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薄明~もえちんさん~
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大久保 崇
September 19, 2026
Business
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薄明~もえちんさん~
大久保 崇
September 19, 2026
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Transcript
薄明──。 薄 明 © 2025 TakashiO.LLC,Onomari All Rights Reserved 日の出前や日没後の、空がうっすらと明るい時間。
思わず写真に収めたくなるような淡い色が混じり合った美しい景色。 あなた自身、輪郭だけは掴めているのに、まだ言葉にならない想い。 それこそが、あなただけが内に秘めた、かけがえのない情景です。 わたしたちとの対話を通じて、その美しい情景を、 確かな言葉で「カタチ」にします。
誰かの役に立ちたい、応援したい 昔に比べて、「もえちんさんって、何をやっている人なんですか?」なん て聞かれることが増えました。たしかに、傍から見れば不思議なキャリアか もしれません。 看護師、地域の居場所であるカフェの店主、コミュニティナース、さらに は地域の盛り上げ事業やInstagramのコンテンツ企画など、今私はたくさ んの肩書きを持ちながら働いています。クリニックで働いていたかと思え ば、エプロンをつけてコーヒーを淹れ、ある日は街の中で地域の方の相談に 乗っている。 ジャンルの異なるいろんなことをしていますが、その活動の原点には、
2023年5月にオープンさせた、みんなの門出を応援するカフェ『cadode cafe』という場所があります。 きっかけは、自分自身の双子の子育て経験です。子育てが始まった頃、私 の時間はピタリと止まりました。右手にミルク、左手におむつ。自分の意志 でトイレに行くことさえままならない。「ママなんだから」という言葉を飲 み込んで、自分の「やりたい」に蓋をしていく。社会からポツンと切り離さ れたような孤独を感じていました。 だからこそ、かつての私と同じように縮こまっている人がいるなら、その 背中をさすってあげられる場所を作りたかった。「ここなら何を話しても大 丈夫やで」と言って、誰かの孤独の隣に座り、美味しいコーヒーとちょっと したお節介で心を温める。それが、私の本当にやりたいことでした。 肩書きもやっていることも本当にいろいろ。でも、私の中にあるものは、4 歳の頃に「看護師さんになりたい」と夢を語ったあの時から、一度だってブ レていません。 それは、「目の前の人の役に立ちたい」「誰かを応援したい」という、シン プルでちょっとお節介な想い。誰かが困っていたら放っておけない。頼られ たら「なんとかするよ!」って応えちゃう。気づけば関わる領域がどんどん 広がって、いろんな肩書きが増えていきました。 そうやって走り続けてきた結果が、今の「何をやっているかわからない私」 です。 なのに期待に応えるたび、私はすり減っていく 頼られ、誰かの役に立てるのが嬉しくて、パソコンを開けば方々から飛んで くる「もえちん、お願い!」の連絡に、自分のキャパシティなんてフル無視 で引き受けていました。「断る」という選択肢を捨て、無理をしてでも走り 続けること。それが誠実さだと、信じていました。 でも、そんな全力疾走は、一番大切な人を置き去りにしていました。 2025年、この『薄明』を創っている頃。子供を寝かしつけてから夜遅くに 仕事をして、夫と同じ家に住んでいるのに、二ヶ月ぐらいちゃんと会話もで きていない。そんな日々が続いていました。
ある日、夫と話をする機会があって、自分がどれだけ無理をしていたかに気 づかされました。私が「家族のため」「誰かのため」と思って走り続けてい た時間は、一番近くにいる人との時間を犠牲にしていたんです。 夫が私の状態を外側から見て、「このままじゃ持たないよ」と言葉にしてく れた時、張り詰めていた糸がプツンと切れたような気がしました。ああ、 私、限界だったんだ──。 自分がいなければ回らないと思っていた世界は、私が止まってもちゃんと回 る。その事実は少し残酷で、でも驚くほどに私を自由にしました。 「役に立つこと」でしか自分の価値を測れなかった私。でも、一番近くにい る人が求めていたのは、何でもこなせる完璧なヒーローのような私ではな
