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量子コンピュータを支える技術

 量子コンピュータを支える技術

第17回・アドテク部勉強会資料(2015/3/4)

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Shinichi Takayanagi

March 11, 2015
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Transcript

  1. 第17回アドテク部勉強会 量子コンピュータを支える技術 高柳慎一 2015/3/4 出典:http://www.dwavesys.com/d-wave-two-system

  2. イントロダクション

  3. 日経系雑誌に記事がチラホラ 出典:http://www.nikkei-science.com/201311_078.html 出典:http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20141119/274046 出典:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1202M_S4A510C1000000 3

  4. NHKでも取り上げられる 出典: http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp479.html 4

  5. 出典: http://jp.techcrunch.com/tag/d-wave-systems/ テッククランチでも紹介 5

  6. 関連:日立製作所(CMOSアニーリング) 出典: http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/022000173/ 6

  7. モチベーション for Me •キーワード:D-Wave •分析チームの論文読み会で •「Quantum Anealing for Clustering」 という論文を紹介

    •量子アニーリングというアルゴリズムのソフト ウェア実装(による機械学習への応用)に相当 •D-Waveはハードウェア実装にあたるのである程度 知っておきたい 7
  8. 量子コンピュータ: D-Wave

  9. 量子コンピュータについて •量子力学的な重ね合わせを用いて並列性を実現 •1980年代から研究自体はある •大きく分けて、以下の2つの方法論が存在 1:量子ゲートを用いる量子コンピュータ •古典ゲート(NOT ゲート等)を量子ゲートへ置換 2:量子アニーリングを用いる量子コンピュータ •超伝導回路を用いた量子力学的効果を利用 •組み合わせ最適化計算に特化

    9
  10. D-Wave Systems • 量子アニーリングをハードウェア的に実現す る装置「D-Wave」を研究開発 • カナダのベンチャー企業 • 創業者: Geordie

    Rose(Ph.D, CTO) • 社名の由来はd波超伝導から? • D-Waveの顧客 • ロッキード・マーティン (航空宇宙軍需産業) • Google, NASA, USRA (共同で量子人工知能研究所設立) 出典:http://www.dwavesys.com/our-company/leadership 10
  11. 開発の歴史と現状 •1999年:D-wave創業 •2007年:16 量子ビットのプロトタイプ発表 •2010年:128 量子ビットの商用機 D-Wave One発表 •2011年:動作検証論文を Nature

    に公表 •2013年:グーグル, NASA, USRAの3社が共同で設立し た量子人工知能研究所に512 量子ビットの D-Wave Two •2014年:Googleが量子アニーリングに基づくハード ウェア開発に着手(※) •2015年:1024量子ビット? (※)出典:http://googleresearch.blogspot.jp/2014/09/ucsb-partners-with-google-on-hardware.html 11
  12. D-Wave Two • 量子アニーリングを用いた512 量子ビットの量子コンピュータ • お値段約:10-20億円(推定) • 計算の心臓部となる超伝導回路 の部分は数cmのオーダー

    • 設備の大半は • 外部磁場遮蔽設備 • 温度調整用設備 • 消費電力の大半は冷却 出典:http://www.dwavesys.com/d-wave-two-system 12
  13. 量子アニーリング

  14. 量子アニーリングとは • 最適化問題を解くための1手法 • 下記の関数を最小にするような{ }を計算 • HはHamiltonianの略で、以下のように呼ばれる • 最適化の文脈:目的関数

    • 物理学の文脈:エネルギー • が ±1を取るようなビットに相当(|↑⟩, |↓⟩と書く。Qubit) • , { }を解きたい問題に応じて”うまく”決める = =0 + <,> 14
  15. 最適化問題とは •ある関数(目的関数、a.k.a. エネルギー)がある •その関数の最小値(最大値)と、その最小値(最 大値)を与える変数(最適解)を求める問題 •ここでは特に“組み合わせ最適化問題”が対象 •組み合わせ最適化問題の例 •巡回セールスマン問題 •ナップサック問題 15

  16. アニーリングを用いた最適化手法 •アニーリング=焼きなまし •目的関数の谷と山を乗り越えて最適解を探す •何を使って目的関数の”山”を乗り越えるかが異なる •シミュレーテッド・アニーリング •熱ゆらぎでエネルギーの山を乗り越える •最低温で最適解(…の可能性が高い) •量子アニーリング •量子ゆらぎでエネルギーの山を乗り越える •量子効果がない状態で最適解(

    …の可能性が高い) •量子効果は“横磁場“として表現される 16
  17. シミュレーテッド・アニーリング •温度の高低差を使って山を越える 低温 高温 山が低いほうがいろいろ探索できる 山が低いと今の場所にとどまりやすい 17 徐々に温度 を下げる エネルギー

