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デザイン思考研修 〜人口減少時代の政策デザインアプローチ〜(東京都市町村職員研修所)

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July 28, 2026
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デザイン思考研修 〜人口減少時代の政策デザインアプローチ〜(東京都市町村職員研修所)

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July 28, 2026

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  1. 木村 篤信 (Kimura Atsunobu) Profile 日本リビングラボネットワーク 代表理事 東京都市大学 准教授 地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ)

    地域創生アドバイザー 生駒市「緑の基本計画改定懇話会」 有識者(リビングラボ) デジタル庁 認定Well-beingファシリテーター 総務省 経営・財務マネジメント強化事業 アドバイザー JST RISTEX「ケアが根づく社会システム」 領域アドバイザー 日本デザイン学会 情報デザイン研究部会 幹事 大牟田未来共創センター パーソンセンタードリサーチャー 京都大学デザインイノベーションコンソーシアム/ソーシャルビジネスネットワーク フェロー 横浜市PTA連絡協議会 理事 実践:社会課題解決/ソーシャルビジネス開発 地域経営主体(中間支援団体)運営/伴走 地域共創拠点構築・運営 大牟田市、奈良市, 岡崎市,生駒市, 八丈町,神山町, 天川村,佐渡市, 小松市、尼崎市 浦添市など 研究:共創/リビングラボ/社会システムデザイン 学術論文・書籍 教育:サービスデザイン/ソーシャルデザイン 教育機関 ⑧ メディア・書籍取材 (人手不足、ウェルビーイング、民主主義、自律共生等) ⑨ ⑩ 非営利活動 事業開発,政策立案,コミュニティ開発 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 4
  2. 人口構造の変化:労働供給制約 構造的な人手不足により働き手を補えない「労働供給制約」状況となり、物流、建設・土木、介護、交通、 小売、飲食などの生活維持サービスが維持できない状況が迫っている。 ◯問題意識 「単なる人手不足論ではない。後継者不足や技能承継難、デジタル人材の不足などと いった産業・ 企業視点からの問題ではなく、「生活を維持するために必要な労働力を日 本社会は供給できなくなるのではないか」という問題意識である。」 「労働供給制約社会において最も懸念されるのは、「生活維持サービス」である。物流や 建設・土木、介護・福祉、接客などの職種は既に需給ギャップが

    顕在化しており、著し い人手不足に陥っている。これは「大変だなあ」ではすまない問題でもある。こうした職種 の供給不足を放置すると、私たちの生活に大きなダメージを与える可能性が高い」 ◯予測される状況(日本全体) ①2030年に341万人余、2040年に 1100万人余の労働供給が不足する。 ②労働供給は今後加速度的に減少していく。 ③労働需要はほぼ横ばい。 ◯示される解決策 (1)徹底的な 機械化・自動化 (2)ワーキッシュ アクトという選択肢 (3)シニアの 小さな活動 リクルートワークス研究所発行 『未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる』 (2023年3月) 古屋星斗、リクルートワークス研究所 『「働き手不足1100万人」の衝撃』 (2024年1月30日) (4)待ったなしの ムダ改革 ◯起こりうる変化(パラダイムシフト) 「現在の人手不足が深刻化している状態ですら、まだまだはじまりにすぎないことも教えて いる。2040年にかけての日本における1つの格言は「今が一番人材を獲得しやすい」に なるだろう。去年よりも今年、今年よりも来年のほうが人材確保が困難な状況となる。 こうした実感は企業の採用意欲を加速させ、人材獲得に一層の激しい競争を生み出 す。人材を獲得するために経営戦略を変えたり、資金調達をしたり、新商品を開発し たりといった過去になかった動きを引き起こすだろう」 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 8
  3. 人口構造の変化:労働供給制約 永田町、霞ヶ関、主要な経済団体の政策・戦略検討において前提としての位置づけを得るとともに、産業界等のオピニ オンリーダーが公式の場で使い、メディアも特集を組んで報道すること、それを共通言語に議論を深めることが起き始め ている。 参議院自民党・政策審議会 冨山和彦氏 経営共創基盤(IGPI)グループ会長 ◯日本記者クラブ「働く人材クライシス」(8) (2024年03月27日) 「人手不足問題の論客としても知られる経営共創基盤(IGPI)

