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線形代数学入門講座 第8回スライド

TechmathProject
September 04, 2024

線形代数学入門講座 第8回スライド

てくますプロジェクトで行った線形代数学入門講座の第8回スライドです。
実施:2024/08/26

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September 04, 2024
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Transcript

  1. 線形代数学 ⑧行列の対角化 対角行列とべき乗 行列の積は複雑に定義されていたので、𝑛 乗の計算も簡単ではありません。 −1 −2 3 4 2

    = −5 −6 9 10 , −1 −2 3 4 3 = −13 −14 21 22 , ⋯ 対角行列のときは、 𝑛 乗の計算は簡単です。 1 0 0 2 2 = 1 0 0 4 , 1 0 0 2 3 = 1 0 0 8 , ⋯ 対角行列のべき乗の計算を利用して、一般の行列のべき乗を考えていきます。
  2. 線形代数学 ⑧行列の対角化 行列の対角化 行列 𝐴 に対して、𝑃−1𝐴𝑃 = 𝐵 となるような正則行列 𝑃

    と対角行列 𝐵 を 求めることを行列 𝐴 の対角化といいます。 (例) 行列 𝐴 = −1 −2 3 4 に対して、 𝑃 = −1 −2 1 3 , 𝐵 = 1 0 0 2 とすると、 𝑃 = −3 −2 1 1 であり、 𝑃−1𝐴𝑃 = −3 −2 1 1 −1 −2 3 4 −1 −2 1 3 = 1 0 0 2 = 𝐵 なので、 これは行列 𝐴 の対角化である。
  3. 線形代数学 ⑧行列の対角化 正則行列 𝑃 の求め方 𝑛 次正方行列 𝐴 の対角化 𝑃−1𝐴𝑃

    = 𝐵 の 𝑃 はどのように求めるのでしょうか。 ベクトル 𝒗1 が行列 𝐴 の固有値 𝜆1 に属する固有ベクトルであるとき、 固有ベクトルの定義から、𝐴𝒗1 = 𝜆1 𝒗1 となりました。 固有値 𝜆𝑖 と固有ベクトル 𝒗𝑖 で1次独立なものが 𝑛 個とれたとき、 それらを横に並べた行列 𝒗1 ⋯ 𝒗𝑛 は正則であり、これを 𝑃 とすれば、 𝐴𝑃 = 𝐴𝒗1 ⋯ 𝐴𝒗𝑛 = 𝜆1 𝒗1 ⋯ 𝜆𝑛 𝒗𝑛 = 𝑃 𝜆1 0 0 0 ⋱ 0 0 0 𝜆𝑛 なので、 これが行列 𝐴 の対角化の正則行列 𝑃 となります。
  4. 線形代数学 ⑧行列の対角化 正則行列 𝑃 の求め方 (例) 行列 𝐴 = −1

    −2 3 4 に対して、 −1 1 は固有値 1 に, −2 3 は固有値 2 に属する固有ベクトルであった。 −1 1 と −2 3 は1次独立なので、 𝑃 = −1 −2 1 3 , 𝐵 = 1 0 0 2 とすると、 𝑃−1𝐴𝑃 = 𝐵 なので、これは行列 𝐴 の対角化である。
  5. 線形代数学 ⑧行列の対角化 対角化可能性 𝑛 次正方行列 𝐴 はいつでも対角化できるのでしょうか? 𝐴𝑃 = 𝐴𝒗1

    ⋯ 𝐴𝒗𝑛 = 𝜆1 𝒗1 ⋯ 𝜆𝑛 𝒗𝑛 のようできるためには、 行列 𝐴 の固有値 𝜆𝑖 と固有ベクトル 𝒗𝑖 で1次独立なものが 𝑛 個なければなりません。 各固有値の固有空間からとれる1次独立なベクトルの数はその次元以下なので、 をみたすことが、 𝐴 が対角化できるための条件になります。 の固有値 (固有空間の次元の和が 𝑛 と一致する) ෍ 𝜆∶𝐴 dim(𝑊(𝜆; 𝐴)) = 𝑛
  6. 線形代数学 ⑧行列の対角化 対角化可能性 (例) 行列 𝐴 = 1 0 0

    1 に対して、𝐴 の固有値は 1 のみであり、 dim(𝑊 1 ; 𝐴 ) = dim 𝑐1 1 0 + 𝑐2 0 1 ∈ ℝ2 𝑐1 , 𝑐2 ∈ ℝ = 2 なので、 𝐴 は対角化可能である。 行列 𝐵 = 1 2 0 1 に対して、𝐵 の固有値は 1 のみであり、 dim(𝑊 1 ; 𝐵 ) = dim 𝑐 1 0 ∈ ℝ2 𝑐 ∈ ℝ = 1 なので、 𝐵 は対角化不可能である。
  7. 線形代数学 ⑧行列の対角化 対角化の応用 行列の対角化はべき乗の計算に利用できます。 行列 𝐴 が 𝑃−1𝐴𝑃 = 𝐵と対角化できるとき、𝐴𝑛

    = 𝑃(𝑃−1𝐴𝑃)𝑛𝑃−1 = 𝑃𝐵𝑛𝑃−1 (例) 行列 𝐴 = −1 −2 3 4 に対して、 −3 −2 1 1 𝐴 −1 −2 1 3 = 1 0 0 2 と対角化できるので、 𝐴𝑛 = −1 −2 1 3 1 0 0 2 𝑛 −3 −2 1 1 = −2𝑛+1 + 3 −2+1 + 2 3 ∙ 2𝑛 − 3 3 ∙ 2𝑛 − 2
  8. 線形代数学 ⑧行列の対角化 対角化の応用 2次形式という2次の項のみでできた式 (例:𝑥2 + 4𝑥𝑦 − 2𝑦2) を

    標準形という同じ文字の2次の項のみでできた式 (例:2𝑥2 − 3𝑦2) にする 変数変換を考えるときにも対角化が利用される。 (例) 𝑥2 + 4𝑥𝑦 − 2𝑦2 = 𝑥 𝑦 1 2 2 −2 𝑥 𝑦 と表すことができ、 2 1 1 −2 −1 1 2 2 −2 2 1 1 −2 = 2 0 0 −3 なので、 𝑥′ 𝑦′ = 2 1 1 −2 −1 𝑥 𝑦 と変数変換すると、2𝑥′2 − 3𝑦′2 = 𝑥2 + 4𝑥𝑦 − 2𝑦2
  9. 線形代数学 ⑧行列の対角化 まとめ ・行列 𝐴 に対して、𝑃−1𝐴𝑃 = 𝐵 で対角行列にすることを対角化という。 ・対角化に用いる行列は固有ベクトルを横に並べたものである。

    ・対角化可能の条件は固有空間の次元の和が全体の次元と等しいことである。 ・行列の対角化は、行列のべき乗を計算するときなどに利用できる。