1977-2020 年の『科学教育研究』のレビュー ―研究方法に着目して―/A Review of “Journal of Science Education in Japan” in 1977-2020: How have we been researching?

大会名：日本科学教育学会第46回年会（愛知大会）
開催日：2022年9月16〜18日
発表日：2022年9月18日

Transcript

1. 1977-2020年の『科学教育研究』のレビュー ―研究方法に着目して― 2022 / 09 / 18 日本科学教育学会第46回年会 13:20-13:40 ◦雲財寛*1，荒谷航平*2，大谷洋貴*3，小川博士*4，川崎弘作*5，下平剛司*6，田中秀志*7 中村大輝*8，長沼祥太郎*9，西内舞*10，藤原聖輝*8，三浦広大*8，渡辺理文*11 *1東海大学, *2静岡大学教育学部附属島田中学校, *3日本女子大学, *4白鴎大学, *5岡山大学 *6国立研究開発法人水産研究・教育機構, *7東京理科大学, *8広島大学, *9九州大学 *10国立教育政策研究所, *11北海道教育大学
2. 本研究の概要 2 本研究の目的 1977～2020年の『科学教育研究』（1,109編）において，どのような研究方法が用いられてきたのかを明らかにする 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 割 合 西暦 理論的・哲学的研究 実証研究（自然） 量的研究全般 質的研究全般 1988年以降から， 上位：実証研究（人間・社会） （量的研究・質的研究） 下位：理論的・哲学的研究 実証研究（自然） 傾向が固定化している
3. 研究の背景 3 日本の科学教育研究で中心的な役割を果たしてきた『科学教育研究』は，何を，どのように明らかにしてきた のだろうか．荒谷ら（2022）では，『科学教育研究』の創刊から2020年までに掲載された論文のテーマや方法 の変化を量的に明らかにすることを目的とした研究に取り組んでいる． この目的を達成するために，荒谷ら（2022）は以下の２つの研究課題を挙げている 課題①：『科学教育研究』では，どのような研究テーマが取り扱われてきたのか． 課題②：『科学教育研究』では，どのような研究方法が用いられてきたのか． 課題①では荒谷ら（2022）において焦点化しているため，本研究では課題②に焦点を当てる．
4. 研究の方法 4 •研究の方法 『科学教育研究』の第１巻First号～第44巻４号に掲載された論文を対象にレビューした •対象論文 『科学教育研究』の1977～2020年の全論文のうち， 「研究論文」，「資料論文」，「総説・展望」を対象とした •対象論文数 1,109編 ※除外した論文種別 ー巻頭言 ープラザ ー学会関係の記事や報告，論考（追悼文や書評を含む） ー学習指導要領改訂の解説文 ー分類不可のデータ（文献目録や中扉など）
5. コーディングフローと分類カテゴリー 5 ※２人ペアで分担し， 割れたら協議によって決定。 ※複数コーディングを認める。
6. コーディングのイメージ 6
7. 結果：1977-2020年の研究方法（全1,109編） 7 分類カテゴリー（重複含む） 割合 1.理論的・哲学的研究 16.7% 2.実証研究（自然） 9.2% 3.実証研究（人間・社会） 量的研究 54.3% 3.1実験 1.1% 3.2準実験 28.7% 3.3観察 21.7% 3.4その他（量） 2.8% 質的研究 45.6% 3.5歴史学的 4.1% 3.6比較教育学的 5.6% 3.7現象学・解釈学的 31.0% 3.8その他（質） 4.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 割 合 西暦 理論的・哲学的研究 実証研究（自然） 量的研究全般 質的研究全般
8. 1. 理論的・哲学的研究 8
9. 2. 実証研究（対象：自然） 9
10. 3.2 実証研究（対象：人間・社会）準実験 10
11. 3.7 実証研究（対象：人間・社会）現象学・解釈学 11
12. 3.4 実証研究（対象：人間・社会）量その他 12
13. 3.9 実証研究（対象：人間・社会）質その他 13
14. 考察 14 •大カテゴリーで見るならば・・・ 1988年以降 上位：実証研究（量的），実証研究（質的） 下位：理論的・哲学的研究，実証研究（自然） 傾向が固定化している •小カテゴリーで見るならば・・・ ー量的研究：準実験研究，観察研究 ＞ 実験研究 ー質的研究：現象学的・解釈学的アプローチ ＞ 歴史学的アプローチ，比較教育学的アプローチ
15. 本研究の成果 15 １．研究方法の分類カテゴリーを考案したこと この分類カテゴリーは『科学教育研究』における主要な研究方法を捉えるうえで参考になる ２．研究動向を振り返るうえでの基礎資料を提供できたこと 「『科学教育研究』はこれまで我が国の科学教育研究にどのような役割を果たしてきたのか」 （吉岡，2018）という問題について，定量的な知見を提供することができた
16. 本研究の限界 16 •「なぜこのような傾向がみられるのか」という要因については言及できていない ーその当時の学会や編集委員会の編集方針，特定の方法論の台頭・衰退など，様々な社会的要因が考えられる ー特定の要因について指摘することは現時点で困難であると考えたから ーより詳細なデータを収集したうえで，研究方法の変遷の要因について多角的に検討していく必要がある •意図していないことや限界点など ー分類カテゴリーは今後の科学教育研究で用いられる研究方法を狭隘化させることを意図していない ー大髙（2001）が指摘するように，科学教育研究では多様な研究方法が用いられるべき ー日本科学教育学会の刊行物には『日本科学教育学会年会論文集』や『日本科学教育学会研究会研究報告』 も存在する．日本科学教育学会以外の学会誌でも科学教育研究に含まれる研究も当然存在する ー日本の科学教育研究の一側面を捉えたにすぎない
17. 参考文献 17 荒谷航平・雲財寛・大谷洋貴・小川博士・川崎弘作・下平剛司・田中秀志・中村大輝・長沼祥太郎・西内舞・藤原聖輝・三 浦広大・渡辺理文（2022）：1977-2020年の『科学教育研究』のレビュー：研究テーマに着目して, 日本科学教育学会全国 大会論文集, 46, 印刷中. Lederman, N. G., & Abell, S. K. (Eds.). (2014). Handbook of research on science education, volume II (Vol. 2). Routledge. 日本教育方法学会（2014）：教育方法学研究ハンドブック，学文社. 日本教科教育学会（2017）：教科教育研究ハンドブック―今日から役立つ研究手引き―，教育出版. 大髙泉（2001）：科学教育研究における問題設定, 科学教育研究, 25, 5, 293–294. 吉岡亮衛（2018）：41年の歴史をもつ科学教育研究, 科学教育研究, 42, 1, 1–2.