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データ企業のAI Ready戦略

データ企業のAI Ready戦略

AI時代にデータ企業が取り組むべき「AI Ready」戦略について、Why(なぜ取り組むのか)・How(どう進めるか)・What(実現した世界)の3つの観点から整理しました。データアクセスの民主化、メタデータ整備、データメッシュ、コンテキストエンジニアリングなどのキーワードを軸に、日本企業の事例も交えつつ筆者の意見をまとめてみました。
※社内の勉強会で発表した内容を一部修正して一般化した内容になっています

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March 09, 2026
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Transcript

  1. Why3 社外向き データプロバイダーとしての進化だけでなく、自社をAI Readyにする際に獲 得したノウハウ自体をサービスとして売っていくことで新たなビジネスを創 出できるため AI Readyのコンサル … AI

    Readyにする過程で得られ たノウハウ自体をサービスとして売っていく 外部からの「データ先進的」というブランドイメージ にも合致 データマネジメントコンサルなどの競合を想定した 際、自社のデータも整備してて他社のコンサルもでき ることが強みになる 9
  2. How 前提 文化や姿勢の観点で、トップダウンや心理的安全性が重要 組織間の仲が良い … 自部署、他部署といった境界は既存業務ベース。AI Readyにする作業は根本 的に既存業務とは異なると思うので、部署による垣根はハードルになる 越境の精神があり、それが制度や評価と整合性が取れている …

    評価制度との整合性はめちゃくち ゃ大事 心理的安全性の高さ … 不確実、変動しやすいものを扱う際は必須の要素 経営が主導 … 組織全体でやらないといけない。影響範囲が全社であり、トップダウンでのアプロ ーチが必須。いろいろな成功事例でも共通している印象 事例: ワークマン — 経営トップが「AI Ready」を明確に定義し、エクセルで培ったデータ文化をPythonで高度化さ せることで、勘と経験に頼らない「未知の市場を突破する組織」を構築(出典) 11
  3. How データアクセスの民主化と質の高いコンテキストによって意義のあるAI Readyを実現する データアクセスの民主化 … 依頼ベースではな く、権限に応じたセルフサービス化。AI Readyの土台となるデータマネジメント、ガ バナンス コンテキストの結合

    … サイロ化したデータ (パネル、ログ、議事録など)をAIが文脈で 繋ぎ、欲しい答えを即座に提示する仕組みを 作る 上記実現のために、複数ステップを踏んでいく。特定の部署 に絞り、そこでの業務に必要なデータや資料を対象とする。 その部署での事例を展開していく 12
  4. How STEP1 データアクセスの民主化 適切なガバナンスの元、各社員が業務で使うデータにすぐにアクセスできる データ管理の方針 … 柔軟性、拡張性は必須要件か 中央集権的 … データレイク

    分散的 … データメッシュ。データファブリック。コンポーザブル。移行コストや今後の拡張性を考えるとこち らに軍配あり? 分散的なデータ管理を考える際、データソース間の連携力が問われる(TOROCCOなどのIPaaS) STEP2のコンテキストも考慮した設計ができるとベター 事例: 東京ガス — 中央集権型→データメッシュ型の分散データ基盤に移行。 「連邦型データマネジ メント」で各事業ドメインが管理責任を持ちつつ中央ハブで疎結合に連携。 (DX注目企業2025選 定) (出典) 13
  5. How STEP1 メタデータの必要性 データ基盤内外の全情報を把握するためのメタデータ 全社規模のメタデータの必要性 データマネジメントの戦略・権限管理を決める際 に全体像を把握し、全社方針策定に繋げる 人、AI双方にとって、データを活用する際の品質 担保となる …

    使うデータ、使わないデータの把 握 会社全体でどこに何のデータがあるかを把握するために メタデータを整備 事例: KDDI — Quollio Data Intelligence Cloudを導入し、デ ータの所在・意味・出自を一元管理。従来240時間かかってい たデータ調査を数分に短縮(出典) 17
  6. How STEP2 コンテキストとの統合 まずはAIがすぐにデータを参照できることを目指したい。コンテキストの質 向上はその後 STEP1が進んでいれば仕組み上「AIがすぐにデータを参照」の達成は難しくないはず とはいえ仕組みを作る上で難しい点も当然ある ガバナンス … AIに持たせるべき権限。メタデータシステムとの統合を考える必要がある

    クライアントとして何を使うか … GWS? Claude Desktop? IDE系? 仕組みを作っても浸透しないという難しさも別である コンテキストの質向上のHowのためには利用されることが必須 事例: パナソニック コネクト — Snowflake基盤上で「ConnectAI」を展開。非構造化データ(PDF図面・設計仕様 書)をAIで解析し照合業務を最大97%削減(出典) 18
  7. How STEP2 業務設計との組み合わせ AIがすぐにデータを参照できるようになった → AIを自然と使えるような業務 設計と組み合わせて利用してもらう データとプロセスを切り離して考える 既存業務のプロセスをいくらヒヤリングしても、AIがない世界での改善 がベースになってしまう

