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ATカーニー(リスクマネー供給及び官民ファンド等に関する国際比較調査研究)

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 ATカーニー(リスクマネー供給及び官民ファンド等に関する国際比較調査研究)

べあキャピタル

March 08, 2020
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  1. 2 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 – 日本の産業を活性化させる上での課題

    – 諸外国と比較した我が国のリスクマネー供給状況 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  2. 3 A.T. Kearney 06/01.2017 要旨 日本の産業・企業を活性化する上での課題 • 我が国の産業・企業活性化における主要課題は、A)既存事業の収益性・成長性が低い、B)成長する海外市場へ の事業展開が立ち遅れている、C)新産業・新事業が生まれにくい、ことと考えられる •

    産業・企業を活性化するツールの一つであるリスクマネーの供給状況を諸外国と比較すると、株式等のリスクマ ネーの比率は41%と主要先進国と比べてやや低い程度だが、政策保有株などを除く純粋なリスクマネーの割合で みると、欧州諸国の半分程度の25%と非常に低い水準となっている • リスクマネー供給の重要な担い手であるPE/VCによる投資額は、徐々に積みあがってきているが、まだ欧米諸国比 較で僅少、かつ毎年のフローは大きく変動している リスクマネー供給の視点から見た原因とリスクマネーが果たすべき役割 • 株主からのプレッシャーが弱く、企業経営者が事業ポートフォリオの組み換えなどの経営効率化をするマインドが弱 いことが、既存事業の収益性・成長性が低いことの要因の一つ。結果、リスクマネーに対する潜在的な需要が顕在 化していない。リスクマネーを通して、経営効率改善へ向けた圧力をかけ、経営マインドを変革し、事業再編を促す • 輸出や一部大企業の海外進出は実現してきているが、中堅・中小企業を中心とする企業の知見、経験、ネットワー ク不足、文化やコミュニケーションの問題が障壁となり、成長する海外市場への事業展開は立ち遅れている。リスク マネーと共に不足している能力の補完を含めた支援を実施し、海外展開を加速 • 新産業・新事業が生まれにくい要因の一つは、VB(ベンチャー企業)が大企業に買収される例が極めて少なく、人材 や資金のスムーズな循環が滞ってしまっていることと考えられる。また、一部の領域で資金の供給不足も見られる。 今後はリスクマネーを活用し、大企業によるM&Aを目指したVB育成と供給不足領域への量的補完を目指す 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 • 欧州各国においても、経済危機の後などに、リスクマネー供給が滞る中小企業など向けに、国内産業・企業を支援 するために時限的な組織として官製ファンドが設立されている • 政府からの独立性を組織上確保し、投資先の発掘や投資判断、企画業務を組織内で独自に行う体制を構築 • 投資対象・手法は民業補完目的で、LP投資家としての参画や、民間との共同投資を中心に選択されている • 民間から優秀な人間を確保すべく、 MDなど重要なポジションには民間と同等程度の待遇を準備 • 積極的なPR活動を通して国民の理解およびブランドの確立を追求し、民間の支持と優秀な人材の獲得を実現
  3. 4 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 – 日本の産業を活性化させる上での課題

    – 諸外国と比較した我が国のリスクマネー供給状況 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  4. 5 A.T. Kearney 06/01.2017 日本の産業・企業を活性化させる上での課題 我が国の産業・企業活性化における主要課題は、①既存事業の収益性・成長性が低い、②成長する 海外市場への事業展開が立ち遅れている、③新産業・新事業が生まれにくい、こと 成長する海外市 場への事業展 開が立ち遅れて

    いる 2 既存事業の収 益性・成長性が 低い 1 新産業・新事業 が生まれにくい 3 ① 既存事業の収益性・成長性が低い – 国内上場企業の平均ROEが他国と比 較して低い水準を推移 – 経済危機以降、他国の上場企業1社 当たりの時価総額が大きく成長してい る中、日本は横ばい ② 成長する海外市場への事業展開が立 ち遅れている – 対外直接投資額が他国と比較して低 い水準 ③ 新産業・新事業が生まれにくい – 日本は開業率が際立って低い – 上場企業の時価総額上位企業の新陳 代謝が他国と比較して少ない 既存 新規 事業ドメイン 国内 海外 市場・ 地域
  5. 6 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の収益力の推移 日本企業のROEはほぼ一貫して欧米主要国より低く、株主側・企業側の両面のガバナンス強化を通 した収益性の強化、成長の追求が望まれる 17.2 9.6 12.4

    -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 2011 2000 2010 2004 2008 2007 2009 2003 2005 2002 2001 2006 2015 2016 2018 2017 2012 2014 2013 8.4 7.4 イギリス 5.7 フランス 12.2 米国 ドイツ 日本 7.5 1. 各国のインデックスより算出(日本:TOPIX、米国:S&P500、イギリス:FTSE100、フランス:CAC40、ドイツ:DAX) 出所: BloombergよりA.T. Kearney作成 各国企業のROE推移1 (%) リーマンショック 日本企業のROEは欧 米国に比して低水準 欧州危機 予測値 日本企業のROEは依 然低水準の見込み
  6. 7 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の成長性 1990年代の日本の上場企業1社当たりの時価総額は国際的に見て大きかったが、2000年以降、欧 米諸国が時価総額を右肩上がりで上昇させたのに対し、日本は減少傾向を示している 1990 1995 2000

    2005 2010 2015 2.0 1.0 5.0 4.0 3.0 6.0 5.7 3.1 フランス 1.4 1.5 0.8 日本 米国 4.3 2.2 1.3 ドイツ イギリス 2.5 1. イギリスは2007年にイタリア証券取引所を買収したことにより、2009年よりイギリス市場のみのデータは未公表 出所: World Development IndicatorよりA.T. Kearney作成 各国上場企業の1社当たり時価総額推移 ($bn) CAGR (’90 - '15) +10.4% +3.2% +7.5% +5.2% -1.0% 1
  7. 8 A.T. Kearney 06/01.2017 対外直接投資残高(ストック)の国際比較 対外直接投資残高は上昇傾向にあるものの、依然として欧州諸国と比較すると低水準で、日本企業 が欧米諸国よりも海外進出の面で遅れていることが想定される 30.5 25.6 23.1

    17.7 16.4 15.4 14.7 14.0 12.5 10.3 27.8 27.4 27.3 26.1 25.0 24.7 22.0 20.7 17.9 27.9 72.0 70.2 76.6 74.3 61.0 60.0 51.5 56.7 54.3 44.9 48.4 48.7 43.6 44.3 41.5 31.9 37.9 35.4 57.8 50.7 55.6 54.4 45.2 47.9 46.9 38.8 44.8 41.1 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 10 0 70 30 50 40 80 60 20 58.9 フランス 日本 イギリス ドイツ 米国 47.5 対外直接投資残高(対GDP比) (GDP比、%) 出所: Economist Intelligence UnitよりA.T.Kearney作成
  8. 9 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の海外売上比率の推移 日本企業全体の海外売上比率は過去15年に渡って若干の増加傾向を示すが、産業によってばらつ きは大きく、成長する海外市場を取り込めていない業界も多い 40% 41% 非

    鉄 金 属 18% ガ ラ ス ・ 土 石 製 品 4% 46% 21% 25% 55% 機 械 42% 40% 化 学 14% 鉱 業 医 薬 品 62% 50% 71% 電 気 機 器 42% 58% ゴ ム 製 品 精 密 機 器 44% 71% 49% 24% 輸 送 用 機 器 2015 2010 2000 2005 海外売上比率:トップ10の業界 陸 運 業 サ ー ビ ス 業 不 動 産 業 電 気 ・ ガ ス 業 0% 1% 4% 2% 2% 4% 0% 4% そ の 他 金 融 業 6% 3% 9% 建 設 業 石 油 ・ 石 炭 製 品 14% 小 売 業 1% 0% 15% 1% 4% 4% パ ル プ ・ 紙 5% 6% 保 険 業 2005 2015 2010 2000 (%) 海外売上比率:ボトム10の業界 (%) 海外売上比率 21% +8% 日 本 全 体 29% 出所: SPEEDAよりA.T. Kearney作成
  9. 10 A.T. Kearney 06/01.2017 日本における開業率 日本の開業率1は、過去10年以上、欧米諸国と比較すると低い水準を推移してきている 4.6 4.5 4.5 4.7

    4.2 5.0 4.8 4.4 4.1 4.0 4.1 4.4 11.4 11.2 10.0 10.1 12.3 11.6 12.6 13.0 12.5 11.5 11.7 8.5 8.6 8.3 9.1 15.3 18.7 18.6 11.0 10.5 10.1 10.2 9.3 8.5 8.6 9.3 8.7 10.9 10.9 10.7 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 英国 15.6 日本 フランス ドイツ 米国 9.9 11.5 11.0 11.2 11.1 10.1 10.4 1. 期首に既に存在していた企業数に対する新規に開設された企業数の比率 2. 個人の起業を 促すことで経済の活性化と雇用創出するため、起業手続を簡素化、税・社会保障費の支払い一時免除、税制優遇措置を導入 出所: 中小企業庁「平成26 年中小企業白書」よりA.T. Kearney作成 各国の開業率 (%) フランスは2009年に導入された個人 事業主制度2により開業率が急増
  10. 11 A.T. Kearney 06/01.2017 時価総額トップ10の推移 1 NTT 2 トヨタ自動車 3

    日本興業銀行 4 三菱銀行 5 住友銀行 6 富士銀行 7 第一勧業銀行 8 三和銀行 9 さくら銀行 10 野村証券 米国の時価総額上位10社には過去20年以内に設立された企業が3社入っているものの、日本は最も 新しい企業で1981年設立のソフトバンクであり、産業の新陳代謝が進んでいないと言えるのではないか 日米の時価総額ランキング(1995、2005、2015) 日 本 1995年 2005年 2015年 1 トヨタ自動車 2 三菱UFJFG 3 みずほFG 4 三井住友FG 5 NTTドコモ 6 NTT 7 セブン&アイ 8 本田技研工業 9 キヤノン 10 武田薬品工業 1 トヨタ自動車 2 三菱UFJFG 3 NTTドコモ 4 NTT 5 JT 6 日本郵政 7 KDDI 8 ゆうちょ銀行 9 ソフトバンク 10 本田技研工業 米 国 1 International Precious Minerals Group, Inc. 2 General Electric Company 3 Exxon Mobil Corporation 4 The Coca-Cola Company 5 Merck & Co., Inc. 6 Motors Liquidation Company 7 Altria Group, Inc. 8 The Procter & Gamble Company 9 Johnson & Johnson 10 Microsoft Corporation 1 General Electric Company 2 Exxon Mobil Corporation 3 Microsoft Corporation 4 Citigroup Inc. 5 The Procter & Gamble Company 6 Wal-Mart Stores, Inc. 7 Bank of America Corporation 8 Johnson & Johnson 9 American International Group, Inc. 10 Pfizer Inc. 1 Apple Inc. 2 Alphabet Inc. 3 Microsoft Corporation 4 Berkshire Hathaw ay Inc. 5 Exxon Mobil Corporation 6 Amazon.com, Inc. 7 Facebook, Inc. 8 General Electric Company 9 Johnson & Johnson 10 Wells Fargo & Company 日本 • 1980年以降に設立さ れた企業はソフトバン ク1社のみ 米国 • 3社(Alphabet, Amazon, Facebook) が1990年以降に設立 された企業 • さらにApple, Microsoft も1975年以降に設立さ れた比較的若い企業 • GEやJohnson & Johnsonも、過去と比 較して事業ポートフォリ オを大きく変革 出所: 各種公表資料、Capital IQよりA.T. Kearney作成
  11. 12 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 – 日本の産業を活性化させる上での課題

    – 諸外国と比較した我が国のリスクマネー供給状況 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  12. 13 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の資金調達に占めるリスクマネーの割合推移 1. 「その他」には企業間信用取引やその他債権債務が含まれる 出所: 財務省「法人企業統計」、FRB「Financial Accounts

    of United States」、ECB「Euro Area Accounts」よりA.T. Kearney作成 日本の非金融法人(事業会社)の資金調達における株式比率は他国と近い水準まで増加してきている 日本企業の資本・負債構成の推移 (%) 4% 4% 4% 35% 4% 31% 2008 29% 2006 29% 33% 36% 31% 30% 33% 4% 34% 33% 29% 27% 29% 2013 27% 39% 41% 29% 29% 2012 4% 29% 40% 2015 4% 2014 4% 30% 37% 4% 29% 37% 30% 29% 2010 37% 2007 4% 2009 28% 30% 2011 7% 7% 7% 9% 3% 24% フランス ドイツ 60% 25% 24% 48% その他 イギリス 債券 借入 株式・出資金等 14% 24% 49% 56% 20% 米国 24% 各国企業による資金調達(2015年) (%) 1
  13. 14 A.T. Kearney 06/01.2017 日本の上場企業の株式保有者構造 出所: 東京証券取引所「所有者別持株比率の推移」、FRB「Financial Accounts of United

