Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

+NARU NIHONBASHI 「リビングラボって何だろう?」市民・企業・研究者・まちの新し...

+NARU NIHONBASHI 「リビングラボって何だろう?」市民・企業・研究者・まちの新しい共創の現場 2026/06/03 (Wed) 19:00 - 21:00

Avatar for Kimura Atsunobu

Kimura Atsunobu

June 02, 2026

More Decks by Kimura Atsunobu

Other Decks in Design

Transcript

  1. 1 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 木村 篤信

    日本リビングラボネットワーク 代表理事 東京都市大学 准教授 地域創生Coデザイン研究所 地域創生アドバイザ 「リビングラボ」ってなんだろう? +NARU NIHONBASHI キックオフイベント 2026/6/3
  2. 木村 篤信 Kimura Atsunobu ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究 ヴァーチャル・リアリティや仮想空間(メタバース)、それ にまつわるメディア研究に従事 サービスデザイン研究 テクノロジーを開発するだけでなく、人や社会の真のニーズ を見極め、使いやすく、こころを動かされる体験を設計する

    ための研究 ソーシャルデザイン研究(大牟田リビングラボ、奈良リビングラボ等) 企業だけでなく、地域や当事者といっしょにモノやコトを共 創する方法論(リビングラボ)の研究 地域創生Coデザイン研究所設立(社会システムデザイン方法論を提唱) NTTグループの地域創生専門組織新を立上げ、地域の市民団 体、自治体、企業が、それぞれの役割を超えて共創し、主体 的に地域づくり・地域経営に取り組むための研究、伴走 一般社団法人 日本リビングラボネットワーク設立 日本全国で100以上のリビングラボが立ち上がる中で、欧米の借り物ではない、日本の 社会文化的な背景を踏まえた実践と方法論を探求するコミュニティを運営 日本リビングラボネットワーク 代表理事 東京都市大学 准教授 地域創生Coデザイン研究所 地域創生アドバイザ JST RISTEXケアが根づく社会システム 領域アドバイザ 生駒市 緑の基本計画改定懇話会 有識者 デジタル庁 認定Well-beingファシリテータ 総務省 経営財務マネジメント強化事業 アドバイザ 日本デザイン学会 情報デザイン研究部会 幹事 大牟田未来共創センター パーソンセンタードリサーチャ 京都大学デザインイノベーションコンソーシアム フェロー ソーシャルビジネスネットワーク フェロー
  3. 3 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs Reacent works

    政策イノベーションのためのリビングラボ (教育、介護・予防、雇用、住まい、移動・交通、合意形成・意思決定etc.) (大牟田、佐渡、会津、松本、神奈川MI-BYO・・・) 産業・ビジネス開発のためのリビングラボ (デスラボ、鎌倉リビングラボ、ナスコンバレー、つくばみんラボ・・・) 地方創生のためのリビングラボ (神山つなぐ公社、三豊, 丹後・・・) 公共施設開発・エリマネのためのリビングラボ (小松、小千谷、おやまち、たまプラーザ・・・)
  4. 4 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 本日のトピックス •リビングラボとは何か?

    •リビングラボの事例 •リビングラボの特徴と社会イノベーション
  5. 6 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 協働と共創:いずれもセクターを超えた共創の方法論 「Co-Procuction:協働」

    (行政学・社会学用語) 1977年~ 米インディアナ大の政治学者ヴィンセント・オストロムが、「地 域住民と自治体職員とが協働して自治体政府の役割を果 たしてゆくこと」の意味を一語で表現するために造語したもの。 (Comparing Urban Service Delivery Systems, 1977) 日本では、荒木昭次郎がCo-Procuctionを「協働」と訳し、 「地域住民と自治体職員とが、心を合わせ、力を合わせ、助 け合って、地域住民の福祉の向上に有用であると自治体政 府が住民の意思に基づいて判断した公共的性質をもつ財 やサービスを生産し、供給してゆく活動体系である」と定義 (参加と協働:新しい市民=行政関係の創造, ぎょうせい, 1990) 「Co-Creation:共創」 (経営学・マーケティング学用語) 2004年~ 米ミシガン大ビジネススクール教授コインバトール・K・プラハ ラードとベンカト・ラマスワミが提起した「企業が、様々なステー クホルダーと協働して共に新たな価値を創造する」という概念。 (The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers,2004) これからの時代、顧客と一緒になって価値を生みださなけれ ば企業は競争に生き残れないと説き、「企業主体の価値創 造」から「顧客中心の価値共創」の時代へという新しいパラダ イムを提示した。
  6. 7 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは『セクターを超えた共創活動』 Steen,