    グループ会長の冨山和彦さんが「労働供給制約の時代の労働 (市場)政策」と題して登壇した。」 ◯「参議院自民党政策審議会では、山田太郎 政審副 会長の司会の下、「令和の転換点」がやってくる-働き手 不足1100万人の衝撃 と題し、労働市場分析について 有識者ヒアリングを実施しました」(2024年5月15日) ( https://sangiin-jimin.jp/?p=2176) ( https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/36705/report ) ホワイトカラー消滅: 私たちは働き方をどう変えるべきか (NHK出版) 少子高齢化による深刻な人手不足と、デジタル化の進展による急激な人余 りが同時に起きつつある日本社会。人手不足はローカル産業で生じ、人余り はグローバル産業で顕著に起こる。 これまでの常識に捉われたホワイトカラーは、生き残る選択肢がほとんどなく なってゆく。 企業再生支援の第一人者による、国、組織、個人それぞれの抜本的再生 を促すための緊急提言! Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 朝日新聞 ◯「8がけ社会 高齢化がさらに進む2040年。社 会を支える働き手はますます必要になるのに、現 役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってき ます。今まで通りが通用しなくなる未来を私たちは どう生きるべきでしょうか。」 ※担当デスクによると「労働供給制約社会」の重要性に強く共 感し、特集を組んでいる ( https://www.asahi.com/rensai/list.html?id=2040 ) 9
  4. 財政構造の変化:自然災害リスクの増大 気候変動などの影響で、猛暑日、集中豪雨などの自然災害は増加傾向にあり、また、南海トラフ地震の発生が想定され る中、人命が失われ、インフラが崩壊するなど、暮らしの継続が難しくする状況が高まっている。 日本全国(13地点平均)での猛暑日(最高 気温35度以上)の年間日数は増加している。 最近30年間(1993~2022年)の平均年 間日数(約2.7日)は、統計期間の最初の 30年間(1910〜1939年)の平均年間日 数(約0.8日)と比べて約3.5倍に増加して いる。

    気象庁, https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 大雨の年間発生回数は有意に増加しており、よ り強度の強い雨ほど増加率が大きくなっています。 1時間降水量80mm以上、3時間降水量 150mm以上、日降水量300mm以上など強 度の強い雨は、1980年頃と比較して、おおむ ね2倍程度に頻度が増加しています。 12
  5. 社会的価値感の変化:SDGs 社会の潮流として、サスティナビリティやウェルビーイングなどの新しい価値観が提案され、価値観を実現する 社会にシフトすることが志向されている。 Sustainable Development Goals 2030 (SDGs) wedding cake

    from Azote Images for Stockholm Resilience Centre, 2016. https://www.stockholmresilience.org/research/researchnews/2016-06-14-the-sdgs-wedding-cake.html Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 13
  6. VUCAと呼ばれる前例が通じない(答えの見えない)時代 18 ※Stiehm, Judith Hicks and Nicholas W. Townsend (2002).

    The U.S. Army War College: Military Education in a Democracy. Temple University Press. p. 6. ISBN 1-56639-960-2. Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 18
  7. リソース制約下での新しいモデルの必要性 地方自治体の運営は限界を迎える。持続可能な形で住民サービスを提供し続けるために、ICT活用による「スマート自治 体への転換」と、公共私(自治体・コミュニティ・民間企業等)の連携による自治体の「プラットフォーム・ビルダー化」が必 須 ※自治体戦略2040構想(総務省、2018) 減少する地方公務員 増加するインフラ更新費用 ひっ迫する財政 スマート自治体への転換 公共私によるくらしの維持

    • 新たな自治体や国の施策(アプリケーション)の機能が最大限発揮できるような自治体行 政(OS)の大胆な書き換えが必要 • 破壊的技術(AI・ロボティクス等)を使いこなす自治体へ (自治体のプラットフォームビルダー化) • 自治体は新しい公共私相互間の協力関係を構築する「プラットフォーム・ビルダー化」が必要: 公 • くらしを支えるための地域を基盤とした新たな法人が必要:共 • 全国一律の規制見直し、シェアリングエコノミー等の環境整備の必要性:私 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 19
  8. 政策デザインのパラダイムの変化 社会背景 ・人口ボーナス期 = 拡大・成長期 ・潤沢な供給リソースと需要 ・物質的な豊かさが生活者を充足 ・行政組織による計画的マネジメント (機関委任事務制度) 定常期※