    States」、EurostatよりA.T. Kearney作成 株式の保有者を見てみると、日本では依然として金融機関や事業会社による政策目的の株式保有が 多く、純粋なリスクマネーの割合は他国に比べて低い 日本の上場株式の保有者内訳推移 5% 40% 10% 13% 25% 25% 19% 15% 43% 17% 0% 1% 0% 4% 8% 1% 7% 17% 2% 2% 53% フランス 4% 21% 2% 19% イギリス 10% ドイツ 32% 米国 1% 2% 各国の上場株式の保有者内訳(2015年) 7% 7% 5% 5% 7% 6% 7% 8% 4% 5% 8% 1% 2% 3% 3% 5% 0% 0% 0% 0% 0% 1% 1% 1% 1% 5% 7% 2010 11% 29% 24% 26% 25% 17% 1998 16% 2002 24% 21% 23% 28% 24% 22% 2006 10% 25% 25% 25% 13% 16% 4% 18% 22% 17% 1% 24% 4% 2% 1986 25% 21% 1% 24% 24% 10% 3% 1990 22% 23% 1994 24% 2015 14% 4% 22% 23% 13% 22% 4% 2014 27% 生損保 年金ファンド (欧州は生損保を含む) 政府・ 地方公共団体 投資信託・ その他金融機関 個人・NPO等 事業会社 銀行 外国法人等 (%) (%)
  14. 15 A.T. Kearney 06/01.2017 0 12 10 14 6 8

    2 4 13.7 3.7 4.5 2008 0.1 2009 3.6 5.9 2006 7.8 5.9 13.8 7.8 0.1 2014 3.4 5.7 0.0 4.6 2015 5.1 0.6 0.1 2013 3.1 2.4 4.1 0.0 2007 0.7 2012 0.7 0.6 10.3 2011 9.7 0.7 2010 5.8 6.3 日本の PE/VC投資額 PE/VC投資額は徐々に積みあがってきているが、まだ欧米諸国比較で僅少、かつ毎年のフローは大 きく変動 フロー ストック 1. PE/VCは、各国のPE/VCの平均投資期間(日本・米国:PE=5年、VC=4年、欧州:PE=6年、VC=5年)をもとに推計 出所: 財務省「法人企業統計」、FRB「Financial Accounts of United States」、ECB「Euro Area Accounts」 、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター 「ベンチャー白書2016」、 Pitch Book、各種公表資料よりA.T.Kearney作成 ($bn) ($bn) 0.0 0.3 0.6 100 120 60 40 160 80 0 20 180 140 2014 3 2015 3 83 84 80 2013 67 2 2012 88 0.4% 65 0.3% 72 0.4% 1 70 2011 62 0.2% 2010 2 0.3% 63 2006 29 0.2% 0 0.2% 43 0 2007 2008 0 55 0 0.2% 36 0.2% 29 56 0.2% 2009 1 48 36 49 44 (%) PE VC 株式・出資金等に占めるPE/VC割合 PE VC 各国のPE/VC投資額が 株式・出資金に占める割合は 米国は19.4%、イギリス6.0 %、 フランス1.4%、ドイツ3.2 % 本レポートでは、我が国の産業・企業の活性化における主要課題に対して、リスクマネーに関連した 打ち手を検討する
  15. 16 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割

    – 課題①:既存事業の収益性・成長性が低い主な原因とリスクマネーの役割 – 課題②:成長する海外市場への事業展開が立ち遅れている主な原因とリスクマネーの役割 – 課題③:新産業・新事業が生まれにくい主な原因とリスクマネーの役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  16. 17 A.T. Kearney 06/01.2017 各主要課題の主な原因とリスクマネーが果たすべき役割 リスクマネー供給の視点から見た各主要課題の原因に対してリスクマネーが果たすべき役割を特定 課題①: 既存事業の収益性・成長性が低い 課題③: 新産業・新事業が生まれない

    リスクマネー が果たすべ き役割 主な原因 • 潜在的なニーズはあるもの の、ポートフォリオの組み換 えなどを通じた高収益性・高 成長性の追求に対する経営 のモチベーションが低い • デットガバナンスの衰退と代 替メカニズムの欠如 – 他国では資本市場からの株主 からの圧力が、ガバナンスの 原動力だが、日本では圧力が 弱い – スチュワードシップコード・コー ポレートガバナンスコードによ る改善は一定程度見込まれる • ITやWeb以外の業界では、 VB創生・育成のエコシステ ムが立ち上がっていないた め、人材と資金が循環してい ない – VC、起業家の実績蓄積が停滞 – シリアルアントレプレナーの輩 出が不足 • 「ミドル・レーターステージの 中~大規模案件」「シード以 前ステージ」「ものづくりや ハード系産業の案件」への 資金供給不足 ベンチャー業界の人材と資金 の循環促進、 リスクマネー供 給不足の補完 • VBを育成し未成熟IPOを抑 制し、大企業によるM&A拡大 • 多額の資金と収益化に時間 がかかる分野の量的補完 • シード以前ステージなどの供 給量不足領域へ量的補完 課題②: 海外市場への事業展開の遅れ • 特に中堅・中小企業におい て、クロスボーダーM&Aのた めの出資パートナーやノウ ハウを含む経営リソースが 不足 – マイノリティー出資パートナー の存在が限定的 – ノウハウ・人材やネットワークを 含む必要な経営リソース不足 の補完が困難 ノウハウ・ネットワーク・資金不 足の補完 • 海外買収における投資リス クと資金負担を共有 • 共同出資パートナーとして、 知見、ノウハウ、ネットワーク、 プロセスなどを提供 潜在的なリスクマネーに対す る需要の顕在化 • 経営効率改善へ向けた圧力 をかけ、経営マインドを変革 し、事業再編を促す
  17. 18 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割

    – 課題①:既存事業の収益性・成長性が低い主な原因とリスクマネーの役割 – 課題②:成長する海外市場への事業展開が立ち遅れている主な原因とリスクマネーの役割 – 課題③:新産業・新事業が生まれにくい主な原因とリスクマネーの役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  18. 19 A.T. Kearney 06/01.2017 既存事業の収益性・成長性が低い主な原因とリスクマネーの役割(まとめ) ポートフォリオの組み換えなどを通じた高収益性・高成長性の追求に対する経営陣の意識が低いこと が問題。経営陣の意識改革には外部からの経営効率改善の圧力が必要 コーポレートガバナンスのあるべき姿と日本の現状 あるべき姿 (ドイツ・過去の日本等)

    株主等 ステークホルダー 経営効率を追求した 経営執行 取締役(会) 物言う・ 人事権行使 物言う・ 人事権行使 潜在的なリス クマネーに対 する需要の顕 在化 • 経営効率改 善へ向けた 圧力をかけ、 経営マイン ドを変革し、 事業再編を 促す リスクマネーが 果たすべき役割 現在の日本 (ガバナンス空洞化) 株主等 ステークホルダー 経営効率改善意識 の低い経営執行 取締役(会) 物言わぬ・ 人事権の行使は稀 主な問題点と原因 株 主 か ら の 圧 力 不 足 経 営 陣 の 経 営 効 率 改 善 の 意 識 が 低 い • サラリーマン経営者による業 績の良し悪しに関わらない任 期全うを目指した安全経営 • 取締役による経営に対する審 議機能が弱い(コーポレートガ バナンスコード等取組の未徹 底) • 経営効率改善に向けた取組 のためのケイパビリティ不足 • 変革を好まず、終身雇用制が 優勢な日本企業の文化 • デットガバナンスの衰退に伴 いガバナンスが空洞化してお り、外部の株主からの規律付 けというガバナンスの核心部 分が欠如 • 金融機関による政策保有株、 上場企業同士の株式持ち合 いの存在(スチュワードシップ コード等取組の未徹底) 審議の形骸化
  19. 20 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業における事業ポートフォリオの組み換え 日本企業は積極的に事業ポートフォリオの組み換えを実施しておらず、他国企業のように収益性改善 のレバーを活用しきれていない可能性がある 上場企業100社あたり件数でみると、 日本は特に中・高額帯で低水準 0.6

    1.7 29.1 9.5 16.1 57.8 4.0 9.4 3.9 7.9 37.1 6.8 10.8 35.8 ~$100M 30.4 $100~500M $500M~ 各国の規模別M&A案件数(IN-IN・OUT-INの合計、2015年) • 既存事業の収益性・成長性が低いのは企業ガバ ナンスの問題に起因しており、日本企業はガバナ ンス意識が低く、事業再編意欲も低い – 株主利益が守られているかを監視するのが取締役の役 目だが、日本では外部取締役の割合がまだ少なく、ガバ ナンス意識も低いため、事業再編に伴うバイアウト案件 が少ない – 米国では、取締役の過半数が外部取締役の場合が多く、 四半期毎に企業の経営状況がチェックされるので、ノン コアを売って事業再編するニーズが常に生まれ易い • 日本企業の事業ポートフォリオの新陳代謝が進ま ない点は非常に重大な課題であると考えており、 官の力でやっていく時期なのではないかと考えて いる – 祖業であるから、先輩が作った部門だから等の伝統・文 化・マインドのせいで大企業の事業ポートフォリオの再 編が進まないと考えている インタビュイーのコメント 出所: MARR、PitchBook、IMFよりA.T.Kearney作成 フランス イギリス ドイツ 米国 日本 (件)
  20. 21 A.T. Kearney 06/01.2017 日本におけるコーポレートガバナンスの歴史 ガ バ ナ ン ス

    上 の 特 徴 • 株主主導型のエクイティガ バナンス – 無限責任法人である合 資・合名会社を頂点とし、 その下に多くのグループ 企業である株式会社を ぶら下げる財閥型のガ バナンスモデル 戦前 戦後~1980年代 1990年代以降 2015年以降 • メインバンクによる「デット」型 コーポレートガバナンスが強化、 展開 – 財閥解体後に資金需要を満 たしたのは、銀行からの資金 調達で、経営者の暴走や内 紛、経営危機時等の「守り」の 企業統治は特にメインバンク が重要な役割を果たした • デッドガバナンスの衰退 – 大企業のキャッシュフロー 創出力向上、上場企業同士 の株式の持ち合い(相互安 全保障システム)、金融緩 和等によりメインバンクによ るデットガバナンスが衰退 • 雇用の流動化が極めて高 く、組合の組織率は低い – 現在のような終身雇用 は一般的ではなかった – 協調的労使交渉を構築 する前提も脆弱 • 終身雇用、年功序列、企業別組 合の確立 – 戦後、深刻な人手不足に対応 するため、終身雇用、年功序 列制度を導入。企業別組合シ ステム導入で協調的労使関係 が確立 • 「政策保有株」の高止まり – 金融機関の「政策保有株」 は減少傾向も、上場企業同 士が株式を持ち合う「相持 ち」は横這いの状況 • ガバナンスの空洞化 – 株主によるエクイティガバ ナンスが未成熟であったた め、従業員集権型のコー ポレートガバナンス(いわ ゆる「ムラ型ガバナンス」) となり、外部の株主からの 規律付けというガバナンス の核心部分を欠く状況 日本ではメインバンク制が崩れた後の株主による経営改革圧力が欠如した状況となったことも背景に、 現在も事業再編が進まない 出所:冨山和彦・澤陽男「これがガバナンス経営だ!」東洋経済新報社 (2015)、エキスパートインタビューよりA.T.Kearney作成 コーポレートガバナンス 改革期 財閥型 エクイティガバナンス期 銀行による デットガバナンス期 従業員集権型のガバナンス 期(ムラ型ガバナンス) • 「政策保有株」の増加 – 金融機関などが事業会社の株 式を「政策保有株」として保有 する「片持ち」、上場企業同士 が株式を持ち合う「相持ち」が 増加 • コーポレートガバナンス コードの導入 – 会社のあるべき統治シ ステムを幅広く捉え、監 査機能の強化だけでは なく、要改善事項として 以下が掲示: ①株主の権利・平等性 の確保、②株主との対 話、③株主以外のス テーク・ホルダーとの適 切な協働、④独立社外 取締役の複数選任など による取締役会の責務 強化、⑤適切な情報開 示と透明性の確保 • 機関投資家向けの行動原 則である「責任ある機関投 資家」の諸原則「日本版ス チュワードシップコード」を 公表
  21. 22 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツ上場企業の株式保有者構造 1990年代はドイツも日本と同様、銀行および事業会社による株式保有が過半を占めていた。その比 率が大幅に減少したことも、事業会社の再編等が進んだ要因と考えられる ドイツの上場株式の保有者内訳推移 35% 32%

    30% 20% 17% 18% 14% 14% 15% 13% 11% 15% 13% 9% 18% 17% 18% 19% 12% 16% 22% 40% 43% 4% 5% 7% 2% 2% 4% 1% 4% 2% 2010 2015 2005 3% 1995 2% 2% 2000 事業会社 銀行 個人・NPO等 生保・年金ファンド 政府・ 地方公共団体 外国法人等 投資信託・ その他金融機関 (%) • 1995年には53%を占めていた 銀行と事業会社の持分比率は 2015年には21%まで縮小 • 株主構成の変化と共に資本市 場からの圧力が増加したことを 契機に、ドイツ各企業は株主価 値向上に迫られ、事業再編が 進んだ 出所: ECB「Euro Area Accounts」よりA.T. Kearney作成
  22. 23 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツの産業再編の歴史 2000年代後半にドイツ銀行等の大手金融機関がドイツの事業会社に対する株式保有比率を減少させ たため、株主構成が変わり資本市場からの圧力が増した。その結果、事業再編が進み、ROEも改善 各企業の発行済み株式に占めるドイツ銀行の 保有比率の推移とその背景 ROEの推移とその背景

