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Non-Alcoholic Night Vision

Non-Alcoholic Night Vision

「Non-Alcoholic Night Vision」は、酒を飲まないことを選択するソバーキュリアスな人々に対しての定性的な調査を行うことで、「誰もが楽しめる夜」の実現に向けて私たちが進むべき道筋を明らかにする調査です。

多くのナイトアクティビティはアルコールに体験価値やビジネスモデルを依存しています。NEWSKOOLではこの課題を解消するべく、アルコールなしでも楽しめる夜の実現に向けた機会領域(​​検討すべき価値のある領域)を策定しました。

調査ではアルコールを飲まないことを選択するソバーキュリアスな人々の夜の楽しみ方や潜在的欲求を可視化。これらのインサイトから主にナイトタイムにおけるコミュニケーションデザインの重要性を提言しました。

鎌田頼人/NEWSKOOL

August 16, 2023
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  1. INTRODUCTION -導入- P3 BACKGROUND -背景- P9 FINDINGS -知見- P15 INSIGHT

    -洞察- P32 CONCLUSION -結論- P40 COMPANY -会社紹介- P43 INDEX 目次 02
  2. 誰もが楽しめる夜をつくる 夜という時間はまだ完全には整備されておらず、イノベーションを起こすためのチャンスとリソースに溢れています。 アムステルダムの元ナイトメイヤー、ミリク・ミラン氏は「夜」の価値を3つに定義しました。 “ナイトタイムエコノミー”と言われる夜間の経済 活動。 “ナイトカルチャー”という新しい実験的な文化が生まれる機会。 “ナイトソーシャライジング”と言われる、昼の肩書を忘れて交流を深め る夜独特のコミュニティです。 バーで生まれたアイデアを仲間たちと議論し、 それをビジネスへと繋げていくというように、夜には組織の肩書きを超えて新しいアイデアを生

    み出したり、そのアイデアを気軽に実験できたりする土壌が存在しています。夜という時間を活用していくことで、より創造性に富んだ社会が訪 れると私たちは信じています。 夜という時間の活用について改めて考えてみると、そこには多くの課題があります。地価の高騰に苦しめられるナイトベニューや、業界を超えた ステークホルダーの目線合わせを行うプレイヤーの不在、アルコールハラスメントやセクシャルハラスメントなどの蔓延、都市政策や法律、店舗 経営などさまざまなレイヤーでの議論が求められています。 INTRODUCTION ビジョン 05
  3. INTRODUCTION 本レポートについて 08 誰もが楽しめる夜のために 私たちが進むべき方向性を定めるレポート 先進的な生活者に注目し定性的なリサーチを行うことで、刻一刻と変化して いく人々のニーズから普遍的な価値観や欲求を見出し、これからの夜に必要 なイノベーションの源泉の探求を行いました。 なお、この一連の調査手法はデザインリサーチと呼ばれています。調査対象 者へのインタビューや、調査対象者が生活するフィールドへのエスノグラ

    フィを行うことで、人々が持つ自身も意識していないようなニーズや欲求、 癖、視点などを見出すことを目指します。人々の潜在的欲求を明らかにしそ れに答えていくことで、イノベーションの源泉となるようなアイディアのイン スピレーションの探求を行います。 デザインリサーチの対象者 主に「先進的な行動をとっている生活者(トライブ)」=「3~5年後に一般的になる であろうニーズに、今現在直面している生活者たち」へと焦点を絞ります。 トライブと呼ばれる人々は自分なりの行動規範を持ち、明確な行動規範の上で行動す るためニーズを浮きぼりにしやすい傾向にあります。また、トライブに対してリサーチ を行うことで、普遍的かつ新規性を持った視点や価値観を得ることもできます。
  4. BACKGROUND 本調査におけるトライブ 10 ソバーキュリアスとは? 若年層のアルコール離れに伴い、現れたのがソバーキュリアスと呼ばれる 人々です。ソバーキュリアスは、sober=しらふ、curious=好奇心の強いを かけ合わせた造語です。 ソバーキュリアスが生まれた背景には、ヘルシー志向やマインドフルネスの ブームがあります。お酒を飲まないことで心身共に健康になれるという考え から、欧米の若者を中心に「飲まないという選択」がトレンドとなりまし

