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TKIP
April 10, 2019

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  1. 小売 事業者 小売 事業者 JEPX 卒FITとは 固定価格買取期間後の新たなマーケット 固定価格買取期間(10年間)を終えた再生可能エネルギー由来の電力を卒FITと称している。 従来の買取主体であったTSOは買取義務期間を終えることから、余剰発電を売電したい発電事業者はTSOに替わる買取主体の 小売事業者を選定する必要がある。2019年秋より、最初期のFIT対象分の買取期間が終了することから、動向が注目されている。

    1 卒FITの買取主体は過半が小売事業者となり、従来のFIT価格より大幅に低い価格となる見込み。 また、卒FITの環境価値は買取事業者に帰属することになり、CO2 フリーを付加価値とすることができる。 FIT 卒FIT TSO FIT発電 事業者 卸売 JEPX TSO FIT発電 事業者 相対価格で買取 買取価格 48円/kWh(2009年認定FIT) 買取価格 8円/kWh(関西電力) 固定期間 10年間 買取期間 規定なし 環境価値 なし (賦課金負担の国民に帰属) 環境価値 あり (買取負担の小売事業者に帰属)
  2. 買取価格の低下がもたらす変化 自家消費の価値向上 太陽光パネルを設置した家庭は電力の生産者(Producer)であると同時に消費者(Consumer)でもある、プロシューマーという ポジションである。プロシューマーの経済的メリットを考える上で、買取価格の低下は売電のインセンティブの低下を示すものであり、 卒FITにおいては発電電力の自家消費の価値が向上していくものと考えられる。 2 買取価格が系統価格より低くなる卒FITでは、系統からの買電量の抑制が経済的メリットを生む。 従来の売電量の最大化よりも、自家消費の最大化に価値が移行することが予想される。 売電 600kWh

    買電 100kWh 発電 800kWh 消費 300kWh 自家消費 200kWh 売電 520kWh 買電 20kWh 発電 800kWh 消費 300kWh 自家消費 280kWh 従来の考え方/売電の最大化 新たな価値/自家消費の最大化 FIT 卒FIT 売電 600kWh × 48円/kWh 買電 100kWh × 24円/kWh 差引 +26,400円 売電 600kWh × 8円/kWh 買電 100kWh × 24円/kWh 差引 +2,400円 売電 520kWh × 48円/kWh 買電 20kWh × 24円/kWh 差引 +24,480円 売電 520kWh × 8円/kWh 買電 20kWh × 24円/kWh 差引 +3,680円 メリット 小 メリット 大 *FIT価格 48円/kWh、新買取価格 8円/kWhで試算
  3. 卒FIT時代の蓄電池ビジネス 自家消費デバイスとして創出された価値 通常、家庭において太陽光パネルの売電と自家消費の振り分けを恣意的に操作することはできず、自家消費量を底上げするためには、 太陽光パネルの発電時間帯での負荷集中(タイムシフト)、蓄電池による昼間の余剰充電+夜間放電消費等の措置が必要となる。 なお、蓄電池の活用も昼間の発電分を夜間に移行させていることから、タイムシフトの一種といえる。 3 自家消費の最大化という卒FITの価値創出、系統途絶時の電力備蓄の冗⾧性価値より 蓄電池の価値が相対的に高まり、余剰買取+蓄電池販売という新たなビジネスが拡大する。 電力利用のタイムシフト 洗濯機の昼間運転、エコキュートの昼間運転等、

    太陽光発電時間帯に電力利用を集中させる。 0時 24時 利点 欠点 追加的な投資なく、太陽光発電の 自家消費比率を向上できる。 時間帯別料金制の場合、 気象条件により運用を変える必要がある。 0時 24時 通常の負荷 電力利用 カーブ 太陽光発電 自家消費 系統買電 系統買電 余剰売電 電力利用の タイムシフト 夜間利用の 抑制 一般的に、家庭の電力利用は午前や夕方に増加、 太陽光発電の活発な昼間に減少する傾向にある。 利点 欠点 昼間の太陽光余剰売電が最大化される。 夜間の割安な電気料金を利用できる。 卒FITにおいて、自家消費が伸びず、 太陽光発電のメリットが抑制される。 蓄電池(太陽光のタイムシフト) 0時 24時 自家消費 自家消費 蓄電池充電 蓄電池放電 自家消費 系統買電 太陽光の夜間利用 蓄電池により昼間充電、夜間放電することで、 太陽光発電を最大限自家消費に回す。 利点 欠点 卒FITのメリットを最大化できる他、 災害時の電力備蓄に活用できる。 蓄電池への追加投資が発生する。 太陽光の充電
  4. VPP市場の構造 世界でも珍しい2階層のアグリゲーション構造 日本のVPP市場は各家庭の蓄電池の充放電制御を行うリソースアグリゲーターと、それら束ね、まとまった電力量としてサービスを提供する アグリゲーションコーディネーターの2階層のアグリゲーターを置く、世界でも珍しい構造としている。これは、旧一電が顧客基盤はあるものの、 接点自体は乏しく、リソースアグリゲーターとしての適正に欠けるため、制度設計時の政治的圧力により決定されたもの。 5 2階層により機器の販売・制御をしなくても、「リソースを集める」だけの機能を存在させることができ、 このポジションをTSOを含めた旧一電が参画するものと想定される。 TSO 調整力