    0 5 10 15 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 (%) Sudzucker Daimler Linde HeidelbergerCement Continental 背 景 • 国内市場の収益性悪化 – EU市場の統合等により、リテールバンキング市場では、 外資系企業が参入して競争激化し、収益性が低下 • ドイツ企業の資金調達手段の変化 – ドイツの大手企業は、NYSE等の海外証券市場への上 場によって資金調達し、ドイツ国内の銀行に依存する体 制から脱却 保 有 株 式 の 推 移 ド イ ツ と 日 本 の ROE の 推 移 背 景 • 資本市場からの圧力の増加 – 金融機関との持ち合いにより、収益性や株主 価値を高める経営改革に消極的であった – 安定株主であった金融機関が株式を売却した ことで、買収対象となる可能性が増大 • 株主価値向上を狙った事業再編の推進 – 例:ドイツ銀行が大株主であった産業ガス会社 のLindeは、相乗効果が低いフォークリフトや冷 却設備事業を売却 9% 16% 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20 5 15 0 10 (%) 日本 ドイツ 出所: Bloomberg、斉田温子「ドイツの金融機関による株式保有の経緯と現状」野村資本市場クオータリー(2011)よりA.T. Kearney作成 企業が危機的な状況に陥る前に事業ポートフォリオの組み換えを進めるためには、株主からの圧力 に代表される、外的な経営効率改善の圧力が効果的に働くと考えられる
  23. 24 A.T. Kearney 06/01.2017 -30 -25 -20 -15 -10 -5

    0 5 10 15 20 25 30 -10 -5 0 5 10 15 20 25 Others Osram Med VDO Trans system Trans & Disti Power Gen Building Logitics Industry Auto Biz Svs COM -10 -5 0 5 10 15 20 25 5 -20 -25 -30 15 0 -15 -5 -10 10 30 25 20 Others IT Industry Building Power Gen Trans & Disti Trans system Med Osram Auto 2004-05 2006-07 2008-11(2012年に組織変更あり) -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 -10 -5 0 5 10 15 20 25 Healthcare Energy Industry (参考)Siemensのポートフォリオシフト例 平均売上高 ($M) 出所:IR情報よりA.T. Kearney 平均営業利益率 (%) 売 上 高 成 長 率 ( % ) 収益性の低い事業を切り捨て儲かるエリアに集中した結果、2004‐2010年で4%近く営業利益率を 改善 平均9.7% 平均6.3% 平均7.0%
  24. 25 A.T. Kearney 06/01.2017 株主圧力のもとでの経営改革の例 PEファンドの買収やアクティビスト投資家の活動等、株主から圧力がかかる状況下で、外部人材も含 めて適切な経営陣を揃え業績目標の達成を促すことで、業績の向上を達成した例も多い すかいらーくの例 Home Depot(アメリカ)の例

    ROE の 推 移 ROE の 推 移 フ ァ ン ド の 買 収 と 経 営 陣 の 入 れ 替 え 1. 取締役でプロパーは社長のみ 出所: SPEEDA、各種公表資料よりA.T. Kearney作成 改 革 内 容 と EXIT フ ァ ン ド の 株 式 取 得 と CEO 入 れ 替 え 改 革 内 容 • PEファンドによる買収 – ベインキャピタルは2011年に、すかいらーくの株式 を取得し子会社化 • 経営陣の派遣、外部人材の経営陣への登用 – ベインキャピタルのスタッフを取締役に派遣1 – 執行役員に日本マクドナルド、スターバックス、 ファーストリテイリング等の外部人材を招聘 • アクティビストファンドがHome Depotの株式を取得 – 2006年にアクティビストファンドのRelational InvestorsがHome Depotの株式の1.2%を取得 • 経営陣の交代を実現 – 業績が低迷しているにも関わらず、経営陣が高額の 報酬を受け取っていたため、Relational Investorsは 株主として経営陣の交代を要求 • 店舗戦略の強化や売上高連動型の給与制度を導入 • 2014年に再上場。2015年には(ベインキャピタルは) 出資比率を40%台まで低下させる • 売上成長率は高いものの、収益率が低い卸売事業か らの撤退 • ボードメンバーのボーナスの一部をROICと連動させる 15 11 8 6 3 2014 2015 2012 2011 2013 (%) 買収 58 36 25 21 17 14 13 21 22 23 2015 2011 2013 2012 2014 2008 2009 2010 2006 2007 (%) 株式取得 リーマンショック 再上場
  25. 26 A.T. Kearney 06/01.2017 組織構成や人事の意思決定のサポート プロジェクトマネジメント 課題・優先事項の特定 ネットワーク機会の提供 コンサルティング会社等の紹介 KPI設定とレポーティング体制の構築

    マネジメントチームの考えに対して反論 ボードメンバーとしての活動・コーチング 優先事項への特定のサポート ファイナンシャルパフォーマンスのレビュー PEファンドの果たす機能 PEファンドが投資先に果たす役割 PEファンドは、ガバナンス体制の構築やCEOの質の向上等を通して、投資先企業の企業価値向上に 貢献する ガ バ ナ ン ス 体 制 構 築 KPI 設 定 ボ ー ド へ 参 加 • PEファンドが投資後、適切なKPIを設定して いる場合の方がパフォーマンスが良い – 投資先企業のうち1/3は適切なKPIを設定 – パフォーマンスが悪い投資先企業では10% しかKPIを設定していない – KPIの設定にあたっては投資先企業がすで に保有しているデータを活用し、レポーティ ングの義務は最小限 • PEファンドからボードメンバーを送り込むこと で、ボードの多様性が増すと同時に、EXITに 向けて、明確な戦略の議論を可能とする CEO の 質 の 向 上 コ ー チ ン グ ス ト レ ッ チ • PEファンドは、コーチングを通して、損益に目 が行きがちなCEOの視線を、ガバナンスや資 本構成等、経営全般に向ける • 投資先のパフォーマンスが良い場合でも、PE ファンドがCEOや投資先の事業戦略や運営 を評価し批判することで、マネジメントの質を 更に向上 出所: A.T. Kearney 「How PE Operations Teams Create Value(2014年12月)」(PE投資先企業のCEO26名を対象としたアンケート結果より) PEファンドの支援内容と投資先CEOがPEファンドに望むこと 高 低 通常のPEファンドのサポート度合 高 低 投 資 先 C E O が サ ポ ー ト を 求 め る 度 合 • 投資先のCEOはPEファンドに「 ボードへの参加 」、 「コーチング」、「反論相手になる」、「KPIとレポーティ ング体制の構築」をより強く求めている
  26. 27 A.T. Kearney 06/01.2017 新任CEOの他社経験率・外部招聘率の他国比較 日本企業は、転職経験のない内部昇格者がCEOとなり、「内輪」の人間が経営を担う傾向にある 23 38 14 97

    77 62 86 世界平均 日本 3 西欧 米国/カナダ 23 内部昇格 外部招聘 24 74 91 84 76 26 9 16 日本 西欧 米国/カナダ 世界平均 74 経験あり 経験なし 新任CEOのうち外部招聘の占める割合(2015) (%) 新任CEOのうち他企業での経験がある者の割合(2015) (%) 出所: PwC「2015年 世界の上場企業上位2,500社に対するCEO承継調査概要」よりA.T. Kearney作成
  27. 28 A.T. Kearney 06/01.2017 CEOの交代要因と交代率 日本企業のCEOの交代は、解任や合併によるものではなく、「通常の交代」の割合が突出して大きい 1. 調査した企業のうち、社長が交代している企業の数 出所: PwC「2015年

    世界の上場企業上位2,500社に対するCEO承継調査概要」よりA.T. Kearney作成 17 18 14 19 世界平均 日本 西欧 米国/カナダ 国別のCEO交代率(2015)1 (%) 95 65 58 54 18 29 15 17 13 31 西欧 世界平均 日本 0 5 米国/カナダ 65 CEO交代の要因(2015) (%) 通常交代 合併 解任
  28. 29 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割

    – 課題①:既存事業の収益性・成長性が低い主な原因とリスクマネーの役割 – 課題②:成長する海外市場への事業展開が立ち遅れている主な原因とリスクマネーの役割 – 課題③:新産業・新事業が生まれにくい主な原因とリスクマネーの役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  29. 30 A.T. Kearney 06/01.2017 海外事業展開が立ち遅れている主な原因とリスクマネーの役割(まとめ) 国内市場が伸び悩む中、成長する海外市場への進出のニーズは存在するものの、特に中堅・中小企 業においてクロスボーダーM&Aのための資金・ノウハウ不足により事業展開が立ち遅れている 主な原因 出 資

    パ ー ト ナ ー 不 足 • 民間企業が求める、リスクシェアをしてくれるマ イノリティー出資パートナーの確保が困難 – 民間PEファンドは概ねマジョリティー出資の み、かつ一部のファンドは国内投資のみに 限定(LP投資家からの制約条件による) – 民間PE以外では商社が出資者として有り得 るが、商社が参画するには規模が小さい案 件も多く、商社の事業とのシナジーが出ない 領域では投資しないなどと限定的 経 営 リ ソ ー ス 不 足 • ディールを成功させるための人材やネットワー クが不足している – 案件発掘:目利き、情報ネットワーク – ディール実行:交渉、DD1、スキームの構築、 など – 買収後のバリューアップ:経営管理、経営者 の招聘、ビジネス展開、会計・財務、など • 海外市場への 事業展開に対 するニーズが 存在 – 国内市場の 飽和・縮小: 人口の減少 および経済 成長の停滞 – 海外市場の 重要性の増 加:新興国市 場の成長 • 中堅・中小企 業の海外展開 が立ち遅れて いる – 他国比で、 クロスボー ダーM&A件 数及び成長 率が低水準 で推移 – クロスボー ダーM&Aの 案件数・額 が売上規模 3,000億円 未満の企業 において減 少傾向 問題 民間企業のニーズ ノウハウ・ネッ トワーク・資金 不足の補完 • 海外買収に おける投資 リスクを共 有 • 共同出資 パートナー として、知見、 ネットワーク、 プロセスな どを提供 リスクマネーが 果たすべき役割 1. DD=Due Diligence
  30. 31 A.T. Kearney 06/01.2017 クロスボーダーM&A件数の各国比較 13 12 21 19 15

    12 12 11 9 10 9 15 50 48 40 41 45 28 42 48 36 33 37 84 66 61 62 58 69 62 60 54 45 49 73 117 74 76 78 70 83 82 57 54 35 31 36 50 48 41 44 46 29 39 40 34 30 28 23 22 18 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 日本 米国 フランス イギリス ドイツ 92 59 58 39 72 36 30 6 27 55 7 50 26 6 出所: ジェトロ世界貿易投資報告、World Development IndicatorよりA.T. Kearney作成 上場企業100社あたりクロスボーダーM&A件数の各国比較 (件) CAGR (09-15) +12.2% +3.8% +6.2% +9.8% +9.1% 日本企業のクロスボーダーM&A件数は欧米諸国と比較して、明らかに低い水準。リーマンショック後 の増加も限定的であり、成長している海外市場を攻めあぐねている状況が伺える
  31. 32 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の海外における買収案件数・金額の推移 1. 件数はディール金額不明のものも含む 出所: MARRよりA.T. Kearney作成

    日本企業のクロスボーダーM&A案件は増加傾向にあるが、これは大企業による案件が増加している ことによるためで、売上3,000億円未満の企業による案件は件数、金額ともに小さく、減少傾向 (%、合計は件数) 売上5,000億円以上 ファンド 売上1,000億円未満 (含む売上未公表) 売上3,000億円- 5,000億円 売上1,000億円- 3,000億円 8% 296 11% 2015 12% 5% 410 3% 2012 54% 513 2006 23% 39% 2009 12% 6% 42% 52% 1% 7% 6% 16% 29% 557 1% 54% 20% (%) 12% 92% 82% 91% 91% 2% 1% 2% 5% 3% 3% 2% 売上1,000億円- 3,000億円 売上5,000億円以上 ファンド 売上1,000億円未満 (含む売上未公表) 売上3,000億円- 5,000億円 0% 3% 0% 3% 2012 2006 1% 2015 4% 2009 3% 0% 日本企業のクロスボーダーM&A案件の推移 (金額ベース) CAGR (06-15) +28.0% -2.6% +6.3% +4.8% +1.8% 日本企業のクロスボーダーM&A案件の推移1 (件数ベース)
  32. 33 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の海外における一件当たり買収案件規模の推移 1. 2006年のファンドの数値はアドバンテッジパートナーズ・ベインキャピタルによる1件500億円の買収案件により大きくなっている 出所: MARRよりA.T. Kearney作成

    売上規模5,000億円以上の企業によるクロスボーダーM&A案件の平均ディール規模は増加傾向に あるが、5,000億円未満の企業によるディール規模は小規模のまま (億円) 日本企業のクロスボーダーM&A案件平均ディール規模の推移 800 700 600 200 100 2012 400 0 2015 2009 300 2006 500 167 107 487 16 163 15 123 1 631 251 88 762 37 268 4 17 15 91 132 77 売上5,000億円以上 売上1,000億円-3,000億円 ファンド 売上1,000億円未満 (含む売上未公表企業) 売上3,000億円-5,000億円 1
  33. 34 A.T. Kearney 06/01.2017 中堅・中小企業のクロスボーダーM&Aにおけるサポートニーズ 1. DD=Due Diligence 出所: エキスパートインタビューよりA.T.