    た。 お酒を飲まない人々 「ソバーキュリアス」 本レポートでは、トライブとして「ソバーキュリアス」に注目しています。ソバーキュ リアスとは、酒が飲めない人々や酒を飲まないことを選択する人々を指します。 バーやクラブでの体験など夜の楽しみの多くはアルコールに依存していますが、ソ バーキュリアスの人々はどのように夜を楽しんでいるのでしょうか?またその裏には どのような欲求や価値観があるのでしょうか? これらを紐解いていくことで、多様性溢れる夜をつくるために必要な要素を明らかし ていきます。 本レポートでは、若年層のアルコール消費の落ち込みや宴会離れが業界の課題とな り、アルコールに依存しないコンテンツの整備が必要とされていく中で、この領域が 大きなビジネスチャンスとなることも示唆しています。
  5. BACKGROUND アルコールへ注目する背景 13 アルコール離れに対応した ナイトコンテンツ 業界では若年層のアルコール離れ・飲み会離れが課題となっています。体質や仕事、 宗教上の都合など飲めない/飲まない理由はさまざまですが、近年のアルコールの消費 の落ち込みには「人々の職業意識の変化」が挙げられます。

 高度経済成長期には酒を飲みながら親睦や交流を深めるという意味で「飲む」と「コ ミュニケーション」を合わせて「飲みニケーション」という言葉が流行しました。終

    業後に上司と部下が職場での立場関係なく飲み明かすことで、職場での良好な人間関 係づくりを行うことは日本型経営において大きな成功をもたらしました。

 しかし「飲みニケーション」は時代の流れと共に死語になりました。日本型の終身雇 用が崩壊し、企業や組織に依存せずに自身のスキルを高めたいという意識が高まった こと。職場の人間関係よりもプライベートな人間関係を重要視するようになったこと から、飲みニケーションが若者にとって億劫なものに変化してきました。
  6. FINDINGS ノンアルコールでの夜の楽しみ方 18 CHOICE #1 ノンアルコールバーへ来店する アルコールをベースにしないカクテルである「モクテル」の提供を行うノンアルコール バーへの注目が集まっています。六本木にある「0% NON-ALCOHOL EXPERIENCE」を皮切りに、2020年以降、東京都内を中心としていくつものノンア

    ルコール/ローアルコールバーが開店しました。お酒を飲まなくてもバーのような雰囲 気が味わえるとして、ソバーキュリアスな人々から人気を博しています。 潜在的欲求• R ノンアルコールバーに求めるのはモクテルではなく、バーのような雰囲気。ふとし た出会いやバーのマスターとの会話‚ R ワインを収集するような感覚で、趣味としてモクテルを楽しみたい。 CHOICE #2 シーシャ屋をサードプレイスとし て利用する シーシャ屋は、酒を飲まなくても手持ち無沙汰にならず長時間滞在できる場所とし て、ソバーキュリアスな人々のサードプレイスとして注目が集まっています。コミュニ ティマネジメントを積極的に行うシーシャ屋も多く、新たな出会いを求めてシーシャ 屋へ訪れる人もいます。 潜在的欲求• R ナイトタイムにおいても長時間滞在でき、ゆっくりと落ち着ける空間が欲しい‚ R 仕事でもプライベートでもないようなインフォーマルな出会いが欲しい
  7. FINDINGS ノンアルコールでの夜の楽しみ方 19 CHOICE #3 オンラインでの出会いを楽しむ ソバーキュリアスな人々の中には、オンラインゲームのボイスチャットや音声SNSア プリを利用し、友人を作る人々がいます。バーで見知らぬ人と出会うのと同等の感覚 でオンラインコミュニケーションを楽しんでいます。 潜在的欲求q

    D 仕事でもプライベートでもないようなインフォーマルな出会いが欲しい。 CHOICE #4 飲めないが常連のバーがある ソバーキュリアスの中には酒が飲めないがバーに通っている人々もいます。「バーの落 ち着いた雰囲気は作業場として最適だ」「飲みに行くのではなく、オーナーとの他愛 もない会話を楽しみに通っている」という意見が聞かれました。 潜在的欲求q D ナイトタイムでも長時間滞在でき、ゆっくりと落ち着ける空間が欲しいï D 仕事でもプライベートでもないようなインフォーマルな出会いが欲しい。
  8. FINDINGS ノンアルコールでの夜の楽しみ方 20 CHOICE #5 嗜好品としてノンアルドリンクを 楽しむ ソバーキュリアスの中には、クラフトコーラやモクテルなどを趣味としている人々が います。酒造メーカーからもノンアルコールリキュールが発売されるなど、アルコール に匹敵するほど多様な楽しみ方がノンアルコールドリンクにはあります。

