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20180227 イノベーションハブひろしま 講演資料

20180227 イノベーションハブひろしま 講演資料

TAKASU Masakazu

February 27, 2018
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  1. 2005年ぐらいから、 イノベーションを生み出す新しい構造が 生まれ始めた 20世紀型(大組織主導,持続的,科 学技術的イノベーション) 21世紀型(小組織主導マスイノベー ション,破壊的,社会実装的) ・企画書/多数決先行 ・予算確保から始まる ・調査・計画重視

    ・実行部隊は外注 ・リーダーはゼネラリスト ・選択と集中 ・アウトプット先行 ・ヒットすれば予算はあとから ・動き、使えるもの重視 ・自分たちで開発 ・リーダーはエンジニア ・マスイノベーション
  2. イノベーションを支える投資モデルの進化 「スタートアップアクセラレータ」の誕生 ・企画書ベース ・数千万~数億円で始める ・リーダーはゼネラリスト ・数年単位の投資計画 ・⾧期にわたる計画 ・マーケットの見込みがあることをやる ・先に動くプロトタイプがある ・数百万円で始める

    ・リーダーはエンジニア ・大規模化(スケーリング)はあとから ・⾧期計画でなく、Agile(機敏) ・成功する見込みはわからない 既存の投資モデル スタートアップの投資モデル -多数決/合議制(数字ベース) -ヒット商品の後追い -今あるマーケットの開拓 -直感ベース -多産多死 -まるで漫画家やロックバン ドへの投資
  3. 代表的なアクセラレータ 「Yコンビネータ」 ・先に動くプロトタイプがある ・数百万円で始める ・リーダーはエンジニア ・大規模化(スケーリング)はあとから ・⾧期計画でなく、Agile(機敏) ・成功する見込みはわからない スタートアップの投資モデル プロトタイプあるものにしか投資しない

    投資金額は数百万(後にもう少し増えた) 創業者は伝説的なプログラマ 大規模化はあとから 起業前の会社に多く投資し、つぶれても気に しない Yコンビネータなどのやりかた 10年間で940社に出資、300社はすでに廃業 卒業生の合計時価総額は650億USドル うち8社は10億ドル以上、40社は1億ドル以上 著名な卒業生 Dropbox,Airbnb, Heroku, Docker, Stripe,Twitchなど Yコンビネータ成績(2015年当時) Yコンビネータについての数字は https://venturebeat.com/2015/08/27/y-combinator-startups-have-raised-7b-with-a-65b-total-valuation-8-are-1b-unicorns/
  4. Yコンビネータの創業者たち ロバート T モリス 世界で最初にインターネット上で増殖するウィルス(ワーム)を作り、アメリカ最初のサイ バー法逮捕者 その後グレアムと一緒にViawebを設立 ポール グレアム 伝説的なプログラマ

    作家としても有名で、著書に「ハッカーと画家」 世界で最初のサーバサイドサービスであるViawebを設立 (後にYahooに売却しYahoo Shoppingとなる) エンジニアのアイデア/プロトタイプにエンジニアが 投資する 「Yコンビネータ」は型無しラムダ計算で使われる不 動点コンビネータの名前 (そのプログラミング用語がわかる人たちの場所)
  5. 2012年ぐらいから、 オープンソースの生んだスタートアップ ムーブメントが、ハードウェアに及ぶ 「メイカームーブメント」 20世紀型(大組織主導) 21世紀型(メイカー主導) ・企画書/多数決先行 ・予算確保から始まる ・調査・計画重視 ・実行部隊は外注

    ・リーダーはゼネラリスト ・選択と集中 ・アウトプット先行 ・ヒットすれば予算はあとから ・動き、使えるもの重視 ・自分たちで開発 ・リーダーはエンジニア ・マスイノベーション
  6. ハードウェアイノベーションの民主化 アイデアのみで製造0のドリーマーは、Web のチュートリアルやキットが入手できる クオリティの足らないモノしか作れない プロトタイプメーカーに、 3Dプリンタなどのデジタル工作機械 発明はできるが量産できない大学教授 などに、量産請負サービスが 1000個単位での製造に必要なコストと マーケティングが、クラウドファンディン

    グで 宣伝・販売などのサプライチェーンが、 オンラインとSNSベースに -Seeedstudio 製 品 製 造 ロ ッ ト ソフトウェアに比べると設備も初期投資も必要なため、20世紀スタイルの研究開発(専門 家=大メーカー中心)だったハードウェアのイノベーションが民主化されつつある
  7. 20世紀的なprofessional 科学技術イノベーション的 21世紀的なMAKERS 社会実装イノベーション的 Idea/R&D/ Prototype 大学や大企業の研究所 インターネットやコミュニティで 学び、作る Produce