    K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本 における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局
  7. 8 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは Carayannis,

    E.G., Campbell, D.F.J., 2009. “Mode 3″ and “Quadruple Helix”: toward a 21st century fractal innovation ecosystem. Int. J. Technol. Manag 46, 201. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model モノ・コトをつくるときに 生活者と行政・企業・大学が共に 暮らしの場(リビング)において 試行錯誤(ラボ)をする活動・場 (人口減少時代の社会課題解決に必要な方法論 ≒コレクティブ・インパクト) デンマークのスマートシティ研 究者とともに、日本初のリビン グラボ書籍(教科書)を刊 行。北海道から沖縄まで全 国30カ所で対話イベント実 施中。 千葉工業大学(情報学部・デザイン学部) 関西学院大学(イノベーション研究会) 官民共創HUB×東京大学(産官学民関係者) 徳島県神山町(地域創生関係者)
  8. 9 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 世界のリビングラボの分布(ENoLL過去登録済みリビングラボ 500+@40か国,ENoLL,

    2024) ※ENoLLとは 欧州で2006年に立ち上がったリビングラボの 国際的ネットワーク。欧州委員会の資金提 供プロジェクトを活用しながら、EUの政策提 言や、リビングラボの推進に取り組んでいる。 出典:https://enoll.org/
  9. 10 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボの年表と分布 2005.03

    仙台フィンランド健康福祉センター 2006.09 Lions Living Labo 2010.01-2014.03 湘南リビングラボ 2010.11 経産省 情報政策課 リビングラボ紹介 「情報政策の要諦ー新成長戦略におけるIT・エレクトロニクス政策の方向性」 2011.10 みんなの使いやすさラボ(みんラボ) 2011.12 BABAラボ 2012.08 富士通総研 リビングラボ研究レポート 2012.10 おたがいさまコミュニティ 2013.02 Living Lab Tokyo 2013.07 Virtual Living Lab 2014.12 松本ヘルスラボ 2015.01 三浦リビングラボラトリー 2015.04 子育てママリビングラボ 2015.09 Cyber Living Lab 2016.01 第5期科学技術基本計画(Society5.0) 2016.01 八千代リビングラボ 2016.06 みなまきラボ 2016.07 産総研スマートリビングラボ 2016.07 東急WISE Living Lab 2016.11 鎌倉リビング・ラボ ほか5件 2017.01 井土ヶ谷アーバンデザインセンター(井土ヶ谷リビングラボ) 2017.05 ともに育むサービスラボ(はぐラボ) 2017.06 福岡ヘルス・ラボ 2017.09 経産省 ヴィンテージ・ソサエティ構築実証事業(リビングラボ4 件) 2017.09 神奈川ME-BYOリビングラボ 2017.10 高石・僥倖リビング・ラボ 2017.12 ドリームハイツ ヘルスケア リビングラボ(とつかリビングラボ) ほか9件 2018.02 大牟田リビングラボ 2018.03 横浜リビングラボ創生会議 2018.04 第一回リビングラボネットワーク会議 2018.04 こまつしまリビングラボ 2018.07 経産省 「未来の教室」実証事業(大牟田リビングラボ含む4件) 2018.10 サイクル・リビングラボ 2018.11 地域共創リビングラボ ほか10件 2019.02 Well Being リビングラボ 2019.03 第二回リビングラボネットワーク会議 2019.10 岡山リビングラボ ほか3件 2020.07 関内リビングラボ 2020.08 厚労省 「介護ロボットの開発実証普及のプラットフォーム事業」 (リビングラボ6件) 2020.03 経産省 リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの 創出に係る調査「リビングラボ導入ガイドブック」 2020.10 おやまちリビングラボ 2020.11 奈良リビングラボ ほか8件 凡例) オレンジ色:日本全体の動き 黒色:他の日本での取り組み ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、 (調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局を元に作成 日本のリビングラボデータベース (100件以上のリビングラボが存在) ※日本リビングラボネットワーク 実践事例部会調べ ( 2023/04 時点 ) 佐渡自然共生ラボ 大牟田LL おやまちLL 丹後LL 鎌倉LL 未来LL 磯子杉田LL みんなのまちづくり スタジオ ふじみ野LL はぐラボ むlabo TEN no KUNI Folke LLs Academy
  10. 11 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボ実践者ネットワーク&実践知対話会 Over