    持ち合わせているデータとやりたいゴールとの行間を埋めるように設 計すると、AIを自然と業務に組み込めるのでは? データ … どのように管理されていて、どのようなフローで最終的 なプロセスにつながっているかを考える必要あり ゴール … 事業単位、ミッション単位で組み立てる際にAI Readyな 思考が求められる 事例: デジタルガレージ — グループ横断データ基盤「Project Castle」 (Snowflake+dbt+Terraform)を構築し、100名規模の営業現場で即座に 活用できる生成AIアプリの稼働まで実現(出典) 19
  8. What AI Readyとは、データ+組織文化を内包する概念である データ … 問いかけから数分で分析がスタートできるAI Readyなデータ基盤 + 日常業務を大きく 変える基盤外のデータソース

    分析、事務作業、資料作成、会議、社内ポータルなど、あらゆる場面でデータ基盤の力が発 揮され、省力化と役割転換(AIに任せる部分と、人間が担う部分)が起こる 組織文化 … データ活用への課題意識を持ち、自律的に改善を回せる組織文化 トップダウンからの変革とはいえ、サステナブルに世界が変わるためにはボトム起点の文化 も必須 特定の部署で小さく事例を作る → その事例を伝導し横展開、の流れが王道に見える 22
  9. What AI Readyがもたらす変革 既存業務の効率化にとどまらず、人間主軸ではできなかった業務が成り立つ ように データ活用者(営業・アナリストなど) 「諦めていた分析」が可能になる 顧客への提案スピード・質が上がり、信頼 獲得、新規顧客開拓に繋がる データ管理者(抽出担当など)

    定型的な「抽出依頼対応」が激減し、業務 負荷が下がる 空いたリソースで、データの品質向上や新 基盤の設計など、本来の価値ある業務に集 中できる 全般的なAI利用 … データを軸にして業務を遂行。過去ドキュメントの網羅的な分析、大量の議事録か ら数分で特定議論内容の抽出、提案ミーティングでのその場での集計やプロトタイプの作成など 23
  10. Appendix: 技術スタック — 各社の構成事例 データ基盤+生成AI活用環境をセットで構築するトレンド 企業 データ基盤 主要技術 AI活用 デジタルガレージ

    Project Castle Snowflake + dbt + Terraform 100名規模営業向け生成AIアプリ 三菱地所 SoDA 全社データ分析基盤 生成AI駆動型アプリ開発環境 三菱UFJ銀行 Databricks Data Intelligence Platform AI開発基盤の統合 三井住友銀行 Azure + Databricks レイクハウス(2026〜27年構築) GenAI活用データPF 日清食品HD Snowflake Intelligence 構造化+非構造化データ横断 自然言語データ問い合わせ パナソニック コネクト Snowflake + Cortex AI ConnectAIエージェントPF 非構造化データ解析 共通点: Snowflake or Databricksをデータ基盤に据え、その上にAI活用環境を一体構築。 「データ戦略なくしてAI戦 略なし」 (パナソニック コネクト) 27
  11. Appendix: 技術スタック — dbt・データメッシュの広がり dbt国内100社以上が利用。データメッシュへの関心が倍増 dbt導入の広がり dbt Labs Japan 2025年1月ローンチ。国内100社以上

    が利用中 NTTデータ — dbt Labsとパートナー契約。 「AI時代の データ民主化」を推進 電通デジタル — 2025年10月にdbt Labsとパートナー 契約 リクルート — dbt+BigQuery MLで営業支援MLモデル の開発・保守 MIXI — dbt Coreでデータ品質維持とデータマート構 築 データメッシュの実践 東京ガス — 集中型→データメッシュ型に移行。連邦 型データマネジメント(出典) JDMC調査 — データメッシュ採用検討: 10.8%→23.8%へ倍増(2024→2025年度) データファブリック採用検討も10.3%→20.2%へ倍増 大手SIerのパートナー化により導入支援の裾野が拡大。デー タメッシュへの関心は急速に高まっている 28
  12. Appendix: 組織・人材育成 — AI Ready組織をどう作るか 技術導入だけでは不十分。人材育成と組織文化の変革が成否を分ける 企業 取り組み ポイント ニトリHD

    データ分析人材 1,000名規模を育成。部署横断データ活用システム構築 全社員がデータを使える文化づくり りそなHD 「データサイエンス部」設立。ブレインパッドと共同でLLM活用人材を育成 AI時代を見据えた人材定義 ワークマン 経営トップが「AI Ready」を定義。Excel→Pythonでデータ文化を高度化 トップダウンの文化醸成 静岡銀行 データサイエンス統括室を設立。AI顧客ニーズ予測+人材育成プログラム 地銀のデータ人材内製化 東京ガス 3,500名が生成AIを活用する組織へ。DX人材拡充による変革創出 データメッシュと人材育成の両輪 ガートナー調査(2025年): 日本企業でデータ活用において全社的に十分な成果を得ているのはわずか2.4%。ツー ル導入が先行し、人材育成やデータ品質の確保が追いついていない(出典) 29
  13. Appendix: 組織・人材育成 — 共通する成功パターン 1. 経営トップの明確なコミット ワークマン: 専務が「データ経 営」を旗印に全社改革 ニトリHD:

    1,000名規模のデー タ人材育成を経営方針化 全社的な取り組みにはトップ ダウンが不可欠 2. 専門組織の設立 りそなHD: 「データサイエン ス部」 静岡銀行: 「データサイエンス 統括室」 推進の核となる組織が必要 3. 小さく始めて横展開 パナソニック: 設計部門→全社 PX-AI デジタルガレージ: 営業100名 →グループ横断 特定部署で成功事例を作り展 開 「経営主導」 「越境の精神」 「心理的安全性」は、他社事例でも共通して確認できる成功要 因 30