    潜在的欲求r w ワインを収集するように、趣味として、ノンアルコールドリンクを楽しみたい。 CHOICE #6 2軒目代わりにシメパフェに行く 食事の後の締めとしてパフェを食べる「シメパフェ店」が人気を集めています。お酒 は強くないけれど2次会に行きたい、女性2人でも安心して過ごせる空間が欲しいとい う需要に応えたものです。 潜在的欲求r w 友人との会話を楽しんだり、一人で作業したりと、ナイトタイムにおいても長時間 滞在できる場所がほしい。
  9. FINDINGS ソバーキュリアスが求めるコミュニケーションの種類 23 TYPE #1 立場の差を埋めるコミュニケーション アルコールは立場の違う人々同士のコミュニケーションを円滑にできます。飲みニケーション がその代表です。

 しかし、飲めない人々の声に耳を傾けると「お酒が飲めないために立場の違う人々との距離感 を縮められない」という不満が多く聞かれました。



    無礼講や飲みニケーションを時代にあったかたちでアップデートすることが求められていま す。 「飲める人ばかり上司に可愛がられて羨ましい」 「職場の飲み会ではその場を盛り上げるためと仕方なく飲んでいる」 「飲み会に参加しないため、あまり職場の人々と仲良くなれない」
  10. FINDINGS ソバーキュリアスが求めるコミュニケーションの種類 24 TYPE #2 店舗との関係を深める コミュニケーション アルコールには店舗とお客さんを繋ぐ役割があります。バーであればおすすめのドリンクを尋 ねるところから、バーテンダーとお客さんとのコミュニケーションが始まり、その後もお酒の 話に花を咲かせます。お酒にはテンションを高めること以外にも、話のきっかけをつくるとい

    う効用があります。 また、お酒は店舗とお客さんとの信頼関係構築にも一躍買います。クラブやライブハウス、個 人経営の飲食店に行くと、その場にいる全員に対してテキーラを注文するという光景がよく見 られます。テキーラを注文するという行為には、その場にいるお客さん同士で親睦を深めると いう意味もありますが、同時に店舗に対してお金を落とすことで店舗への感謝を示すという意 味があります。 信頼関係構築の役割を持つコンテンツは現在アルコールしかなく、その代替となるようなコン テンツが求められています。 「飲めない分、行きつけのクラブに行くときは差し入れを持っていく」 「自分は客単価が悪い客だと思い、食べ物を多めに注文する」
  11. FINDINGS ソバーキュリアスが求めるコミュニケーションの種類 25 TYPE #3 キッカケをつくるコミュニケーション アルコールは友人や恋人などの親しい人々とのコミュニケーションを円滑にします。

 例えば、「飲みに行こう」という言葉は友人や恋人と会う口実をつくるためのよい誘い文句で す。「居酒屋やナイトベニューは街中に点在しているため場所の成約が少ない」、「酒を飲む という行為は基本的に就業時間を終えた時間におこるため時間帯指定が容易であること」がそ

    の理由です。

 また、同じ空間で酒を飲むことは一体感を得ることに繋がります。「乾杯」や「飲み交わす」 という言葉にみられるように酒を飲むことは「共に楽しもう」や「腹を割って話そう」という 意思表示になります。

 しかし酒を飲めない人はこのような一体感を感じることが出来ず、むしろ飲めないことでア ウェイに感じてしまう傾向にあります。飲む飲まないに関わらず、対等な関係性を築くことが できる新たなナイトコンテンツが求められています。 「飲み会ではテンションをあわせるために無理やり飲む」 「相手は酒を楽しんでいるのに、自分は飲めないという不平等感が嫌だ」 「自分にペースを合わせるため、相手があまり酒を飲まないことに気を使う」
  12. FINDINGS ソバーキュリアスが求めるコミュニケーションの種類 26 TYPE #4 居場所をつくる コミュニケーション サードプレイスとは家庭や職場とは離れた、とびきり心地よい場所のことを指し、インフォー マルな公共空間やサードプレイスを訪れる人々の団結を要素として構成されています。 日本におけるサードプレイスの代表例としては大衆酒場のような庶民的な居酒屋が挙げられま