    ・人口オーナス = ・ひっ迫した供給リソースと減らない需要 ・生活者が精神的な豊かさも志向 ・共創によるアジャイル・ガバナンス (地方分権の推進と自治体の自立性強化を踏まえ たプラットフォームビルダー化とデジタル活用) パラダイムの変化 前 例 踏 襲 の 政 策 こ れ か ら の 政 策 実施内容は決まっていてデザインは不要 一方的に実施内容を 企画・提供 提供者 (行政) 利用者 (市民) 実施内容を探索するためにデザインが必要 利用者 (市民) 住民・現場で学びながら 実施内容を企画・提供 提供者 (行政) ※広井(2019)人口減少社会のデザイン, 東洋経済新報社. Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 20
  9. (広義の)デザイン思考とは デザイン思考とは、広義には、「デザイナーの問題解決の考え方を体系的に言語化したもの」 • ハーバート・サイモンが「システムの科学(1969年)」において,デザインのことを 「思考の方法」と言及したのがデザイン思考という単語の始まり。 ※ハーバート・A・サイモン(1999)『システムの科学 第3版』パーソナルメディア • デザイン思考のビジネスへの適用は,1991年にアメリカのデザインコンサルティン グファーム

    IDEOを創立したデビッド・ケリーとトム・ケリーによって提唱され,世界 に広まった。 • 2003年,スタンフォード大学に「d.school(The Hasso Plattner Institute of Design)」が設立され,デザイン以外を専門とする学生やビジネスマンが, 課題解決,課題発見のアプローチとしてデザインを学ぶ機運が高まっていった。 https://mitpress.mit.edu/9780262691918/thesciences-of-the-artificial/ Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 29
  10. デザイン思考の成功事例 Wii 任天堂 iPod Apple Wii シロ( ) 開発のプロセスは、競合他社の製品分析とユーザーがど のように音楽を聴いているのかを徹底的に観察することか

    ら始まった。そこから、ユーザーの多くがCDからPCへ音楽を 保存し、それをプレーヤーに移すことを手間に感じているこ とが発見され、「どこでもその場で選んだ音楽を聴きたい」と いうユーザーの潜在的ニーズを導出した。そして、「音楽の 聴き方に革命を起こす」「全ての曲をポケットに入れて持ち 運ぶ」といったコンセプトが生まれ、回転する円盤のマウス により画面の変更操作できるスクロールホイールやiPodと PCを自動同期させるというアイデアを具現化していった。さ らに、約2カ月で100以上のプロトタイプが制作され、試 作と評価・フィードバックは何度も繰り返された。 https://www.buildinsider.net/enterprise/desi gnthinking/03/ 社員の家庭の観察を通じ、ゲーム機があることで子どもと 親の関係が悪化している、ゲーム機があるとリビングでの 子どもの滞在時間が短いといった状況が確認された。同 時に、鍋を囲んでいる家庭は親密度が高いことなどが明 らかになっていった。そして、「家族が楽しめる」「家族の関 係を良くするようなゲーム機」というコンセプトが生み出さ れ、開発チームが一体となってアイデア創出とプロトタイピ ングが繰り返され、家族がみんなで使えるリモコンのような コントローラーや低消費電力CPU、リビングにおいても邪 魔にならないコンパクトな本体が具現化されていった。コン トローラーは、1000回以上のプロトタイピングが重ねられ たといい、重さや形状、少ないボタン、片手での操作性な ど細かい点を何度も検討して開発された。 https://www.buildinsider.net/enterprise/desi gnthinking/03/ 民泊サービスプラットフォーム Airbnb Keep the Change Program バンク・オブ・アメリカ 当時のニューヨークの物件40件ほどを見ながら、なぜAirbnbが使われるようにならないのか 会話をしていたとき、とある重要な共通点に気がついた。それは「どの家の写真もださすぎる こと」。いくら安く泊れるサービスを提供していたとしても、それがユーザーに対して見える形で 届いていなければ、ユーザーは何にお金を払っているのかわからない。データを用いて検証す るよりも先に現場に行き、手作業で写真を撮って差し替えていった。結果として、売り上げが 一週間でいきなり2倍になった。この1つの出来事がきっかけとなり、彼らはプログラムだけで 全ての問題を解決出来るわけではないと気がついた。 https://blog.btrax.com/jp/airbnb/ 全米の様々な地域における多様な世帯、個人へのインタ ビューを通して見えてきたのは、「家族のお財布を握るのは 多くの場合母親たちである」ということ。そして彼女たちが 手書きで家計簿をつけていることだった。さらにリサーチを 進めると、彼女たちが家計簿をつける際に端数を切り上 げていることを発見。端数を切り上げることで計算も楽に なる上、支出のバッファーとしても機能するからであった。こ の気づきが鍵となり、バンク・オブ・アメリカの口座をデビット カードに紐付けると支払額の引き落としが端数を切り上げ て行われ、その差額分が自動的に貯金されていくサービス 「Keep the Change Program」が生まれた。このプロ グラムは成功し、1230万人のユーザーを獲得、預入額 は$20億も増加し、バンク・オブ・アメリカの新規顧客の 60%がこのプログラムに登録するという結果になった。 https://www.buildinsider.net/enterprise/desi gnthinking/03/ Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 31
  11. 行政におけるデザイン思考の実践事例 佐賀県による「さがデザイン」の 地域課題解決プロジェクト 佐賀県の交通安全・事故対策の取り組み 「SAGA BLUE PROJECT」(SAGAブループロジェクト) https://www.qsr.mlit.go.jp/sakoku/site_files/file/pdf/tr afficsafe/02/006_blue-project.pdf 神奈川県

