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Transcript
育休を取得した男性社員1000人に聞いた より働きやすくなるために必要なこと 2023.02 XTalent調査レポート
直近10年間で男性の育休取得率は12ポイント増加。前例の多くない 状況でいかに育休を取得した男性の働きやすさを高めるかが課題 厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2012年における男性の育休取得率は 1.89%だった。しかしコロナ禍で働き方やライフスタイルが変化した2020年から男 性の育休取得率は10%を超え、2021年には13.97%と10年間で約+12ポイント増加 している。厚生労働省による改正育児・介護休業法の施行や、金融庁による有価証 券報告書への男性の育休取得率の記載義務化の動きからも、育休取得率を向上させ るための動きは今後さらに強まると考えられる。一方で、育休取得率の低かった世 代と、現在育休取得を迎えている世代とで価値観や認識にギャップが生じている実 態が叫ばれるようになり、育休を取得した男性が働きやすくなるために企業側とし
ても対策を打つ必要がある。本レポートでは、XTalentによる育休を取得した正社 員の男女1,000人ずつを対象とした意識調査(期間:2022年1月11日〜1月20日)をもと に、「働きやすくなるために必要なこと」に着目し、企業としてどのような意識や 取り組みが必要かを提言している。 論点として、次の内容を検討した。まず、「性別による違い」である。性別役割意 識を持っていると、女性は家庭優先・男性は仕事優先となり、必要とするものが変 わりうる。それが背景にある可能性を考慮しつつ、男女差について考察する。次に 「世代による違い」である。性別役割意識やワークライフバランス意識など、世代 によって価値観が変化しているという仮定のもと、世代別にも違いを見る。3つ目 は「スキルアップ・昇進への意欲による違い」である。必ずしも昇進がゴールでは ないというキャリア観も見られるが、そのような中でも昇進を求める人はどのよう な点を重視しているのかを見ていく。最後に「パートナーのキャリア開発意欲」で ある。性別役割意識のもと、「女性は会社の福利厚生を活用し、男性はその恩恵を 受けている」といった見られ方も存在する。パートナーのキャリア開発意欲が高い 場合はどのような制度が必要とされるのかを分析する。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 2 資料出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf 男性の育休取得率=配偶者が出産した者のうち、調査年の10月1日までに育児休業を開始した者(開始 予定の申出をしている者を含む)の数における、調査前年の9月30日までの1年間の配偶者が出産した者 の数の割合
男女ともに「上司が育休を取得した経験」を求める声がトップ。 男性は、女性よりも育児中社員のネットワークやメンター制度を求める割合が高い パートナーのキャリア開発意欲の高い人からは、 「子の看護休暇」や「労働時間よりパフォーマンスでの評価」を求める声 「制度」は男女ともに8割以上が必要と回答。 男性も「コミュニケーション」を求めている 「子の看護休暇」と「短時間勤務」・「残業時間の少なさ」で男女差が大きい。 育休取得者においても性別役割意識が働いている可能性 Z世代・ミレニアル世代ほど「コミュニケーション」を求めている。 X世代では「制度」が優先されている
スキルアップやキャリア開発への意欲が高い人ほど、また、昇進意欲の高い人ほど、 「制度」と「コミュニケーション」によるサポートを必要としている。 特に「コミュニケーション」によるサポートの必要性は顕著 Executive Summary 育休を取得した全国の正社員の男女1,000人ずつを対象に「育休復帰後に自身が働きやすくなるために必要なこと」を調 査した。「制度」に関する項目は男女ともに8割超がひとつ以上必要と回答。一方「コミュニケーション」に関する項目 は男女ともに過半数がひとつ以上必要と回答し、必要とする割合は男性の方がやや多かった。一般的に「コミュニケーシ ョン」に関する施策は女性を対象にすることが多いが、男性も必要としていることを認識する必要がある。 女性の方が男性より「子の看護休暇」など「短く、柔軟に」働けるための制度を必要視しており、育児役割の比重が女性 側に大きいという実態が反映された結果となった。