    Kearney作成 中堅・中小企業のクロスボーダーM&Aにおける課題は、資金面に加え海外進出のノウハウがないこ とであり、ディールサポートと買収後のバリューアップの支援が必要 有識者の主なコメント 主な示唆 民 業 圧 迫 の 懸 念 • 民間バイアウトファンドはマジョリティーの投資を狙うので、事業会社との共同投 資(マイノリティ)は通常実行しない • 民間ファンドは基本的にファンドレイズする際に、国内企業に投資することをLP投 資家と約束するので、海外展開に出資することはあまりない • 当社と共同投資企業が海外の企業を買収するというプロジェクトの際に、官民ファ ンドに参画してもらったことがあり、官民ファンドは良きパートナーという認識 • 海外企業買収における事 業会社とのマイノリティ共 同投資は民間ファンドは手 を出さない領域であり、民 業圧迫にはならない • 民間の呼び水効果となれ ば好循環につながる デ ィ ー ル サ ポ ー ト 企 業 側 の ニ ー ズ • 業界上位2~3社は自力で海外の案件を見つけられるが、中堅・中小企業は厳し い • クロスボーダーM&Aに慣れていない企業にとって、資金面だけではなく、ノウハウ 面も含めサポートがあるとありがたい • 案件発掘、ディールサポー ト、買収後のバリューアップ の各フェーズにおいて海外 展開支援はニーズあり – 案件発掘:目利き力、 ネットワークの活用等 – ディールサポート:交渉、 DD1、スキームの構築、 資金提供等 – 買収後のサポート:経営 管理、経営者の招聘、ビ ジネス展開支援、財務ノ ウハウの提供等 買 収 後 の バ リ ュ ー ア ッ プ • 海外進出して海外の事業をマネージすることができない日本企業が多いため、何 らかの形で手助けはすべきであると思う • 欧州企業の買収案件の際に、欧州には人材もいなかったので、買収後の役員の 派遣なども官民ファンドに依頼できるということで、心強かった • 官民ファンドには海外子会社のガバナンス方法、海外での販路開拓等のビジネス 展開支援、資金調達を始めとするファイナンスのノウハウ提供を期待
  34. 35 A.T. Kearney 06/01.2017 海外市場への事業展開の促進へ向けてリスクマネーが不足している領域 海外M&Aに対する知見やノウハウの不足している企業が、海外買収を実施する際のマイノリティ出資 のリスクマネー供給は不足している ニーズなし(企 業が支援を必要 としていない)

    2 リスクマネー供 給が不足かつ ニーズあり 1 ニーズなし(企 業が支援を望ま ない) 4 ①リスクマネーの供給が不足かつ海外展 開サポートのニーズが存在 – 海外進出して海外の事業をマネージすること ができない日本企業が多いため、何らかの形 でその援助はやるべき – 海外買収に際して、マイノリティ出資はPEファ ンドが手を出さず、マイノリティ出資を行う商社 も規模の大きくない中堅・中小案件については、 少なくとも大手商社はやりたがらない ②③企業が支援を必要としていない – 既にグローバル化しており、M&Aの知見・ネッ トワークを保有する企業は支援ニーズが少なく、 投資マネーも自社ないしは市場等から調達 ④企業が支援を望まない – 企業が海外M&Aの際にファンド等にマジョリ ティーを握られることを望まない – 民間PEファンドが日本企業のマジョリティー株 主である場合、ファンド主導で海外展開を実施 するケースも有る(例:カーライルとキトー) マイノリティー マジョリティー 出資比率 不足 豊富 海 外 M&A の 知 見 ・ ネ ッ ト ワ ー ク ニーズなし(企 業が支援を必要 としていない) 3
  35. 36 A.T. Kearney 06/01.2017 日本企業の産業セクター別海外売上比率 日本企業の産業セクター別海外売上比率が低いセクターであれば、トップ企業であっても海外展開を する上で支援が必要となるのではないか 日本企業(産業別)の海外売上比率 出所: SPEEDAよりA.T.

    Kearney作成 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0 10 20 30 40 50 60 70 80 非鉄金属 建設業 陸運業 電気機器 空運業 輸送用機器 ガラス・土石製品 その他製品 金属製品 化学 海運業 機械 繊維製品 鉱業 水産・農林業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 石油・石炭製品 鉄鋼 精密機器 医薬品 電気・ガス業 パルプ・紙 食料品 ゴム製品 卸売業 直近海外売上比率 直 近 5 年 増 減 ポ イ ン ト 保険業 証券、商品先物取引業 その他金融業 銀行業 サービス業 不動産業 小売業 (%) <INCJ> 王子製紙 <INCJ> 永谷園
  36. 37 A.T. Kearney 06/01.2017 • 要旨 • 本レポートで取り扱う課題 • リスクマネー供給の視点から見た原因分析とリスクマネーが果たすべき役割

    – 課題①:既存事業の収益性・成長性が低い主な原因とリスクマネーの役割 – 課題②:成長する海外市場への事業展開が立ち遅れている主な原因とリスクマネーの役割 – 課題③:新産業・新事業が生まれにくい主な原因とリスクマネーの役割 • 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆 目次
  37. 38 A.T. Kearney 06/01.2017 新産業・新事業が生まれにくい主な原因とリスクマネーの役割(まとめ) 新産業・新事業の創出には人材・資金が循環し、VCや起業家の実績の蓄積やシリアルアントレプレ ナーの輩出が肝要。そのためには大企業によるM&AというEXITが少ないことと、特定領域で資金が 不足していることが主要課題 新産業・新事業創出における問題点 主な原因

    • 特定領域で資金量が不足 – ミドル・レーターステージの 中~大規模案件 – ものづくり・ハード系産業の 案件への投資 – シード以前への投資 • VCによる投資期間が短い • 大企業による国内VBのM&A が僅少 – 企業側に有望なVBを目利 する能力が限定的 – 多くのVBが大企業にM&A される水準に育っていない 課題:人材・資金の循環が停滞している 投資家(VC、エン ジェルなど) VB (ベンチャー企業) 株式市場・企業 製品/サービスユー ザー 出資 技術・価値提供 EXIT (M&A) 人材 資金・ トラックレコード EXIT (IPO) 優良人材のシリ アルアントレプ レナー化が必要 時代背景:ITやWeb系から、ものづくり・材料工学な ど「足の長い」イノベーションが主流になりつつある ベンチャー業界の 人材・資金の循環 促進、リスクマ ネー供給不足の 補完 • VBを育成し未成 熟IPOを抑制し、 大企業による M&A拡大 • 多額の資金と収 益化に時間がか かる分野の量的 補完 • シード以前ス テージなどの供 給量不足領域へ 量的補完 リスクマネーが 果たすべき役割
  38. 39 A.T. Kearney 06/01.2017 時代背景:今後想定される環境・構造変化 モノのコネク ティッド化 オープンサイエ ンスや材料 工学の発展

    ものづくりの ネットワーク化・ 外部化 多様な信用メカ ニズムの発展 革新的な 研究開発 モデル グローバルメガトレンドにおけるTechnologyの領域では、ITや系からものづくり・材料工学など、「足 の長い」イノベーションが主流になりつつあり、必要とされるVC投資の特性が今後変化していく見通し Technology Globalization Consumer Behavior Demographics Regulation/ Activism Environment & Natural Resources グローバル・トレ ンド・ドライバー テクノロジー領域における環境・構造変化 • 急速に進展してきたデジタル化と高度ネット ワークを伴う情報通信技術(ICT)を背景とし たオープンサイエンスや材料工学の発展 • 情報の通信速度、CPUの集積度、メモリの 集積度等の継続的な進化に伴う通信コスト の更なる低下およびスマートデバイスの普 及に伴い、IoTが進展 • ものづくりのイノベーションが大企業から ネットワークプレイヤーへ移行することによ り、小規模・新興プレイヤーの参入増加 • 分散リソースをマネージするネットワーク、 peer-to-peerのリソース取引スキーム、シェ アリングエコノミーで新たなエコシステムが 創出される • 研究開発活動のオープン化の進展 1. 2006年時点のトレンドは2006年度に実施したA.T. KearneyのグローバルPEST分析より 出所:A.T. Kearney Global Drivers Framework テレマティクスなど の利便性向上 高速インターネット の普及、国際通信 コストの劇的低下 ICタグなどによる業 務効率化 IT革命の深化 ネット、Web2.0に 関するサービスの 利用浸透 2006年時点1 現時点
  39. 40 A.T. Kearney 06/01.2017 グローバルと日本における平均案件規模推移の比較 グローバルの平均案件規模はアーリーおよびレーターステージにおいて近年上昇傾向にあるものの、 日本では平均案件規模の上昇が見られない 0.6 0.6 0.5

    0.5 0.5 0.5 0.5 4.6 3.5 3.0 2.4 2.1 2.5 2.5 10.0 10.0 5.6 6.0 6.4 5.6 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 7.4 日本の平均案件規模(ステージ別) グローバルの平均案件規模(ステージ別) ($M) エンジェル/シード アーリー レーター 出所: KPMG「Venture Pulse Q4 2016」、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「各年の投資動向調査」よりA.T. Kearney作成 0.5 0.5 0.7 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 2016- 1Q 2016- 3Q 2014- 4Q 2015- 2Q 2015- 3Q 2014- 3Q 2014- 2Q 2015- 4Q 2016- 2Q 2015- 1Q シード アーリー レーター ($M)
  40. 41 A.T. Kearney 06/01.2017 VC投資対象のサイズ 日本のVCの特徴を見ると、VCのEXIT時点での時価総額が比較的少額ということもあり、ファンドレイ ズ額・案件規模が共に小さい傾向にある 各国で資金調達額の大きい主要VCファンドの概要 日本 ドイツ

    英国 米国 フランス 出所: Preqin、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 日本の案件サイズが小さい理由 とその帰結 • EXIT時の規模が日本の方が米 国より小さい – 日本は時価総額数十億円程度 でEXITする傾向にある – 米国は時価で数百億~1,000億 円程度まで育ててEXITする傾 向にある • 「新たな技術群」への投資は日本 の民間VCでは難しい – 「より長期」「より大規模」な資金 が必要な新たな技術群の開発・ 実用化には、日本のVCは投資 できない可能性 • 日本の方が米国よりVCのファンド サイズが小さい – 日本ではファンドサイズは大きく て100億円 – 米国では1,000億円規模のファ ンドも存在 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 11,000 12,000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 一回当たりのDeal Size ($M) 過去10年のファンドレイズ($M) Kleiner Perkins Caufield & Byers Andreessen Horowitz Partech Partners University of Tokyo Edge Capital Accel Partners JAFCO (Japan) Sequoia Capital Globis Capital Partners High-Tech Gründerfonds Balderton Capital
  41. 42 A.T. Kearney 06/01.2017 89 0 207 0 186 1,150

    227 463 710 40 70 14 370 0 500 1,000 1,500 Internet(含むIoT) 97 Software & Related Other IT 86 Industrials 139 64 Telecoms Semic. & Electronics 47 Business Services Health Care Clean Tech. 0 Consumer Disc. 314 Food and Ag. 25 米国大手VCにおける投資領域の変遷 米国の大手VCではIoT連、自動運転関連、ヘルスケア等の比較的足の長い領域への投資を増加さ せているとともに、ARやVRのような新しいテクノロジーをサポートするソフトウェアにも投資している 1. Andreessen Horowitzは2009年および2016年のデータ 出所:Preqin、各ファンドHP、各種公表資料、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 米国で資金調達額の大きい主要VCファンドの投資先業種の変遷 ($M) Kleiner Perkins Caufield & Byers Andreessen Horowitz 82 1,111 162 370 28 157 33 175 0 500 1,000 1,500 265 2 0 10 0 0 0 0 20071 2016 • 両社とも、IoT関連、自動運 転関連、ヘルスケア等の比 較的足の長い産業への投 資を増加させている • ARやVRといった新たなテ クノロジー向けのソフトウェ アへの投資(小口・多件数) による増加
  42. 43 A.T. Kearney 06/01.2017 (参考)直近で投資額が増加傾向にある領域例 近年、ドローン、宇宙、AR、VRへの出資件数および金額は急増しており、日本でも当該領域での資 金ニーズが増加する見込み 144 74 88

    256 119 68 57 866 671 40 24 17 23 24 17 15 11 48 Q2’13 Q1’13 Q3’13 Q1’15 Q4’14 31 Q3’14 Q1’14 Q4’13 Q2’14 Q2’15 1,307 投資金額($M) 投資件数 米国のドローン、宇宙、AR、VRへの投資件数および金額の推移 出所:CB Insights、各ファンドHP、各種公表資料よりA.T. Kearney作成 • Sequoia Capital – “特に会話インターフェース、AR、 VR、インフラのAI化といったUIの変 革が次の革新の核となるだろう” (P.Grady、Sequoia パートナー) • Accel Partners – “去年では思いもしなかったほど、自 動車、衛星、ドローン、ロボットといっ たテクノロジー系VBに投資してい る” (Accel Connect 2016より) • Kleiner Perkins Caufield & Byers – 2015年にVR、ドローン、宇宙、コン ピュータビジョン(機械視覚)、モバイ ル、ロボットなどに特化して投資先を 技術的に支援しつつ投資活動を展 開する別部隊(KPCB Edge)を設立 米国大手VCのコメント等
  43. 44 A.T. Kearney 06/01.2017 VC投資対象のステージ別内訳 1. 日本のベンチャー白書はVCへのヒアリングをもとに作成されており、Pre/Accelerator/Incubator/Angelのうち、Incubator の一部がシードに含まれるのみで、シード以前の数値は低く出ている 出所: 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2016」、Pitch

    Book、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 (%、合計は件数) 日本におけるVC投資対象は、分布がより均等な他国と比較してアーリー以降のステージの比率が高 く、シード以前の技術開発のフェーズに対する投資が少ない 26% 25% 12% 12% 23% 26% 37% 28% 20% 17% 17% 12% 19% 22% 22% 27% 32% 13% 11% 12% 9% 47% 34% 723 イギリス Expansion/ Later stage 612 13,406 1,788 フランス 552 ドイツ Early stage Pre/Accelerator/ Incubator Seed Angel 日本1 米国 日本でシード以前が少ない理由 • 日本でシード以前の投資が少ない のはミドル・レーターステージでの 投資が少ないことも要因 – IT以外の業界でミドル・レーター ステージのフォローオン投資が見 込まれないという現状が、シード 以前投資の少なさを作り出してい る • 日本でエンジェル投資家が少ない のは、ベンチャー業界のエコシステ ムが回っていないため – 米国・やイスラエルでは、M&Aに よりEXITした起業家の中にエン ジェル投資家になる人もいる – 日本では、M&AによるEXITが少 ないため、米国やイスラエルのよ うにEXITした後にエンジェル投資 家になる人が少ない ステージ別VC投資割合の各国比較 (2015)
  44. 45 A.T. Kearney 06/01.2017 VC投資対象の業種別内訳 日本はIT関係の比重が大きく、これはVC運用者が小規模で短期間投資を好む特性にも起因している と想定される (%、合計は件数) 出所: 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2016」、Pitch