く、ただ一緒に笑ってご飯を食べる、等身大の私だったんです。 ぐちゃぐちゃな自分を、一度ほどいて そうして私は、全力疾走を止めることにしました。次のステージに進むため の準備として、あえて「サナギ」のように立ち止まる期間を設けてみよう と。 夫との話し合いを経て、私たちは「夫婦での時間をちゃんと取ろう」という 結論に至りました。子供たちがいるとなかなかデートもできないので、友達 に「今度預けさせてほしい」と周囲の力も借りるように。そうやって外に頼 り始めたことで、プライベートの中でも自然な支え合いが広がり、「みんな と一緒に生きている」という感覚がさらに深まっています。 以前の私は「人の役に立っていること」に自分の存在意義を感じていまし た。でも今は、「家族が幸せに暮らしていること」や「自分の心の豊かさ」 が一番のベースにあります。何かを提供しなくても、「ただここにいるだけ でいいんだ」と、自分の存在意義に対する感覚が大きく変わりました。 だから意識的に立ち止まり、自分をメンテナンスする時間を取ることにしま した。「フリーな日」を作り、誰とも会う予定が入っていない日に、自分と の対話の時間を設ける。家の中にグリーンを置き、夫と一緒に植物を育てる ようにもなりました。「新しい芽が出たね」「大きくなってきたね」と、一 緒に成長を見守る。そんなささやかな時間が、たまらなく愛おしい。 コミュニティナースを中心としたメンバーで開いている、若者向けの相談室 『ヌック』で対話をしている時、ふと気づいたことがありました。「話すっ て、心を編み直すことなんだな」って。 ぐちゃぐちゃに絡まって、どうしようもなくなってしまった自分。それを無 理に引っ張るのではなく、一度ゆるめて、ほどいてあげる。そしてもう一 度、今の自分に合う形に優しく編み直していく。 私が誰かに提供したかった価値、そして私自身に一番必要だったのは、この 「編み直し」の時間だったんです。 これまでは、「何でも役に立ちたい」という想いから、すべてのお願いごと を受けることに意味があると思っていました。でも、自分を大事にしなけれ ばと気づいた今、「断る」ことへの考え方も変わりました。
自分の糧になるもの、本当にワクワクするものはやるけれど、それ以外はや らない。自分のリソースを分散させすぎず、いい状態でいる努力をする。断 ることで、もっと「私にしかできないこと」が見えるはずだと、今は思って います。 「チャーミングな戦略家」としての私 立ち止まって自分を見つめ直す「サナギ」の時間を経て、少しずつ自分の現 在地が見えてきました。それは、以前とは全く別の誰かに生まれ変わったわ けではない。4歳の頃からの想いはそのままに、ただ少しだけ、自分との付 き合い方が上手になった私です。 私は、何でもこなせる完璧な人を目指すのをやめることにしました。その代
わりに選んだのは、「チャーミングな戦略家」として生きていくこと。 自分の資質や能力を知る「ストレングスファインダー」というテストで、私 は「戦略性」が上位に来るんです。周りからは「いつも人を巻き込むのが上 手」と言われますが、それは単なる勢いだけではありません。 周りの人に恵まれていることが大前提ですが、実は「誰がどんなトピックに 興味があるのか」を日々のコミュニケーションの中で意識し、常にアンテナ を張りながら情報をキャッチしています。もっとも、周りからは「もえちん が困ってるから助けないと」と思われているらしいのですが(笑)。 どうやったらうまくいくか、どう伝えたら届くか。そんな思考の部分を隠す のではなく、愛嬌と一緒に見せていく。それが「チャーミングな戦略家」と いう生き方です。 これからは、無理して走り続けるのではなく、心と体が喜ぶペースを戦略的 に選んでいきたい。たとえば、未来の展望として新しく始めようとしている 『薬膳グラノーラ』のブランドのように。季節の移ろいを感じながら、手軽 に自分を労り、心身の変化に目を向ける余白を持つ。 迷う日があってもいい。立ち止まる日があってもいい。夢のかたちが変わる ことだってあるかもしれない。 でも、それでいいんです。私が「揺らぎながらも、心地よく生きている姿」 を見せることで、「あ、そんな大人のかたちもアリなんだ」って、誰かが安 心してくれたら嬉しいから。 季節の移ろいを感じ、大切な人と食卓を囲む。そんな当たり前の幸せをこれ からは人生のメインディッシュにして生きていく。これが編み直された私、 『もえちん』です。 もえちん