    会社の企画部が企画し、 技術部門が作る ホビイスト達がコミュニティで作 り、評価しあう Promotion 広告代理店を使って宣伝、 プロのセールスマンが売る クラウドファンディングなどで、 愛好家が発明を大きくする ソフトウェアと同じく、 ・大学の研究室で細々とやってた ・ガレージでやってた趣味が嵩じた 人たちが、スタートアップを起こしてハードウェア企業になる ガレージからのハードウェア
  8. ソフトウェア開発 ハードウェア開発 課題 開発環境 ・オープンソースのソフト ・パーソナルコンピュータ ・オープンソースのハード ウェア ・デジタル工作機械 プロトタイピングに関するハードウェア

    はオープンソース化されているが、量 産品の情報はオープン化されていない スケーリング (大規模化) ・クラウドコンピューティング ・EMS(製造請負企業) 発注できるようにはなったが、まだ「誰 でも手軽に」とは言えない スタート時の 資金調達 ・アクセラレータ ・アクセラレータ ハードウェアのほうがスケール時に資 金が必要 マーケティング ・SNS ・コミュニティ ・SNS ・コミュニティ ハードウェアのほうは、大規模になる ほど実店舗とのつきあいがある ハードウェアスタートアップは大規模化に課題がある ハードウェアのスタートアップは、ソフトウェア(Web)に比べて大規模化が難しい。 Dropboxは2017年にクラウドサービスから独自のサーバー群に移行したが、つまりそれぐらい 巨大化するまでクラウドコンピューティングの利用が可能だった。 比べてハードウェアは、数千個単位の量産から、手探りでEMS工場達とつきあわなければなら ず、大規模になるとオンライン販売以外も必要になる。 その要素を埋めるために深圳が登場してきた。 深圳が必要とされている部分
  9. 深圳独特のIP管理システム, 公開(Gongkai) 資料はMIT研究員のAndrew Bunnie Huang著「The Hardware Hacker」(2017)の、 Gongkai Innovation章から。同書籍は高須の翻訳にて2018年出版予定 知財は単一の所有者をもち、知財に対して金銭を

    受け取るのが西洋・日本のIPモデル 知財が商品に付随し単体で流通しない (モノを買うと知財がついてくる)のが深圳のIPモデ ル 知財とセットで販売される公板(GongBan) 1枚から、量産可能な数千枚単位まで販売され、製品 化に必要な部品リスト、ソフトウェア、データシートも添 付される チップセットメーカーの周辺にあるデザインハウスが製 造するほか、EMSが不正に流出させることもある。同様 の外装プラスチック 公模(GongMo)も存在する
  10. 中国IPシステムの光と影 $20 $19 $2 $0.6 いわゆる「アイデア一発製品」と中国コピーとの相性はと ても悪く、「クラウドファンディングに出されたアイデア 製品が、クラウドファンディングが終わる前に90%引きの 値段で中国で売られている」ことはよくある。 中国のIPシステムでは、見ただけでコピーされるようなも

    のはコピーされてしまう。 一方で、以下のようなハードウェアも深圳で製造されている ・オンラインに価値があり、ハードはそこまで差別化してな い (Amazon KindleやiPhoneとiTunesなど) ・ビジネスに価値がありハードは差別化してない (BtoBのハードウェア、前述日本交通のドライブレコーダ、 学校とパスがないと売れない教育用ハードウェア等) ・製造難易度が高く、少量をコピーするのはコストパフォー マンスに合わない(DJIのドローンなど) コピーされるのは、深圳の外で作った製品でも変わらない
  11. 代表的なプレイヤー 「深圳発→世界のイノベーション」Seeed 2008年~深圳で創業。創業者はEric Pan、社員もだいたい中国人 世界(主に欧米。近年まで中国語のサイトはなかった) ・オープンソースの開発ツールの販売 ・個人が自分のコンピュータで設計した基板データをオンラインで受注し、現物をおくる 「クラウド基板製造サービス」を展開 ・個人の発明家のアイデアを自社で請けおい、製造販売する 「世界から深圳へ」HAX

    2012年~シリコンバレーで創業。アメリカのVC SOSVの傘下。社員は世界中から集まってい るが欧米人が多い。深圳に開発ラボをもつ、世界最初のハードウェア専門アクセラレータ。 ・世界中からハードウェアの企画を持ち込むチームを集め、2000件の応募から半年ごとに 15組の起業家を選考 ・中国深圳のラボで111日間の開発を行う。
  12. 20世紀型の製品開発がすべてなくなったわけではなく、 「数値でわかる世界最高性能」を目指す、大企業中心の世界は今も存在しているが、 コンシューマが買うハードウェアは数値で判断されないものが増え続けている 20世紀には、そもそも大組織しかイノベーションを起こせなかったので、これまで注 目されてこなかった 伝統的な製品開発 科学技術イノベーション的 コミュニティベース 社会実装イノベーション的 team