    300 participants in Living Labs conference 2023 https://note.com/jnoll/n/nabdc8b09ffde
  11. 15 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボが活用される場面 欧州をはじめとしてさまざまなプロジェクトが取り組まれており(440+)※1日本では経産省・厚労省が活用し

    始めている(100+)※2また、大きくは以下の4種の場面で活用されている※3 ②行政サービス改善 (enabler-driven) -住民・NPOと自治体の関係性構築 -陳情や自治体の政策エビデンス獲得 -地域としての政策イノベーション by自治体・住民/NPO etc. ①サービス・技術開発 (utilizer-driven) -サービス検証 -サービスイノベーション創出 by民間企業・大学etc. ③地域活性化 (user-driven) -地域関係者のつながり形成 -地域のにぎわいづくり(イベント) -持続的な住民生活の問題解決・価値向上 by住民/NPO・デベロッパー・ 自治体 etc. ※1:European Network of Living Labs (ENoLL) 5大陸35カ国から151組織のアクティブメンバー(過去の登録メンバーは全 世界で500組織以上)(2023.04) ※2:木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、(調査資料 2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ※3:Leminen, S., Westerlund, M., & Nystrom, A. G.(2012).Living Labs as open open-innovation networks, Technology Innovation Management Review Review. ④方法論研究 (provider-driven) -方法論の実践 -方法論の体系化と展開 By大学・研究機関 etc. 松本ヘルスラボ ME-BYOリビングラボ 丹後リビングラボ 佐渡島自然共生ラボ イノベーション神戸 Turinリビングラボ ・・・ 鎌倉リビングラボ みんラボ フューチャー・リビ ング・ラボ(日立) ノボ ノルディスク エーザイ韓国 ・・・ おやまちリビングラボ 寿リビングラボ WISEリビングラボ デルフト工科大 ・・・ 東大 KDDI研 NTT研 i-mec Public- intelligence ・・・
  12. 16 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボに関連する国内政策 第6期科学技術・イノベーション基本計画

    内閣府 COI-NEXT、地域大学振興 文部科学省 産業開発・イノベーション政策 経済産業省 介護ロボット開発・実証 厚生労働省
  13. 18 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 権力勾配や認知的不正義の起きやすい地域/組織における 「議論・意思決定」のボトルネック

    たとえば、介護予防がテーマで、医者、看護師、行政職員、市民が議論しているとすると、 以下のようなボトルネックが発生する 医師 行政職員 看護師 市民 関係性上、言いたい ことが言えない 専門的な知識が なくて話しづらい 民間人の発言には 気を遣う 権力があり自分だけ の目線で語りがち
  14. 19 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 忖度と縦割りによる 地域/組織における「議論・意思決定」のボトルネック

    空気社会、縦割り構造の日本においては、特に、現場の価値に根差した議論が深まりず らい構造(ボトルネック)がある アイデア出し ディスカッション 意思決定・優先順位付け 意見交換 (ポジショントーク) 目標・目的/論理・根拠 ビジョン・判断基準・制約 議 論 の 広 が り 議論の深まり 地域のイベント (WS等) 多くの審議会・協議会 ・業界団体内 ほとんど存在しない (「意見交換」化している) 意思決定者が決定 地域/組織における「議論」 地域の 審議会 企業の 経営会議 地域の 審議会 企業の 経営会議 アイデアの広がり 当事者参加:多 (市民、現場担当者、ユーザ) 当事者参加:少 当事者参加:なし 磨かれた意見 選ばれた意見 決定された施策 当事者参加:- それぞれ、担う役 割としての意見は ある(公式見解)
  15. 20 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 地域には多くの「会議」がある 一方で、「議論」になりづらい