    Book、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 業種別VC投資割合の各国比較 (2015) 日本でIT関連が多い理由 • IT関連の起業は日本のIPO市場 と相性が良い – IT関連のVBは、比較的小規 模・短期間でIPOが可能 • ミドル・レーターへの投資が増え ればIT以外への投資も増える可 能性がある – VCとしては、EXITまでの投資 額が多額となる産業セクターに 関しては投資を最後までやりき れるか不安 現時点で投資が行き届いていないIT関連以外の、主にミドル・レーターステージの中~大規模投資が 必要なのではないか 13% IT関連 日本 バイオ・医療・ ヘルスケア 金融・不動産・ 法人向けサービス 847 7% メディア・娯楽・ 小売・消費財 15% 52% 工業・エネルギー・ その他 13% 14% 16% 15% 12% 15% 13% 17% 14% 9% 11% 9% 18% 11% 12% 9% 39% 42% 43% 41% 4% 8% 6% 14,781 4% 工業・エネルギ-その他 IT関連 フランス 法人向けサービス 2% 小売、消費財 メディア、娯楽 ドイツ 米国 バイオ・医療・ヘルスケア 617 イギリス 4% 金融・不動産 4% 643 4% 1,975 4%
  45. 46 A.T. Kearney 06/01.2017 (参考)VC投資対象のステージ・セクター別内訳 日本ではシード・アーリーステージ以前のIT以外のセクターにおける投資活動が低調で、民間VCによ る資金供給と市場ニーズの間にギャップが存在する可能性がある (%、合計は件数) 1. 日本のデータは国内VCによる国内外への投資件数より算出したもの。日本のベンチャー白書はVCへのヒアリングをもとに作成されており、Pre/Accelerator/Incubator/Angelのうち、Incubator

    の一部 がシードに含まれるのみで、シード以前の数値は低く出ている 出所: 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2016」、Pitch BookよりA.T.Kearney作成 日本のVC投資対象のステージ・セクター別内訳1 (2015年) 米国のVC投資対象のステージ・セクター別内訳 (2015年) (%、合計は件数) 100 20 0 60 40 80 3 IT関連 2 167 5 11 2 工業・エネルギー レーター 金融・不動産・ 法人向けサービス メディア・娯楽・ 小売・消費財 アーリー 4 16 3 4 5 436 293 バイオ・医療・ ヘルスケア 2 5 1 シード以前 31 5 0 80 100 40 20 60 2248 3 1 1 5 10 5 2 7 3077 9 3 3423 プレ/ アクセラレーター/ インキュベーター 4 4 シード 1 3 2 1723 6 2935 1 10 金融・不動産・ 法人向けサービス エンジェル 工業・エネルギー・ その他 バイオ・医療・ ヘルスケア 3 4 5 アーリー 4 2 5 1 メディア・娯楽・ 小売・消費財 IT関連 レーター
  46. 47 A.T. Kearney 06/01.2017 日本では大企業がVBを買収するケースが少なく、VC投資の出口がファンド等への売却、IPOに偏っ ている VCのEXITに関する課題 1. 2014年以前の企業への売却(M&A)はファンド等への売却に含まれており未公表のため、2014年以前は2014年の36件を仮置き 出所:

    一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2016」、PitchBook、各種公表資料よりA.T. Kearney作成 日本の課題 VC投資企業のEXIT方法(件数ベース) 20 100 0 40 60 80 2013 940 1,027 IPO 企業への売却 (M&A) ファンド等への売却 2015 479 456 594 859 2007 686 2009 884 719 2011 0 40 60 100 20 80 292 226 268 2009 2011 2010 231 2015 282 395 IPO 273 2014 ファンド等への売却 2013 企業への売却 (M&A) 2012 【日本】 【米国】 (%、合計は件数) ベンチャー業界活性化のために、VC投資の出口の選択肢として、企業による国内VBの買収が拡大 する必要がある • IPO比率が高い上に、IPO金額が小さい – 2015年にマザーズに上場した61社の平均資金吸収額 は23億円(資金調達は10億円)となっている – アメリカで2015年にIPOした企業76社の平均資金吸収 額は$100Mを超える • 大企業によるVBの買収案件が少数・少額 – 日本の場合、大企業によるM&A案件も規模が100億円 以内(リクルートによるクイッパ―買収48億円、DeNAに よるイエモ・ペロリ買収50億円) – アメリカの場合、Google、Apple、Facebook等の大企業 によるM&Aが活発で規模が巨額(GoogleによるSkybox 買収、FacebookによるInstagram、YahooによるTumblr 等は$1,000M以上) 1 • VBの経営スキルが低く、IPOもM&AもできないVBも多い – 日本の場合、経営スキル不足から、VCの投資期間内に IPOもM&Aも見込めないVBが多いため、ファンド等への 売却が多いのではないか
  47. 48 A.T. Kearney 06/01.2017 VC資金と人材の流れ(EXITにおけるIPOとM&Aの比較) ベンチャー業界の活性化には、人材育成・輩出のメカニズムと資金の流れのエコシステムを確立しな ければならないが、日本では企業によるM&Aの少なさが主要因となり、循環が停滞 M&AによるEXITが進むと、人材・資金共に循環が加速されVBが生まれやすい環境ができる 日本のベンチャーエコシステム上の課題 出所:

    エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 M&A 人 材 循 環 • IPOでは起業家がキャッシュを得にく いため、新たにエンジェル投資家とな ることによるVBへの投資につながら ない →資金が循環しない 資 金 循 環 • M&Aでは起業家がキャッシュを得ら れるため、新たにエンジェル投資家と なることによるVBへの投資につなが る • VCにとってより早くトラックレコードが 積み上げられるため、次のファンドレ イズがしやすくなる →資金が循環する IPO • IPO後も経営から離れられず、シリア ルアントレプレナーとなることやその 他の領域への転身ができない →人材が循環しにくい • M&Aにより買収した企業がビジネス を継承すると、起業家が経営から離 れることができるため、シリアルアン トレプレナーになることやその他の領 域への転身が可能 →人材が循環する インタビュイーのコメント • M&AによるEXITが増えるこ とで、起業家がキャッシュを 得て、シリアルアントレプレ ナーとなるか、エンジェル投 資家になるので、エコシステ ムの形成につながる • ベンチャーエコシステムを回 すためには大企業がVBへ の見方を改め、VBをM&A するようになっていかないと いけない • シリコンバレーやイスラエル には、多くのシリアルアント レプレナーがおり、そこが日 本との大きな違い
  48. 49 A.T. Kearney 06/01.2017 • VBの将来性評価ができない – 日本の大企業にはVBを買うノウハウや人脈 がない •

    大企業が理解できるような、説得力を持 つ事業の説明能力が不足 – 日本の起業家のアイディアは米国と比較して 必ずしも見劣りしているとは思えないが、マー ケティングや経営能力で大きな差が生まれて いる – VBが素晴らしい理念や商品を持っていても、 それを適切かつ効果的にプレゼンする能力が 極めて低いケースが散見される 大企業が国内VBを買わない理由 出所: エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 日本の大企業が国内のVB買収に消極的な理由は、有望なVBを見出す能力が未成熟な企業が多い ことと、VBが大企業にM&Aされる水準に育っていないためと推察される ス キ ル 企業側の問題 仕 組 ・ 体 制 カ ル チ ャ ー • 自前主義で国内VBを信用しない。大企 業に入れなかった人・あぶれた人がやる こととみなす。確立していないものを育て ることが苦手 – 日本の大企業はVBを上から目線で見ている。 また、リスクを取って成長を目指す経営者がそ もそも日本には少ない • 大型投資や大型買収と同じ社内プロセ ス、同じ量・質の情報を得られない限り 意思決定できない – 日本の大企業は金・組織・人の問題に加え、 社内の抵抗勢力等の調整等に時間がかかり、 意思決定が遅い VB側の問題 • 大企業とはそもそもカルチャーが違うと 決めつけ、大企業に認められるための十 分な努力をしない – 大企業の意思決定システムの中で、VBを育 てられるとは思えない • トラックレコード・成功体験が不足 – 最近は増えてきたものの、日本ではシリアル アントレプレナーが少ない ス キ ル 実 績 マ イ ン ド 大企業による VB買収が 少ない
  49. 50 A.T. Kearney 06/01.2017 日本におけるベンチャー投資の国内外投資比率 日本のVB向け投資におけるCVC・企業の占める比率は高いが、その投資の過半は海外VB向けであ るということも、国内VBのM&AによるEXITが少ないことの一因と考えられる 投資先国の割合(2015年、%、件数ベース) 1. 当該数値はCB

    Insightsのデータを使用。なお、Preqinでアクティブなファンド15社をピックアップして検証したところ、国内比率は46%であった 出所: CB Insights/JAPAN FORUM FOR INNOVATION AND TECHNOLOGY at UC San Diego、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2016」、Preqin、エキス パートインタビュー よりA.T. Kearney作成 【企業による投資】 【CVCによる投資】1 日本のVBは魅力的でないので海外に 投資している 企業 2015 46% CVC 23% VC/金融会社 31% VC投資の内訳(件数ベース) 国外 国内 65% 35% 国外 国内 85% 15%
  50. 52 A.T. Kearney 06/01.2017 政策・官民ファンドの位置づけからの示唆 • 官製ファンドは中小企業やVBへの投資を中心に、大企業への投資は対象を限定して実施している • 多岐にわたる官製ファンドや金融支援活動を一つの組織に統合することにより、政策の一貫性の追求やワンストッ プショップ化による情報周知の効率化およびユーザー利便性の向上などを目指している

    欧州諸国からの日本の官民ファンドへの示唆 • リターン・公益性に対する考え方 – 組織全体として(民間よりは低めの)リターンを確保しつつ、案件や組織によって収益性重視、公益性重視を明確 に選別し、一部はブレークイーブン・赤字を許容 – 基本的にファンド資金には民間出資を求めず官100%のケースが多い。新技術へのアクセスなど、純粋な資金的 リターン以外の価値を提供できる場合に限り、政策意義に共感する民間企業からの出資を得て「官民ファンド」形 式を採用(例:独ハイテク起業基金) • 投資目的・対象 – VC育成や中小企業への資本供給等、民間ではリスクマネーが十分に供給されていないような分野に投資 – 国策・政策目的によって、投資を通して資本の安定や大企業へのコントロールを目的とした株式保有も実施 – スキーム(メニュー)毎に投資目的・対象を明確に定義し、時限的に運用 – 定期的に実績評価を実施し、機能していない場合は、運営方法の変更や投資活動の停止(スクラップ)も実施 • 投資手法・期間 – 民業圧迫を回避し、民間投資の呼び水となりえる、Fund of Funds方式やマイノリティ投資を基本としつつ、一部 直接投資も実施 – 投資回収期間を民間より長めに設定 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆(まとめ)(1/2)
  51. 53 A.T. Kearney 06/01.2017 欧州諸国からの日本の官民ファンドへの示唆(つづき) • 運営・組織 – 100%官が出資する統括組織の傘下に投資や融資の機能を持つ個別事業体を設立し運営することにより、全体 の戦略的整合性を考慮した幅広いサービスを提供し、スムーズな情報共有を実現しつつ、個別機能のニーズ・特

    性に合わせた組織・制度設計を可能としている – 活動・情報を一元化することにより、PR効果の向上とワンストップショップ化によるユーザー利便性を確保 – 取締役会の設置や民間からの委員を含む投資委員会等を通して、組織運営の独立性、政治の介入を抑制 – スキーム(メニュー)組成と同時にファンドマネージャーやチームを外部より選抜し運営を委任する例も見られる – ファンド形態の一つとして、民営化するケースも存在 • 人事制度 – 政府系機関の従業員としての上限を超える待遇枠を一部設定し、民間ファンドを対象に給与水準のベンチマーク を実施したり、年金等の福利厚生面の充実を図り、民間からの優秀な人材確保を徹底 – 報酬も、プール制のキャリー制度ではなく、機能別に明確なKPI設定と定量定性2軸での評価に基づくパフォーマ ンスボーナス方式を採用 • ミドル・バックオフィスの活用(統括組織内に存在) – ブランドや活動内容の周知:PRおよびIR活動を通して、中小企業を中心とする潜在的な対象企業への資金調達 オプションとなり得ることの周知や、民間ファンドに対して競合ではなく協業パートナー候補であることをアピール – エコノミストグループとして政府出身の専門家等の部隊により、定量・定性経済分析に基づく、民業補完となる活 動を展開すべき領域の特定や、投資戦略・案件提案を策定 欧州諸国の政策・官民ファンドからの示唆(まとめ)(2/2)
  52. 55 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツのマクロ経済 ドイツでは構造改革が始まった2000年代以降、失業率の増加等一時的な痛みを伴ったが、その後失 業率の低下と経済成長率の向上を実現 失業率の推移 前年比実質GDP成長率 -6