    大きい組織が承認ハンコを集めな がらつくる 小さい組織がagileにつくる Focus 数値で評価され、機能的 感覚的でセンスの善し悪しで判断 される Customer 自組織のボスor会社外の消費者 自分たち Typical Product 機能的な製品や、 CCD、抵抗、マイクロチップといった コンポーネント ガジェットや、自分たちのための プロトタイピングツール
  13. 自動運転バス 開発チームに聞く • この自動運転バスには、LIDER(光の点で測距する技術)やカメラによるセンシング、人口知能による SLAM(自己位置推定、まわりの環境地図作成)など、最先端の技術が投入されている。もちろん何をどう 使っているか具体的には言えないけど。 • とはいえ、今の最先端の技術を導入しても、人間のように運転できるわけではない。本当に人間並みに なるのはいつかまだわからないし、「人間並み」というのがどういう状態かもまだもやもやとしている。 •

    この実験道路は本当に公道で、けっこう普通のクルマも走る。路上駐車もある。今も実験には気をつか う。 • もちろん実験なので、実際に道を走らせている時間よりも調査開発をしてる時間の方が長い。何度も来 ればそのうち動いているのを見られる、ぐらいのレベルだと思う。 • このためにバス停や、QRコードによって指定バス停に止まるシステムも作っていて、実際に動作する が、一般人を乗せて運行する予定はない。今のところVIPや正式な取材、そしてもちろん実験のために 使っている。 • 実験をやっていれば事故が起こることもあるし、手戻り(問題が生じて作業をやり直すこと)することもあ る。深センはそういう実験を、たとえば北京に比べるとやりやすいのがありがたい。 • 北京だと、「まず失敗しない」段階まで仕上げてからでないと実験さえできないが、深センでは現段階で の実験でできる。うまくいかないことまで含めて、実験から得られるものはたくさんある。
  14. 深圳の人口構成: (縦軸は合わせたけど、横軸は人口が違うので単位が違う、割合をみてください) 高齢者率2% 20代が大半、30代と合計して65%を占める 深圳2010: (出所)日本総研大泉啓一郎氏提供 (原出所)『広東省2010年人口普査資料』 0 500,000 1,000,000

    1,500,000 0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85-89 90-94 95-99 100+ 男性 (千人) (歳) 0 500,000 1,000,000 1,500,000 女性 (千人) 深圳男 深圳女 東京男 東京女 60歳ライン 20歳ライン 東京2015: 統計メモ帳 https://ecitizen.jp/Population/PrefPyramid/13
  15. 深圳を舞台にするほとんどのプレイヤーが多国籍 ・Seeedの従業員はほとんどが中国人だが、資料やWebサイトはほぼ英語で、顧客は欧米人。 (最近、Seeed Japanとして日本企業も立ち上げ、日本語サイトも) ・メイカーフェア深圳の運営は、日本人の僕をはじめ、台湾人や欧米人がいる ・Makeblock,DJIほか深圳発の世界企業も同じ。海外の留学帰りも多い。 HAXは世界中から従業員が集まっている。リーダーはフランス人、ほかアメリカ、イギリス、 最近は中国からのスタートアップが多いので中国人が増えてきた ・中国の半国営企業とか、中国だけを市場にしてる会社とは、同じ都市でも違う文化圏 海外と働く会社は海外ルールに合わせている

    ・欧米のスタートアップ対象の製造請負工場ツアー(深圳/大阪/京都)に行くと、深圳ではど こも英語で 「メインビジネス/それを支えるプロセス/受注実績」 の資料と、見積もりがそ の場で出てきて、資料はコピーしてかまわない。 ・日本では「社⾧が挨拶を日本語で語る資料の英語吹き替え」みたいな資料が出てきて、見 積もりがその場で出てこない。資料もコピーできない。 ・日本でも海外ルールで説明できる会社は世界から受注ができている
  16. 深圳との関係の作り方 まず「来る」 ー決定権者のある人が ー深圳で見たもので、それまでの行動を具体的に変えるつもりで (たとえばまた来るとか、深圳の人間を呼ぶとか) 自分の判断で具体的に何かを始める ーKickstarterの製品を自腹で買う、他人に勧める ーファンのイベントを日本で開く など 具体的な仕事にしていく

    ー自分たちにしかできないこと(たとえば公立学校での教育がらみで実験など) は、深圳の人たちも興味を持つ 深圳に限らず、中国のイノベーターは日本に興味を持っているが、 「勉強になりました」だとそのあとが続かない 大事なのは「社会実装すること」
  17. 2冊の著書 世界ハッカースペースガイド(2018年) 好きなものづくりをする人たちが集まる「ハッカースペース」を、世界14カ 所、イベントのついでに訪ねて書いた アメリカ ニューヨーク、サンフランシスコ ヨーロッパ パリ2カ所、コペンハーゲン(デンマーク) アジア バンコク2カ所、チェンマイ(タイ)

    台北、台南(台湾) シンガポール 中国 深圳 メイカーズのエコシステム (2016年) 今日のプレゼンの内容、好きなものづくりをする人が、どうやってはじめ、 どうやって仲間を増やし、お金を集め、世界をメイカー達がより便利で楽 しいものにしていくかの様子が書かれたもの。 今日プレゼンした藤岡淳一社長の章、山形浩生さんの解説もある。