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『ALL for SaaS』から学ぶSaaSの立ち上げ方

『ALL for SaaS』から学ぶSaaSの立ち上げ方

 すでに国内でもSaaSという言葉をよく目にするようになりました。その波に乗ろうと、SaaSの立ち上げに取り組む企業も多くなってきています。しかし、その立ち上げ方は各社が独自の手法で手探りで推進しているのが実情です。この課題に真正面から取り組み、SaaS立ち上げの体系化に挑戦した書籍『ALL for SaaS』の刊行にあたり、書籍の概要と執筆時の秘話を展開します。
20210826 『ALL for SaaS』刊行イベント ( https://sebook.connpass.com/event/220458/)で講演

Yoshitaka Miyata

August 26, 2021
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Transcript

  1. VP of Product Management 日本CPO協会理事 宮田 善孝 TW:@zenkou_1211 Linkedin:Yoshitaka Miyata

    ▪職歴 • 2019年にfreeeに入社し、freeeプロジェクト管理のプロダクトオーナーを担当 • 2021年1月よりProduct Managementを統括 • 2021年1月より、日本CPO協会理事 • 現職に至る以前はBooz and company、およびAccenture Strategyにて、事業 戦略、マーケティング戦略、新規事業立案など幅広い経営コンサルティング 業務を経験 • また、DeNA、SmartNewsにて、toCの多種多様なコンテンツビジネスをデータ 分析、プロダクトマネージャの両面から従事 ▪出版 • 『ALL for SaaS SaaS立ち上げのすべて』刊行(2021/8/6) ▪学歴・資格 • 京都大学法学部卒業 • 米国公認会計士 • Certificate of Product Strategy Kellogg School of Management, Northwestern University • Certificate of Measuring and Improving Business Performance Johnson School of Management, Cornell university • Certificate of Business Analytics Specialization Wharton School, the university of Pennsylvania
  2. Agenda 1. 『ALL for SaaS』の概要 a. 執筆に至った背景と経緯 b. 執筆の進め方 c.

    本書の構成 d. 本書の特徴 2. 執筆秘話 a. ブログすら書かずに、いきなり書籍に挑戦した結果 b. 執筆の過程でたどり着いた SaaSの本質 c. toCからtoBのPMに転身し、苦労したビジョン策定 d. 奥が深すぎるプライシング e. 意外と参考文献がなかった盲点 f. 正式版リリース時の顔つき g. フィードバックを元に書いたブランディング 3. まとめ
  3. Agenda 1. 『ALL for SaaS』の概要 a. 執筆に至った背景と経緯 b. 本書の構成 c.

    執筆の進め方 d. 本書の特徴 2. 執筆秘話 a. ブログすら書かずに、いきなり書籍に挑戦した結果 b. 執筆の過程でたどり着いた SaaSの本質 c. toCからtoBのPMに転身し、苦労したビジョン策定 d. 奥が深すぎるプライシング e. 意外と参考文献がなかった盲点 f. 正式版リリース時の顔つき g. フィードバックを元に書いたブランディング 3. まとめ
  4. 『ALL for SaaS』の概要:本書の構成 Part3:事前/深堀り調査と プロトタイピング Part4:開発 Part5:GTM戦略 Part6:リリース Part1:SaaSを取り巻く環境 Part2:SaaS構築の全体像

    • SaaSの概要を確認した上で、パッケージソフトウェアとの比較の観点から SaaSの優位性を確認していく • SaaSを評価していく上で、よく活用される指標を紹介する • SaaSの構築を進める上で、 4つのフェーズを定義し、 Part3〜6で詳細に確認していく • SaaSの立ち上げは関係者が多いため、目標設定として OKRを紹介し、具体的な進め方を紹介する • その中で、中心的な役割の 1つであるプロダクトマネージャを紹介し、求められるスキルセットや役割についても • SaaSを立ち上げるための 調査として、事前/深堀り調 査を紹介する • これらの調査結果を踏ま え、プロトタイプを作成する 手順も併せて確認する • ユーザストーリーマッピン グを元に、OOUIによる設 計を紹介する • 開発手法やプロセスだけ でなく、インフラの全体像も 確認する • さらに、QAも開発の一部 として捉え言及する • GTM戦略をプライシング、 事業計画、販売戦略の 3 つに分解し、それぞれ策 定方法について詳述して いる • また、リーガルについても 特許を中心に言及してい る • リリースをベータ版と正式 版に分け、それぞれの進 め方を紹介する • リリース後になるが、 SaaSの立ち上げ全体を 通した振り返り方にも言及 する Part1-2でSaaS構築に向けた概要を押さえ、Part3-6で実際の構築に沿って詳述
  5. 『ALL for SaaS』の概要:執筆の進め方 • SaaSの立ち上げを推進して いく上で作成した資料
 ◦ タスクリスト
 ◦ 各種MTGの資料や議事録


    ◦ 定期的な振り返り など
 • SaaSの立ち上げに参考にし た文献等
 ◦ SaaSやPM関連の書籍や 記事
 ◦ 各種カンファレンスの議事 録
 ◦ PM関連のトレーニング
 実際実務で作成した資料を改めて全部棚卸し、各種文献により補足しながら執筆 教科書っぽく書かれているが、実は全てが具体例
  6. 『ALL for SaaS』の概要:本書の特徴(1/3) ビジネス書 専門書 テーマ 構成 論旨 表現 仕事や業務

    専門的な分野 わかりやすいフレームワークなどを
 主軸に掲げ、端的に主張を展開 全体を俯瞰し、各論を詳述 正確に理解する上で、最低限の具体例で
 必要な情報を網羅的に記述 主張を2-3割程度に抑え、
 残りを具体例や既知の情報で補足 読み方 精読 速読 文章主体で正確さを追求 図表を活用し、わかりやすさを追求 『ALL for SaaS』は実務家が書いた専門書という立ち位置を採用
  7. Agenda 1. 『ALL for SaaS』の概要 a. 執筆に至った背景と経緯 b. 本書の構成 c.