    (構造的な問題) テクノロジーが発展している 現状、効率化への活用 積極的な議論・意思決定 (やらないことを決める) 「人の可能性を引き出す」 テクノロジーの活用 労働供給制約と呼ばれる構造的な人手不足 地域の議論における構造的問題を解決する「会議シンギュラリティ」 ①大牟田における中小 企業の生産性向上に 向けた施策の検討 ②大牟田における 介護予防施策の検討 議論・意思決定が 必要な地域のテーマ 知識はあるが文脈を読まない AIの発言機能
  16. 21 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs ・本イベントの趣旨説明 ・生成AI技術についての説明

    テーマ:中小企業支援&介護予防 |開会 15分 ・AIたちによるアイデア出し (パート1) ・個人ワーク→グループ内共有→全体共有 |会議前半 40分 |休憩 ・AIたちによる議論 (パート2) ・個人ワーク→グループ内共有 ・グループワーク→全体共有 |会議後半 45分 ・アンケート記入等 |閉会 5分 会議シンギュラリティの流れ
  17. 23 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 人間が安心して発言できる場で「AI同士の発言」を見る効果 AIが余白のある80点程度の発言

    人間側が無礼講状態になり、発言可能な領域が増えた 同じ属性の専門家がAIに付け足す・批判するなど発言が引き出された 通常言いづらい関係でも、AIが 空気を読まずはっきりと批判
  18. 26 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 事例:日々の暮らしで使うものを自分たちでつくる 概要:

    デンマークのエグモント・ホイスコーレとは、障害者と健常者が共に助け合い ながら学び、生活する全寮制の学校。学校でありながら、同時に、障がい 者の日々の問題を解決するリビングラボとしての役割も持ち、地域や産業 界と連携の中で新しい価値を生み出している点が注目されている。 主体:Egmont Højskolen (How, Denmark) 活動: 車いすでも楽しめるスイミングプールVandhalla (ヴァンダラ)の企画・開 発。障がい者と健常者の生徒がチームを作り、初期 から設計に携わった 特設プールで、プール専用の車いすに乗り換えがしやすい更衣室や車いす のままプールに入れるスロープだけでなく、車いすの人やストレッチャーに乗っ た人でも滑ることができる全長 90m のウォータースライダーも備えている。 全身麻痺の障害者が校内を自由に行き来するために、視線入力インタ フェースを備えたタブレット端末で操作ができる電動車いすが開発された。 地域との関わり方: エグモント・ホイスコーレやヴァンダラは地域に開かれた形で運営されており、 地域の住民が利用することができる。また、全寮制の学校であるため、障 害者と健常者の日々の暮らしそのものが、リビングラボの対象となる開かれ た生活空間となっている。 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  19. 27 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 事例:これからのまちのモデルを地域の現場でつくる 概要:

    1世紀にわたる造船業によって荒廃し土壌汚染していた造船所跡地を改善す るため、アムステルダム市が民間公募して生まれた循環型都市開発のためのリ ビングラボ。アムステルダム北部に位置する敷地面積1250m²の小さなエリアで、 地域のエネルギー、栄養素、廃棄物サイクルの「ループを閉じる」完全なリサイク ルを実現する再生技術の開発や実証に、建築家、芸術家、起業家、研究者、 ボランティアなど多様な組織が協力して取り組んでいる。アムステルダム市からの 補助金(€250,000)と市の保証による銀行融資(€200,000)を受けて 資金を調達している。14隻の貸し出しハウスボード、ラボ&コミュニティ施設、レ セプションスペース、カフェ・レストランから構成され、文化的およびコミュニティのハ ブとなっている。サーキュラー・エコノミー 賞(2014) を受賞。 主体:Metabolic社 (2014~2024)(De Ceuvel) 活動: ハウスボートは廃船をアップサイクル利用し、根を通して汚染物質を吸収して分 解する特殊な植物で覆う「ファイトレメディエーション」を開発 再生可能エネルギーの地域生産と交換を促進するため、ブロックチェーン技術を 用いた仮想通貨のJouliette(ジュリエット)を導入 温室で育てた植物、海藻バーガー、キノコで作ったミートボールなどを敷地内レ ストランで提供 地域との関わり方: 毎年35,000人を超える訪問者(Covid-19前)。 作り手として関わるイベント(土壌を回復させる植物を植える、カフェやハウス ボートオフィスなどのテーブルなどに釘を打つ、オフィスのデザイン等) ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  20. 28 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 事例:自分たちでまちの活動計画をつくる 概要:

    「よく出来た計画書をつくっても、実行出来なければ意味がありません」とい う文章で始まる神山町の創生戦略、人口ビジョンの計画書。実行するた めの計画を作るために、「2020年に神山分校が廃校に」「バスが廃線にな る」「2040年には小中学校も廃校に」などの「なりゆきの未来」を共有した 上での対話のプロセスが重視され、地域から実行する人がでてきた事業を 計画にする、というアプローチが取られた。その結果、町民や役場職員を主 体としたプロジェクトが生まれ、まちを将来世代につなぐための循環が生まれ ている。 主体:一般社団法人 神山つなぐ公社、神山町 (2016~) 活動: 「神山の食と農をつなぐ」フードハブプロジェクト 大埜地の集合住宅「鮎喰川コモン」 徳島県立城西高等学校「神山創造学」 県外遠方生向けの町営寮「あゆハウス」 地域との関わり方: 神山つなぐ公社が民間の立ち位置で、行政では為しえない柔軟な発想や 手法で、必要な施策推進を迅速に手がけている。開かれた活動拠点を持 ち、町職員と住民、町内外の人々がかかわり合うプロジェクト群を黒子のよ うに支援している。意志のある実行主体の発見に至らない要推進事項に ついてはみずから牽引し、事業化の過程で主体を見出し、上記のようなな 活動を立ち上げてきた。 ②行政サービス改善 ③地域活性化
  21. 29 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 事例:自分たちで空き家を改修しながら活動拠点をつくる 概要:

    横浜市の最初のリビングラボは、井土ヶ谷リビングラボで、南区を拠点とする リビングラボとして、空き家を活用して、「教育を地域で考える」をテーマに、 子供や若者が安心して過ごせる居場所づくりなどに取り組んだ。その活動 が徐々に広がり、介護や教育などそれぞれの地区ならではの課題に沿った リビングラボが展開されてきた。増えてきた各地のリビングラボ運営の手助け をするため、YOKOHAMAリビングラボサポートオフィスが設立され、所属す るリビングラボは各々のテーマは掲げているものの、共通テーマとして「サー キュラーエコノミーPlus」を設定し、地域循環型経済を実現するまちづくりを 目指している。 主体:横浜市内の13地区のリビングラボから構成(SDGs横浜金澤LL、 磯子杉田LL、とつかLL、さかえ横浜会議、都筑リビングラボ、瀬谷ハチミツ リビングラボ、みどり Well-beinGood!LL、つるみヤングケアラーラボ、障害 者・高齢者福祉イノベーションリビングラボ、ひとりでも住み続けられる横浜リ ビングラボ、すすき野団地リビングラボ、みどりオリーブリビングラボ、シェアご飯 リビングラボ AOBA)(2017~) 活動: 空き家を拠点とした地域課題活動・つながり形成 循環型農業と地産地消商品開発 生きづらさを抱える当事者がいきいきと学び働ける環境づくり 養蜂を通じた SDGs 推進と花と緑が溢れるまちづくり スポーツを通した健康への取り組み ヤングケアラーの支援 持続循環する団地コミュニティ 等 ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  22. 31 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボの3つの系譜 系譜1:現場で学びを得る科学へ

