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「今より便利」をすばやく届ける社内IT部門のチャレンジ【DeNA TechCon 2023】

「今より便利」をすばやく届ける社内IT部門のチャレンジ【DeNA TechCon 2023】

youtube:https://youtu.be/bOdWZvO3B5M

概要:
DeNAではゲーム・スポーツ・ヘルスケアをはじめ、多様な事業を展開しています。私が所属するIT本部では全社向けITサービス・サポートの提供のほか、事業部門へのSaaS導入やソフトウェアの調達などを通じて「全社従業員が働きやすい環境」作りに取り組んでいます。

今回の発表では下記の2点を中心に、社内IT部門のチャレンジについて紹介します。

1.社内要望への対応をより速くするIT部門のチャレンジ
社内各部門の要望に対する「対応速度向上」と「工数削減」を目的とした【セルフサービスの提供と処理自動化】を組み合わせた運用について。

2.SaaSを活用した社内システム改善へのチャレンジ
内製開発の社内システムをSaaS上に再構築することにより「低工数・短期間」で、より便利な新システムをリリースした事例をもとに、「内製システム運用保守の課題」や「SaaSプラットフォーム上での低コスト開発」などについて。

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DeNA_Tech

March 02, 2023
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Transcript

  1. IT基盤部 全社ITインフラの運用管理を行う組織 • サーバ管理 • ネットワーク管理 • 共通基盤管理 5 IT戦略部

    全社ITシステムの運用管理、サポート、調達契約を行う組織 • オンプレ/SaaS社内各種システム運用(認証基盤/会計/コミュニケーションツール等) • 内製システムの開発 • ソフトウェア資産管理/各部門へのライセンス提供、サポート実施 • ヘルプデスク運営 • 業務改善(自動化/効率化) 本日は「IT戦略部の取組」について紹介します
  2. 1-1.取り組みの背景 社内の満足度低下を防ぎたい • IT部門の従業員 ◦ 問い合わせ対応や作業依頼に忙殺されてしまう ◦ 目の前の仕事で手一杯 ▪ 新規の取組みや改善の一歩が踏み出しにくい

    • 事業部門のユーザー ◦ 依頼しても待たされる ▪ IT部門のせいで業務が進まないと感じる お互いに不幸な負のループになりそう・・ 7 依頼が多くて 終わらない・・! お願いしても 待たされてばかり!
  3. 1-2.課題解決に向けたチャレンジ チャレンジの目的 • IT部門の運用工数を削減 • 対応の高速化 「速く対応するためにメンバーが頑張る!」のではなく・・ 1. 業務を見直し、対応が遅くなる原因を取り除く 2.

    必要なときに、ユーザーが自分で/簡単に対応できる環境を作る ◦ セルフサービス化 3. 作業を自動化し、担当者の手作業を減らす ◦ 作業の自動化 1・2・3の組み合わせで目的を達成する。 8
  4. 1-3.業務の見直し 対応を遅くする影響が大きいものはなんだろう・・? 1. 申請/問い合わせによる作業発生が多い ◦ メールやSlackによる依頼 ◦ 依頼内容の「解読」や「再確認」必要なもの >正規化し、処理をまとめて実施できるように変更 2.

    日々の定例作業量が多い ◦ ルーティンワークで日々発生するもの ◦ ユーザーからの依頼が日常的に発生するもの >作業を自動化し人手を介さない運用に変更 依頼不要で、ユーザーがセルフサービスで変更できる仕組みの構築 9
  5. 1-5.申請/問い合わせの改善 1.kintoneアプリ(申請フォーム)のセルフサービス作成 kintoneアプリを従業員誰でも作成/公開できる仕組みを構築 「より速く」便利なアプリのリリースを可能にする • 業務を熟知した担当者が自分で試行錯誤 • kintone担当者を介在させなくても良い難易度である ◦ 社内用kintone案内サイトを公開

     担当者による作成の場合 セルフ作成ならここだけ  要件定義       設計          作成       リリース 全社に拡大>現時点で800を超えるアプリが登録中 11   作成       リリース
  6. 2.kintone社内用共通プラグインの提供 申請アプリでよく使用する機能を「プラグイン」として提供 条件に設定したフィールドの入力値やステータスによって、フォームの制御を実施。 【ソフトウエア使用申請の例】 ・新規使用の場合  部署名等を必須に  使用終了日は非表示に ・使用中止の場合  使用終了日以外を非表示に このような設定値依存による条件設定を

    GUIで選択し直感的に制御可能。 kintoneに慣れていなくても使い勝手の良いアプリが作成可能 使いやすいアプリをより速く作成できる環境を提供 「1つ作成すれば全社の効率化に寄与する」取組  ※2023年当初時点で約500のアプリで使用中 1-5.申請/問い合わせの改善 12
  7. 1-5.申請/問い合わせの改善 3.kintone申請から他システムへの連携 申請をもらって作業 > 申請内容からそのまま自動処理実施 kintoneのワークフロー(回議)承認をセットにすることで管理を疎かにしない=記録が残る データ作成 申請        承認      連携システム     連携先システム • システム利用アカウント自動作成

