Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

アラムコSTEAMチャレンジ 実践報告書

 アラムコSTEAMチャレンジ 実践報告書

特定非営利活動法人みんなのコードは、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社とのパートナーシップのもと、2024年度より実施してきた公立中学校・高等学校向けプログラム「アラムコSTEAMチャレンジ」の2年間の取り組みを実践報告書にまとめ公開しました。

Avatar for みんなのコード

みんなのコード

May 17, 2026

More Decks by みんなのコード

Other Decks in Education

Transcript

  1. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 2 アラムコ‧アジア‧ジャパン株式会社  代表取締役社⻑ ワリード‧エム‧ムラッド アラムコは、サウジアラビアに本拠を置く世界有数の総合エネルギー‧化学企業として、 90年以上にわたり、世界の成⻑を⽀え、⼈々の暮らしを豊かにするエネルギーを安定的か つ持続可能な形で提供してきました。私たちは、エネルギーが社会と経済の発展を⽀える 基盤であるという信念のもと、⼈材育成を通じた社会価値の創出に継続して取り組んでい

    ます。 この理念に基づき、アラムコは次世代を担う⼈材育成を⽬的としたSTEAM教育への投資を 世界各地で進めています。2025年11⽉時点で当社の教育プログラムは世界で約100万⼈の 学習者に提供されました。 ⽇本では、パートナーであるみんなのコード様と協働し、「アラムコ STEAM チャレンジ」 を実施してまいりました。2024‧2025年度の授業はすべて無事に終了し、参加した中‧⾼ 校⽣は累計7,657⼈にのぼり、当初の⽬標であった5,000⼈を⼤きく上回る成果となりまし た。 専⾨的な知⾒と献⾝的なご協⼒をいただいたみんなのコードの皆さま、そして本プログラ ムの実現にご尽⼒いただいた先⽣⽅、学校関係者、⾃治体、地域のパートナーの皆さまに ⼼よりお礼を申し上げます。 また、アラムコは、みんなのコードの皆様とともに、被災地域における「学習環境の再構 築」を⽬指す 「アラムコ能登テックハブ」プロジェクトにも取り組んでいます。能登の⼦ どもたちがデジタルスキルに触れ、創造性を育む環境を整えることは、地域コミュニティ を持続的に⽀える上で極めて重要です。 アラムコはこれからも、⽇本の教育と地域社会の未来を⽀援し続けてまいります。 「アラムコ STEAM チャレンジ」を通じて育まれた好奇⼼が、⽣徒⼀⼈ひとりの可能性を広 げ、持続可能な地域社会の発展に貢献する原動⼒となることを願っています。 はじめに
  2. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 中学校 技術‧家庭科(技術分野)のプログラミング教育が抱える課題 予算不⾜でハードウェア教材 の整備の差が⼤きい ハードウェア教材の 活⽤⽅法がわからない 教材‧題材が画⼀的に なりがち

    ◼予算の都合で、教材が⽤意で きない ◼教材を使⽤している学校の多 くは私費負担* - 家庭負担が⼤きい - 地域間格差が存在 ◼教材があっても、指導⽅法‧ 授業での使い⽅がわからない ◼外部研修や教材研究に充てる 時間が不⾜ - 専任教員の不⾜や他教科 との兼任 - 校務の多忙化 など ◼⽣徒全員に、同⼀の課題に取 り組ませてしまっている ◼⽣徒のアイディアを盛り込む 余地がない *家庭から教材費徴収していること 5
  3. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード ⾼等学校 情報科のプログラミング教育が抱える課題 ハードウェア教材を活⽤した 実践が少ない テクノロジーの進展と 指導者の専⾨性 中学校技術分野との 連携が不⼗分