    系譜2:みんなに開いてつくる文化へ 系譜3:使うものを自らつくる権利へ
  23. 32 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 系譜1:シチズンサイエンス(現場で学びを得る科学へ) ※川喜田(1967)発想法―創造性開発のために,

    中央公論社. 1990年代から実験科学・市民科学の分野でLiving Labと名前の付い た活動が行われている • “The Living Lab is a pilot program teaching estuarine issues to junior and senior high school students.” (Short, 1992) • “The program has a room in the residence quarters of the YMCA called the ‘’Living Lab.” This laboratory is an opportunity for a youth to gain practical experience living on his or her own while receiving support from staff, DYFS and other agencies.” (State of New Jersey, 1993) • “From using the environment as a living lab to enhance your science and math studies to using it to help inspire your students to create poetry, there are many innovative ways to promote outdoor experiences with your students.” (Wood et. al., 1993) 実験科学[Lewin,1946;Kawakita,1967;Neisser,1978]や市民 科学[Short,1992;Wood,1993]の分野では、限定的な環境での試 行実験の限界に対して、アクションリサーチ、野外科学、PBLなどの実環 境での実践や検証が重要視された。リビングラボの概念の提唱者として 知られるWilliam J. Mitchellは建築分野でこの取り組みを行った人物 である[Mulvenna;2011]。 特徴 • 実環境下(real-life setting) • 生徒の巻き込み(student involvement) • エンパワーメント(empowerment)
  24. 33 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 系譜2:オープンイノベーション(みんなに開いてつくる文化へ) ※D.A.

    Norman, (1990)誰のためのデザイン?,新曜社. Human Computer Intaraciton(HCI)の分野では、ジョージア工科大学の Aware Home Projectが1999年にLiving Laboratoryという概念を取り上げ て研究を行った(Cory et al.1999) 欧州委員会は2013年のダブリン宣言で、オープンイノベーション2.0をオープンイノ ベーションの新たなパラダイムとして考え、欧州全体で推進していくこと ・ 世界に発信し ていくことが決議され、「Open Innovation 2.0 Yearbook」では、Living Lab が多く取り上げられている 1980年代にパーソナルコンピューターが普及したとき、人としての使いやすさに焦点を当てた ユーザ中心設計Norman(1986)が提唱された。これは限定的な関係者による設計の 限界に対して、実際のユーザの巻き込むアプローチであり、その後サービスデザイン [Stickdorn;2012]などに拡張されていった。また、企業イノベーションにおけるオープンイノ ベーション[Chesbrough;2003]や行政運営における市民参加の梯子 [Arnstein;1969]など、さまざまなセクターのモノづくり(コトづくり)においても、関係者に 開いてつくる文化(デザインの民主化)へのシフトが志向されている。 特徴 • ユーザの巻き込み(user involvement) • 共創(co-creation) • 価値協創(joint-value) • ガバナンス(governance)
  25. 34 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 系譜3:参加型デザイン(使うものを自らつくる権利へ) ※S.

    Bodker et al. (2021) Participatory Design, Springer. 職場の生産性を高めるために技術システムを導入したい経営者と、自分たちの 労働の現場に技術システムを入れることに不満を持つ労働者との対立に対して、 第3の道として、民主主義的な方法で問題解決を図ったのが参加型デザイン ノルウェー鉄・金属労組の技術プロジェクト(1970年~) スウェーデンのDEMOSプロジェクト(1975~1979年) デンマークのプロジェクトDUE(1977~1980年)など 北欧リビングラボの源流と言われる参加型デザイン[Nygaard,1975]は、社会民 主主義的な理念を持ち、生活者やユーザの権利として、自らが身の回りにある組 織構造やプロセス(社会技術システム:Socio-technical system[Trist,1951])に対して主体的に関わっていくことが基本的な考え方と なっている。形を持つ製品から、形を持たないサービス、さらには組織や社会につい てまで、それを設計・運用することに主体的に関わる活動が展開されてきた。 特徴 • エンパワーメント(empowerment) • 自発性(Spontaneity) • ガバナンス(governance) • ラピッドプロトタイピングと評価(rapid prototyping & testing )
  26. 35 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 系譜3:使うものを自らつくる権利へ 経営者

