っているかを計測しなければなりません。 計測ができれば、常に50%以下の時間しか開発作業に費やしていないチーム の習慣を変えることができます。 引用元 Betsy Beyer, Chis Jones Jennifer Petoff, Niall Richard Murphy: Site Reliability Engineering: How Google Runs Production Systems, 2st ed., O’REILLY, 2019, 536p
  26. 28 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 私たちのこの取り組みを実施しながら、効果測定を進めている最中です。 タイムブロッキングをしていても、差し込みタスクや強制的に予定を入れられてしまうなど 思うように行かないこともありますが、現時点で以下の効果が測定できています。

    引き続き、フィードバックループを回して、継続的改善につなげていきたいと考えています。 それで、どうなった? 確認観点 導入前 導入後 顧客要望リリースまでに要する 1件あたりの平均リードタイム 5営業日 1.5営業日 MTTR(障害復旧平均時間) 2.5営業日 1.0営業日 チケット在庫率 (未着手チケットの割合) 35.1% 0.5% ストレス(体感) ★★★★☆ ★☆☆☆☆
  27. 29 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. 1. とあるSREの嘆き~なんちゃってはつらいよ~ (2分)

    2. ロードマップを意識した1on1で活路を開け! (2分) 3. まとめ (1分)
  28. 30 Copyright SHIFT Inc, All Rights Reserved. ロードマップとキャリアマップをリンクさせた対話をすることで、 チームや組織レベルでの人材育成のアプローチが見つかる、ということをご紹介しました。 改めて言うまでもありませんが、ひとりひとりの成長が私たちのチーム、ひいては組織の成長に他ならず、

    その集合知が私たちの価値ということになります。 人の成長は、マクロレベルでみると、緩やかな流線形を描いている様にも見えますが、 ミクロレベルで見ると、ふとしたきっかけで段階的にレベルアップする瞬間があります。 そうした瞬間をつくるきっかけは、アジャイルでもSREでも変わらず、たゆまぬ対話から産まれるものです。 システムの可観測性(オブザーバビリティ)なんていう言葉がありますが、 まずは自分や自チームに対してオブザーバビリティを導入することで突破口が見つかります。 今回の発表が、みなさまのご参考になれば幸いです。 まとめ