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プロダクト開発を通して学んだナレッジマネジメントの哲学

sonod
February 18, 2024

 プロダクト開発を通して学んだナレッジマネジメントの哲学

イベント名:Code for Kitakyushu 第71回 定例会
日付:2023/06/21(水)
URL:https://techplay.jp/event/906446

「プロダクト開発を通して学んだナレッジマネジメントの哲学」
野田 宗一郎

さくらインターネット研究所では、「eureco」という電子実験ノートのプロダクトを開発しています。
このプロダクトでは、研究の進捗や結果を記録するための実験ノートの概念をデジタル化し、「何気ない記録」から紡いだ「誰もが驚く発見」で世界にワクワクの連鎖を起こすことを目指しています。
今回のイベントで私は、このプロダクト開発を通じて学んだ個人と組織の知識を効果的に管理するナレッジマネジメントの哲学を皆様に共有します。

sonod

February 18, 2024
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Transcript

  1. © SAKURA internet Inc. 名前: 野⽥ 宗⼀郎 所属: さくらインターネット研究所 職業:

    研究開発エンジニア 興味領域:プロダクト開発 Twitter: @sonod00
  2. © SAKURA internet Inc. n メモから始まる知識管理 n 個⼈の知識と組織の知識の循環 n 研究者の思考過程と結果を記録するための重要なノート

    n 実験ノートの概念を持った知識管理のためのプロダクト n 社内スタートアップによるプロダクト開発 n まとめ
  3. © SAKURA internet Inc. まず、知識とはなんでしょう? 個⼈の知識には獲得の過程があります。 個⼈の知識管理の専⾨家であるジェイソン フランド博⼠とキャロル ヒ クソン⽒は、知識獲得の過程を「データから始めて、⽂脈を追加して

    情報を取得し、理解を追加して知識を取得し、判断(価値観)を追加 して知恵を取得します」と定義しています。 ジェイソン フランド博⼠とキャロル ヒクソン⽒の論⽂ https://web.archive.org/web/20070516142458/http://www.anderson.ucla.edu/faculty/jason.frand/researcher/speeches/PKM.htm データ 情報 知識 知恵 客観的な事実 データ + ⽂脈 情報 + 理解 知識 + 判断 知識獲得 の 過程
  4. © SAKURA internet Inc. しかし、メモにはいくつかの課題が存在すると考えます。 n 「⾒返さない」: メモをとっても、それをあとで⾒直すことが少ない。つまり、 情報を記録するだけで、その情報を活⽤する機会が少ない。 n

    「思い出せない」: メモを⾒ても、何のために書いたのか、または何を意味し ているのか思い出せない。これは、メモが詳細すぎたり、書き⽅が雑だったりすると 起こります。 n 「整理が⼤変」: メモの量が多くなると、それらを⾒やすく整理するのが難し くなる。これは、情報が散らかってしまうと、必要なメモをすぐに⾒つけるのが困難 になるためです。
  5. © SAKURA internet Inc. ドイツの社会学者にニクラス・ルーマンと いう⽅がいます。 ルーマン⽒は、30年以上にわたって、社会 学や哲学などさまざまな分野の58冊以上の 本と数百本の学術論⽂を出版しました。 その中で、

    「ひとつのアイデア、ひとつの メモの価値は、⽂脈によってきまる」、そ して「その⽂脈は、必ずしもメモを採録し た⽂脈とは限らない」と気づき、メモの新 たな分類法を開発しました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3 Wikipediaのニクラス・ルーマンのページより
  6. © SAKURA internet Inc. ZettelKastenを最⼤限に活⽤するためには、いくつかのルールに従う 必要があります。 1. カード1枚につき1アイデアを記⼊ 2. カードの内容を完結させる

    3. カードは常に他のカードとリンクさせる 4. カードのリンクが何を意味するかを説明する 5. ⾃分の⾔葉を使う 6. 参考⽂献を残しておく 7. ⾃分の考えを加える 8. 構造を気にしない 9. 接続カードを追加する 10. アウトラインカードを追加する 11. カードを削除しない 12. 恐れずにカードを追加する
  7. © SAKURA internet Inc. ⼀時メモ Fleeting Notes 永続メモ Permanent Notes

    ⽂献ノート Literature Notes 構造ノート Structure Notes 索引ノート Index Notes 思いつき 書誌情報 ⽤語 実験結果 論⽂ ブログ 発表資料 考察 仮説 アイデア 要約
  8. © SAKURA internet Inc. 永続メモ Permanent Notes ⽂献ノート Literature Notes

    構造ノート Structure Notes ⽂献ノート Literature Notes 永続メモ Permanent Notes ⽂献ノート Literature Notes 永続メモ Permanent Notes 関連 関連 引 ⽤ 引⽤ 引 ⽤ 引⽤ 引 ⽤ 引 ⽤
  9. © SAKURA internet Inc. 永続メモ ⽂献ノート 永続メモ 画像はhttps://www.shigureni.com/ より 説明