    テクノロジーの 活用 労働者 現場にいる アクター リビングラボ 実生活環境に おける実験 意思決定に関わる権利や働き甲斐を主張 労働運動の標語 ”8時間の労働・8時間の自由・8時間の休息” 経営者は職場の生産性を向上を推進 オートメーション化する 電子機器の発展と導入
  27. 36 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボが示すパラダイムの変化 みんなと

    現場で 自らつくる 系譜1:現場で学びを得る 系譜2:みんなと開いてつくる 系譜3:使うものを自らつくる権利
  28. 37 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 課題意識:暮らしの質感を起点にした社会イノベーション 問題解決が効率的に発展し過ぎると、システムが自己目的化し、結果として、暮らしの質

    感が取りこぼされる(棄損)(=第二の分水嶺) 暮らしの時間 ・主観的、生成的、多様 ・歴史的な絆、人間、世間 e.g. 自立共生的、生活世界 両方の構造に対して デザイン実践をする立ち位置 システムの時間 ・客観的、計画的、均質 ・政策的経緯、公論 e.g.操作的、システム イヴァン イリイチ(2015)コンヴィヴィアリティのための道具,筑摩書房. 病や老い、死と共に 生きる力を支える医 療 健康が管理対象になり 患者が欠陥と見なされ る医療 学びを通じて主体 的な自己形成を支 える学校 教えられないと学べない という学習不能感が蔓 延する学校 関係性の中での支 え合いから生まれる ケア 制度化され、関係とし てのケアの消失し、仕 事としてのケアになる キーワード ケアのあるべき姿 キーワード 今の社会(システム) のボトルネック
  29. 38 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボの特徴: それぞれの主体の自己変容も含めた価値創出を促すパラダイム

    提供者 (企業/行政) 客体的な関係性 (サービス提供/利用) フェアなパートナー関係 共に主体的な関係性 (学び合い相互に変容) 利用者 (市民) C o デ ザ イ ン リ ビ ン グ ラ ボ 一 般 的 な サ ー ビ ス デ ザ イ ン 価値創出のパラダイムシフト 一方的な提供者-利用者関係 提供者 (企業/行政) 利用者 (市民) 協働をしても、セクターの枠組みに縛られ 部分的な問題解決になりやすい セクターを超えて本質的な 価値を探索できる枠組み 答えがみえた時代 ・人口ボーナス期 = 拡大・成長期 ・潤沢な供給リソース と需要 ・官僚組織による計画 的マネジメント ※広井(2019)人口減少社会の デザイン, 東洋経済新報社. 答えのみえない時代 ・人口オーナス = 定常期※ ・ひっ迫した供給リソー スと減らない需要 ・共創によるアジャイ ル・ガバナンス (デジタル活用、プラットフォー ムビルダー化) 社会構造の変化 市民のアップデート 政策のアップデート Techのアップデート
  30. 39 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 個別の地域活動や企業サービス、 領域ごとの政策による対応で

    バケツの穴(問題)を事後的に塞ぐ 新しい社会構造(システム)への 転換を志向することで 穴(問題)が生まれづらい状態をつくる + 個別の穴(問題) を防ぐ 社会システムの転換 課題意識:現代社会の構造的問題に対するアプローチ 健康と福祉、不平等、世界の民主化、気候変動などの問題に対して、(問題再生産の構造延命にも寄与す る)部分的解決ではなく統合的に向き合うために、システム・トランジションなどの方法論が提唱されている。 e.g.本籍校に復帰できることを目標にする適応指導教室 e.g.人手が足りないので好待遇で採用活動 e.g.クマが出てきたので駆除活動 e.g.学習計画を子どもたち自身が作るイエナプラン教育 e.g.働く人が働きたい地域・力を発揮しやすい職場づくり e.g.クマと人が共生できる自然環境回復に向けた取り組み
  31. 40 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs シンフォニー型社会システムとポリフォニー型社会システム シンフォニー型社会システム