    横須賀市による 「ChatGPT」活用プロジェクト 横須賀市のChatGPT活用の取り組みを「ChatGPT自身」に答 えさせるボットを作ってみた 自治体AI活用マガジン(運営:横須賀市) https://govgov.ai/n/n4097f8c30311 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 新潟県 小千谷市による 公共施設整備事業 ひと・まち・文化共創拠点ホントカ。がグランドオープンしまし た(9月28日) https://www.city.ojiya.niigata.jp/soshiki/kikaku seisaku/hontoka-grandopening.html 33
  12. 事例1:佐賀県「さがデザイン」による「SAGA BLUE PROJECT」 概要: 行政が実施する場合に画一的なものになりがちなプロモーションやコミュニケーションを 伴う事業について、構想段階からデザインの視点を取り入れ、独創性のあるものとして いくための取り組み。山口知事の提唱で2015年にスタートし、政策部政策チームが担 当している。さがデザインの執務スペース「ODORIBA(オドリバ)」に立ち寄る県庁職 員の事業課題に対してデザイン思考による問題解決を行っている。約100人のデザイ ナーやクリエイターのネットワークを持っており、彼らとのマッチングにより事業をさらに磨き

    上げることもある。庁内コンサルティング機能とデザイナーなど外部とのハブ機能を担って いる。 その中の一つの地域課題解決プロジェクトが、佐賀に住む県民の一人ひとりが「交通 事故ゼロ」を自らの課題として認識し、車の運転や歩行者としてのふるまいなど、日常 生活の中で実際に行動を変えてもらうよう促すことを狙った「SAGA BLUE PROJECT」で ある。4 年間で8 件以上人身事故が発生している交差点に、集中力を高めると言わ れる青色を基調とした青色の四角枠を舗装し、スピードの出し過ぎや急な進路変更 を抑制する効果を狙っている。プロモーションでも県民一人ひとりが自身の行動を変え ていくことを目指し、県民参加型の取組として、地元の小学生が実際の交差点に舗 設された青色の枠の上に、交通安全の願いを込めてお絵描きを行うイベントを実施し ている。 活動: 佐賀県を変えた「デザインの視点」 行政の意識改革がつくり出 す未来像より https://journal.meti.go.jp/p/30075/ 勝手にプレゼンFES SAGAナイトテラスチャレンジ 県庁CLASS(資産活用課) 県庁本館ミーティングスペース「EN-えん-」(林業課) さがアグリヒーローズ(正式名称・さが農村イノベーション推進事業) 佐賀県公式ポストカード(観光課、(一社)佐賀県観光連盟) SAGA2024国スポ・全障スポ Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 34
  13. 事例2:神奈川県横須賀市によるChatGPT活用プロジェクト 概要: 職員数減少に備えて、デジタル技術を活用し業務改革と行政の構造改革を 推進するため、2020年にデジタルガバメント推進室が設立されている。利用者 中心の行政サービスの実現と、新たなイノベーションを創発できる地域の実現 を目的としており、機運醸成とともにデザインやアジャイルで取り組むプロジェク トの実践が重ねられてきた。 引用:令和5年6月5日 横須賀市 経営企画部