    す。このような空間ではカウンターが一種の共有空間となり、店主や周囲の客との会話が自然 に共有されます。 居酒屋やオーセンティックなバーはサードプレイスとしての価値があり、仕事や職場とは別の コミュニティに属する友人を作る機会やその場限りのつながりを楽しむ機会を提供します。 しかし、居酒屋やオーセンティックなバーでは酒を飲めないと店に入りづらかったり、常連に なることが難しいのが現状です。飲む飲まないを問わず居心地良く過ごせるサードプレイスが 必要とされています。 「友達を作りたいが、知らないところに飛び込んでいく勇気はない」 「飲めないが下町居酒屋へのあこがれはある」
  13. FINDINGS 施策を考える手立てとなるペルソナ 28 Name 新井里美 (27) Town 大崎にて一人暮らし Work オフィス事務

    Personal Profile   引っ込み思案な性格でインドア派。交友関係も広い方ではなく、狭く深く人と関わるような性格。家は比較的 裕福で私立の中高一貫校に所属、一人っ子として大切に育てられてきた。家柄のせいか比較的マイペースな性格 で現状の自分に満足している。体質的に酒を飲むと気持ち悪くなってしまう。酒を飲めないことで周りに気を 使わせるのが嫌で、飲み会など大人数の集まりは得意ではない。特出した趣味がないため、家での時間を持て あましている。そんな時、友人からボイスチャットアプリをおすすめされる。最初は抵抗があったが、実際に 始めてみると気の合う友人が見つかり、日常的に利用するようになった。 Working Profile  料理が好きなことから高校時代は家庭科部に所属し、大学は女子大の管理栄養学科に所属する。就職の際には 食に関わる企業を中心に受け、現在は大手食品会社の事務を務める。会社柄飲み会や合コンの誘いもあるが、 参加率は3回に1回程度。 Night Action   ・家でYouTubeやNetflixを見る ・スマートフォンアプリでネット上の友人と話す Goal  ・大人数の飲み会はできるだけ避けたい ・プライベートな時間は他人に縛られず自由に過ごしたい ・気を使わないでいられる友人がほしい
  14. FINDINGS 施策を考える手立てとなるペルソナ 29 Name 佐藤夏子(20) Town 浦和にて実家ぐらし Work 大学生 Personal

    Profile   アクティブな性格で、スポーツ観戦やアイドルの追っかけ、カフェ巡りなど多くの趣味を持つ。友人も比較的多 い。酒が弱いものの飲み会などには積極的に参加するタイプ。アルコールを飲まなくても酔っている人のテン ションについていけるので烏龍茶などで飲み会を過ごしている。異性の友人も多いが、休日は同性の友人と遊 ぶことが多い。少人数で遊ぶ際には基本的に夜ご飯を食べて解散だが、酒を飲まないためレストランの滞在時 間が短く、喋り足りない場合はカフェやシメパフェ、公園などで時間を過ごす。 Working Profile  母親はキャビンアテンダントで、英語が堪能だったからことから小さい頃からよく海外旅行にいっていた。そ の影響から英語が得意。得意の英語を活かし、大学は早稲田大学の文化構想学部に進学。放送研究会に入り忙 しい日々を送っている。 Night Action   ・二次会としてシメパフェやカフェ、公園で友人と過ごす ・アルコールは飲まないが飲み会によく参加する Goal  ・友人と話し足りない時に安く長く滞在できる場所が欲しい ・飲みの場が好きなため積極的に参加したい
  15. FINDINGS 施策を考える手立てとなるペルソナ 30 Name 菅原健人(29) Town 下北沢にて彼女と同棲 Work スタートアップ経営 Personal

