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国立大学運営費交付金にまつわる一考察

tak%gibier
September 15, 2017

 国立大学運営費交付金にまつわる一考察

tak%gibier

September 15, 2017
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Transcript

  1. 自己紹介 tak%gibier (@t_gibier) ◦ グンマー出身 ◦ 某国立大学の中の人(職員) ◦ 大学時代は学生新聞を作っていたので、大学行政についてはここ15年くらいは関心を持って 見てきています。

    ◦ 情報、秘書、企画、国際、研究支援 など ◦ 某省で研修生やっていたことも1年ほど ◦ アメリカにいたことも通算2年ほど ◦ Montana, Colorado, Pennsylvania ◦ どこもやまのなか。グンマー民向けの環境!
  2. 運営費交付金 #とは 法令の規定:国立大学法人法 (同法第35条の規定により準用される独立行政法人通則法) ◦ 通則法第46条(読み替え後) ◦ 政府は、予算の範囲内において、国立大学法人等に対し、その業務の財源に充てるために必 要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することができる。 ◦

    2 国立大学法人等は、業務運営に当たっては、前項の規定による交付金について、国民か ら徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意し、法令の規定及び 中期計画に従って適切かつ効率的に使用するよう努めなければならない。 →国立大学としての業務を行うために必要な金額(の一部)として 政府から交付される金額
  3. 国立大学運営費交付金の算定方法 ◦ 運営費交付金=β・D(y-1) + β・α・E(y-1) ± S(y) ± T(y) +

    U(y) + F(y) – G(y) + H(y) + I(y-1) ± V(y) + J(y) – {K(y-1) ± W(y)} ◦ D: 大学設置基準に定める最低基準(ちゃんと保障。物価変動を反映) ◦ E: 設置基準を超える分の教育研究経費。「機能強化促進係数」の対象。 ◦ α: 「機能強化促進係数」。まあ要するにシーリングですよね ◦ β: 「教育研究政策係数」。要するに物価スライド ◦ S, T, U, F: 文科省が適当に調整するための数字 ◦ G: 学生納付金その他自己収入(基本的には定額)。 ◦ H: 特殊要因経費。退職金とかキャンパス移転とか ◦ I, J, K, V, W: 附属病院関係。H25以降交付されていないので関係なし。 ※(ちょっとまとめたけど)ほんとうにこう書いてあります! 出典:http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400039989.pdfより発表者作成 附属病院運営費交付金についてはhttp://report.jbaudit.go.jp/org/h27/ZUIJI8/2015-h27-Z8089-0.htm
  4. 一般会計における「存在感」 H29一般会計 ◦ 総額73.9兆円、裁量的経費に限れば14.6兆円 国立大学法人運営費交付金等 ◦ 10,971億円 ≒1.1兆円(H29) ◦ 一般会計の1.5%。裁量的経費に占める割合は7.5%

    ◦ 裁量的経費=シーリング対象 ◦ 渡し切りの予算です(ここ重要) ◦ 大学に渡したあとは大学の裁量 ◦ 実際の使途は大半が人件費(≒義務的経費)なのに裁量的経費扱い
  5. 海外主要大学の財政構造 アメリカの大学はやっぱりお金持ち ◦ 「最後は金目でしょ?」 ◦ もとい、やはり寄附金が大きい(特に有力私大) ◦ 公立大としては研究費の間接経費(+留学生の授業料)がメジャーな収入 ※10年前のデータなので注意 ◦

    アメリカの政府補助は減っている ◦ イギリスの授業料も上がっている ◦ NUS, SNUあたりはもっと予算が 増えているかも?(未確認) 出典:東京大学国際連携本部国際企画部(2007)世界の有力大学の国際化の動向 調査報告書 http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400009827.pdf
  6. 国立大学(の財政構造)の将来像 国からの収入増は期待できない ◦ 社会保障費の構造を抜本改善でもしない限りリソースがない 独自収入として何を増やすか ◦ 授業料? ◦ 家計負担の問題。授業料免除も考えると即増収にはならない ◦

    そもそも学生本人だけが高等教育の受益者なのか? ◦ 寄附金? ◦ 増えてはいるがどこまで増やせるか? 所得/税額控除?? ◦ 研究関連収入? ◦ 受託/共同研究、特許利用権、大学発ベンチャー企業のIPO… ◦ 大規模研究大学ならある程度は期待できるか? ◦ 間接経費も欲しいところではあるものの、基本的には政府資金なので期待薄。 ◦ 指定国立大学…?
  7. 「国立」大学の必要性/存在意義 大学の歴史 ◦ 国民国家(nation-state)より昔にさかのぼる ◦ むしろnationの概念こそが大学起源 ◦ 一方、近代以降は国家の枢要機関としての側面も(e.g.,旧帝国大学) ◦ Big

    scienceは国レベルでやらないとどうしようもない(cf.スプートニクショック) ◦ 研究だけでなく、教育もグローバル化が進む中で、「国」が大学を整備する ことの妥当性? ◦ WTOの4モード:サービスとしての高等教育 ◦ 資源がない国における人材養成? イノベーションの拠点? ◦ 国でない誰かが大学にお金を出すのか? ◦ もちろんかつてはそうだったわけですが
  8. 大学の将来形 ハイブリッドな組織としての大学? ◦ 研究 / 教育、教員 / 学生、public / private?

    ◦ 哲学 / Liberal Artsとしての自由七科? ◦ 「役に立たない」「国家に奉仕しない」学問としての哲学 ◦ 公共財としての大学 ◦ メタな存在としての「浮世離れ」「象牙の塔」 ◦ 「知」への奉仕体としての大学 ◦ 社会との摩擦を生み続けていくことにこそ意義がある? 「国立」大学…? ◦ 私学との「イコールフッティング」 ◦ 国のくびきから離れた「国立」大学
  9. おまけ:カタカナ文書記号セレクション ◦ 海大サキ推(サステイナブルキャンパス推進本部) ◦ 海大国広メ(国際広報メディア・観光学院/メディア・コミュニケーション研究 院/メディア・観光学事務部) ◦ 岡大グパ(グローバル・パートナーズ) ◦ 島大エス(エスチュアリー研究センター)

    ◦ 神大キャリ(学務部キャリア支援課) ◦ 信大先バ医(先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所(医学部)) ◦ 橋大イ研(イノベーション研究センター) ◦ 広大エクス(教育室エクステンションセンター) ◦ 広大アクセ(教育室アクセシビリティセンター) ◦ 広大病SPD(病院SPDセンター) ◦ 名大アイソトープ(アイソトープ総合センター) ◦ 名大シン(シンクロトロン光研究センター) ◦ 九大図e(附属図書館事務部eリソースサービス室)