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ティール組織を読んでSIerを思う。

u-tanick
September 24, 2018

 ティール組織を読んでSIerを思う。

身内の勉強会用にまとめた資料。ティール組織(書籍やWebの情報)を見聞きして考えたことをまとめたもの。

u-tanick

September 24, 2018
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  1. ティール組織について詳しく知りたい方へ • 「ティール組織について」は、スライドに必要十分なレベルでのみまとめてあるので、興味を持った方や、 もう少し詳しく知りたい方は、下記の書籍や記事をお読みください。 • Book • ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

    • https://www.amazon.co.jp/dp/B078YJV9ZW/ • Blog • ティール組織とは?3つのエッセンスの基本を実務的に丁寧に解説! • https://nol-blog.com/what_is_teal_organization/ • 話題のティール組織について、わかりやすくまとめてみた(やや偏見あり)@面白法人カヤック • https://www.kayac.com/news/2018/06/yanasawa_blog_vol42 • ティール組織に取り組む前に知っておきたい、3つの誤解 • https://medium.com/@nextstageorganization/ティールに取り組む前に知っておきたい-3つの誤解-8b3af8b151bd (他にも多くの人がまとめを公開されています) 3
  2. とりあえずこの本を読んだ話から ◆第Ⅰ部 歴史と進化 • 第1章 変化するパラダイム――過去と現在の組織モデル • 第2章 発達段階について •

    第3章 進化型(ティール) ◆第Ⅱ部 進化型組織の構造、慣行、文化 • 第1章 三つの突破口(ブレイクスルー)と比喩(メタファー) • 第2章 自主経営(セルフ・マネジメント)/組織構造 • 第3章 自主経営(セルフ・マネジメント)/プロセス • 第4章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/一般的な慣行 • 第5章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/人事プロセス • 第6章 存在目的に耳を傾ける • 第7章 共通の文化特性 ◆第Ⅲ部 進化型(ティール)組織を創造する • 第1章 必要条件 • 第2章 進化型(ティール)組織を立ち上げる • 第3章 組織を変革する • 第4章 成果 • 第5章 進化型(ティール)組織と進化型(ティール)社会 5 600ページ近くあります。個人 的には、下線部分を重点的に 読めば良いと思います。 https://www.amazon.co.jp/dp/B078YJV9ZW/
  3. ティール組織とは • 「人類は、その時代の社会構造に合わせて組織パラダイムを作り出してき た」という考えのもと提唱された、次世代の組織構造。 • 端的に言うと、階級の無いフラットな組織とそれを実現する考え方。 • 柱となる3つの考え方 • 自主経営:セルフ・マネジメント

    • 全体性:ホールネス • 存在目的 • 提唱者は、フレデリック・ラルー。 • マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わった後、エグゼクティ ブ・アドバイザー/コーチ/ファシリテーターとして独立した人物 6
  4. ティール組織の柱となる3つの考え方 • 自主経営:セルフ・マネジメント • 組織・チームの目的達成のために、その方針策定から創意工夫までのすべてを自主的に取り組 む。また、取り組む内容の決定および実行権限とその責任を当該の組織・チーム自身が保持す ることで、健全な改善サイクルを維持するという考え方。 • 全体性:ホールネス •

    「個人としての全体性の発揮」を意味する。従来組織での「与えられた役割をこなす」という マインドセットではなく「全体最適のために自分に何ができるのか」という自主性、もっと言 うと個性を発揮することで組織目標の実現に寄与していこうという考え方。 • (組織の)存在目的 • 従来のように、上位者が決めたミッションを妄信的に実現することで組織を維持していくので はなく「そもそもこの組織自体が何を目的に作られたのか」という根源的な考えが「ミッショ ン=組織の存在目的」であると、強く意識すること。 7 感想:自主経営以外はちょっと 宗教じみている印象を受ける。
  5. 余談:フラットな組織という考え方の流行 • ティール組織の思想の核となっている、ピラミッド構造ではない各チームの自立 性に重点をおく点などは、次世代の人事制度として注目されている「ホラクラ シー」という考え方と非常によく似ている。 • 同時代に同様の観点で提唱された組織構造が複数あるという観点からも、次世代 の組織パラダイムとして期待されている雰囲気が強い。 8 ホラクラシー