    Profile   好奇心が強い性格で、旅行をしたり、多様な価値観の人々に会うのが好き。酒があまり飲めないことから行き つけのバーなどはないが、その代わりに行きつけのシーシャ屋が自身の住む下北沢にある。友人のほとんどが 仕事を通じて出会った人であるため、仕事とプライベートの境目があまりない。 Working Profile  慶應義塾大学経済学部出身。高校時代は金沢にて過ごし、大学進学を機に上京する。高校時代は田舎での暮ら しに飽き飽きとしており、東京の大学に行きたいと強く思っていた。いざ東京に来ても、想像していたような 高い視座を持つ学友はおらず、大学にあまり行かなくなる。その代わりに広告系を中心に複数の企業でインター ンを行う。趣味は旅行することで、学生時代には稼いだお金をもとにバックパックで世界を周っていた。イン ターンや旅行をし、世界を知る中で、自らの手で事業を行いたいという気持ちが芽生え、学生起業を決意し た。 Night Action   ・シーシャ屋をサードプレイスとして利用する ・仕事の話をシーシャ屋などを利用して行う Goal  ・視座の合う友人と出会うきっかけが欲しい ・「いい店を知っている」、「奢る」などで部下にいい顔を見せたい ・オーナーさんや常連さんとの会話を楽しみたい
  16. FINDINGS 施策を考える手立てとなるペルソナ 31 Name 斎藤康之(26) Town 武蔵小金井にて一人暮らし Work エンジニア Personal

    Profile   趣味は音楽鑑賞と写真、洋服。大学時代の友人はカメラマンやアパレルショップ店員などが多く、付き合いが長 い。酒は好きでないが、友人の経営しているバーの常連であり、モクテルを飲みながら写真の編集をするのが 日課である。ある時、バーで働く友人からノンアルコールドリンクの魅力について熱弁されたことをきっかけ に、自身でもクラフトコーラやノンアルコールリキュールを集めるようになった。 Working Profile  日本大学芸術学部写真学科卒業。高校時代から写真を撮るのが好きだったため、写真学科に進学することに決 めた。大学時代からフリーのカメラマンとしての活動をはじめ、友人のバンドのライブやアパレルの撮影などを 行う。しかしカメラマンの仕事だけでは生計が立てられず、高校時代は数学が得意だったこともあり、プログ ラミングを学ぶことを決意。フリーのエンジニアとしても仕事を行う。 Night Action   ・自炊した料理とともにクラフトコーラなどのノンアルドリンクを楽しむ ・酒を飲まないがバーに行く Goal  ・夜遅くに家以外で仕事できる場所が欲しい ・ノンアルコールドリンクを楽しみたい ・料理やノンアルコールドリンクをSNSに投稿することで自分を演出したい
  17. INSIGHT コミュニケーションデザイン 35 CASE_1 NFT マイアミのナイトクラブである「E11even」や 「XXIII Club」ではNFTトークンの発行を行ってい ます。 ベニューはトークンを発行することで、ベニューに

    対するコアなファンがロイヤリティを示すための仕 組みづくりができます。コアなファンは、ベニュー の販売するトークンを購入することで、ファンであ ることの証明ができるだけでなく、ベニューの運営 方針に意見できたり、VIP会員になれたりとさまざ まなインセンティブを得ることができます。 CASE_2 サブスクリプション ベニューへサブスクリプションサービスを導入する ことで顧客の継続的な来店を促すことができます。 来店回数が少なくともベニューに対して感謝を示す ために、サブスクに加入する顧客の登場も期待でき ます。

 カレーでつながるコミュニティキッチン6curryは住 所非公開、完全招待制の店舗を開設して注目を集め ました。店舗に訪れるためには月額制の会員になる 必要があります。6curryの会員は月ごとに開催され るイベントに参加することができたり、持ち込み企 画を行うことができたりと、ファンコミュニティを 形成するための取り組みが盛んです。 CASE_3 ファンコミュニティ ホストクラブやスナック、メイド喫茶、オーセン ティックバーなど、人に焦点があたった店舗では、 顧客がスタッフや店舗への感謝を示すためにドリン クを奢るといった行為が散見されます。 現状のノンアルコールバーなどでは、モクテルの味 や見た目の要素ばかり注目されており、コミュニ ケーションデザインがされていないのが現状です。 そこで、人の要素を押し出した店舗設計をすること で、コミュニケーションツールかつキャッシュポイ ントが生まれ、ファンコミュニティを獲得すること ができます。
  18. INSIGHT コミュニケーションデザイン 36 METHOD #2 嗜好品としての ノンアルコール飲料 クラフトコーラやモクテルの流行に伴い、近年ノンアルコールドリンクの選択肢が増 えています。ノンアルコールドリンクはお酒を飲まなくてもお酒を飲んでいる気分を味 わえる「お酒の代替品」という位置づけでしたが、今ではアルコールと同様の魅力を