    デジタル・ガバメント推進室 ChatGPT活用実証結果報告 より 引用:全庁導入から1年が経過 生成AIを活用した横須賀市の取り組み より その中でも、職員の時間と労力が多くの文書作成に割かれている現状に対し て、ChatGPTを活用し、文章案の生成や質問への返答支援などを行い、職 員の負担を軽減する取り組みがある。2023年4月より全職員を対象に ChatGPT活用実証が行われ、国内外の多方面で取材・放送を通じて注目さ れた。6月の実証結果報告では、半数以上の職員が利用した結果、業務効 率が大幅に向上し(文書作成に関しては、約1年間で22,700時間の業務 時間削減効果)、また、職員の業務効率向上の実感や継続利用の意向も 高かった。一方で、ChatGPTへの質問や指示の仕方や、利用方法に課題が あることが明らかになった。以降、継続的な活用推進と積極的なノウハウ展開 を行っている。 また、不適切・不正確な返答をする可能性のあるChatGPTを活用したチャット ボット「ニャンぺい」を実験的に公開し、改善フィードバックを得るとともに、市 民・社会の受容性を確認・醸成することにもトライしている。 活動: 引用:横須賀市 生成AIを活用したお悩み相談チャットボットの公開実 験スタート より チャットGPT通信(継続的な使用方法やトピックの周知) 横須賀市AI戦略アドバイザーの配置 チャットGPT研修(活用スキル強化プログラム)の導入 市役所内プロンプトコンテストの実施 (当時の最新バージョン)ChatGPT-4の導入 他自治体等へのノウハウ共有のための横須賀生成AI合宿開催 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 35
  14. 事例3:新潟県小千谷市による公共施設整備事業 概要: https://www.city.ojiya.niigata.jp/soshiki/kikakuseisaku/ojiyalivinglabo20211218.html 旧小千谷総合病院の統合移転に伴う跡地整備の計画として、図書館を核 とした複合施設を整備し、中心市街地の活性化を図る事業が起点になった プロジェクト。その根幹には、「自分たちの社会を自分たちでつくる」というリビン グラボの思想と重なり、新しい公共、新しい公共空間をみんなで創っていく対 話的なプロセスが大事にされた。そして、「つくる」「つかう・参加する」「見つけ・ 動かす」などにフェーズを区切りながら、まちや公共施設における市民の関わり 代を生み出していった。2020年12月のプレイベントより始まったこのプロジェク

    トを経て、2024年9月に施設「ひと・まち・文化共創拠点 ホントカ。」がオープ ンし、市民が関わる多数の活動が行われている。 従来は行政と委託事業者だけで進めていたプロセスを、市民や事業者に開 き、みんなで創っていくプロセスとなるように事業が設計された。また、施設の 設計においてもハード中心ではなく、その後の活動が中心となるように、地域 の若者、子育て世帯、高齢者など多様な人が活動しやすくする仕掛けを埋 め込んでいる。 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/375139#google_vignette 活動: 市民参加プラットフォームを育てるためのシンポジウム 第1~16回小千谷リビングラボ「まちと公共施設の未来をともに創造する」 小千谷リビングラボ(仮称)愛称市民投票 出張at!おぢや(ふるさと夢づくり教育) 新潟工科大学連携プログラム 共にある 共に創る暮らし「鰯新聞」(いわしんぶん) 引用:新潟県小千谷市候広報(Instagram)、小千谷市市役所 ホームページ、新潟日報デジタルプラス より Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 36
  15. 行政における実践事例のポイント ・まずやってみて、やりながら調整していく ・デザイナーやクリエイターなど外部人材と連携する ・市民や事業者に開き、みんなで創っていく対話的なプロセス https://www.qsr.mlit.go.jp/sakoku/site_files/file/pdf/trafficsafe/02/00 6_blue-project.pdf 引用:佐賀県の交通安全・事故対策の取り組み 「SAGA BLUE PROJECT」