    -4 -2 0 2 4 6 1990 1995 2000 2005 2010 2015 イギリス ドイツ フランス 0 5 10 15 1990 1995 2000 2005 2010 2015 ドイツ フランス イギリス シュレー ダー首相 メルケル 首相 メルケル 首相 (%) (%) コール首相 シュレー ダー首相 コール首相 出所: World Development IndicatorよりA.T. Kearney作成
  53. 56 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツ企業の収益力の推移 構造改革が進んだ2000年以降、ドイツ企業のROEは高水準で推移し、直近数年では、主要先進国で は米国に次ぐ水準を維持 7.4 12.2 17.2

    5.7 8.4 9.6 12.4 -10 -5 0 5 10 15 20 2000 2005 2010 2015 2020 ドイツ フランス イギリス 米国 日本 7.5 1. 各国のインデックスより算出(日本:TOPIX、米国:S&P500、イギリス:FTSE100、フランス:CAC40、ドイツ:DAX) 出所: BloombergよりA.T. Kearney作成 各国企業のROE推移1 (%) 予測値 シュレーダー首相 メルケル首相
  54. 57 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツにおける1990年以降の課題と主な政策 東西ドイツ統合・従来からの経済モデルの疲弊により「欧州の病人」と言われるに至ったが、1990年代 の資本市場改革や、シュレーダー政権の一連の改革で、「一人勝ちのドイツ」と言われるようになった ― 1990 政権・内閣

    シュレーダー首相 (社会民主党) メルケル首相 (キリスト教民主同盟) コール首相 (キリスト教民主同盟) 課題 • 「欧州の病人」と呼ばれる経済不況 – 東西ドイツ統合に伴う東ドイツの経済 不況 – 金融機関の株式保有に代表される ガバナンスシステム、硬直的な労働 市場 ― 2010 ― 1998 ― 2005 主な政策 • 「ニューエコノミーバブル」崩壊による ハイテク企業の減少 • 資本市場改革 (1990年から2002年まで4次に渡って実施) – 投資信託の解禁、有価証券取引税の 廃止等 – インサイダー取引規制等 • 構造改革等に着手 – 法人税減税等の税制改革(2000) – コーポレートガバナンスコード導入(2002) – 労働市場改革(2003年以降順次) • ハイテク戦略(2006、2010、2014) – 情報・通信及び製造技術分野の強化 – インダストリー4.0推進等(2010年以降) • 労働市場改革 – 全国一律の最低賃金制の導入等、 所得格差の是正 • 産業クラスターの形成支援 – 中小企業等と研究機関等との連携強化 出所: 財務省「ドイツにおける財政投融資類似制度」、みずほ銀行「みずほ産業調査Vol.50」(2015)、斎田温子「ドイツの金融機関による株式保有の経緯と現状」野村資本市場クオータリー(2011)より A.T. Kearney作成 • 所得格差の拡大 – シュレーダー政権下の労働市場改革 により、低賃金派遣労働者の拡大等、 所得格差への批判が強まる • ハイテク起業基金(2005)
  55. 58 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツの産業政策の全体像 ドイツでは、企業の競争力強化に資する制度改正を行う一方、中小企業・技術開発の支援等には、政 策金融・補助金等、「資金助成」を伴う政策や、ネットワーク形成支援を実施 1. いわゆる「バイアウト」「VC」目的以外の出資事業を含む 2.

    KfW(ドイツ復興金融公庫、総資産 €0.5Tr):連邦政府80%、州政府20%の出資で設立。中小企業、VB、自営業、地方自治体、輸出金融、発展途上国などの助成を実施 出所: 財務省「ドイツにおける財政投融資類似制度」、みずほ銀行「みずほ産業調査Vol.50」(2015) 、斎田温子「ドイツの金融機関による株式保有の経緯と現状」野村資本市場クオータリー(2011)より A.T. Kearney作成 1990年代以降の主な産業関連政策 主な示唆 • 制度改正が基 本 • 資金助成は、 技術開発、輸 出金融等が主 • 中堅中小向け には、ニーズ に応じて、補 助金・ローンを 提供 • リスクあるハ イテクVBに対 しては、ス テージに応じ てファンドで対 応 大 企 業 中 堅 ・ 中 小 企 業 VB 法律 税制 補助金 ファンド1 ローン 制度改正 資金助成 • 労働市場改革 – 失業給付制度の 見直し – 解雇規制の緩和・ 派遣労働の規制 緩和 • 資本市場改革 (1990~2002) – インサイダー取引 規制等による証 券市場の透明性 向上 • コーポレートガバ ナンスコー(2002) – コーポレートガバ ナンスコード導入 • 法人税の基本税 率引き下(2001) – 一律25%(それま では留保分40%, 配当分30%) • キャピタルゲイン の非課税化 (2002~2005) – 株式会社等が保 有株式を売却した 際の売却益を非 課税化 • 民営化支援 – KfW2が、郵便・通 信会社の民営化 のため株式取得 • 輸出金融等 – KfW2 が実施 • 環境改善・技術開発 – KfWが環境・エネ ルギー改善プロ ジェクトを支援 • インダストリー4.0 – 「インダストリー 4.0」の実現に向 けた研究助成等 – 同時にコンソーシ アム形成 • 産業クラスター – 政府はクラスター のマネジメント会 社に出資 – 中小企業と研究 機関の連携を推 進 • ハイテク起業基金(2005) – ハイテク技術を持つシード段階の企業に出 資 • KfW2 – スタートアップローン・ファンド等で、シード 期以降のVBを支援 • KfW2 – 設備投資・運転資金、地域の会社、研究開 発等、中堅・中小企業の各種ニーズに対し て、資本・ローンを提供
  56. 59 A.T. Kearney 06/01.2017 (参考)主な政策の詳細 政策名 主体 開始年 内容 ハイテク戦略

    連邦教育研究省 /連邦経済エネ ルギー省 2006年~ • 2006年に策定、2010年、2014年に改訂 – 2010年のハイテク戦略でインダストリー4.0が打ち出され、「考える工 場」等のプロジェクトに研究助成金を交付 – 2013年に戦略策定委員会が産官学の連携のもとに発足し、ロード マップ等を策定 産業クラス ター政策 連邦政府/ 州政府 2000年代 半ばから 本格化 • 連邦政策の施策 – コンテスト・評価制度:クラスター候補地を競わせ、評価の高い地域 に助成金を出すことで、クラスター形成を促進 • 州政府の施策 – 民間組織にクラスターのマネジメントや科学技術政策に関するアドバ イスを依頼 資本市場 改革 連邦財務省 1990年~ • 4次に渡る資本市場改革を実施 – 上場基準の緩和、VCの組織形態の柔軟化、キャピタルゲイン非課 税枠の拡大 等 – インサイダー取引の規制強化、情報開示の強化 等 労働市場 改革 ハルツ氏を首班 とする委員会で 検討 2003年~ • シュレーダー首相下での労働市場の柔軟化政策 – 失業給付金の給付期間の短縮化、給付要件の厳格化 – 解雇規制の緩和、派遣労働の派遣可能期間の上限撤廃 • メルケル首相下での所得是正政策 – 全国一律の最低賃金制度 等 資 金 助 成 制 度 改 正
  57. 60 A.T. Kearney 06/01.2017 ドイツの官民ファンド:ハイテク起業基金の概要 連邦エネルギー経済省とKfWは、投資期間6年・回収期間7年という、民間ファンドより長期の投資を 行う官民ファンドでの出資や劣後ローンを通して、ハイテク技術を持つシード段階の企業を支援 ハイテク起業基金の概要 スキーム 設立時期

    設立の 目的・概要 投資手法 • 民間では投資しにくいハイテク技術を基盤に持つシード段階の 企業への資本供給を目的に政府主導で設立 • 民間投資家への橋渡し • 2005年に設立 • 株式、株式転換が可能な劣後ローンの形で投資 • 初回は€0.5Mが上限。追加投資は€1.5Mまで可(合計€2M) 投資対象 • 革新的な技術を保有するシード段階の企業が対象で、主な要 件は以下の通り – 特許に匹敵する知的財産を保有していること – 設立後1年以内であること – 従業員50名未満、年間売上€10M未満であること ファンド 概要 • 各ファンド共通 – 一つのファンドは、投資期間6年・回収期間7年の計13年間存 続(※民間ファンドは通常10年程度) – 投資期間終了時でファンドの約50%を投資済み、残りはポート フォリオ企業(現在400社強)の継続的育成向け投資に使用 • 1号ファンド(2005年設立、€270M) – 出資比率:連邦経済エネルギー省88%、KfW6%、民間6% – BOSCH、ダイムラー、シーメンス等6社が出資 • 2号ファンド(2011年設立、 €300M) – 出資比率:連邦経済エネルギー省72%、KfW13%、民間14% – BOSCH、ダイムラー、RWE、BASE等18社が出資 • 3号ファンド(2017年~、 €300M、民間~30%・25社強を予定) 出所: 財務省「ドイツにおける財政投融資類似制度」、ハイテク起業基金HP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 民間より長期の投 資回収期間を設定 シード期のハイテク企業 ハイテク起業基金 1号、2号、3号(2017年~) 連邦経済 エネルギー省 KfW 民間企業 出資 投資 民間企業の期待値 • 技術動向の把握 • ディールソース • VBとの接点 • 人材育成の場 民間企業の提供価値 • 出資 • 人的サポート(技術の目 利き、VBの運営・育成 など) 運営組織の概要(社員数50名、2016年1月時点) マネジメント ミドル・バック オフィス ハードウェア、オー トメーション、光学 技術、エネルギー、 工業ソフト投資 ライフサイエンス 素材、ヘルスケ ア、化学投資 通信、ソフト、メ ディア、EC投資 • KfW出身1名 • 民間出身1名 • 管理 • PR・IR • 総務 など 2名 18名 8名 11名 11名
  58. 62 A.T. Kearney 06/01.2017 フランスのマクロ経済 イギリスとドイツで失業率が下落し、経済成長率が向上する中、フランスは一貫して高い失業率とリー マンショック後の経済成長の低迷が続いている 失業率の推移 前年比実質GDP成長率 -6

    -4 -2 0 2 4 6 1990 1995 2000 2005 2010 2015 イギリス ドイツ フランス 0 5 10 15 1990 1995 2000 2005 2010 2015 ドイツ フランス イギリス (%) (%) 出所: World Development IndicatorよりA.T. Kearney作成 シラク大統領 サルコジ 大統領 ミッテラン 大統領 オランド 大統領 サルコジ 大統領 シラク大統領 ミッテラン 大統領 オランド 大統領
  59. 63 A.T. Kearney 06/01.2017 フランス企業の収益力の推移 フランス企業のROEは、リーマンショック時の大幅な下落から立ち直っていない 7.4 12.2 17.2 5.7

    8.4 9.6 12.4 -10 -5 0 5 10 15 20 2000 2005 2010 2015 2020 7.5 イギリス ドイツ 米国 フランス 日本 1. 各国のインデックスより算出(日本:TOPIX、米国:S&P500、イギリス:FTSE100、フランス:CAC40、ドイツ:DAX) 出所: BloombergよりA.T. Kearney作成 各国企業のROE推移1 (%) 予測値 シラク大統領 サルコジ大統領 オランド 大統領
  60. 64 A.T. Kearney 06/01.2017 フランスの政策課題の変遷 フランス経済の課題は、本質的には10年前と変わらず、 「失業問題」と「技術開発力の弱さ」 出所:フランス貿易投資庁ビジネスフランス資料「Doing business in

    France 2015」、 2014 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 、財務省理財局資料「フランス、イギリスにおける 財 政投融資類似制度の概要」、 平成26年度海外行政実態調査報告書「フランスにおける産業クラスター政策の現状」、その他記事検索よりA.T. Kearney作成 ― 1981 政権・内閣 オランド大統領 社会党 シラク大統領 共和国連合(のち共和党) ミッテラン大統領 社会党 政策の方向性 民営化・金融緩和 • 主要国有企業の民営化 (99年までにルノー含む競争産業分野の約30社を民営化、 00年代は仏ガス公社など公共分野含む約10社を民営化) • 利子率、為替管理自由化、証券化の自由化 企業数の99%を占める中小企業を中心に イノベーションの創出・創業支援 • 産業クラスター • 研究開発案件に対する「未来への投資」 • 戦略投資ファンド(FSI)設立(2008) 国有化・戦後ディリジスム(=市場介入) =“ミッテランの実験” ― 2012 ― 1988 ― 1995 課題 悪化する失業率、低成長経済 財政悪化・企業の国際競争力の低下 「産業の空洞化」が深刻化 フランスの弱点は2つの ①失業問題 ②技術開発力の弱さ ※しかし、いち早く自由化に舵切りした英国とは5年の開き… サルコジ大統領 国民運動連合(のち共和党) ― 2007 政策の大転換 ミッテラン大統領 社会党 選挙戦公約で掲げた 最重要政策は経済・財政の再建 ①中小企業支援策→雇用創出 ②国内産業振興→空洞化対策とイノベーション
  61. 65 A.T. Kearney 06/01.2017 フランスの産業政策の全体像 フランス政府は主に中小企業を対象にした資金援助を中心に、起業支援・雇用創出・イノベーション 推進を図るものの、雇用創出を意識して労働市場改革に手を付けられずにいる 出所:フランス貿易投資庁ビジネスフランス資料「Doing business in