    永続メモ なるほど!! こ れ が こ う だ か ら こういう事だよ
  10. © SAKURA internet Inc. 永続メモ ⽂献ノート 永続メモ 永続メモ こ れ

    が こ う だ か ら こういう事だよ 構造ノート 伝えたいこと 画像はhttps://www.shigureni.com/ より
  11. © SAKURA internet Inc. ZettelKastenは、個⼈の知識管理システムの1つです。 この個⼈の知識管理のことを、Personal Knowledge Management (PKM)といいます。 PKMとは、

    個⼈が⾃分にとって価値のある情報を整理し、理解しやすい形にまと め、⾃分の知識として組み込むためのフレームワークです。 このフレームワークには、知識を収集、分類、保存、検索、取り出し、 共有する⽅法が含まれます。 このPKMを⽤いたツールをPKMシステムといいます。
  12. © SAKURA internet Inc. OKMで広く知られているのは、⼀ 橋⼤学の野中教授らが提唱した 「SECIモデル」です。 個⼈が持つ知識や経験などの⾔語 化されていない暗黙知を、⾔葉や 図表で可視化された形式知に変換

    した上で組織全体で共有・管理し、 それらを組み合わせることでまた 新たな知識を⽣み出すフレーム ワークです。 共同化 表出化 連結化 内⾯化 暗黙知 暗 黙 知 暗黙知 形 式 知 形 式 知 形式知 形式知 暗 黙 知 共通の体験をするこ とで暗黙知を共有 (OJTなど) 暗黙知を⾔語化し形 式化(ドキュメント など) 他の形式知と組み合 わせて、組織の知識 を作成(社内ポータ ルなど) 形式知を⾃らのノウ ハウまたはスキルと して習得(学習)
  13. © SAKURA internet Inc. 実験ノートは、理化学研究所のSTAP細胞の件で重要性が再注⽬されま した。 そのため、研究者は国や⼤学などから改めて「実験ノートは正しく書 きましょう」と指⽰されています。 研究の不正が⾏われていないことを証明するために、実験ノートはい つでも提⽰できるようにしておかなければいけません。

    しかし、実験ノートの⼤半は紙のノートが使われており、検索や知識 の接続、共有といった⾯での課題があります。 また、実験ノートを正しく書くことは研究者への負担が⼤きいため、 正しく書けていない⼈が多いのが現状です。
  14. © SAKURA internet Inc. 私たちのチームでは、知識管理の利点を活 かしながら、実験ノートの課題を解決する ために、eurecoという実験ノートの概念を 持った知識管理ツールを開発しています。 このプロダクトは、さくらインターネット 研究所の研究員であり、理化学研究所の客

    員研究員、京都⼤学の特定助教としても活 躍されている熊⾕さんが、⾃⾝の持つ実験 科学分野への課題を背景に始まりました。 (さくマガの時はPenというプロダクト名でした。) さくマガより(https://sakumaga.sakura.ad.jp/entry/pen)
  15. © SAKURA internet Inc. eurecoとは eurekaとは、何かを発⾒・発 明したことを喜ぶときに使われ る。古代ギリシアの数学者・発 明者であるアルキメデスが叫ん だとされる⾔葉である。

    eureka record recordとは、ラテン語で 「re(再び)-cord(⼼)」を意味 する。つまり、想起する(call to mind)ために情報を残すこ とである。
  16. © SAKURA internet Inc. リーン・ スタートアップ アジャイル デザイン思考 低コストかつ短期間で価値 が検証できる最⼩限のプロ

    ダクトを作り、「検証によ る学び」を得るサイクルを 繰り返すとことで、失敗の 確率を下げながら画期的な 新製品を開発する⽅法で す。 変化に対応しながら、⼩さ な単位で継続的に価値を提 供し、顧客との協⼒を重視 するソフトウェア開発の考 え⽅または⽅法論です。ア ジャイル⼿法では、スクラ ムが有名です。 ユーザーを理解し、問題を 定義し、プロトタイプを作 り、仮説検証する⾮線形で 反復的なプロセスであり、 問題解決のマインドセット です。
  17. © SAKURA internet Inc. Customer Problem Fit Problem Solution Fit

    Solution Product Fit Product Market Fit eurecoの現在地
  18. © SAKURA internet Inc. • ZettelKastenを使うと、何気ないメモからも新しいアイデアが⽣まれるチャ ンスが広がる。 • 個⼈の知識(PKM)を育てながら、その知識を繋げることで、組織全体とし ての知識(OKM)も育てることができる。

    • 実験ノートは、研究者の思考過程や結果を記録し、その記録から新たな発⾒ を⽣み出す重要なツールです。 • 知識管理の利点を活かしながら、実験ノートの課題を解決するために開発し ている「実験ノートの概念を持った知識管理ツール」がeurecoです。 • eurecoを通して、知識と知識が繋がり、知識が⼈と⼈を繋ぎ、これまでにな い発⾒やアイデアが絶えず⽣まれることで、世界中が⼀緒にワクワクするよ うな連鎖を引き起こしたい。