当事者の性別役割意識をニュートラルにする機会を持つことで、男性 においても働き方の選択肢に幅を持つということが重要になってくるだろう。また、「育休復帰者への研修」を必要と思 う程度に男女間の差はないことから、研修機会に公平性があるかどうかは重要である。 「コミュニケーション」に関連する項目のうち、男女ともに「上司が育休を取得した経験」を必要とする割合が3割前後 となり、最も高かった。特筆すべきは、「育児中社員のネットワーク」および「メンター制度」において、女性より男性 の方が求める割合が1〜3ポイントほど高かったことである。女性だけでなく男性もネットワークを必要としていることを 認識し、施策を検討していくことが必要である。 男性の世代別でも差が見られ、X世代では「制度」を求める割合が高かった。ただし「子の看護休暇」は若い世代の方で 求められ、性別役割意識の変化が世代間で起こっていることが伺える。「コミュニケーション」はZ世代・ミレニアル世 代の方が求める割合が高かった。20代では「育児中社員の社内ネットワーク」、30代では「上司の育休取得経験」が必要 とされ、キャリア開発のフェーズや世代間による性別役割意識のギャップを加味した関わりが必要となる。 育休取得後、スキルアップ・キャリア開発意欲の高い男性社員は、意欲の低い男性社員よりも「制度」は+8ポイント、 「コミュニケーション」は+19ポイント高く必要としており、意欲的に働きたいからこそこうしたサポートを求めている と考えられる。意欲の高い社員のエンゲージメントを高めるためには、制度だけでなくコミュニケーションによるサポー トの充実が求められる。 パートナーのキャリア開発意欲が高い男性は、公平に家事・育児を分担するため、男性の全体平均よりも「子の看護休 暇」や「労働時間よりパフォーマンスでの評価」を優先的に求めている。デュアルキャリアカップルの多い時代において は、個人によって必要としている項目が大きく異なる。企業としては、性別などデモグラフィック属性別の画一的な対応 を改め、個人に応じた柔軟な対応を行うことが必要である。 p.4 p.4 p.5 p.6 p.7 p.8 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 3
「制度」は男女ともに8割以上が必要と回答。男性も「コミュニケー ション」を求めている 今回の意識調査では、「育休復帰後において、自身が働きやすくなるために必要な ことは何だと思いますか。あてはまるものすべてにチェックを入れてください。」 という設問に対し、複数選択形式にて回答を得た。次に回答項目を、フレックス制 度や子の看護休暇などハードな「制度」に関連する項目と、社員のネットワークや 育休取得社員の昇進実績などソフトな「コミュニケーション」に関連する項目に分 けて分析を行なった。 「制度」に関連する項目では、男女ともに8割超がひとつ以上に必要と回答した。 一方、「コミュニケーション」に関する項目では、「制度」よりは低いものの、男
女ともに過半数がひとつ以上に必要と回答した。持続的に働くための土台としての 「制度」と、充実した職場環境やキャリアを築くための「コミュニケーション」で は、まず制度を優先的に必要としていることが伺える。男女間の差を見てみると、 「制度」は男性の方が求める割合が-9.3ポイント低いが、「コミュニケーション」 は男性の方が求める割合が+1.3ポイント高いという結果になった。一般的に、育休 復帰後のキャリア形成における「ロールモデルとの対話」については、男性よりも 女性に対して言及されることが多い。しかし実態は、男性は女性以上に育休復帰後 にコミュニケーションを必要としている。 「子の看護休暇」と「短時間勤務」・「残業時間の少なさ」で男女 差が大きい。育休取得者においても性役割意識が働いている可能性 「子の介護休暇が利用できる」は、女性の方が男性より+22ポイント高い 「短時間勤務制度が長く利用できる」は、女性の方が男性より+25ポイント高い 「全社的な残業時間の少なさ」は、女性の方が男性より+19ポイント高い 「制度」に関する項目の内訳を見てみると、以下のような結果が見られた。 これら3つの項目は、「短く、柔軟に働く」という点で共通しており、女性の方が 育児の役割を担おうという意識が強いことが伺える。育児役割の比重が女性側に大 きいという実態が反映された結果と言えるだろう。当事者の性別役割意識をニュー トラルにする機会を持つことで、男性においても働き方の選択肢に幅を持つという ことが重要だ。また、「育休復帰者への研修」を必要と思う程度に男女間の差はな いことから、研修機会の公平性は重要であると考えられる。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 4