    France 2015」、 2014 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 、財務省理財局資料「フランス、イギリスにおける 財 政投融資類似制度の概要」、 平成26年度海外行政実態調査報告書「フランスにおける産業クラスター政策の現状」、その他記事検索よりA.T. Kearney作成 補助金 融資・出資 税制・社会保障制度 規制緩和ほか 資金助成 制度改正 大企業 中小 企業 / VB 研究開発税額控除 (2013) 雇用者社会保障負担減額 Bpifranceの融資・出資 (2013~) FSIとOSEOが合併してできる – FSIはリーマンショック後の の金融危機に対応する ために設立 – OSEOは、中小企業への 融資・融資保証を実施 APE(国家出資庁)の出資 • Air France-KLM(航空)など 個人事業主制度(2009~) • 失業者は、起業後も失業手当 給付の受け取りが可能 • 地域経済拠出金、付加価値 税の支払いが 3 年間免除 • 所得税・社会保障費は、 売上がない期間は免除 • 資本金、登記が不要で、 簡易な申請(オンライン申 請)で登録が可能 産業クラスター政策(2005~) • 企業・大学・研究所を集積し、技術革新分野のR&D協力を奨励 • 国からファイナンスを受ける案件を、競争力拠点内で選出 研究開発案件に対する「未来への投資プログラム」(2005~) • 補助金、払戻し可能な保証金、株式、準株式投資等の形態で供与 政府の職業訓練補助金 職業訓練にかかる費用の 最大50%を補助 競争力強化雇用促進 税額控除(CICE、2012) 年間総給与額の6%に相当する 額の法人税が減額
  62. 66 A.T. Kearney 06/01.2017 (補足)フランスの産業政策詳細 政策名 開始年 内容 未来への投資 プログラム(PIA)

    2009 • R&Dを中心とする助成対象プロジェクトに対して補助金、払戻し可能な保証金、株式、準 株式投資等の形態で供与 産業クラスター 政策 2005 • 企業・大学・研究所を集積し、技術革新分野のR&D協力を奨励 • 国からファイナンスを受ける案件を、競争力拠点内で選出 省庁間戦略基金 (FUI) 2006 • 産業クラスターでの研究開発プロジェクトに対する省別特別基金 • 中小企業の研究開発やビジネス創出の促進、競争力の強化が目的 政府の職業訓練補助 金 - • 職業訓練の運営費ならびに職業訓練中の従業員の報酬および付随費用の一部を補填 するための援助 戦略投資ファンド (FSI) 2008 • リーマンショックにより資金難に陥っているものの、国家戦略的重要性や将来性のある企 業を支援する目的で設立。Bpifranceの設立時に統合される APE(国家出資庁)の 出資 - • 航空、防衛、エネルギー等の大企業に政府出資、超長期・過半数出資も想定 (Air France-KLM:航空、 Thales:防衛等、AREVA:原子力) 個人事業主制度 2009 • 個人の起業を促すことで経済の活性化と雇用創出するため、企業手続を簡素化、税・社 会保障費の支払い一時免除、税制優遇措置を導入 研究開発税額控除 2013 更新 • 適用年度によりR&D費用の40%、35%、30%の税額控除が認められていたが、2013年 1月1日以後発生するR&D費用については、一律30% 雇用者社会保障負担 減額 1990年 代後半~ • 特定地域での5年または7年間、 雇用者社会保障負担金の免除 • 法定最低賃金の1.6倍以下の給与について雇用者の社会保障負担金の減額 競争力強化雇用促進 税額控除 2012 • フランス経済の競争力向上と雇用負担軽減のため、年間総給与額の6%に相当する額 の法人税を減額 出所:フランス貿易投資庁ビジネスフランス資料「Doing business in France 2015」、 2014 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 、財務省理財局資料「フランス、イギリスにおける 財 政投融資類似制度の概要」、 平成26年度海外行政実態調査報告書「フランスにおける産業クラスター政策の現状」、その他記事検索よりA.T. Kearney作成 資 金 助 成 制 度 改 正
  63. 67 A.T. Kearney 06/01.2017 Bpifranceの概要 組織概要 Bpifranceの概要(1/2) Bpifranceは、金融危機後に設立されたFSIと既存の政府系金融機関を統合する目的で2013年に設 立され、中小企業を中心に投融資活動を行っている CDC

    (預金供託公庫) APE (国家出資庁) 民間 セクター など Bpifrance Financement (融資部門) Bpifrance Investment (投資部門) 50% 50% 10% 90% 100% 企業 融資、保証など 出資 ファンド 出資 設立時期 設立背景 組織目標 とKPI リターン の考え方 ガバ ナンス • 2013年にオランド大統領の指揮のもと設立 • リーマンショック後に設立されたFSI等の政 府系金融機関を統合するために設立 • 成長の下支え:売上の伸び、支援3年後の存続 企業の割合 • 雇用の下支え:支援3年後の雇用者数の伸び • 経済競争力:支援3年後の売上高増加率等 • 未来分野の発展:支援分野に占める健康・デジ タル・エネルギー等の割合 • 銀行部門の動員:レバレッジ効果 • ファイナンシングへの貢献:支援対象企業数等 • 経営支援の開発・展開:支援企業数、満足率 • 零細・中小・中堅企業への業務展開:企業規模 別の活動シェア • 目標はIRR4.5%~5.5% – 金融的パフォーマンスの他、社会的・環 境的責任を考慮 • 政府からの独立性 – 各子会社に取締役会を設置することで、 政府からの独立性を担保 • 政府の関与 – 年1回実施する戦略策定プロセスの協 議・承認等 2,540名程度 ※)全国に47カ所のオフィスを設置することで、フランス全土をカバー 出所: Bpifrance HP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 Bpifrance Assurance Export(輸出 信用部門) Bpifrance 保証、保険 0名 ※従業員は子会社 に所属
  64. 68 A.T. Kearney 06/01.2017 Bpifranceの概要(2/2) Bpifrance Investmentの特徴 直接投資する対象 投資手法 HR

    出資 投資期間 • Bpifrance全体の財源は予算/自己資金である が、エクイティ投資は自己資金を活用 • LP投資 – Fund of Fundsの形式で投資 • 直接投資 – 単独投資はせず、マジョリティーを取らない – 出資比率も民間投資パートナー比率を超えな い – 投資条件等では、民間ファンドの決定に準拠 • 給与体系 – 給与やインセンティブは、公務員であることが 理由でキャップがあるわけではないが、民間 よりは低い – 投資期間が8-10年程度と長期であることから、 キャリー制度も導入していない – ただし、別の方法でパフォーマンスに応じたイ ンセンティブは検討中 • 投資期間8-10年程度 (※フランス全体の平均は4年程度) Bpifrance Investmentは、民業圧迫とならないよう投資手法によって民間と協調するなどの配慮をし、 足の長い投資を中心に投資活動を行っている 1.2016年1月段階 出所: Bpifrance HP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 Mid- Large Cap Small Cap Venture Capital 企業 価値 投資 サイズ >€50M >€4M <€50M - <€4M - 投資目的 / 実績 • Large Capの投資目的 – 資本の安定や、対象企業へ の国家としてのコントロール を維持するために投資 • Mid Capの投資目的 – グロースやバイアウト目的の 投資 • Mid-Large Capの投資実績 – €15.7bnを141社に投資1 • 投資目的 – グロースやバイアウト目的の 投資 • 投資実績 – €1.3bnを450社に投資1 • 投資目的 – VBの育成 • 投資実績 – €1.4bnを100社に投資1
  65. 69 A.T. Kearney 06/01.2017 フランスからの示唆 • 機能・組織の一元化による情報周知の効率化 • 目的決定に際して類似組織との棲み分け方法の 明確化が重要

    • 政策目的の場合:国家戦略的に重要な産業(軍事、 原子力、など) • 収益目的の場合:民間ファンドが対象としない領域 を幅広くカバー • Fund of Fundsを有効に活用 • 直接投資する場合はマイノリティー投資を原則とし、 リード投資家にはならない • 取締役会に民間の幹部を招致し、民業圧迫を抑止 し民間との協業を推進 • 一定程度の規模に成長しPR投資をする事により、 サービス内容を周知しイメージを向上。結果として、 優秀な人材獲得にも貢献 • 業績に連動した報酬体系とし、優秀な人材の確保 を目指す • FSI、CDC Enterprises、OSEOの機能を統合、フランス企業向 けに一つの窓口を準備(Bpifrance) • BpifranceとAPEでどちらが案件に投資すべきか意見が分かれ る事がある(例:ルノーの救済)(Bpifrance、APE) • 政策的な投資対象領域を策定:①国家戦略セクター、②経済や 社会的高インパクトセクターおよび企業、③変革の過渡期にある 企業、④経済・市場危機対応(APE) • 民間ファンドと競合する事が稀にあり、一部のプレイヤーから民 業圧迫との批判も一部存在(Bpifrance) • LP投資のみのスキームをSME向けに展開(Bpifrance) • 直接投資の場合は大原則として、マジョリティーを取らない・民間 との共同出資とする事を徹底(Bpifrance) • 取締役会に民間銀行の幹部2名を招致(Bpifrance) • 約2,500人の社員数、47拠点(当初は3拠点)の規模に成長し、 PR活動を積極的に展開する事により、トップスクールの卒業生 が希望就職先の候補に挙げるまでにイメージを向上 (Bpifrance) • 投資部門以外へは適用できないキャリーではなく、他の手法で 業績に応じた報酬体系となるよう検討中(Bpifrance) 1.Bpifrance:公的投資銀行、APE:フランス政府保有株式監督庁 目的 対象 手法 運営・ 能力 示唆 具体例(Bpifrance、APEの例1)
  66. 71 A.T. Kearney 06/01.2017 イギリスのマクロ経済 失業率の推移 前年比実質GDP成長率 -6 -4 -2

    0 2 4 6 1990 1995 2000 2005 2010 2015 イギリス ドイツ フランス 0 5 10 15 1990 1995 2000 2005 2010 2015 ドイツ フランス イギリス (%) (%) 出所: World Development IndicatorよりA.T. Kearney作成 ブレア首相 ブラウン 首相 メージャー 首相 キャメロン 首相 ブレア首相 ブラウン 首相 メージャー 首相 キャメロン 首相 リーマンショック後の経済成長は回復の兆しが見えており、失業率も近年低下傾向にあるものの、EU 脱退により今後の見通しは不透明 メイ 首相 メイ 首相
  67. 72 A.T. Kearney 06/01.2017 イギリス企業の収益力の推移 近年のイギリス企業は、他国と比較すると、相対的に収益力が低下している 7.4 12.2 17.2 5.7

    8.4 9.6 12.4 -10 -5 0 5 10 15 20 2000 2005 2010 2015 2020 7.5 イギリス ドイツ 米国 フランス 日本 1. 各国のインデックスより算出(日本:TOPIX、米国:S&P500、イギリス:FTSE100、フランス:CAC40、ドイツ:DAX) 出所: BloombergよりA.T. Kearney作成 各国企業のROE推移1 (%) 予測値 ブレア首相 ブラウン首相 キャメロン首相 2012年 BBB設立 メイ 首相
  68. 73 A.T. Kearney 06/01.2017 British Business Bank(BBB)の概要(1/2) BBBは金融危機後に設立された複数の政府系ファンド等を統合してできた機関であり、個々の事業で はなく、全体としてのリターンの達成やSME向けの包括的な資金支援を目指している British

    Business Bankの概要 組織概要 1. BEIS:Department for Business, Energy, and Industrial Strategy (ビジネス・エネルギー・産業戦略省) 出所: 国内省庁のレポート、各国各官庁・ファンドHP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 • 2012年9月に創設、2014年秋より本格稼働 • リーマンショックを契機に設立された中小企業向けの 公的ファンドを、より包括的なパッケージを供与する 公的機関として統合 • SME向けの資金供給量の増加 – 2019年までにBBBによる£10bnの資金供給 • SMEの資金調達源の多様化 – 4大銀行以外からの資金調達を50%以上とする • SMEへの多様な資金調達手段の周知 – SMEが資金調達環境が改善したと認識する • 税収の効率的な活用 – 中長期国債の利率である2-2.5%以上のリターン • 営利目的組織であり、 収益性を確保 – VC Capital Funds – Debt Funds など • 政府の要望により、 公益性を重視した補 助金等 – Enterprise Capital Fund など • BEIS 1の投資活動 を代行 British Business Finance Ltd BBB Investments Ltd British Business Financial Services Ltd British Business Bank (BBB) BEIS ミドルオフィス 設立時期 設立背景 組織目標 とKPI リターン の考え方 • 組織全体としてはリターンを担保するが、一部の案 件では赤字が発生することを許容 – BBB Investmentは収益性を重視 – BBB Business financeは公益性重視 ガバ ナンス • 政府との関係 – 経営判断は独立したボードメンバーが実施 – 政府は投資委員会への参加、新規スキームの審査、 予算承認を通して、影響力を行使可能 • 民間ができない分野の特定 – エコノミストが民間金融機関ができないエリアを特定 UKGI 財務省 予算申請を評価 政府の投資を管理 する立場 バックオフィス • 戦略・企画やエコノミ ストによる評価 等 • 総務やHR等 45名程度 約50名(エコノミスト7名) 約50名 100%株式を保有 取締役会 ∼10名
  69. 74 A.T. Kearney 06/01.2017 BBB の投融資の特徴 1. NPIF=Northern Powerhouse Investment