    ◼テキスト⾔語によるアルゴリ ズムの理解など、画⾯内完結 の処理が中⼼ ◼ものづくりや社会課題解決と 結びついたSTEAMの視点に ⽴った授業実践が少ない ◼教材を導⼊しようと思って も、予算の確保が難しい ◼テクノロジーの進化が速く、 教員は常に知識‧技能の更新 が求められる ◼外部研修や教材研究に充てる 時間が不⾜ - 専任教員の不⾜や他教科 との兼任 - 校務の多忙化 など ◼中学技術と⾼校情報の授業実 践事例やノウハウ共有等の機 会が少ない ◼中学‧⾼校の教員間の交流 ‧学習内容の連携が不⼗分 6
  4. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード アラムコSTEAMチャレンジの概要 ⽬的 本プログラムは、STEAM学習における教材の不⾜を⽀援するものである。 このプログラムにより、全国5,000⼈の中⾼⽣がハードウェア教材(以下STEAM教材)を使った授 業を受けることで、社会課題に興味を持ち、将来において⾃分の⽣活や社会をより良くするための 課題解決能⼒を⾝につけることを⽬指す。 対象 中学校、義務教育学校(後期課程)、⾼等学校、中等教育学校、特別⽀援学校(中学部‧⾼等部)

    都道府県市区町村の教育委員会 事業期間 2024年9⽉2⽇(⽉)〜2026年2⽉27⽇(⾦) プログラム内容 1. STEAM教材の無償提供(教材リストから採択校が選択) 2. STEAM教材を使った授業事例の共有 3. STEAM教材の使い⽅に関する動画の配信 4. 授業やSTEAM教材に関する質問‧相談の受付 さらに、伴⾛校として採択した学校を対象に、以下の伴⾛⽀援を実施。 • 個別相談 • 個別相談に応じて、授業計画等のサポート • 授業の⾒学‧助⾔‧授業後の振り返り 8
  5. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 9 アラムコSTEAMチャレンジの特徴 STEAM教材を無償 提供 みんなのコードが厳選したSTEAM教材メニュー の中から、先⽣⽅⾃⾝が選んだ教材を無償で提 供した。 元教員メンバーが授

    業サポート 授業の実施に不安のある先⽣⽅には、中学校 「技術」‧⾼等学校「情報」の元教員による教 材活⽤例の相談や、希望に合わせた授業の伴⾛ ⽀援を⾏った。 シンプルな申請‧報 告⼿続き 申請や報告については、先⽣⽅の過度な負担と ならないよう極⼒配慮した。
  6. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践校⼀覧 岩⾒沢市⽴豊中学校 南幌町⽴南幌中学校 ⼩美⽟市⽴美野⾥中学校 守⾕市⽴愛宕中学校 ⽔⼾市⽴飯富中学校 筑⻄市⽴下館中学校 ⿓ケ崎市⽴⻑⼭中学校

    南牧村⽴なんもく学園 那須町⽴那須中学校 埼⽟⼤学教育学部附属中学校 さいたま市⽴浦和中学校 さいたま市⽴美園南中学校 さいたま市⽴内⾕中学校 さいたま市⽴⼋王⼦中学校 さいたま市⽴春野中学校 新島村⽴新島中学校 世⽥⾕区⽴砧南中学校 ⽇野市⽴三沢中学校 町⽥市⽴南成瀬中学校 千葉県⽴柏の葉⾼等学校 千葉県⽴市川⼯業⾼等学校 千葉県⽴流⼭南⾼等学校 筑波⼤学附属聴覚特別⽀援学校 浜松市⽴舞阪中学校 浜松市⽴東陽中学校 ⻑野市⽴北部中学校 愛知県⽴愛知総合⼯科⾼等学校 知⽴市⽴⻯北中学校 宇治⽥原町⽴維孝館中学校 井⼿町⽴泉ヶ丘中学校 三重県⽴昴学園⾼等学校 ⼤阪府⽴豊中⽀援学校 ⼤阪市⽴⽮⽥中学校 神⼾市⽴渚中学校 兵庫県⽴播磨特別⽀援学校⾼等 部 広島⼤学附属中学校 広島県⽴⾼陽⾼等学校 ⾼知県⽴窪川⾼等学校 宮崎市⽴⽊花中学校 串間市⽴串間中学校 宮崎市⽴東⼤宮中学校 熊本市教育委員会 熊本市⽴城⻄中学校 春⽇市⽴春⽇⻄中学校 中間市⽴中間東中学校 ⼤分県⽴情報科学⾼等学校 11 ※採択校から担当教員が異動した転任先校も含む。担当教員の異動に伴い、希望があった学校に関しては、担当教員の異動とともに教材も転任先へ移 動。転任先で事業を継続することとした。
  7. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 本プロジェクトにおける受益者数 アラムコSTEAMチャレンジを通してSTEAM教材を使った授業を  40名の先⽣ が実践し 7,657名* の⽣徒 に届けることができた。(* 24年度3,410名、25年度4,247名)