    持つ飲料として人々に楽しまれています。 近年ではCBD入りのノンアルドリンクやアルコール度数0.9%以下のローアルコールも 登場しています。ノンアルコールでもアルコールを飲んだときと同様のリラックス効果 を得ることができます。 ソバーキュリアスな人々の中には飲み会でノンアルコールドリンクを頼むことを恥ず かしいと感じたり、周りの人だけがアルコールを楽しんでいて不平等だと感じていま す。製造過程や原材料などにこだわったストーリーを持ったノンアルコールドリンク を製造したり、取り扱うことはこのような不平等感を無くすとともに、ノンアルコー ルドリンクへのこだわりやバックストーリーをきっかけにコミュニケーションを誘発 することにつながります。
  19. INSIGHT コミュニケーションデザイン 37 CASE_1 体験価値の提供 近年のノンアルコール業界では、美味しさだけでな く、飲酒体験全体をデザインするブランドに注目が 集まっています。 CityCamp株式会社の提供するOFF COLAは、「な

    んでもできる街で、なんもしないをしませんか」を コンセプトにしています。夕方18時と深夜2時に飲 むことが推奨されており、夕方18時には仕事から プライベートの切り替えを、深夜2時にはリラック スする時間への移り変わりを促します。 味という機能的な価値だけに注目するのではなく、 ドリンクを飲むことでどのような経験をデザインし たいのかという体験価値に注目することで、ノンア ルコールドリンクの可能性をより広げることができ ます。 CASE_2 ローアルコール ローアルコールドリンクの開発や提供に注目が集 まっています。

 アサヒビールは2020年「スマートドリンキング」 を提唱しています。2025年までにアルコール3.5% 以下のノンアル・微アル商品における販売容量構成 比を20%に引き上げるとしています。

 実際にソーバーキュリアスな人々からは「お酒は弱 いが少量であれば楽しく飲める」や「少しのアル コールであれば寝付きがよくなる」という意見が得 られ、潜在的な需要がある領域になっています。 CASE_3 ペアリング ノンアルコールカクテルと料理をセットで提供する ノンアルコールペアリングは、ソバーキュリアスな 人々をはじめ多くの人々から注目を集めています。

 明治神宮前のフレンチ料理店「フロリレージュ」で は、ノンアルコールペアリングを提供しています。 搾りたての果汁、お茶、スパイスなどさまざまな材 料を利用したバラエティ豊かなノンアルコールドリ ンクを提供しています。ノンアルコールペアリング はノンアルコール飲料の提供価値を更に高め、高単 価での提供を可能にできます。
  20. INSIGHT コミュニケーションデザイン 38 METHOD #3 共通ゴールのデザイン コミュニケーションを誘発する場を作るためには、共通のゴールのデザインが重要で す。ソバーキュリアスを含め多くの人々は心を許せるパートナーに出会いたい、価値観 の会う人に出会いたいという欲求を持っています。

 しかし、「初対面での会話に苦手意識を感じている」「相手の人柄が分からないのが

    不安」「相手に拒絶されないか心配」といった理由でコミュニケーションをためらう 人々が大半です。

 ノンアルコールで会話を誘発するためには「共通のゴール」が大切です。例えば、出 会いの場としても注目されているビリヤード場や脱出ゲームなどのアクティビティは、 「ゲームを楽しむ」という共有の目的を設計することで参加者同士の自然な会話を誘 発しています。
  21. INSIGHT コミュニケーションデザイン 39 METHOD #4 場の顔役の存在 ノンアルコールの場で会話を誘発するためには、場を管理するオーナーの存在が重要 です。 例えば、レイ・オールデンバーグの書籍『ザ・グレート・グッド・プレイス』では、 コミュニティ形成には「顔役」の存在が欠かせないとしています。顔役とは、近所の

