現代の組織では「知ってから行う」ことが善しとされるが、本研究では、人間が本来持つ「知らないままに成長する(Non-knowing growing)」能力を、実務家による実践知の言語化プロセスを通じていかに取り戻せるかを考察した。背景理論として、人間を世界を創造する「パフォーマー」と捉えるロイス・ホルツマンらのパフォーマンス論を参照した。 本稿では、株式会社MIMIGURIのメンバー4名が学会発表を行った事例を調査した結果、伴走者や聴講者との対話を通じ、わからないなりに実践知をかたちにする「背伸び」が必要な場に立つことで、対象者は探究者としての自己認識を獲得し、変容していたことがわかった。 この結果は、組織で働く大人が「知らないままにやってみる」を取り戻すには、場の提案、肯定的に受け止める、面白がり、一緒に実践知を吟味するという他者の後押しが必要であり、これが実践知の創作と省察のループを駆動させていることを意味している。この実践は、組織の中で正解がわからないことがあっても互いに後押ししあい、探究できる場を連鎖的に生み出し、未知の自己と知が生成される組織文化へと変革していく意義を持つ。
日本デザイン学会第73回春季研究発表大会 口頭発表 テーマセッション「意味が生成される場を耕すデザイン」にて発表しました。