    12 採択校の選定では⼥性教員応援枠、および初 任者応援枠を設けた。 これは、テクノロジー分野における先⽣の ジェンダーバランスや、若⼿‧経験年数の少 ない先⽣の⽀援拡⼤に向け設定したもので、 14名の⼥性教員、17名の初任者教員(専任とし て採⽤されてから5年⽬(2020年4⽉以降に採⽤)までを対象) が参加した。
  8. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 本プロジェクトにおける実践事例 本プロジェクトを通じて多様な実践が創出され、以下のような姿が⾒られた。 (具体的な実践事例は次ページ以降に掲載) 13 ① 実感を伴う学び - ⽣徒の興味関⼼が喚起され、⼀⼈⼀⼈が主体的に授業に参加していた

    - 実際に動くハードウェア教材を⽤いることで、画⾯上で完結するプログ ラミングに⽐べ、⽣徒が楽しく実感を伴って学ぶことができた ② 課題の⾃分ごと化 - 題材の設定や、課題の提⽰‧時間数などを⼯夫することで、⽣徒が⾝の 回りの問題を⾃分ごととして捉えられた - ハードウェア教材を⽤いて、ユニークで創造的な解決案を構想‧制作す ることができた ③ 学びの深化と統合 - 統合的な問題解決、教科等横断的な学び、学校外への波及など、多様な 場⾯でハードウェア教材を活⽤できることを実感できた
  9. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 14 安藤明伸 広島⼯業⼤学 情報学部 情報システム学科 教授 報告書全体を通して、STEAM教育における「A」、すなわち⼈間中⼼設計やユーザ体験に関する深い学び と成果が明確に読み取れる実践が多かったです。多くの学校で、⽣徒は単なるプログラミング技能の習得

    にとどまらず、利⽤者の視点に⽴った利便性や安全性を考慮したシステム設計に取り組んでいることが特 徴的と感じます。具体的には、⾼齢者や⾝体が不⾃由な⼈を⽀援する仕組みの構築や、使⽤者に伝わりや すいように⾳ではなく光で通知するユーザインタフェースの⼯夫など、他者への思いやりを形にする活動 がありました。また、SDGsや社会課題と情報技術を結びつけることで、「どのようにすれば⼈にとって使 いやすく、意味のあるものになるか」というデザイン思考や倫理的視点が育まれていることも⼤変素晴ら しいです。このように、論理的な技術の構築に、⼈間のための技術という「A」の発想がうまく統合されて おり、社会をより豊かにするための実践的な学びが成⽴していると⾼く評価できると感じます。 また、フィジカルコンピューティングとしては、プログラムが画⾯上で完結せず、現実世界の光や⾳、動 きとして直接フィードバックされる点に⼤きな価値があります。視覚的‧⾝体的な変化を伴うことで、⽣ 徒は抽象的な論理構造やシステムの仕組みを直感的に理解しやすくなり、結果が明確になるため試⾏錯誤 が促されます。その結果、学習意欲の向上や現実社会の技術とのつながりを実感させる効果を⽣んでいる 点も素晴らしいです。シミュレーションをしたとしても、例えば、基板上のチップが少し温かくなると か、微細な⾳がするなど、現実解の物理的な変化は画⾯の中だけでは決して気づけないことです。画⾯の 中のプログラミングは、⼀度書けば誰が実⾏しても同じ結果になりますが、同じプログラムでも現実世界 ではそうはいかない、という体験は、理科との学習をつなげる⼤変重要なものです。 現在学習指導要領の改訂に向けて、情報技術の学習について中央教育審議会で議論されていますので、今 回の様な、フィジカルコンピューティングを継続して取り組んで戴きたいです。 選考委員からの講評
  10. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 15 新⾕ 美紀 横須賀市⽴⼤津中学校 教頭 三浦 利信 全⽇本中学校技術‧家庭科研究会