男女ともに「上司が育休を取得した経験」を求める声がトップ。 男性は、女性よりも育児中社員のネットワークやメンター制度を求 める割合が高い 「コミュニケーション」に関する項目の内訳を見てみると、「上司が育休を取得し たことがある」という項目が男女ともに最も求められていた。育児をしながら働く ことを理解してもらうために、実際に育休を取得した経験のある上司を求めている 人が多いと考えられる。特筆すべきは、「育児中社員のネットワーク」および「育 児中社員へのメンター制度」の項目において、女性より男性の方が多くの割合で必 要であると回答していたことである。「男性社員は、自分から積極的に相談しよう としない、ネットワークを求めない人が多い」という認識がステレオタイプとして
あげられることがあるが、実態は異なる。そういった従来の認識は捉え直したほう がいいと言えるだろう。また、男女間で回答割合の差が大きかった項目は、「育児 中社員の昇進・登用実績」であり、男性に比べて女性の方が+8ポイント高い結果 となった。同じ育児中社員であっても、女性の方が「昇進・登用実績」における課 題意識が強いことを裏付ける結果となった。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 5
Z世代・ミレニアル世代ほど「コミュニケーション」を求めている。 X世代では「制度」が優先されている 年代別に見ると、20~30代のZ世代・ミレニアル世代と40〜50代のX世代で傾向に差が 出た。20〜30代は「コミュニケーション」関連項目を必要とする割合が相対的に高 く、反対に40〜50代は「制度」関連項目の方が高いという結果となった。20〜30代 は上の世代との価値観のギャップを感じ昇進実績やリーダーの理解を求める一方、 40〜50代は体力的な問題が出てくることやキャリア開発の中盤に入ってくることから 制度面での充実を優先していると考えられる。 「制度」の項目別に見てみると、40〜50代で求められているのは「フレックス」・ 「リモートワーク」・「残業時間の少なさ」の順番であった。リモート&フレックス
は20代ではあまり求められず、特に30代以降で必要とされている傾向が見られた。そ して20〜30代のZ世代・ミレニアル世代が、必要な制度として全項目の中で最も多く 選んだのが「子の看護休暇が利用できる」という項目だ。これは世代による性別役割 意識の変化が反映された結果であるとも言えるだろう。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 6
「コミュニケーション」の項目別に見てみると、「育児中社員のネットワーク」を 求めているのは20代が多かった。第一子出生時の年齢が平均より若い世代であ り、キャリア開発の初期フェーズでもあることから、社内ネットワークの必要性が より高いと捉えられるだろう。また、興味深いことに「育児中社員の昇進・登用実 績」は若い世代ほど求められており、世代間ギャップが顕著だ。「上司の育休経験 の有無」を挙げているのに30代が多いのは、キャリア開発の初期フェーズを抜け た、昇進や登用が増え始める時期と重なることが関係していると推察できる。 スキルアップやキャリア開発への意欲が高い人ほど、また、昇進意 欲の高い人ほど、「制度」と「コミュニケーション」によるサポー トを必要としている。特に「コミュニケーション」によるサポート
の必要性は顕著 育休取得後、キャリアアップ・スキルアップへの意欲や昇進への意欲をどう感じて いる男性が多いのだろうか。男性のうち、スキルアップ・キャリア開発への意欲が 高いと回答した人は39%で、年代別に見ると20代が高くなっている。しかし、キ ャリアやスキルアップへの意識が高いとしても、必ずしも昇進意欲があるとは限ら ない。本調査でも、育休取得後にスキルアップ・キャリア開発への意欲の高い男性 のうち、昇進意欲がある男性の割合は53%だった。20代に限ると、3人に1人とな る。意欲の高い社員が持続的に働くためには、どういった要素が必要だろうか。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 7