    あらゆる人のことを知っていて、近所のことを気にかけている人物であり、大抵は地 域の出来事に目を光らせている商店主や経営者です。そして、彼らは地域に新しく訪 れる新参者を歓迎し、コミュニティへと招き入れる役割を持ちます。 実際にソバーキュリアスな人々のインタビューの中では、「バーに行った際に見知ら ぬ人に突然話しかけられると不信感を覚えるが、バーのマスターの紹介であれば不信 感なく話せる」や「常連客にナンパされても、バーのオーナーが注意してくれるので 安心して空間での会話を楽しる」という意見がありました。 ナイトベニューにおけるコミュニケーションデザインのためには、空間全体を見渡す ような場のオーナー兼コミュニケーターの存在が欠かせません。
  22. CONCLUSION 終わりに 41 「誰もが楽しめる夜」に向けて 本レポートでは、ソバーキュリアスな人々へ定性的な調査を行うことで、「誰もが楽しめる夜」の実現に向けて私たちが進むべき方向を明らかにすることを試みました。 「若年層のアルコール離れ」「ナイトベニューのビジネスモデルにおけるアルコールへの依存」という2つの業界課題に目を向けつつ、ソバーキュリアスな人々独自の夜の楽しみ方や潜在的 欲求・不満を明らかにしてきました。そこでは、新たな出会いの場やゆっくり落ち着いて過ごせる場を欲していること、一方で、酒を飲まない/飲めないことでコミュニケーションにコンプ レックスを感じていることなどが分かりました。 それを踏まえ、ソバーキュリアスな人々が楽しめる空間をつくるために、事業者やベニュー・ブランドが導入していくべき要素を4つの切り口から提案しました。ベニューとの信頼関係をつ くること、プロダクトやサービスにストーリー性をもたせること、場の共通したゴールを設定すること、人と人を繋げることを具体例と共に紹介しました。

    「誰もが楽しめる夜」の実現には、ソバーキュリアスな人々にも寛容な環境が必要不可欠です。本レポートで提示したアイディアやメソッドが、社会とソバーキュリアスな人々を繋ぐ新た なイノベーションやカルチャーをつくるキッカケの一つとなれば幸いです。
  23. CONCLUSION 終わりに 42 「誰もが楽しめる夜」を共創しましょう 私たち合同会社NEWSKOOLは「誰もが楽しめる夜」をつくるためには「業界の垣根を超えた連帯」が必要だ と考えています。既存のナイトタイムエコノミー推進の取り組みはインバウンド観光の文脈で多く語られてい ますが、本来夜は私たちの生活の半分を占めており、文化・観光・まちづくりなど多様な視点の上で議論され るべき問題です。

 NEWSKOOLは多角的な視点から夜を捉え直しつつ、さまざまな事業者を巻き込んだコラボレーションプロ ジェクトを実践することで、「誰もが楽しめる夜」の実現に向けた事業を推進します。



    中でも、本レポートにて扱った「ノンアルコール」や「ソバーキュリアス」といった領域は「誰もが楽しめる 夜」の実現に向けた最重要テーマの1つとして捉えています。

 「ソバーキュリアス向けの空間事業やコンテンツの開発」「ノンアルコール飲料ブランドの新規開発」などを 検討されている事業者や、私たちのビジョンに共感いただける方は、ぜひご連絡ください。 鎌田頼人 合同会社NEWSKOOL / CEO E-mail : [email protected]
  24. COMPANY 合同会社NEWSKOOLについて 44 Night Design Company NEWSKOOLは、チームを結成し、課題に取り組み、次の10年をつくる持続可能な仕 組みを設計するプロジェクトデザインファームです。夜という創造性が生まれやすい 時間を切り口に、街や人々の暮らしを豊かにしています。 NEWSKOOLのプロジェクトは、WEBやサービス、空間・都市など多岐に渡ります。

    高い成果を出すために、関わる人々のクリエイティビティを引き出すことを信念にし ています。大切にしているのは、クライアントも交えた多様性のあるチームをつく り、プロジェクト開始時に十分な目線合わせをおこなうこと。そして、既存のフレー ムワークにあてはめず、柔軟なプロセスでプロジェクトを組み立てることです。 マーケティングのバックグラウンドを持ちつつ、常識を見直すリサーチプロセスや答 えのない問いに向き合うプロジェクトマネジメントスキルを掛け合わせて、わくわくす る社会を形作っていきます。
  25. COMPANY 強みを活かせる機会領域 45 都市空間のナイトタイム活用 文化遺産や公園などの遊休空間の夜間帯の活用方法を提案します。 夜の楽しみ方の拡充 お酒を飲まない人向け企画や自宅で楽しめる企画など新たなサービ スを提案します。 インディペンデントな店舗の 「持続可能性」を高める