    会⻑ ⽻村市⽴⽻村第⼀中学校 校⻑ 2024年6⽉より、アラムコ‧アジア‧ジャパン株式会社様の助成のもとで2か年間実施 された「アラムコSTEAMチャレンジ」は、中学校技術分野の「情報と技術」を始めとする 学習に⼤きな成果をあげたと評価します。 実践的‧体験的な活動を通して学びを深める技術‧家庭科では、効果的な教材‧教具は 不可⽋であり、本事業でのハードウェア教材⽀援により、学習環境が整備され、⽣徒の学 びが⼀層深まったと考えます。このことは、実際に授業を受けた⽣徒のアンケート結果で 、91.4%の⽣徒が理解の深まりを実感していることからも読み取ることができます。 現在、改訂に向けた議論が進められている情報‧技術科(仮称)の「情報技術や情報を 基盤とした⽣産技術」の学びにも、本事業の成果が広く共有され、⽣徒の学びが深まるこ とを期待します。 選考委員からの講評 本事業の2年間にわたる継続的な実践により、⽣徒と先⽣⽅の双⽅に変容が⾒られまし た。 ⽣徒は実践‧体験的な活動を通して試⾏錯誤し、「なぜそうなったか」「どう改善すべき か」を論理的に整理し、他者へ伝える⾔語能⼒を向上させました。課題設定も⾝近なもの へと深化したり、単なる「製作」ではなく技術の仕組みを理解した「改良‧再設計」へと 発展したりした点は、STEAM教育の本質を捉えた⼤きな成果です。 この背景には、先⽣⽅が題材計画を再構築し、伴⾛者として歩まれた真摯な姿勢がありま した。アンケートでも全体的に肯定的回答が増加しており、取組の継続によりさらなる向 上が期待されます。⼀⽅で、⽣徒の経験値に左右されず学びを深めるためには、先⽣⽅の 伴⾛者としての資質向上や、継続的な⽀援体制の構築が不可⽋であるということも強く感 じました。 今後、先⽣⽅が培われた⼒が、⽣徒の学びをより創造的なものへ発展させていくことを強 く期待しています。
  11. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード STEAM教材による実践的な学びによる「楽しさ」と「深い理解」 Q. 今回のロボットやセンサー(STEAM教材)を   使った授業で、プログラミングを楽しく学ぶ   ことができましたか Q.

    STEAM教材を使わない今までの授業と⽐べて、   プログラミングの理解は深まったと思いますか ⾃分のプログラムで物理的にモノが動くという 「⼿触りのある成功体験」を得ることで、学ぶ 意欲が向上した。 単なる「楽しさ」だけでなく、⾃ら楽しみなが ら学びを深めていくことを実証した。 18
  12. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード ⽣徒の声 22 22 いままでのプログラミングは、pcの中で作って、動かすというすこし⼩規模な感じでやって いたのですが、今回のようにプログラミングをして何か物体を動かすというのは初めてに近 い体験だったので、びっくりしました。(中学2年‧⼥⼦) このSTEAM教材を使えばできることが増えて様々な社会問題の解決への⽷⼝になれるのでは ないかと思った。(⾼校2年‧男⼦)

    普段あまり触れられないプログラミングに触れて、わからないことも多かったけど、とても 楽しかったし、その中で⾃分の⾏えないことをロボットにやってもらうことで、それぞれが 助け合っていく未来などへの希望や期待にもつながり、とても良い体験だったと思いまし た。(中学2年‧⼥⼦) 「あまり馴染みのないプログラミングがわかりやすくなり、実際に機械が動くことで感動や 達成感を得られるところが良かった。」(中学2年‧男⼦) 遠い話題だと思っていたけれど、いざ⾃分でプログラミングしてみると⾃分も何か⼒になれ る時があるのかな。と⾃分に⾃信が持てました。(⾼校1年‧⼥⼦)
  13. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 全教員が「授業が充実した」と実感 Q. 今回提供したSTEAM教材を授業に取り⼊れたことで、授業内容は充実しましたか 回答したすべての先⽣が「はい」と回答。 <先⽣の声> ‧教材がないと成り⽴たない内容であり、教材の提供が あったからこそ学びが深まったと思う。 ‧チャレンジしたいもの、作りたいものなど創造したこと