スキルアップ・キャリア開発への意欲が低い男性と高い男性、および昇進意欲の高 い男性において、「働きやすくなるために必要なこと」を比較した。「制度」に関 連する項目は、スキルアップ意欲の低い男性よりも、スキルアップ意欲・昇進意欲 が高い男性の方が+6〜8ポイント上回った。一方、「コミュニケーション」におい ては両者の差が開いた。スキルアップ意欲の低い男性は50%が「コミュニケーショ ン」に関する項目をひとつでも必要と回答しているが、スキルアップ意欲・昇進意 欲の高い男性は+16〜19ポイント上回った。 キャリア開発の意欲が高い男性において、特に「コミュニケーション」が必要とさ れていることは、企業においても認識しておくべきだろう。制度だけ整えたとして も、「上司の理解がない」「育児中社員のネットワークがなく会話ができない」と
いうことになれば、エンゲージメントの低下につながりうる。 パートナーのキャリア開発意欲の高い人は、「子の看護休暇」や 「労働時間よりパフォーマンスでの評価」を求める声 パートナーの会社が、福利厚生や文化的風土において育児のしやすい環境を整えて いる場合、どうしてもパートナーに家事・育児の負担が偏ってしまうことがある。 しかし昨今、共働きが前提となり、パートナー側においてもキャリア開発の必要性 が高まっている。そうした状況では、自身とパートナーの間で家事・育児の分担を 公平にし、互いのキャリア開発を尊重していく必要があるだろう。パートナーのキ ャリア開発意欲が高い男性は、働きやすくなるために何を必要としているのだろう か。 「制度」に関連する項目において、男性全体と比較すると、必要としている制度の 順位が入れ替わっている。「子の看護休暇が利用できる」と「労働時間よりパフォ ーマンスが評価される」の2項目は、男性全体における順位から+2位以上高くなっ ている (表の赤字)。パートナーと公平に家事・育児を分担するため、子の看護休暇 を必要とし、長時間は働けないが成果を出しパフォーマンスで評価してほしいと感 じている実態の裏付けとなる結果である。このように共働きが前提のデュアルキャ リアカップルが多い時代においては、個人によって必要としている項目が大きく異 なる。企業には、性別などデモグラフィック属性別の画一的な対応を改め、個人に 応じた柔軟な対応を行うことが求められていると言えるだろう。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 8
XTalentのDEIコンサルティング事業のデータアナリスト。サーベイのデータ分析やレポーティングを担当。東京大 学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。株式会社SpeeeでSEOコンサルティングやデータ活用支援事業の マーケターを経験し、データアナリストとして株式会社メルカリへ入社し、現在に至る。 お問い合わせ 会社概要 本資料の作成元のXTalent株式会社はDEIコンサルティング事業を展開しており、 計測とトレーニングでDEIの理解・実践・改善に伴走いたします。お気軽にお問い合わせください。 ▪ メールアドレス:
[email protected]
▪
担当者名:筒井 八恵 横断的な連携と共創を通じて、日本のあらゆる組織のDEIを推進し、高めていくことを目指しています。 DEIに関する様々な情報発信も行っておりますので、ぜひご活用ください。 ▪ 公式サイト:https://dei.xtalent.co.jp/ ▪ Podcast:https://anchor.fm/dei-lab ※本調査データは、広くご活用ください。データの引用・転載時には「引用元:XTalent株式会社」と引用元を明 記していただくようお願いいたします XTalent株式会社 〒106-0047 東京都港区南麻布3丁目20-1 Daiwa麻布テラス5F 代表:上原 達也 https://xtalent.co.jp/ 筒井 八恵 Yae Tsutsui / XTalent株式会社 プロジェクトリード 本調査レポートの作成者 諏訪 ひと美 Hitomi Suwa / XTalent株式会社 データアナリティクス XTalentのDEIコンサルティング事業の責任者。佐賀大学医学部卒業後に日本赤十字社医療センターで助産師として 従事した後、人事採用支援・企画、コネヒト株式会社における事業開発、自治体や企業へのダイバーシティ研修企 画・講師、アライアンスリード等を経て、現在に至る。看護師、保健師、助産師ライセンスを持つ。 育休を取得した男性社員1000人に聞いた、より働きやすくなるために必要なこと 9