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個人OSSが、机の上から世界に広がるまでの話

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 個人OSSが、机の上から世界に広がるまでの話

Markdownエディター『Bokuchi』を「作った」後。
それを「広げる」ためにやったことを紹介します。

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Shinya Saita

August 01, 2026

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Transcript

  1. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 前回、名古屋でも登壇しました 2026年5月、OSC名古屋で登壇しました テーマ:「これ、欲しかったやつだ」と言わせたい 自作ツールをOSSとして「作る」side に回る話

    今日はその続き ただ前回を聞いていなくても、大丈夫なのでご安心を 今日のテーマは、作ったものを「届ける」話 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 3
  2. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 今日のアジェンダ ひとつの個人OSSが、波紋のように広がっていった実話を紹介します 机の上 同僚 Qiita

    各章で、エンジニアとしての変化 に話します OSC プロダクトの中身 世界 今ここ マーケの仕掛け を同時 ちなみに上のこの図はMermaidで作りました(急に何) 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 6
  3. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 第0波 すべては、机の上から 机の上 → 同僚

    → Qiita → OSC → 世界 → 今 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 7
  4. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 事の発端:重いエディタ使いたくない症候群 ちょっとしたメモのために VS Code を立ち上げる

    CPUとメモリが食われる、起動を待つ ダメではないけど、"メモのため"のリソースじゃない 色んなエディタを試したけど、どれもしっくりこない Atom:好きだったけど開発終了 VS Code:Markdownで使うには多機能すぎる Obsidian:強力だけど目的が違う 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 8
  5. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと Bokuchi 軽量・クロスプラットフォームの Markdownエディタ Tauri 2

    (Rust) + React + TypeScript macOS / Windows / Linux 対応 OSSとして公開中(MIT) 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 10
  6. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 名前の由来 「墨池(ぼくち)」 ̶̶ 書道の道具 硯で摺った墨を入れておく小さな入れ物

    墨汁を入れておけば、筆さえあればすぐ書き始められる 開いた瞬間にMarkdownを書き始められる ̶̶そんな道具になってほしいという願い 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 12
  7. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと こだわりは、ぜんぶ「自分のため」 1. 常に立ち上げておける ̶̶ 重さがストレスにならない

    2. タブの水平/垂直切替 ̶̶ 比較しながら書ける 3. 変数機能 ̶̶ テンプレ文書をDRYに 4. オフライン完結 ̶̶ クラウド同期はあえて非対応。脆弱性を生み出したくない 「世の中のため」ではなく「自分のペイン解決のため」 ̶̶これが前回の名古屋でした話でした 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 13
  8. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと ところで自分は、マーケの本を読むのが割と好きです エンジニアなのに、マーケティングの本を読むのが本当に好き マーケティングは人にモノを届ける話 エンジニア向けの「作る」の教材は世に溢れている 入門書、チュートリアル、動画、無限にある

    でも「届ける」教材は? 個人開発者向けには、誰も体系立てて教えてくれない だから今日は、マーケを面白がるエンジニアとして 実体験ベースで話します 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 15
  9. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 第1波 同僚 ̶̶ 最初の波紋 机の上

    → 同僚 → Qiita → OSC → 世界 → 今 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 16
  10. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと マーケの学び ① 最初の顧客は、隣にいるかもしれない いきなり世界を狙わない。まず顔の見える人に届ける 知り合い経由の拡散(温度が高い口コミ)は、

    広告よりずっと強い そして隣人のフィードバックが、 世界に出す前の品質を作ってくれる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 19
  11. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 第2波 Qiita ̶̶ 波紋が跳ねた日 机の上

    → 同僚 → 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya Qiita → OSC → 世界 → 今 20
  12. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 公開しただけでは、誰も来ない GitHubでPublicにして数ヶ月 この時点でのダウンロード数:15 そのうちいくつかは、自分 Publicにする

    届く 何もしなければ、勝手に見つけてはもらえない ※ みなさんだって、他人のリポジトリを理由もなく見に行かないですよね? 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 21
  13. 23