    を形にできるところがとても良かった。 ‧シンプルな⼿順で、⾃分の取り組みを可視化できる教材 は、思考の表出につながり、疑問‧発想‧⾏動が連鎖して モチベーションを維持することに役⽴っていたと感じた。 ‧STEAM教材の導⼊により、情報技術の理解が抽象的概念 の習得にとどまらず、⾝体的体験と社会的⽂脈を伴う問題 解決学習へと深化したため、授業内容が質的に充実したと 考えられる。 24 100%
  14. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード ⾝についた⼒は? Q. STEAM教育を実施したことで、⽣徒に⾝についたと感じる⼒はありますか?(選択制‧複数回答可) 全体的に、⾮認知能⼒(⾃主性、 問題発⾒‧解決能⼒、想像⼒‧発 想⼒、協調性‧協働性など)に関 する項⽬が上位を占める結果と なった。

    「⾃主性(主体的に学習に取り組 む態度)」が最多の27件で、主体 的な学習態度の育成に特に効果的 であったことがわかる。「問題発 ⾒‧解決能⼒」と「想像⼒‧発想 ⼒」も25件と⾼く、課題解決と創 造的思考⼒が⼤きく向上したと評 価された。 25
  15. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード みんなのコードの⽀援 Q. 授業を実施する上で、みんなのコードの⽀援は⼗分でしたか? ⽀援が「⼗分だった」と評価された主な理由は 教材研究や計画に役⽴つ情報提供が充実していたことがあげ られた他、授業計画の相談に事前に乗ってもらえたことや、 質問に対してすぐに対応してもらえたこと、そして「ティー チングではなくコーチング」といった質の⾼いサポートが

    あったという声もあがった。 教材の提供だけではなく、授業を⾏う上での⽀援の充実は、 本プロジェクトの⼤きな意義を⽰している。 ⼀⽅で、⽀援が「不⼗分だった」と感じられた点について は、教材レベルと内容に関するもので、基本パックのパーツ に限りがあり、⼯業系の⾼校⽣など特定の⽣徒の学習レベル に達しないと感じられたため、教材の内容選定に苦慮したと いう意⾒があった。 26
  16. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 先⽣の声 27 「やってみたい!」と思える授業がある中で、コストに関する障壁によりできなかった授業実 践が多々あります。今回の教材提供で、⼦どもたちがワクワクするような授業を⾏うことがで きて⾮常にありがたかったです。また、授業実践に伴い、ご指導‧アドバイスをいただきまこ とにありがとうございました。(中学校技術‧⼥性教員) 今回、アラムコSTEAMチャレンジを通して⽣徒がSTEAM教材に触れることができました。多 くの⽣徒が⾼校になってから初めてプログラミングに触れました。勉強が苦⼿な⼦やプログ

    ラミングの授業の理解度が低かった⽣徒も楽しみながら授業を受けることができていまし た。この度、このような貴重な機会をいただき⽣徒にとっても私⾃⾝にとっても良い経験とな りました。(⾼校情報‧⼥性教員) ⽣徒たちに、⾃分⾃⾝のアイディアを形にするために、主体的に没頭した取り組みができる時 間を確保できました。教員が準備するのではなく、⾃分⾃⾝で試⾏錯誤でき、その過程を⾔語 化する取り組みができました。(特別⽀援‧男性教員) この度は貴重な機会を頂きありがとうございました。1年⽬ははじめての授業ですべて⼿探り の状態でしたが、2年⽬は授業をブラッシュアップさせることができました。教材を使⽤して いる⽣徒の反応として、実機を⽤いることで制作したプログラムを即実⾏→修正と繰り返す ことができ、授業の中で主体的に活動する場⾯が多くみられました。授業内容が充実し、技 術の楽しさや社会における役割について⾝をもって感じさせることができたと感じていま す。(中学校技術‧⼥性教員)
  17. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例① 守⾕市⽴愛宕中学校(使⽤教材:タコラッチ) 「画像認識AIを⽤いたSDGsの⽬標達成を⽬指す、 ⾃動制御システムを開発しよう」という課題で、 画像認識AIを活⽤したものづくりの授業。 必要に応じて3D プリンタで出⼒した部品も使⽤ するなど、既習事項とも連携させた。

