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量子コンピュータを支える技術

 量子コンピュータを支える技術

第17回・アドテク部勉強会資料(2015/3/4)

Shinichi Takayanagi

March 11, 2015
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Transcript

  1. モチベーション for Me •キーワード:D-Wave •分析チームの論文読み会で •「Quantum Anealing for Clustering」 という論文を紹介

    •量子アニーリングというアルゴリズムのソフト ウェア実装(による機械学習への応用)に相当 •D-Waveはハードウェア実装にあたるのである程度 知っておきたい 7
  2. D-Wave Systems • 量子アニーリングをハードウェア的に実現す る装置「D-Wave」を研究開発 • カナダのベンチャー企業 • 創業者: Geordie

    Rose(Ph.D, CTO) • 社名の由来はd波超伝導から? • D-Waveの顧客 • ロッキード・マーティン (航空宇宙軍需産業) • Google, NASA, USRA (共同で量子人工知能研究所設立) 出典:http://www.dwavesys.com/our-company/leadership 10
  3. 開発の歴史と現状 •1999年:D-wave創業 •2007年:16 量子ビットのプロトタイプ発表 •2010年:128 量子ビットの商用機 D-Wave One発表 •2011年:動作検証論文を Nature

    に公表 •2013年:グーグル, NASA, USRAの3社が共同で設立し た量子人工知能研究所に512 量子ビットの D-Wave Two •2014年:Googleが量子アニーリングに基づくハード ウェア開発に着手(※) •2015年:1024量子ビット? (※)出典:http://googleresearch.blogspot.jp/2014/09/ucsb-partners-with-google-on-hardware.html 11
  4. D-Wave Two • 量子アニーリングを用いた512 量子ビットの量子コンピュータ • お値段約:10-20億円(推定) • 計算の心臓部となる超伝導回路 の部分は数cmのオーダー

    • 設備の大半は • 外部磁場遮蔽設備 • 温度調整用設備 • 消費電力の大半は冷却 出典:http://www.dwavesys.com/d-wave-two-system 12
  5. 量子アニーリングとは • 最適化問題を解くための1手法 • 下記の関数を最小にするような{ }を計算 • HはHamiltonianの略で、以下のように呼ばれる • 最適化の文脈:目的関数

    • 物理学の文脈:エネルギー • が ±1を取るようなビットに相当(|↑⟩, |↓⟩と書く。Qubit) • , { }を解きたい問題に応じて”うまく”決める = =0 + <,> 14
  6. 量子アニーリングの仕組み •全ての状態の組み合わせはヒルベルト空間の元 •慣習的に|ψ(t)⟩と書く • |ψ(t)⟩= |α⟩, |α⟩=|↑↓…⟩など •例:2 ビットの場合 •

    |ψ(t)⟩=↑↑ |↑↑⟩+↑↓ |↑↓⟩+↑↑ |↓↑⟩+↑↑ |↓↓⟩ •|ψ(t)⟩ はシュレディンガー方程式に従って時間発展 (量子力学的な並列処理に対応) •徐々に量子効果を減らしていく •断熱定理により、ゆっくりと系を変化させた場合、各 時刻で最小エネルギー(最小固有値)に対応する状態 をたどって行き、最終的には最適化問題の解になる (…と期待される) 19
  7. D-Waveのアーキテクチャ • 量子アニーリングの ハードウェア実装 • 絶対零度付近で、エネ ルギーを最小にするよ うな状態(Qubitの組)が 実現される •

    アーキテクチャ的に無 理な密結合なモデルは、 複数のQubitから成る” セル”を作って、疑似的 に結合を増して対応 21 出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware
  8. D-Waveのアーキテクチャ •イジングスピン •±1を取る磁性モデル •これが(量子)ビットに相当 •Z方向だと思っておく •イジングスピン系 •イジングスピンが格子上に配置 され互いに干渉しあう系 •ジョセフソン素子が使用される •1ジョセフソン素子=1Qubit

    出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware ジョセフソン素子で作られたQubit(超 伝導量子干渉磁束計(SQUID)). ニオブ (Nb)の超伝導で実現 23
  9. D-Waveのアーキテクチャ •超伝導電流の流れる向き(時 計・反時計)をそれぞれ |↑⟩ と |↓⟩ に対応させる •実際にどちら向きに回ってい るかは測定するまで不確定で あり、

    |↑⟩ と|↓⟩の 2 つの状態 の量子力学的な重ね合わせ 24 出典:http://www.dwavesys.com/tutorials/background-reading-series/introduction-d-wave-quantum-hardware ジョセフソン素子で作られたQubit(超 伝導量子干渉磁束計(SQUID)). ニオブ (Nb)の超伝導で実現
  10. 最適化手順 in D-Wave 1. 解きたい最適化問題に合わせて、イジングモデ ルのパラメータ , { }を設定 2.

    { }をゼロにし量子効果(横磁場)を印加 3. 量子効果を弱くしつつ、 { }を増やす 4. 量子効果がゼロになった時のスピンの向きが、 最適解となっている(…と期待される) 5. 実際には実験を1000回程度繰り返して、もっと も良い値を「解」とみなす(らしい) (数秒オーダー) 26
  11. 参考文献 • Boixo, Sergio, et al. "Evidence for quantum annealing

    with more than one hundred qubits." Nature Physics 10.3 (2014): 218-224. • T. Kadowaki and H. Nishimori, "Quantum annealing in the transverse Ising model", Phys. Rev. E58 (1988) 5355. • D. Aharonov, W. van Dam, J. Kempe, Z. Landau, S. Lloyd, and O. Regev, "Adiabatic Quantum Computation is Equivalent to Standard Quantum Computation • Choi, Charles, “Google and NASA Launch Quantum Computing AI Lab”. MIT Technology Review, 201” • E. D. Dahl, “Programming with D-Wave: Map Coloring Problem”, November 2013, SIAM J. Comp. 37 (2007) 166. • 西森 秀稔”量子アニーリングとD-Wave”情報処理学会論文誌 Vol.55 No.7 1–6 (July 2014) • 大関真之・西森 秀稔 "量子アニーリング"日本物理学会誌 66(2011)25 28