    ( SAGAブループロジェクト) について より https://www.city.ojiya.niigata.jp/soshiki/kikakuseisaku/ojiyahttps://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0835/nagekomi/20240520_soudanbot_nyanpei.html livinglabo20211218.html 引用:小千谷市役所ホームページより 引用:横須賀市ホームページより Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 37
  16. デザインを学ぶには何が必要か? 1.実践的に手を動かして表現すること (やって) 2.その結果やプロセスを言葉でふり返ること(みて) 3.(課題や状況を)理解すること (わかる) ※須永 剛司, 芸術のデザインからデザイン学を展望する, 計測と制御,

    2015, 54 巻, 7 号, p. 462-469. デザインの学ぶために必要なのは、 「手を動かすこと(活動)」と「ふり返ること」 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 須永 剛司(公立はこ だて未来大学・東京藝 術大学 名誉教授) 40
  17. デザインプロセスの全体像 本講座では、d.schoolが発行している「スタンフォード・デザイン・ガイド デザイン思考 5つのステップ」※に基づいて、 プロセスを解説する。 デザイン思考のプロセス EMPATHIZE(共感):ユーザに 関心を持ち、彼らの状況を理解 するよう努めるステップ。インタ ビューや行動観察などを行う。

    IDEATE(創造):ありうる多 様なアイデアを生み出すことで、 当たり前のことを超えるアイデア を探求するステップ。 TEST(テスト):プロトタイプを試 し、観察とフィードバックによって改 良するステップ。このデザインが提 供する独自の価値を磨く。 DEFINE(問題定義):共感ステッ プで得られた気づきを処理し、統 合するステップ。このデザインで取り 組むべきユーザの問題を見定める。 PROTOTYPE(プロトタイプ):ア イデアを物理的な形に変え、それ 使って体験し、対話するステップ。そ の過程で学び、より多くのユーザへの 共感を得ることができる。 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs ※https://web.stanford.edu/~mshanks/MichaelShanks/ files/509554.pdf An Introduction to Design Thinking PROCESS GUIDEより 41
  18. 例:ブレインストーミング ・自由な発想で多くのアイデアを出し合い、問題解決や新しい 価値を生み出す手法 ・1940年代に広告業界で活躍したアレックス・F・オズボーン氏 が提唱したことで普及 ・特定の答えに縛られず、メンバーが多角的な視点から意見を 出すことを志向 ・個人では思いつかないアイデアが生まれます。会議やプロジェク ト初期段階で活用されることが多く、創造性を最大限に引き出 すための重要なアプローチです。

    ディスカッションとの違い ディスカッション(discussion)は、メンバー同士で討論したり、 間違った意見を正したりする会議手法のことです。ディスカッショ ンは意見をぶつけ合って結論を出すことを目的としていますが、 ブレインストーミングは意見を出し合って昇華させることを目的と しており、その点で大きな違いがあります。 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 57
  19. 例:ブレインストーミング 集団作業 → 知的能力向上@知的パフォーマンス判定 Woolley AW, Chabris CF, Pentland A,

    Hashmi N, Malone TW. Evidence for a collective intelligence factor in the performance of human groups. Science. 2010. 科学的にも YES! Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 58
  20. 例:二段階ブレインストーミング What 創 造 性 ( 新 規 性 +

    有 用 性 ) How(実現方法)ブレスト ( 価 値 ) ブ レ ス ト ◦ 2段階ブレストすることで 創造性&実現性を 高められる! ユーザ価値と実現方法を分離すると、 “良い”アイデアを出しやすい × 実現性が高まってから 創造性を高めるのは至難 意識しないと実現性の高いブレ ストをしてしまう 実現性 ※二段階ブレインストーミング(石井力重、2013)をもとに筆者改変 https://www.slideshare.net/slideshow/ss-27631322/27631322 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 59
  21. アイデア検討シート ワークの説明 アイデアの何が面白いのか仮説をたてると共に、 人に伝えられるようにストーリーを作成します。 得られる結果 自分達の頭の中にあるアイデアと そのアイデアの特徴が整理されたConcept Tailorのリスト 仮説 ストーリーボ