    テクノロジーを利用して、不動産/店舗ビジネスのサステナブルな収 益構造を実装します。 地域の固有性や土着性を軸とした 「ローカル再興」 地域の持つ歴史や文化を掘り起こし、高付加価値の観光資源を開発 します。 アフターコロナにおける 夜の時間価値を探求する COVID-19の影響で変化したライフスタイルを分析し、これからの 夜の時間価値を探求・発信します。
  26. COMPANY NEWSKOOLのケーススタディ 46 CASE #1 煩悩 #BornNow -江田島- NEWSKOOLと広島県江田島市がコラボレーションして実施した1泊2日の没入型プレ ミアムコンテンツ企画です。地域の魅力を利用して持続可能な観光プランを提案しま

    した。 夕食は明治時代で要塞として使われた山の遺跡で晩餐会。その後は歴史あるお寺での Bar Time、宿泊は温泉宿で心身をリフレッシュ。そして朝は、江田島をテーマにした 生の落語を聴いて一日をスタートするという、島の魅力を再発見できる観光プランと なりました。 https://youtu.be/nZT5-lLMNg4 CASE #2 Night Design Lab 新たなる「夜の価値」を探す研究機関「Night Design Lab」を運営しています。国内 外のナイトタイムエコノミー事例やナイトカルチャーに関わるキーパーソンへの取 材、ナイトタイムの課題や新しい楽しみ方の提案、インサイトの発信を行います。 コロナ渦以降は、オンライン・オフラインでゲストを招いて様々な夜の価値について 対話するイベント「Night Design Talks」を開催しています。 https://note.com/newskool
  27. COMPANY NEWSKOOLのケーススタディ 47 CASE #3 ノンアルコールイベント ノンアルコールの可能性を探るために、数日にかけてノンアルコールバーをオープンし ました。この企画では「昼間帯のノンアルコールバーの需要」「ノンアルコールでの コミュニケーションに必要な要素」「客層やターゲット層」を測定しました。 社外の人々の反応も測定するためにSNSでの告知、社外プロジェクトチームとのコラ

    ボレーションも行いました。 CASE #4 Newnormal Guideline COVID-19 の 影響 に より 、 大き な 打撃 を 受 けた 飲食業界 や ナ イトベニュー 業界 、 ホテ ル 業界 の 方 々 が 、 将来 に 向 けて より持続 可能な 店舗経営 を行 う ためには ど の よう な 方 針 を 取 る べき か、 そ の可能性を 模索 するため 作成され た WEBサ イトです。 複 数の 質問 に 答え ることに より 、 100以上あ る 事例 の 中 か ら 、 店舗が経営方針 を 模索 する 上 で 参考 となるケー スス タ ディ を 提示 しています。 https:// newnormal -g uideline .st udio .s i t e
  28. COMPANY 会社概要 48 社内 合同会社NEWSKOOL 設立 2018年9月13日 社員数(契約社員・アルバイトを含む) 14名 事業領域

    ナイトデザイン事業 業務内容 ナイトタイムエコノミーにおける代理店業務 不動産企画業務 マーケティング・PR支援業務 都市政策における研究および政策提案業務 各種企画制作・運営業務 音楽フェス主催およびライセンス管理業務 デジタルマーケティング支援業務 WEBサイト及びサービスの開発保守業務 スクール/セミナー主催業務 プロジェクトオフィス 東京都渋谷区渋谷二丁目24番12号 渋谷スクランブルスクエア(東棟)15階 SHIBUYA QWS(渋谷キューズ) 顧問税理士 小島孝子税理士事務所 顧問弁護士 アーティファクト法律事務所 取引銀行 みずほ銀行 渋谷支店 主要取引先 (公財)日本財団 /(一財)渋谷区観光協会 (一財)渋谷未来デザイン (一社)ナイトタイムエコノミー推進協議会 (株)アルファネット (株)チェリオコーポレーション (株)日建設計 / (株)人間 (株)フロンティアインターナショナル (株)ライツアパートメント (株)sakasa / (株)パーフェクトエステート (株)iDEAKITT / (株)バルセロナ (株)WOTA / (株)tanoSEE /(株)DT (株)エヴリワンズ千葉県松戸市 / 広島県江田島市 ※順不同 / 敬称略 連絡先 [email protected] 代表取締役 CEO 鎌田頼人 E-Mail : [email protected] TEL : 090-6267-3541 HP https://newskool.jp