  14. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 結果 現在:いいね 255 はてなブックマーク ホットエントリー入り

    ダウンロード数 15 → 258( 17) 会ったことのない人が、初めて大量にDLしてくれた日 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 24
  15. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと ただし̶̶記事「だけ」の力ではありません 実は直前に、転機になる機能リリースがありました 時期 出来事 2/22

    v0.5.0 リリース(この時点でDL 15) 3/5 v0.6.0:フォルダツリー+アウトライン実装 3/10 Qiita記事公開 → バズ v0.6.0で、自身の感覚として「ようやく実用ツールになった」 →だから記事を書いた 機能の充実 記事バズのダブルパンチ。 どちらか片方だけなら、跳ねていなかったかも 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 25
  16. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと タイトルを分解してみます 「メモリ使用量40MBの衝撃。理想のMarkdownエディタを求めた結果、 Tauriで自作が一番良かった」 要素 効果

    40MB(具体的な数字) 一瞬で軽さが伝わる。曖昧な「軽い」より強い 衝撃(感情の言葉) 数字に温度をつける 理想の〜を求めた結果(物語) 検索遍歴=読者自身の体験と重なる Tauriで自作(技術ワード) エンジニアの好奇心に刺さる 機能の説明ではなく、読者のペインを語れていたのかも 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 26
  17. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと マーケの学び ② メッセージは「機能」ではなく「ペイン」を語る 「Markdownエディタ作りました」→ 多分誰も見ない

    「重いエディタにうんざりしてる?」→ これは共感を生めるかも そしてアクションは、 プロダクトが受け止められる状態になってから 流入 実用性 = 定着。どちらも欠けないようにしたほうが良い 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 27
  18. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 第3波 OSC ̶̶ 画面の外へ 机の上

    → 同僚 → Qiita → 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya OSC → 世界 → 今 28
  19. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと オンラインの次は、リアルに出てみた 2026/5/23 OSC名古屋:初のブース出展+登壇 ネットの波紋とは全く別種の広がりがあった その場で実機を触ってもらえる

    表情が見える。質問がその場で来る 「あの記事の人ですか」と言われた これ地味に嬉しかったです そして今日、OSC京都にもモチロン、ブース出してます(宣伝) 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 29
  20. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと リアルのために、 色々作りました ノベルティ ステッカー・しおり Tシャツを自作

    ブース用の 実機デモ環境 エンジニアスキルは、 販促物づくりにもそのまま使えます 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 30
  21. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと Tシャツは「着る」まで が仕事 作っただけでは、ただの私服 実際に着て、他のイベントに登壇しました 登壇中、ロゴが常に観客の視界に入る

    懇親会で「そのロゴ、何ですか?」→ 会話が始まる 歩く広告塔は、ゼロ円のランニングコストで運営! 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 31
  22. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと ノベルティは「その後」が仕事 配って終わり、ではない ステッカー → PCに貼られて他の勉強会に出張する

    「これなんですか?」と言われ広がっていく しおりも本に使ってくれたら目に入る 捨てられないために裏側にチートシートを作った 物理グッズは、簡単には消えない広告。 SNSの投稿は流れちゃうけど、机の上の物は残る 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 32
  23. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと ネタバレというか仕込みの話なんですが 実は名古屋では、講演の最後に種明かしをしました 「このスライド、実はBokuchi(Marpモード)で 投影していました」 今日も、モチロンそうです

    いま映っているこの画面が Bokuchi です さっきのMermaidの図も、Bokuchiで描画しています 右上のタイマーは、これも自作の Lightning Timer 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 33
  24. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと マーケの学び ③ オフラインは「狭いけど、濃い」 リーチはネットに遠く及ばない。でも記憶に残る深さが違う 物理物(Tシャツ・ノベルティ)は手元に残る広告

    そして実物を見せる・触らせるデモは、どんなコピーより雄弁に効く 参加してるみなさんはそれを実感してるはず だからイベントに来てるんですよね? 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 35
  25. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 第4波 世界 ̶̶ 会ったことのない人たち 机の上