    ード コンセプ トの仮説を具体化しましょう! サービ スコンセプトを伝えやすくしましょう 1-1 ユーザーの課題やニーズ は 何で すか? 1-1 課題&ニーズ 1-2 コンセプト 絵 絵 ストーリー ストーリー 1-3 実現手段 1-4 ゴール 絵 絵 ストーリー ストーリー コンセプト創出 1-2 ど のようなコンセプトで 解決しますか?(提供価値) 1-3 ど のような手段で実現しますか?(デ バイスなど ) 1-4 ユーザーはサービ スを通じてどうなりますか? Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 76
  22. アイデア検証シート ワークの説明 得られる結果 アイデアの何が面白いのか仮説をたてると共に、 人に伝えられるようにストーリーを作成します。 自分達の頭の中にあるアイデアと そのアイデアの特徴が整理されたコンセプトテーラーのリスト コンセプト創出 人に聞く ストーリーを伝えて、仮説についてインタビューをしましょう

    ※できるだ け具体的に、そうなんですね、なぜですか?、それは面白いですね、などを駆使して深掘りしましょう インタビ ューをした相手はど のような人? - 職業は? - 住まいと家族構成は? - 差し支えなければ年代(年齢): - 性別: - 自由記述(その他の属性): 似顔絵 3-3 実現手段について - 自分で使っている状況を想像できますか?それはど んな状況ですか?(5W1H) - コンセプ トを体現するうえで この実現手段はどうですか?それはなぜですか? - その状況はどれぐらいの頻度で発生しますか?(毎日?毎週?毎月?) 3-1 課題&ニーズについて - 自由記述(その他の質問をした場合はこちらに) - 課題/ニーズ は自分事として共感できますか?どんなところに共感できますか? - 課題/ニーズ について,具体的にどのような経験をしたことがありますか? - 自由記述(その他の質問をした場合はこちらに) 3-4 ゴールについて - このようなゴールを達成で きたら自分事として良いで すか?それはなぜ ですか? 3-2 コンセプ トについて(提供価値) その他: - このサービスを自分で使いたいと思いますか/思いませんか、なぜそう思うので すか? - コンセプ トには共感できますか?具体的に、どのような理由からですか? - 誰か、すすめたい人はいますか?それはど のような人ですか? - このようなことができたらいかがですか(嬉しい?便利?)?それはなぜですか? - このサービスに、いくらなら払っても良いと思いますか?その理由はなぜ ですか? - 自由記述(その他の質問をした場合はこちらに) Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 79
  23. デザインを学ぶには何が必要か? 1.実践的に手を動かして表現すること (やって) 2.その結果やプロセスを言葉でふり返ること(みて) 3.(課題や状況を)理解すること (わかる) ※須永 剛司, 芸術のデザインからデザイン学を展望する, 計測と制御,

    2015, 54 巻, 7 号, p. 462-469. デザインの学ぶために必要なのは、 「手を動かすこと(活動)」と「ふり返ること」 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 須永 剛司(公立はこ だて未来大学・東京藝 術大学 名誉教授) 82
  24. 政策デザインのパラダイムの変化 社会背景 ・人口ボーナス期 = 拡大・成長期 ・潤沢な供給リソースと需要 ・物質的な豊かさが生活者を充足 ・行政組織による計画的マネジメント (機関委任事務制度) 定常期※

    ・人口オーナス = ・ひっ迫した供給リソースと減らない需要 ・生活者が精神的な豊かさも志向 ・共創によるアジャイル・ガバナンス (地方分権の推進と自治体の自立性強化を踏まえ たプラットフォームビルダー化とデジタル活用) パラダイムの変化 前 例 踏 襲 の 政 策 こ れ か ら の 政 策 実施内容は決まっていてデザインは不要 一方的に実施内容を 企画・提供 提供者 (行政) 利用者 (市民) 実施内容を探索するためにデザインが必要 利用者 (市民) 住民・現場で学びながら 実施内容を企画・提供 提供者 (行政) ※広井(2019)人口減少社会のデザイン, 東洋経済新報社. Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 84
  25. 統合的なウェルビーイング指標に基づく政策デザイン ➢ Well-Being(地域幸福度)指標は、暮らしやすさや幸福感を数値化・可視化したもの。主観指標(市民 アンケート)と客観指標(オープンデータ)で構成され、Well-Beingを構成する24の因子で評価される。デ ジタル庁が推進しており、総合計画・基本計画・総合戦略、予算計画、ふるさと納税等で活用されてい る。 主観指標(アウトカム指標) 【市民アンケートによる主観データ】 5つの総合指標 【幸福度】