    Fund、MEIF=Midlands Engine Investment Fund。共にイギリスの地域特化型ファンド 2. DD=Due Diligence 出所: BBB HP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 BBBは、Fund of Funds形式を基本としており、目的に応じたファンドを必要に応じて組成している Enterprise Capital Fund NPIF、MEIF1 Angel Co-Fund VC Capital Fund • マイノリティを基本とした共同出資(Angel Co-Fundを除きFund of Funds形式を採用) – BBBは民間金融機関を通して、エクイティ、メザニン、デット等を提供 – 出資・融資先のモニターはするが、個別の資金提供案件の意思決定には介入しない – Angel Co-Fundは直接投資であるものの、マジョリティーおよびリードは取らない • マイノリティを基本とした共同出資とする理由 – 個別案件に介入しないことによる中立性の確保 – ポートフォリオマネジメントや案件開拓をアウトソーシングすることで、BBBの組織規模を小規模化 British Business Bank(BBB)の概要(2/2) • SME向けのファンド – 民間ファンドが検討する に値しないような小規模 投資をLP投資を通して実 施 – このファンドでは、BBBの 要求リターンは3%とし、 差分は投資対象企業と共 同投資者に配分 • 地方の都市部のリスク マネー供給の格差を埋 めるために設立された ファンド – 従来は、細分化された地 域・ローカルでニッチな市 場毎にファンドが存在 – それらを集約することで、 スケールメリットを実現 • 直接投資する収益目的 のファンド – 各ラウンドで投資される金 額の49%を上限として投 資 – リード投資家のDD2結果 に基づき投資判断するこ とで、個別案件の投資判 断には主体的に関わらな い • テック系VCファンド – バイオ、エネルギー等の テクノロジー企業のアー リー、グロースステージに 投資するVCに出資 – 民間ファンドだけでは資 金量が足りないVBの資 金調達ニーズを満たす BBB全体
  70. 75 A.T. Kearney 06/01.2017 British Business Bankにおける人事制度 BBBでは、官としての給与上限を超える特別枠や、年金等のベネフィットを利用することで民間同等 の給与水準を目指す。また、数値的KPI達成への貢献度および組織ミッションの体現度の2軸評価基 準に応じたボーナスシステムを導入

    採用 マネジ メント 報酬 評価・ボーナス 配置・代謝 スタッフ • 民間金融セクターや ファンド業界を中心に 採用 – 給料だけではない モチベーションを 持った人材を発掘 • 当初は官からの出向 者60%、40%が民間 • 出向者は帰還・転籍済 • 直近は民間から中途 人材のみ採用 – ファンド、金融機関、 コンサル、など – 中途採用のみ • 官のトップである首相 の給与を超えるポジ ションを約20個設定 – ~£300k+ボーナス • 特別枠以外は民間ベ ンチマーク – 民間業界をベンチ マークし、下位4分 の1の会社と同程度 を設定 • 年金等のベネフィット は充実 – 給与以外の年金等 のベネフィットを合わ せると民間同等の 水準 • 組織としての数値KPI 達成に対する貢献度 (定量)、および組織 ミッションの体現度 (定性)の2軸で評価 – ミッション体現度は 360度評価で判断 – KPIとミッション体現 度は半々の比重 • パフォーマンスに応じ たボーナスを支給 – キャリー制度は適 用していない – 2軸評価のパフォー マンスでボーナス額 を決定 • 契約制 – 最低任期は4~5年 – 契約期間満了に近 付く程年次のボー ナス額が増加 • スタッフは正社員 • プロモーションは限定 的 – ポジションが空かず、 組織的拡大も僅少 1. KPIは4つ:P88の「組織目標とKPI」を参照のこと 出所: エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成
  71. 76 A.T. Kearney 06/01.2017 British Business Bankにおけるエコノミストチームの概要 組織規模 • 7名

    出身元 • 財務省やBank of Englandより転籍 • 経済学・定量分析の専門家 主要機能 • 企画機能 – 市場リサーチ – 投資戦略提案(領域の特定など) – 投資案件ビジネスケース構築、提案 書作成 • 対外的な情報発信機能 – 年次SME資金調達レポートなどの 出版物作成と展開 – SMEへの情報周知の向上 • 評価機能 – 組織全体の対KPI達成度評価 – 各プログラムの業績レビュー エコノミストチームの概要 活動フロー(例示的) インプット プロセス アウトプット • 年次SME資金調達レポート並びに投資戦略提案の例 エコノミストチームは財務省出身の経済学・統計の専門家等7名で構成され、BBBが注力すべき民業 補完となる投資対象領域の特定や、政府向けの投資戦略・案件提案の作成を担っている 市場データ 民間協業者1 からのイン プット サーベイ等、 その他情報源 経済分析 (定量・定性) • 民間資金供給 の傾向、アン メットニーズの 定量分析 – ステージ – 業界 – 投融資額 – 地域 – 出資元 など • アンケート、定 期的な民間と の協議の実施 投資対象領域 の特定 (民業補完に貢献) 投資案件ビジネ スケース作成 (政府の最終合意獲 得) 投資戦略策定、 提案 (政府と活動方針の 合意) 1. 投資先の民間ファンドや金融機関を含む 出所: BBB HP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 …
  72. 77 A.T. Kearney 06/01.2017 (参考)エコノミストグループのアウトプット例 BBBのエコノミストグループは年次でエクイティ投資レポートなどを発行する過程で、資金調達のアン メットニーズの所在などを把握し、組織の投資戦略や対象領域を特定している 出所:BBB 「Small Business

    Equity Investment Tracker」よりA.T. Kearney作成 ステージ別 セクター別 サブセクター別 案件規模別 地域別 投資者別… レポートの年次発信 • 分析結果の市場状況やニーズに照ら し合わせて、BBBの活動意義を検証 • 民業補完が可能であったり、ニーズ のギャップが存在しそうな領域を特定 深掘り分析例:地域的ニーズのギャップ分析 • トピックによっては、深掘り分析を実施し、詳細領域を特定 分析内容 • 細かい粒度で市場の動向を分析:ステージ別に、セクター、サブセ クター、案件規模、地域、投資者などの件数と投資規模を分析 • 自社の投資先ファンドの活動内容も市場全体の活動と比較分析 BBBによるSmall Business Equity Investment Tracker (2016)の例
  73. 78 A.T. Kearney 06/01.2017 0 2 4 6 8 10

    2000 1998 1996 2008 2012 2004 2010 2002 2016 2014 1994 2006 官民ファンドの民営化事例:3i Group 設立当初(1945年):官民ファンド 現在:民間ファンド イギリスの3i Groupは中小企業向けの資本供給を目的に官民ファンドとして発足。その後、1994年 に上場し、現在は国際的な民間PEファンドとなっている 3i Groupの歴史と上場後の株価 1. 3iGroupの全身はICFC(Industrial and Commercial Finance Corporation) 2. CPPIB(Canada Pension Plan Investment Board)は規模$300bnのファンドを運用する官民ファンド 出所:3i Group HP、The Industrial and Commercial Finance Corporation「Lessons from the past for the Future」、Financial Times よりA.T. Kearney作成 目的・ 領域 • イギリスにおける中小企業向けの長期・恒久的 な資本の提供(£5K~200K/案件)を実施 – SME向けに“McMillan Gapを埋める” 組織 株主 • ロンドン1拠点 • 労働党派のLord William Piercyが初代会長 • イギリス銀行および4大民間銀行が100%所有 目的・ 領域 • 収益性を追求し、消費財・産業・テクノロジーセ クターの€100-500M企業が対象 • 欧州・北米・アジアが対象地域 組織 株主 • 世界9カ国に9拠点を展開 • 社員数は300人弱:元職員にはマッコリ―キャピ タルやCPPIB2のシニアMDなどが存在 • 投資マネジメント会社が上位10社中9社(筆頭 株主はArtemis:6.71%) • 3i Group従業員持株信託が6位で2.55% (調整済み株価、BGP) 1945 1983 設立 (ICFC1) 3iへ改 名 上場 海外展開 パリ(’83)、フランクフルト(’84) マドリッド(’90) シンガポール(’97)、アムステルダム(‘98) ストックホルム(‘01) ムンバイ(‘05) ニューヨーク(‘07) 現社長 就任 現会長 就任 会長 交代 社長 交代 社長 交代 会長 交代 • エクイティへのニーズの増加と共に民間PEファン ドの市場が立上った • サッチャー政権から続く民営化の流れも後押し 社長 交代
  74. 79 A.T. Kearney 06/01.2017 イギリスからの示唆 目的 対象 手法 運営・ 能力

    示唆 具体例(BBB1などの例) • 設立および活動目的と計測可能なKPIを明確にひ も付ける • スキーム毎の目的を定義し、個々に収益性と公益 性のバランスを検討 • スキーム(メニュー)それぞれに対して対象となる地 域、セクター、企業規模などを定義 • 必要に応じてスキームを追加する事により、多様性 を持たせる • Fund of Funds出資をする事により、ディールソー シングおよび対象企業の管理のアウトソーシングを 実現 • 融資、保証、出資を一元化し、ワンストップショップ 化を実現 • 待遇面で民間水準に近づけるために、一定数の 「特別枠」を準備 • 政府向けの資料作成・科学的に新しいニーズを分 析、発掘、PR発信等をするための専門家(エコノミ スト等)部隊を配置または外部リソースを活用 • 定期的に民間金融セクター幹部との情報交換を行 い、活動領域や状況等につき意見交換を実施 • 目標従業員数を規定し、組織の肥大化を抑制 • 4つの目標とそれにひも付いたシンプルな定量KPI(SME向け資 金供給量の増加率やROCE率2など)を定義し、公表している • 組織全体の目標を握りつつ、政府から要望される低収益の案件 は個別に目標を設定し、合意している • Northern Powerhouse Investment Fund等、組成目的、対象地 域、事業規模、判断基準、期間等がメニュー別に定義されている • Enterprise Capital Fundはこれまでに23個の個別テーマに沿った ファンドを組成している • 小人数・短期間でインパクトを最大化する目的で、投資対象企業 の選定をアウトソーシングするためにFund of Funds投資に特化 • 直接投資(Angel Co-Fundのみ)に関しては、リード投資家に関す る評価とリード投資家によるDD3結果を活用し、投資判断をする • 融資、保証、出資機能を一元化し、適切なメニューを提供 • 民間セクターの給与水準のベンチマークスタディーを行い、公的機 関従業員に通常適用される給与の上限などの制限がかからない ポジションを20個準備し、シニアマネジメントや特定の専門人材の 誘致に活用 • 政府出身で経済分析の専門家がエコノミストチームに在籍し、活 動領域の開拓やビジネスケースの構築や提案書の作成に従事 • 毎四半期、民間金融機関のトップ10名程度とインフォーマルな情 報交換を通じ、民業補完を徹底 • 活動内容や提供サービスの周知に外部PRエージェンシーを活用 1. BBB=British BusinessBank 2. ROCE= Return on Capital Employed(使用資本利益率) 3. DD= Due Diligence
  75. 80 A.T. Kearney 06/01.2017 過去の海外官民ファンドによる活動の成功例・失敗例 成功事例 官民ファンドを運営していく上で、政策目的の明確化と機能していないファンドの軌道修正・整理は機 動的にかつ厳格に実施されるべき 失敗事例 1.

    女性起業家支援ファンド:Women Entrepreneurship Fund (別名Aspire Fund)。2008~2014年が活動期間。ニーズを持つ起業家はEnterprise Capital FundかAngel Co-Fundへ誘導される 2. DD=Due Diligence 出所:各種公表資料、各ファンドHP、エキスパートインタビューよりA.T. Kearney作成 ファンド名 問題 官民ファンド のアクション 地方活性 化ファン ド全般(イ ギリス) ①非効率性:各地方・都市に ファンドが点在し、ニッチ分野 へ資金の供給過多が頻発 ②資金のバラマキ:「予算消 費」的な行動が一部発生 地域横断のファ ンドを設立し、複 数の地方/都市 ファンドを統合 • 資金の最適分 配を達成 • スケールメリッ トの享受 女性起業 家支援 ファンド1 (イギリ ス) ①案件不足:条件を満たす事 ができる起業家が応募せず、 投資額が伸び悩んでいた – £12.5Mコミット枠の内、 2008~13年の5年間に投 資した額は£3.8M(6案件) ②Co-Fundでありながら、DD2 は毎回個別にBBB向けにも追 加で実施されたため、VBへの 負担が大きかった コミット枠投資前 に活動を停止 • 問い合わせす る起業家は BBBが手がけ る他のVCファ ンド1へ誘導さ れる ファンド名 活動の概要 成果 ハイテク 起業基金 (ドイツ) ①民間大企業と共同で1 号・2号ファンドを設立、400 社以上のテクノロジーVBに 対する出資・支援を実施 ②民間企業・VC・VBが集ま る「Family Day」を開催し、 関係者間の接点を提供 活動は好評価を得 て、3号ファンドを17 年に開始予定 • 民間出資率は1号 ファンドの6%から 30%まで向上 • 参画民間企業数 も増加傾向 フレンチ テック(フ ランス) ①フランスの13都市をVB支 援対象の集積地と指定し、 地方におけるVBの発掘・支 援を実施 ②民間アクセラレーターを 出資により支援し、VB育成 シーンを促進 ③VBの海外展開を、20以 上の国際都市にオフィスを 設置し、支援 民間投資の呼び水 効果とVBの海外 進出に貢献 • Cisco(€100M)、 マイクロソフト (€80M)から投資 約束を獲得 • 2017年の米CES Eureka Park参加 企業数は米国に 続いて2位 政策目的を明確に定義し活動することが重要 機動的な成果の評価と修正要否判断が重要:機能し ていないファンドは軌道修正が必要な場合もある
  76. 81 A.T. Kearney 06/01.2017 A.T. カーニーは先進性とクライアントとの協働作業を特徴とするグローバル・チームです。短期間で有意義な結果をもたらし長期的には 大きな変革を実現します A.T. カーニーは1926年の創立以来、CEOアジェンダについて、世界のあらゆる産業や業界における主要企業ならびに政府・公共機関 に対しコンサルティングを行ってきました。現在では世界40カ国以上の主要都市に拠点を置いています

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