    → 同僚 → Qiita → OSC → 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 世界 → 今 36
  26. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 気づけば、遠くまで届いていた 指標 名古屋登壇時(5/23) 今日(8/1) GitHub

    Star 69 89 バージョン v1.0.0 v0.8.4 累計ダウンロードは 3,500+(自動アップデート経由を含む) Starしてくれた人のほとんどは、 会ったことのない人で、海外もいる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 37
  27. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 世界からIssueが届くようになった 実際に来た報告・要望(一部): LaTeXの \tilde でレンダリングが壊れる(海外)

    CachyOS + Wayland で起動しない(海外) 「winget / scoop に対応してほしい」(海外) Linuxのarm64にも対応してほしい(日本) 自分もRaspberry Pi で使いたかった 日本語の「」に隣接した **強調** が効かない(日本) 脆弱性の疑いがあるバグが見つかった(日本) 自分ひとりでは絶対に気づかない環境・使い方が、世界中から集まってくる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 38
  28. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 実例:要望から生まれた機能たち Issue 要望 結果 #401

    アウトラインをオフにしたい v0.9.4 で対応 #440 コードブロックにコピーボタンが欲しい 対応 #442 / #446 エクスポート時に元のファイル名を使ってほしい 対応 #442 と #446 は、別々の2人からほぼ同じ要望をもらいました 2人が同時に言うことは、その後ろに何十人も同じ事を思ってる人がいる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 41
  29. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと そして先月、v1.0.0 に到達! 2026/7/12、開発開始から約1年でのメジャーバージョンへ PDFエクスポート(Marpスライドも直接PDFに) カスタムテーマエディタ(自分好みの色へ自由にUI変更)

    画像のドラッグ&ドロップ挿入 リスト・チェックボックスの連続入力 リリースを重ねること自体が、 「このプロダクトは生きている」という発信になる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 44
  30. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと マーケの学び ④ プロダクトの進化そのものが、 最強のマーケティングかもしれない 要望の採用は、開発でありファン作りでもある

    ただし採用基準は自分の中に持つ(自分も欲しいか?) リリースは生存報告。動きのあるOSSに人は集まる 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 45
  31. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 最後の波紋 Bokuchiの現在地 机の上 → 同僚

    → Qiita → OSC → 世界 → 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 今 46
  32. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 波紋の全体図を、もう一度 机の上 DL 0 同僚

    最初の口コミ Qiita 15→258 OSC リアルの接点 世界 Star 89 / v1.0.0 ??? 最後の「???」̶̶これが何になるか、もう、お気づきでしょうか? 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 47
  33. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと まとめ 1. 最初の顧客は隣にいる ̶̶ まず半径5mに手売りする

    2. メッセージはペインを語る ̶̶ 共感を生むフレーズを意識する 3. 撃つのは弾が揃ってから ̶̶ 流入 実用性のダブルパンチ 4. 物理は記憶に残る ̶̶ Tシャツは着てこそ、ノベルティは残ってこそ 5. 要望はラブレター ̶̶ ただし採用基準は自分の中に 6. リリースは生存報告 ̶̶ 進化そのものがマーケ 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 50
  34. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと 次は、みなさんの番かも? あなたの「for me」なツール、眠っていませんか? 半径5mへの手売りから、始めてみませんか 波紋は、内側からしか広がりません

    今日の私の発表が、 あなたの最初の一歩のきっかけになるなら、こんなにうれしいことはないです 斉田 真也 @ OSC 2026 Kyoto / GitHub: shinya / X: saita̲shinya 52
  35. OSC 2026 Kyoto / 「作る」の次に、誰も教えてくれなかったこと Thank you! 斉田 真也 Bokuchi:

    bokuchi.com ⏱ Lightning Timer: github.com/shinya/lightning-timer ブース出してます。実機・ノベルティあります ぜひ後で遊びに来てください! 53