    画像認識AIなど、新しい技術も積極的に活⽤した「統合的な問題解決」の実践。 SDGsの視点も取り⼊れ、多様なシステム開発を実現した。 「⾃ら⾒出した問題に取り組める環境を整備する ことで、問題解決の幅を広げることができた。」 「グループの活動‧製作にしたことで、プログラ ムに苦⼿意識のある⽣徒も役割分担をしながら学 習に取り組み、理解を深めることができた。」 (左‧真ん中)ゴミの材質を判断し、ゴミ箱のふたを⾃動で開けるシステムのアイデア発⾒シートとプロトタイプ (右)⾷べられるかを判断するシステム(視覚障害のある⽅のための⾳声出⼒も考えた) 29 実践概要 実践者の声
  18. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例② さいたま市⽴浦和中学校(使⽤教材:AkaDako探究ツール) 30 カメラからの⼊⼒画像に対してAkaDako⽣成AIを 使い、⽇常の⽣活に⽣かすためのアイデアを実現 しようとする実践。 また、本授業のみでなく理科でも植物の葉の画像 から樹⽊名を特定させようとする授業が⾏われて

    おり、他教科での活⽤の広がりが感じられた。 「国際的な学⼒調査では、⽇本の科学的な学⼒は ⾼いものの、学ぶ意欲や将来的に科学を活⽤しよ うとする姿勢は低いと⾔われている。今回のよう な授業は、知識を詰め込む学習ではなく、⾃ら考 え‧課題を解決していくもので、今後さらに重要 となる学習⽅法だろう。」 (左‧真ん中)⽣成AIアプリ作成の様⼦と設計書(右)理科の授業で、校内の植物をAIを使って識別している様⼦ 実践概要 実践者の声 市が独⾃に教育課程に位置付けている「STEAMS Time」などで、⽣成AIアプリの 作成を試みた実践。単独の実践にとどまらず、他教科での活⽤にもつなげた。
  19. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例③ さいたま市⽴⼋王⼦中学校(使⽤教材:アーテックロボ2.0) 31 防災教育とライントレース*を組み合わせた実践。⾃ら設定した災害時の避難ルートを 通るという課題を⽤いることで、⽣徒の興味を喚起し、実感の伴う学習となった。 1学年から学んできて、⽣徒にとってなじみのある 防災教育とプログラミングを合わせた授業。 班ごとに災害を設定し、トラブルを想定した上

    で、実際の地図に避難ルートを設定。ルートをた どりながら、避難所への誘導や、がれきの除去を ⾏う「災害⽀援カー」の製作を⾏なった。 「課題解決の⽅法として、プログラミングを⽤いた ロボット製作があることが体験的な活動を通し て、実感できた。」 「ロボットを動かす際の⾓度や、摩擦によるタイヤ のずれについて考える⽣徒が多く、他教科の考え⽅ を⽣かした取り組みになったのではないか。」 (左‧真ん中)使⽤した授業スライド抜粋(右)アーテックロボを実際に試す様⼦ *ロボットが特定のライン(通常は黒い線)を追跡し、そのラインに沿って移動する仕組み 実践概要 実践者の声
  20. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 32 M5Stackのセンサ‧ディスプレイ、WebAPIを組み合わせ、オリジナルアプリを作成し た実践。⼀⼈⼀⼈が必要な技術を学びながら、アイデアを実現することができた。 「オリジナルアプリを作成しよう!!」をテーマに した実践。 各種センサー(加速度‧温度‧ボタン等)の活⽤、 または無料の外部 API