    エネルギー 状態 状態
  18. 量子アニーリング •量子力学的なトンネル効果で山を乗り越える 18 徐々に量子効果を小さくする エネルギー 状態

  19. 量子アニーリングの仕組み •全ての状態の組み合わせはヒルベルト空間の元 •慣習的に|ψ(t)⟩と書く • |ψ(t)⟩= |α⟩, |α⟩=|↑↓…⟩など •例:2 ビットの場合 •

    |ψ(t)⟩=↑↑ |↑↑⟩+↑↓ |↑↓⟩+↑↑ |↓↑⟩+↑↑ |↓↓⟩ •|ψ(t)⟩ はシュレディンガー方程式に従って時間発展 (量子力学的な並列処理に対応) •徐々に量子効果を減らしていく •断熱定理により、ゆっくりと系を変化させた場合、各 時刻で最小エネルギー(最小固有値)に対応する状態 をたどって行き、最終的には最適化問題の解になる (…と期待される) 19
  20. D-Waveのアーキテクチャ

  21. D-Waveのアーキテクチャ • 量子アニーリングの ハードウェア実装 • 絶対零度付近で、エネ ルギーを最小にするよ うな状態(Qubitの組)が 実現される •

    アーキテクチャ的に無 理な密結合なモデルは、 複数のQubitから成る” セル”を作って、疑似的 に結合を増して対応 21 出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware
  22. D-Waveのアーキテクチャ •イジングスピン系のシミュ レーション •CPUは0.02Kに冷却された超 電導回路で構成 •「 D-Waveでのプログラミン グ 」とは回路間の結合(強 度){

    } { }を決めること 出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/D-Wave_Systems 22
  23. D-Waveのアーキテクチャ •イジングスピン •±1を取る磁性モデル •これが(量子)ビットに相当 •Z方向だと思っておく •イジングスピン系 •イジングスピンが格子上に配置 され互いに干渉しあう系 •ジョセフソン素子が使用される •1ジョセフソン素子=1Qubit

    出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware ジョセフソン素子で作られたQubit(超 伝導量子干渉磁束計(SQUID)). ニオブ (Nb)の超伝導で実現 23
  24. D-Waveのアーキテクチャ •超伝導電流の流れる向き(時 計・反時計)をそれぞれ |↑⟩ と |↓⟩ に対応させる •実際にどちら向きに回ってい るかは測定するまで不確定で あり、

    |↑⟩ と|↓⟩の 2 つの状態 の量子力学的な重ね合わせ 24 出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware ジョセフソン素子で作られたQubit(超 伝導量子干渉磁束計(SQUID)). ニオブ (Nb)の超伝導で実現
  25. ハードウェアの構成 出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/D-Wave_Systems = =0 + <,> 25 , |↑⟩ 出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware

  26. 最適化手順 in D-Wave 1. 解きたい最適化問題に合わせて、イジングモデ ルのパラメータ , { }を設定 2.

    { }をゼロにし量子効果(横磁場)を印加 3. 量子効果を弱くしつつ、 { }を増やす 4. 量子効果がゼロになった時のスピンの向きが、 最適解となっている(…と期待される) 5. 実際には実験を1000回程度繰り返して、もっと も良い値を「解」とみなす(らしい) (数秒オーダー) 26
  27. まとめ •量子アニーリングという物理学発祥のアルリズムがある •量子コンピュータ「D-Wave」はそのハードウェア実装 •既にGoogle/NASAは導入を決定(Googleは独自開発開始) •理論を理解したければ、物理/数学をがんばれ •機械学習方面への応用では、ソフトウェア実装も視野に 27

  28. 参考文献 • Boixo, Sergio, et al. "Evidence for quantum annealing

    with more than one hundred qubits." Nature Physics 10.3 (2014): 218-224. • T. Kadowaki and H. Nishimori, "Quantum annealing in the transverse Ising model", Phys. Rev. E58 (1988) 5355. • D. Aharonov, W. van Dam, J. Kempe, Z. Landau, S. Lloyd, and O. Regev, "Adiabatic Quantum Computation is Equivalent to Standard Quantum Computation • Choi, Charles, “Google and NASA Launch Quantum Computing AI Lab”. MIT Technology Review, 201” • E. D. Dahl, “Programming with D-Wave: Map Coloring Problem”, November 2013, SIAM J. Comp. 37 (2007) 166. • 西森 秀稔”量子アニーリングとD-Wave”情報処理学会論文誌 Vol.55 No.7 1–6 (July 2014) • 大関真之・西森 秀稔 "量子アニーリング"日本物理学会誌 66(2011)25 28