    ポリフォニー型社会システム ・客体的・均質的なサービス・環境(cf.第二の分水嶺(イリイチ)) ・縦割り・自己責任で関わりが難しい他者・社会 ・さらに権威主義、空気優先で非自律的になる ・個人の感性等が疎外され増大する不安 ・存在を肯定しあえるの関係性づくり ・対話的・伴走的関わり(ピア)をはじめる ・自律的な表現が芽生え、他者へひらかれる ・自らの感性を信じ、失敗しながら、協働へ ex: 対話(ボーア)、オープンダイアログ 社会・組織に人々が合わせる管理型社会 複数の声はあるが調和へ向かう圧力がある (人=代替可能性、客体) 人々が自ら社会・組織をつくる自律型社会 複数の声が世界(感覚、価値、倫理) を持ち続けている※ (人=唯一性、主体) ※ミハイル・バフチン (1929)ドストエフ スキーの詩学(望 月哲男・鈴木淳一 共訳(1995)).
  32. 41 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボのアプローチが有効な活動領域 企業の組織論において、ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツは「技術的問題」と「適応課

    題」を区別して論じている。客体的に外部から技術や方法で解決することに加えて、市民も企業も行政も大 学も問題の当事者になり、問題を生み出さない社会(システム)に向けて、自らが変容することも含めた価 値の共創が求められる。 R. Heifetz et al.(2009) The Practice of Adaptive Leadership: Tools and Tactics for Changing Your Organization and the World. Harvard Business Review Press. ※宇田川元一(2019)他者と働く-「わかりあえなさ」から始める組織論.
  33. 42 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs リビングラボのアプローチが有効な活動領域 企業がサービスを一方的に提供するだけでなく、それを利用・運用する人・団体が一体的

    に変容する必要がある領域において、Coデザイン/リビングラボのアプローチが有効 地域銀行・インフラ会社・自治体等 地域事業者と一緒に 地域経営を考える 中央官庁・自治体・デベロッパー等 生活者・当事者と一緒に 政策や官民協働プロジェクトを考える (プロセスエコノミー等) サービス・プラットフォーム提供者等 (CtoCマーケットプレイス、製薬会社) 利用者と一緒に プラットフォーム利用体験を考える 社会的インパクトを志向する研究者・開発者 生活者・自治体・企業と一緒に 研究の社会実装を考える (現場の統合的な課題把握)
  34. 43 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs ご清聴ありがとうございました 組織や役割を超えた共創について関心のある方はぜひご登録ください

    日本初のリビングラボ書籍を刊行し「リビングラボ・ トーク」を実施。ラジオ、Podcast等を公開中。 リビングラボML トーク含めた国内のLLイベント情報 7 システム変革に向けた共創を問う Podcastを配信中。 本日のプレゼン 資料はこちら 社会システムデザイン研究所 Podcast
  35. 44 Copyright 2026 Japanese Network of Living Labs 日本リビングラボネットワーク(JNoLL)の活動概要 日本において共創やリビングラボの実践がさらに活性化し、普及することを目指して、設立。多様なステークホルダーが立場

    を超えてフラットにつながり、実践知や課題を共有し合うことで、さらなる実践や成果をもたらす場や機会をつくり出している。 また、リビングラボのポータルサイトでの情報発信や、支援サービスの提供も行っている。 ❸リビングラボ運営者支援サービス ❶リビングラボ実践者/ 研究者ネットワーク ❷実践を支えるフレームワークの 研究開発 チーム組成& ビジョン形成 計画立案・共有 予算・ 契約 具体的な 共創 価値の振返 り・発信 国内実践者・研究者と共に、事例対話の分析を通じて 実践支援の核となるフレームワーク等を研究開発 25地域を超える実践者が集い、コアチームを組成し、 実践者による実践者のためのコミュニティを運営。 1000名を超えるリビングラボ関心層に発信可能なネットワーク (企業7割,自治体2割,研究者1割) 研究開発の知見を核に、体系化されたリビ ングラボ運営者支援メニューを開発・提供 リビングラボML