    を利⽤したデータ取得を必 須条件として制作。最後に全員が制作物のプレゼ ンテーションを⾏なった。 「いずれの作品も、⾃⾝の⾝近な⽣活と結び付け ながら制作しているのが印象的だった。」 「画⾯上で完結するアプリにとどまらず、⾝の回 りの環境や実社会を意識した設計へと発想を広げ ることができた。」 (左‧真ん中)レシピ提案アプリを作ろうと試みる⽣徒。振るとランダムでレシピが表⽰される。 (右)⾊を⾒て天気を把握できる「直感的に天気を把握する」アプリの発表スライド 実践事例④ 千葉県⽴柏の葉⾼等学校(使⽤教材:M5Stack) 実践概要 実践者の声
  21. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例⑤ 筑波⼤学附属聴覚特別⽀援学校(使⽤教材:タコラッチ) 33 当事者の観点から「聞こえにくさ」をサポートするためのテクノロジー活⽤に取り組 んだ実践。⾃らの⽣活に根付いた課題解決のアイデアが⽣まれた。 「⾝近な課題」「聞こえにくさのサポート」の 2つの視点から、課題解決型の制御システムを 作成した授業。

    本実践以外の時間も「聞こえにくさ」の話題を適 宜取り上げ、⽣徒から具体的な事例を収集した。 「センサの動作やアクチュエータの反応は視覚的 に理解しやすく、⽣徒の興味関⼼を引き出す効果 が⾼かった。」 「聞こえにくさの状況は個⼈差が⼤きいため、特 定の課題を強制することはせず、両課題を扱う必 要はないものとした。」 (左‧真ん中)睡眠中の来客を震動等で教えてくれるシステムのアクティビティ図と発表の様⼦ (右)聞こえにくさサポート製品の構想⼀覧 実践概要 実践者の声
  22. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例⑥ 兵庫県⽴播磨特別⽀援学校⾼等部(使⽤教材:タコラッチ) 34 「なぜ使うのか、どう動かしたかったのか」を説明することを重視した実践。実際に 動く教材が⽣徒の関⼼を⾼め、⾔語活動にも寄与したと思われる。 知的障害教育部⾨の⾼等部を対象に、ICT機材‧ 教材を「使う」だけでなく「⾃分の⾔葉で説明 する」⼒を養うことを学習⽬標に掲げた授業。

    感覚的に「動いて楽しい」で終わらせず、⾃分の 操作の理由を⾔葉にする練習を繰り返した。 「センサがリアルタイムに反応する様⼦に強い 関⼼を⽰し、数値の変化を『⾔葉』で捉えようとす る様⼦が⾒られた。」 「閲覧(ブラウジング)のみに留まっていたiPad を、設計‧計測‧制御‧発表という⼀連の『アウト プット』のために活⽤できたことは⼤きな成果。」 (左)プログラム作成中の様⼦ (真ん中‧右)⽣徒の発表スライド抜粋 実践概要 実践者の声
  23. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例⑦ ⾼知県⽴窪川⾼等学校(使⽤教材:M5Stack) 35 ⾼齢化、後継者不⾜、⼈⼝減少などの問題を抱える地域で、農業に関わる課題解決に 取り組んだ実践。⾃動給⽔システムを作成することで、実感を伴う授業となった。 専⾨科⽬「農業と情報」で実践した かん⽔作業の オートメーション化の課題やメリットを、実践を

    通じて学ぶ授業。 シクラメンへの⽔やりを⼟壌センサーとポンプで ⾃動化するシステムを、⼿作業の⽔やりの実習と 対⽐させることで、実感をもって取り組んだ。 実践概要 「中学⽣のときに取り組んだプログラミングは、 デスクトップ上で処理するものがほとんどだっ た。(今回の授業では、)プログラムでモノが動 くという反応が楽しかったようで、授業終盤は応 ⽤問題にも主体的に粘り強く取り組む⽣徒も ⾒られた。」 実践者の声 ▲⼟壌センサを⽤いて、乾燥している状態を観測したら給⽔ポンプを動かす⾃動給⽔プログラムを作成している授業の様⼦
  24. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例⑧ 中間市⽴中間東中学校(使⽤教材:タコラッチ) 36 課題解決のサイクルを2回繰り返すことで、各プロセスを深化させ、改善につなげた 実践。各班のユニークなアイデアを、形にすることができた。 単元全体で12時間を確保し、「⾝の回りの課題設 定→課題解決のシステム構想→試作→プレゼン テーションと相互評価」を2回繰り返した授業。