    執筆の進め方 d. 本書の特徴 2. 執筆秘話 a. ブログすら書かずに、いきなり書籍に挑戦した結果 b. 執筆の過程でたどり着いた SaaSの本質 c. toCからtoBのPMに転身し、苦労したビジョン策定 d. 奥が深すぎるプライシング e. 意外と参考文献がなかった盲点 f. 正式版リリース時の顔つき g. フィードバックを元に書いたブランディング 3. まとめ
  8. 執筆秘話:ブログすら書かずに、いきなり書籍に挑戦した結果 企画 多忙 執筆 倦怠 レビュー 追込 • 書籍を書くという新 しいチャレンジを目

    の前に企画書を書 くのが楽しくて仕方 ない • freeeプロジェクト 管理のリリースに 向け、多忙を極め た • 一時、書籍に関す る取り組みをお休 み • 過去の資料の棚 卸しと参考文献を 読み込みを実施 • 執筆を通して頭の 中が整理される • 文章としての質は 相当低いが、構成 や主張が一通り書 ききって、満足する • 読めるレベルに修 正して、10人超の レビュワーからコメ ントを貰う • ありがたいが、コメ ントの量に圧倒さ れる • 泣きながら直す • 初稿から4校の確 認まで、隔週で眠 れない日々を過ご す 2020/11 2020/2 2020/5 2020/10 2020/1 2020/5 2020/7 モチベーション Agendaができてからが勝負、一通り書ききってもまだ五合目 長期戦を見据えたモチベーションコントロールが重要
  9. 執筆秘話:フィードバックを元に書いたブランディング Part 5. GTM戦略 Chapter 5. 販売戦略実現に向けた準備 Section 1. ブランディング、マーケティングを

    通して実現したいこと 「... 新規SaaSをどのように打ち出し、手に取って 価値を感じてもらい、さらに周りの人に勧めても らえるような状況を作っていくか検討し、打ち出し ていくことが重要である。...」 「...リリースという貴重なタイミングは1度しかこな いので、最大限活用し、露出するべきである。...」  リリースに向け事前に関係者が集まり、各種マーケティング施 策を準備し進め、着実にこなすことができたけど、マーケティン グの結果、潜在ユーザに興味を持ってもらい、どういう状況が 作れているとよいかまでイメージをふくらませて実施できていな かった。  例えば、freeeプロジェクト管理の潜在ユーザの企業が思わず TWにPostしたくなるようなメッセージやアプローチを仕込んでい たり、潜在ユーザの中で、システム導入の意思決定権がない従 業員にも関心を持ってもらえ、上司に相談していたりするイメー ジ。  リリースという貴重な場を最大限活用すべく、上記のような潜 在ユーザに届いたときにどのような状況になってほしいか、アク ションをとってほしいかを含めてマーケティング施策を実施すべ き。 新規プロダクトを立ち上げたこと自体が資産
  10. Agenda 1. 『ALL for SaaS』の概要 a. 執筆に至った背景と経緯 b. 本書の構成 c.

    執筆の進め方 d. 本書の特徴 2. 執筆秘話 a. ブログすら書かずに、いきなり書籍に挑戦した結果 b. 執筆の過程でたどり着いた SaaSの本質 c. toCからtoBのPMに転身し、苦労したビジョン策定 d. 奥が深すぎるプライシング e. 意外と参考文献がなかった盲点 f. 正式版リリース時の顔つき g. フィードバックを元に書いたブランディング 3. まとめ
  11. まとめ • 『ALL for SaaS』の概要 ◦ 本書は壮絶な勘違いから生まれた ◦ 本書の構成は、前半でSaaS構築に向けた概要を押さえ、後半実際の構築に沿って詳述 ◦

    SaaSだけでなく、広く新規プロダクトを生み出す過程を網羅的に解説した専門書がなかったので、 実体験と様々な参考文献を元に SaaSの立ち上げに関する専門書 として刊行 ◦ SaaSだけでなく、新規プロダクトの立ち上げを推進する方々が 迷った時にすぐ参照 し、何かしらの ヒントを得る触媒になってほしい • 執筆秘話 ◦ 書籍を作るのは長く根気がいる 作業で、モチベーションコントロールが重要 ◦ 執筆の過程で何度も思考することで、 SaaSの本質にたどり着けた ◦ ビジョン策定するには、 課題、ソリューション、提供価値の言語化 に取り組むことになる ◦ プライシングは変数が多いが、意外と科学されていて、論理的に設定 できうる ◦ SaaSを立ち上げるにあたって、 事業計画の策定とリリース計画は、意外と参考文献がなく、盲点 に なりがち ◦ どれだけ準備しても、 順風満帆なリリースを迎えることは少ない ので、心に余裕を持って迎えるべき ◦ 新規プロダクトを立ち上げたこと自体が資産 になるので、しっかり振り返りをするべき