    インバランス回避 供給力 小売事業者 再エネ 発電事業者 出力抑制回避 電気料金削減 再エネの有効活用 需要家 ユーザー 創出価値 発電 送配電 小売 需要家 サービス 提供 Resource Aggregator Resource Aggregator Resource Aggregator Aggregation Coordinator 調整発動指示 自家発電設備 空調 照明 生産設備 エコキュート CGS 太陽光 蓄電池 電気自動車 調整指令・依頼 充放電のコントロールは電力需給の同時同量を緩和し、 それにより、発電から送配電、小売、需要家に至るまで 様々な価値が創出される。 VPPリソース リソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、 ユーザーと直接取引を行うプレイヤー。 旧一電は顧客接点が弱いため、このポジションで VPPスキームに参画する見込み。 アグリゲーションコーディネーターからの指令に基づき、 需要家とVPPサービス契約を直接締結し、 VPPリソースの制御を行うプレイヤー。 蓄電池等の商材接点のある主体が参画。
  5. 卒FITの影響① 電源調達から捉えた卒FIT 電源調達として捉えると、従来のFIT電源の調達価格は回避可能費用であり、本質的にJEPXでの調達と同義のため、需給バランスや 燃料価格による価格変動リスクを分散できていなかった。卒FITでは、調達価格の固定化に加え、環境価値の入手が可能となり、 電源調達としてはメリットが大きな制度といえる。 6 かちおいr 卒FIT電源の調達はFIT電源に比して、小売事業者にとってはメリットとなる要素がある。 ただし、他電源に比べると、出力が不安定であり、決して低廉ではない価格水準である。 FIT電源の特性

    卒FIT電源の特性 JEPX価格 FIT電源 調達価格 JEPX価格 卒FIT電源 調達価格 円/kWh 円/kWh FIT電源の調達価格は回避可能費用であり、 JEPXと同様の変動を示すため、調達リスクの 分散効果はない。 FIT電源の環境価値は賦課金を負担する 国民に帰属するため、電源調達した小売 事業者はCO2 フリーを訴求できなかった。 現行の回避可能費用と同程度(8円程度)と、 低廉ではないものの、固定価格での調達で、 電源ポートフォリオのリスク分散効果を得られる。 卒FIT電源の環境価値は買取(調達)を行う 小売事業者に帰属するため、CO2 フリー電力 という新たな付加価値を訴求できる。
  6. 卒FITの影響② グリッドから捉えた卒FIT 卒FITは経済的メリットの観点から、発電電力の系統への逆潮流が抑制され、自家消費が増加することが予想される。(オフグリッド化) 逆潮流の減少は系統の安定化に作用する一方、系統電力需要の減少を意味する。これは、逆潮流していたFIT電力が不特定多数の 需要家に再分配(販売)される際に回収できていた託送収益の減少を示すものであり、事業の根幹を揺るがす事態である。 7 かちおいr 旧一電にとって、自家消費の拡大、蓄電池の普及はグリッドに依拠したビジネスモデルを揺るがす。 特に、託送収益の減少はミッシングマネー問題を発生する。 FIT電源のグリッド利用

    卒FITに伴うオフグリッド化 FITの余剰売電分はグリットを介して、他の 不特定の需要家に販売される際に、託送 収益を計上できる。 中間期等のグリッド低負荷時に太陽光余剰が グリッド需要を上回り、系統電力品質の維持が 困難になっている。 発電電力が自家消費の増加分が、グリッドを 介さないため、FITに比して託送収益が減少し、 原価回収が困難になる。(ミッシングマネー) オフグリッド化により、出力の不安定な再エネの グリッド逆潮流が相対的に減少するため、系統 電力品質の安定化に作用する。 BER 日需要 余剰売電 60 40 日発電量 90 日需要 100 BER 90 日需要 100 託送収益 190 託送収益 140 余剰売電 10 自家消費 10 100 70 日需要 日発電量 自家消費 60 100 70 40
  7. 蓄電池に関する新電力と旧一電のスタンスの違い BaaS vs 仮想蓄電 卒FITは自家消費・オフグリッド化の確保が論点になることから、換言すれば蓄電池マーケットの様相を呈することが予想される。 この蓄電池の扱いを巡り、新電力と旧一電で大きくスタンスが異なっている。新電力は蓄電池を無償設置し、充放電に課金するBaaS (Battery as a Service)を志向するとみられるが、旧一電はグリッド活用に拘った「仮想蓄電」のコンセプトを構想している。

    8 かちおいr 旧一電にとって、グリッドの電力流通を抑制する蓄電池の普及拡大が最悪のシナリオ。 仮想蓄電は販売電力量の減少を生じるものの、「蓄電池よりは許容できる」という思想。 新電力/BaaS - Battery as a Service 旧一電/仮想蓄電サービス Grid 課金 (電力小売) 余剰買取 (卒FIT) 課金 (BaaS) 蓄電池無償設置 電力小売販売+卒FIT余剰の買取とセットで、蓄電池を 新電力の資産として家庭に無償設置。蓄電池からの 自家消費分に課金を行い、設置費用を回収・収益化する。 ユーザー メリット 新電力 メリット 蓄電池の導入費用が不要。 災害時の電力を確保できる。 電力小売とBaaSのクロスセルで、収益性が高い。 安定的な電源調達、VPPリソースの保有が可能。 顧客との継続接点が持てる。 新電力 資産 毎月、一定の手数料で余剰分をグリッドに一時預かりし、 任意の時間帯に同量を取り出せるスキーム。 タイムシフトにより、グリッド全体を蓄電池と見立てたコンセプト。 ユーザー メリット 旧一電 メリット Grid Grid 課金 (電力小売) 計量 計量 サービスで規定される一定の上限内の発電量は 仮想的に全て自家消費として賄えるため、 卒FITの経済的メリットを最大化できる。 単純に蓄電池導入は託送ミッシングマネーが 発生するが、仮想蓄電は定額フィーを受領できる ことから収益棄損を抑制できる。 Daytime Nighttime