    AIの判定やうまくいかない処理を確認した上で、 次のプログラムに⽣かしているなど、「検証」と 「改善」を重視している。 実践概要 「2回⽬で、前回よりもアイデアを形にできたと 感じた⽣徒は90.9%だった。  この結果は、1回⽬の課題解決で⽣徒が失敗や 不具合を経験し、原因を探って修正する課程(試 ⾏錯誤)を経たことで、2回⽬には⾒通しをもっ て改善に取り組めたためだと考えられる。」 実践者の声 (左)ゴミ捨て場を荒らすカラスを追い払うシステム (右)⾷⽸を画像認識して給⾷の残⾷を減らすシステム
  25. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 実践事例⑨ ⼤分県⽴情報科学⾼等学校(使⽤教材:アーテックロボ2.0) 37 ⼯業系の学科において、これからの社会と⾃動運転の観点からSTEAMに取り組んだ 実践。学んだ内容を⽣かし、⼩中学⽣への体験会も実施した。 「安全な⾞‧交通システムをかなえよう」をテー マに、センサ制御‧⾃動運転‧AI活⽤という⼯業 的段階性を踏まえた実習を⾏なった。

    アーテックロボを使って、⼩中学⽣を対象とした 体験活動を、⽣徒が考えて複数回実施した。 実践概要 「『⾃ら考えて学ぶ⼒』や『問題解決能⼒の向 上』といったSTEAM教育の⽬的を達成し、デジタ ル技術を実社会の課題(交通安全)に結びつける 基礎スキルを習得させることができた。」 実践者の声 (左)実習の様⼦  (真ん中‧右)校外での⼩中学⽣への体験会の様⼦(⼤分⼤学STEAM夏祭り2025/おおいたサイエンスパーク2025)
  26. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 38 千⽯ ⼀朗 みんなのコード 未来の学び探究部 永野直 みんなのコード 未来の学び探究部

    アラムコSTEAMチャレンジの2年間の取り組みは、全国の教育現場に⼤き な前進をもたらしました。これまで中学校の技術科などでは、⼿元に適切 な教材がないためにプログラミング教育の実践が難しいという課題を抱え る学校も少なくありませんでした。しかし、本プロジェクトによって教材 が配布されたことで、物的なハードルが解消され、多くの中学‧⾼校で実 践的な学びが実現しました。今回の成果を全国の皆さんに共有し、さらに 多くの⼦ども達にプログラミングや課題解決の楽しさを広げていけたら幸 いです。 この取り組みにご尽⼒いただいた皆さんに厚く御礼申し上げます。 2年間にわたる「アラムコSTEAMチャレンジ」により、数多くの優れた授 業が実現しました。⾝近な課題を解決する装置の製作やAIの活⽤など、各 校の創意⼯夫が凝らされた多様な取り組みが⾒られました。 各校に共通していたのは、STEAM学習に主体的かつ⽣き⽣きと取り組む ⽣徒たちの姿です。これからも、STEAM教育を通して⽣徒たちが⾃⾝の⾝ の回りや他者、そして社会へと⽬を向け、実感の伴った深い学びへと発展 していくことを期待しています。 ご参加いただきました先⽣⽅に、厚く御礼申し上げます。 伴⾛者からの総括
  27. 2026 特定非営利団体法人みんなのコード 43 プロジェクト関係者 未来の学び探究部 千⽯ ⼀朗 未来の学び探究部 永野 直 パートナー部 花⽥ 安紗⼦

    政策提⾔部‧未来の学び探究部 部⻑ ⽥嶋 美由紀 代表理事 杉之原 明⼦ 本プロジェクトは、アラムコ‧アジア‧ジャパン株式会社の助成により実施しました。アラムコ‧アジア‧ ジャパン株式会社は、サウジアラビアの総合エネルギー‧化学企業アラムコの⽇本現地法⼈です。