    あなたはどの程度幸せですか 【5年後の幸福度】 今から5年後、 あなたはどの程度 幸せだと思いますか 【生活満足度】 あなたの住んでいる地域の暮らし にどの程度満足していますか 【町内の幸福度】 あなたの町内の人々は、 大体において、どれぐらい 幸せだと思いますか 【周りも楽しい】 自分だけでなく、身近な まわりの人も楽しい 気持ちでいると思う https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/ 157507/siryou_kentouiinkai01.pdf 引用:第 1 回 浜松市基本計画検討委員会より https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/pdf/20240119160911_2.pdf 引用:令和6年度品川区 当初予算案 プレス発表 より 暮らしやすさに関する因子 都市環境 自然環境 地域の 人間関係 自分らしい 生き方 客観指標(アウトプット指標) 【オープンデータによる客観データ】 暮らしやすさに関する因子 都市環境 自然環境 地域の 人間関係 自分らしい 生き方 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs R6年度よりデジタ ル庁によるWellBeing指標活用 ファシリテーター紹 介・派遣事業が開 始(5万円〜) 86
  26. 行政におけるデザイン思考とは デザイン思考を実質的に機能させるためには、行政職員がマインド・スキルを習得するだ けでなく、行政の業務環境が、「市民・地域のための価値を志向する環境」に変容する必 要がある。岐阜県飛騨市では、職員が向き合える環境として、政策協議のプロセスを取 り入れている。 4月 5月 6月 総合計画・従来事 業を継続的に遂行

    するための「予算協 議」のプロセス(一 般的な自治体) 市民・地域のための “目的”を重視する 「政策協議」のプロ セス(飛騨市) 首長が 予算編 成方針 を発表 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 各課が 予算要 求案を 作成 首長が 予算編 成方針 を発表 各課が 予算要 求 首長が 最終査 定 市長・ 財政課 が予算 協議 財政課 が査定 2月 3月 各課と総合政策課が事前協 各課ごとに、市長・財政課等 首長が 議(議会・市民の声をリスト を含めて政策協議(31日間、 最終査 化して網羅的に検討した上で、 延べ80時間以上を費やし、 定 政策協議シートを作成) 600を超える全事業について 徹底的に議論) Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 88
  27. 行政におけるデザイン思考とは 岐阜県飛騨市では、「支援ラボ事業」という試行錯誤できる政策パッケージの一環で、発 達の悩みを抱える子どもの保護者の声から、子供たちや、子どもたちへの対応に悩んでい る教員たちに対して作業療法士が相談にのる「学校作業療法室」を開設し、子どもたち が安心して学校に通え、教員たちも教育に専念しやすい環境を生み出している。 取り組み内容 • 子どもの発達に悩みを抱える保護者から「進級で先生が毎年変わるのが困る。ずっと発達 を見てほしい」と言われたことがきっかけで、身体面・精神面・社会面をトータルに支援する 作業療法士が学校に訪問する「学校作業療法室」を開設。子どもたちの学習や生活の困りごと、

    教員の子どもたちへの対応等での困りごとなどに対応している。 • 障害や発達を医療面から支えるだけでなく、療育機関や学校につなげるためにも行政として 実施する必要があると考え、児童精神科単科のクリニックを行政直営で設立。健診で子ども •健康福祉総合計画の大切な部分(コンセプト)を伝えるために制作。 の発達に問題を指摘された保護者がクリニックに行くハードルを下げるために、乳幼児健診 施設や子育て支援センターと同じ建物の一角に設置している。 子ども自身が主体的に悩みを解決 するための「作戦」を立て、失敗を 楽しみながら目標達成に向かう 民間では採算が取れないことも、行政 直営で実施した理由のひとつ • 不登校や生活困窮、夫婦喧嘩などあらゆる相談ができる地域生活安心支援センター「ふらっ と」を開設し、どのような課題を抱えた人でも相談できる体制を構築している。 成果 地域生活安心支援センター「ふらっと」の職員と都竹市長 • 作業療法士が学校に直接入ることで、子どもの行動の背景や意味を学校に直接伝えることができるようになり、単なる迷惑行動として扱われるこ とが減少。保育園から学校への引き継ぎの質も向上している。 • 作業療法士が子どもの悩みに対して一緒に「作戦」を立て、失敗を楽しみながら取り組むことで、子どもたちの間で相談することをポジティブに捉える 雰囲気が生まれ始めている。 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 89