    提唱者:ブライアン・ロバートソン 「ホラクラシー」(holacracy)とは、従来の中央集権型・階層型のヒエラルキー組織に相対する新しい組織形 態を示す概念で、階級や上司・部下などのヒエラルキーがいっさい存在しない、真にフラットな組織管理体制 を表します。ホラクラシーの下では、意思決定機能が組織全体に拡張・分散され、組織を構成する個人には役 職ではなく、各チームでの役割が与えられます。細分化されたチームに、それぞれ最適な意思決定・実行を行 わせることで、組織を自律的・自走的に統治していくシステム――それがホラクラシーです。 出展:日本の人事部( https://jinjibu.jp/keyword/detl/725/ )
  6. 無色 ティール/進化型 グリーン/多元型 オレンジ/達成型 アンバー/従順型 レッド/衝動型 マゼンタ/神秘的 マゼンタまではシャーマニズム的な 信仰集団や、それ以前の原始時代に おける狩猟生活での社会構造を表す

    ため、現代の組織構造論からは遠く、 このまとめでは注目の外に置く ティールでは組織に個が溶 け込み、一つの生命体とし て活動するようなイメージ として語られている 機械 オオカミの群れ 軍隊 ファミリー 生命体 この辺りが現代の 組織構造の主流 メタファー 12 レッドからグリーンまで は組織を構成する要素と して個々人の境界線が比 較的明確である t
  7. 現代社会で見られる組織パラダイム • レッドからティールまでの5色 13 組織パラダイム メタファー 特徴 ティール/進化型 生命体 階級社会とは異なり、権威関係的にフラットな状態で構成、組織の目的の達成のた

    めに活動することを重視しメンバー個々がその目的実現のために独自に工夫しなが ら自営していく、権限移譲が発生するような絶対的な上下関係はないが、代わりに 評判や影響力・スキルといった自然発生・流動的な相対的な階層が生まれる グリーン/多元型 ファミリー ベースは階級社会だが社員の主体性や多様性が認められる文化を内包する、階級は あるが意思決定は当事者間の合意が前提となる、リーダーはサーバントリーダー シップ(支援型リーダーシップ)の発揮が求められ、権限を委譲することでメン バーの自主性の活性化を促す、組織としては人事部門が中心となりそのような状態 /文化が維持されるように振る舞う オレンジ/達成型 機械 ベースは階級社会、成果主義的な価値観が含まれ目標を達成することが重視される、 目標達成のための手段として変化も受け入れる、数値目標を追い求める、社員は会 社の歯車であり、リーダーは支配型リーダーシップの発揮を求められる アンバー/順応型 軍隊 純階級社会、ヒエラルキー重視、儒教的、長期的な目線・変化は好まれない レッド/衝動型 オオカミの群れ ワンマン企業、ジャイアンと下僕、目先の利益、社員は会社の鉄砲玉
  8. 最近のトレンド/グリーン • 世の中的には、グリーンのパラダイムを持った組織・企業が、ある種 イケてる会社な雰囲気を醸し出している。 • サウスウエスト航空 • スターバックス • ベン&ジェリーズ(ソフトクリーム)

    • HCLT ( 電子機器メーカー) • DVA(透析事業) 14 https://medium.com/@nextstageorganization/なぜgreen型組織のリーダーはtealに惹かれるのに-次の一手を打てないのか-2bb18c482b4c
  9. グリーン/ティールのギャップ • 風通しの良い・フットワークの良いと思われるグリーンの組織がティール に簡単に変位していけるか、というと、近いようで遠いようだ(ティール に移行する必要性があるかは別問題として)。 • なぜグリーン型組織のリーダーはティールに惹かれるのに、次の一手を打てないのか • https://medium.com/@nextstageorganization/なぜgreen型組織のリーダーはtealに惹かれるの に-次の一手を打てないのか-2bb18c482b4c

    • ギャップ • グリーンは権限委譲をしているとはいえ階層型の組織である。なので、組織を前に向 けるために人がポテンシャルを出せる状況を作っていくモデルと言える。 • 対してティールは、人が前向きなら組織も前向きになる、というように 現代の考え方とは逆転した関係性をベースとしている。 • ティールの考え方に賛同するメンバーのみがその組織に残るとも言える。 • グリーンであっても現状を壊して意識から再構成しないと厳しい感じがある。 • 意識・制度などあらゆる面でのパラダイムシフトが必要。 15
  10. まずそもそも、自分の所属組織は何色なんだろう • 主観ですが、だいたいこんな感じ?(よく見て五分五分) 18 • アンバー/順応型 • 5割 • 部署ごとの採算・達成金額重視

    • 年功序列の比重が高い昇格・昇給 • 新しい考え方や仕組みを導入する 敷居が高い • 旧来のやり方=リスクが読めるの で安心、という思想 • オレンジ/達成型 • 5割 • 目標(お金)の達成に比重をおい た経営 • 突然新しい取り組みにドライブが かかることがある 現状、グリーン以上の考え方は、 組織体としての実現には至っていない
  11. それじゃあ、ティールで在れる組織、ティールに 変われる組織とはなんだろう。 • こんな感じか • 組織構造の(再)設計ができる/しやすい組織 • 新規で立ち上げた組織 • 規模が比較的小さく、アンバー以下の思想が無い/弱い組織

    • 既存の(大きい)組織では? • トップダウンで徹底的にやるしかないだろう • 究極にフラットな組織を作るために、トップダウンのアプローチでないと動きにくい、 というのは、ちょっと皮肉な感じ。 • 書籍の事例でも、昔はティール的な文化があったが、今はなくなったという話もあった。 • ただ、自前でサービスや製品を作っている場合は、その作成から提供までの責任を自 身のものとして捉えるため(自己責任の下で)変化していくことが可能かもしれない。 20
  12. ティールっぽい企業・組織@日本 • 面白法人カヤック • Web制作会社 • サイコロを振って給料を決めたり、社員の似顔絵を描いた漫画名刺を使っている会社。 と書くと変な会社っぽく聞こえるけど近年働き方改革とかで注目されている企業。 • 最近見た記事ではこんなのもあった

    • 組織がうまく回っているかどうかを「上司の指示をどれだけ無視したか」で測定するのはどう か、という話。 • https://note.mu/kayac_hr/n/neb2eacabbdd7 • といっても、信頼関係がある前提です。詳しくはWebで。 • 落合陽一 デジタルネイチャー研究室 • 中の人が言っているだけではあるが、何となくそれっぽい。 • 『ティール組織』を読んで 〜弊ラボはそれに近い気がする〜 • https://yamken-research.com/2018/04/09/teal_organization/ 21
  13. 結論から言えば • 正直なところ、この形態の企業が会社全体の組織文化としてティールなれることは、ほぼないん じゃないかと思う。 • 何故か:内的要因 • SIerという他人の物を代理で作るという業態は、仕事の受け側という立場として無用な衝突が起こらないよう に、安心・安全な企業として仕事を任せてもらえるように振る舞うことが企業価値として求められる。 •

    何故か:外的要因 • SIerが安心を与える先となる顧客企業も、多くの場合アンバー・オレンジであることが多いのが実情であり、 見積もりから計画・実行まで、つまびらかになっていないと心情として受け入れられ難い。 • 少し違う話だが、請負型企業でアジャイル開発が広まりきらない原因でもある。 • 例えば開発プロジェクトをティール組織で実行するとどうなるか • その場の状況に応じて柔軟に動くことになるが、要因のアサインや進捗の把握といった観点での説明が非常に 困難だろうと思われる。 • WF型ではなく、顧客がプロダクトオーナーとして参画したスクラムなどでは成立するかもしれないが、そもそ もそういう開発現場は少なく、また実現性も低い。 23 さて困った
  14. 緑化を目指す • 組織の変化ベクトルとして、オレンジ→グリーンは階層構造が許容さ れる点などから、連続性があると捉えられる。少なくとも、組織の末 端の個々のチームレベルではグリーンでの運営はできると思う。 25 ティール組織:p.71 組織の発達段階を決める要因は何か? それは、リーダーがどの段階 のパラダイムを通して世界を見ているかによる。

    意識しているかど うかは別として、リーダーは自らが合理的だと考える組織構造、慣 行、文化を整える。 言い換えれば、自分が世界と関わっていくとき の、自分のやり方に合った組織をつくろうとする。 重要なのは「そう運営したい」と思うかどうかと 「それが受け入れられる関係」があるかどうか
  15. まとめ • ティール組織 • 階層による統制型の組織ではなく、自己自発的な価値や関係を尊重した組織 • 働く人の目的意識の集合体が組織の目標となっている状態 • 残念ながら、従来のSIer的な業態の企業には向いていない気がする。 •

    グリーンの考え方は、現状(オレンジ)からの変化の延長線上に捉えられるの で、チーム運営レベルではやれるだろう。 • まずは草の根活動を続けて、グリーン型の運営が認められるようになれば。 • とはいえ、ティールの考え方自体は好きだが、今の組織にあてはめたいか というとそれは微妙。 • 現状の請負型開発での内容・進め方・関係性では、本質的には合ってない気がする。 27 Googleが近年提唱し、実践しているSRE(Site Reliability Engineering)というチーム運営構造 も、ティールに近い考え方を含んでいると言われるが、そっちはまだ勉強不足。 そのうち話のネタに取り上げるかもしれません。