    ◦ 用途:申請制のアプリケーション利用 ◦ 申請→承認→(自動処理)→アカウント登録 ▪ ADアカウントを作成し、システム権限グループに追加 • 電子署名依頼の自動送信 ◦ 用途:電子署名の依頼送信 ◦ 申請→承認→(自動処理)→AdobeSignに署名リクエストを起票 ▪ kintone申請をもとに署名者へ署名依頼を自動送信する 13 申請        承認     
  8. 1-5.申請/問い合わせの改善 (参考)ユーザーアカウントの作成/異動反映 kintoneをはじめ、各システムのユーザーアカウントも連携システムによる自動処理を実施。 人事システム(内製)の登録データをもとに自動処理。 • ユーザー作成 ◦ 入社登録kintone申請をもとにアカウントを自動発行 • ユーザー変更

    ◦ 人事システム上の異動情報の自動更新 ◦ 異動データを各システムへ反映 • ユーザー無効化 ◦ 退職入力情報をもとに自動的に無効化      更新確認 作成/変更/無効化 人事システム     連携システム          各システム 入社/異動反映の高速化&工数の大幅削減 14     
  9. 3)PCキッティング:故障や入社などによるパソコンの入替:月100台 【IT部門でのキッティング】        PC貸与前にネットワークやセキュリティ設定        台数が多い&時間と手間がかかる               キッティング済のPCを貸与   納品済PC            【セルフサービスキッティング】                    ユーザー自らオフィスでキッティング

                       キッティング終了後はそのままお持ち帰り                     >サポート体制                        キッティングマニュアルを整備                        ヘルプデスクでの現地対応 【テレワーク開始による課題】 オフィス現地でのみ実施可能なため 「リモートキッティング」開始に向けてチャレンジ中 1-6.セルフサービス+自動化 【セルフサービスキッティング】    ユーザー自らオフィスでキッティング キッティング終了後はそのままお持ち帰り >サポート体制 キッティングマニュアルを整備 ヘルプデスクでの現地対応 18                                                                                                                                                                                                                              ・ ・ ・    ユーザー自らオフィスでキッティング キッティング終了後はそのままお持ち帰り           PC貸与前にネットワークやセキュリティ設定        台数が多い&時間と手間がかかる               PCが届かない PC
  10. 1-7.ここまでのまとめ セルフサービス+自動化での満足度向上 • IT部門の従業員 ◦ 問い合わせ対応や作業依頼に忙殺されてしまう >件数を減らすことで負担を軽減 ◦ 目の前の仕事で手一杯 >新しい取組へかける時間の創出が可能

     =よりユーザーメリットのある施策への対応強化 • 事業部門のユーザー ◦ 申請しても待たされる >必要な時に自分で対応することができる  「待たされる」ネガティブな感情の解消 IT部門もユーザーも幸せな環境 QCDの改善にもつながる 19 この業務、何とか なりませんか..? 自分でやれば速いし 簡単だね。
  11. 2-1.既存システムの課題 資産管理の課題 • PC貸与者の管理や棚卸の手間が大きい • 在庫PCが不足し、追加購入コストがかかる • 費用請求/配賦の事務手間が大きい 「技術負債」への対応 •

    業務フローの変化への対応が間に合わない • 機能拡張依頼への対応工数が捻出しにくい 資産管理担当者の課題 • システム操作にかかる手間が多い • システムリリース時から追加/変更された運用があり、システム外作業がある ◦ システム外での管理台帳が複数生まれている • 実際の業務とシステムの操作がズレている 21
  12. 2-2.「今より便利」なシステム構築へのチャレンジ 更新のきっかけ • システムのリプレイス相談 ◦ 内製システムからパッケージ製品に変更できないか ◦ 社内のIT資産運用に適合したシステムへ置き換えたい パッケージ製品選択の基準 •

    業務パッケージとして基本的な機能が備わっている • 外部SIを使用せずに内製でカスタマイズできる • 既存の社内システムや他SaaSとの連携が可能 • 最低限のライセンスで使用できる(管理担当者の数のみで使用できる) 採用した製品 22
  13. 2-3.SaaSを十二分に活かすためのポリシー ServiceNowを使用した新システムを開発するにあたり決定したポリシー 1. 業務をシステムに合わせる ◦ 原則としてシステムを業務にあわせてカスタマイズしない。 ◦ システムの入れ替えのみでなく、オペレーションも変えましょう。 2. 自動化できる箇所は自動処理とする

    ◦ 工数削減&オペレーションミス防止のため手作業は最小限にしましょう。 3. 不要なことはしない ◦ あとで使用するかも。程度のものは実装しない。 ◦ UIはシステム標準のものを使用する 4. 資産管理部門のユーザーがカスタマイズ可能 ◦ 見た目の変更、項目の追加/変更は担当者レベルで実施できるように。 5. 既存の仕組みやツールを活用する ◦ Slack/Google Workspace/Oktaなど ◦ 今あるものを有効活用しましょう。 23
  14. 2-4.「今より便利」を叶える機能 作業の自動化 1. PC棚卸の自動化 ▪ 未使用資産の特定と返却勧奨>PC活用の高速化 2. リース物件情報更新の自動化 ▪ リース会社から提供される在庫リスト

    ▪ 共有スプレッドシートから自動的にシステムへ反映 3. 端末ステータスチェック/更新の自動化>定例業務の高速化 ▪ 端末情報の不整合をチェックし対応リストを発行 ▪ 管理担当者はリストを消し込んでいけばOK 4. 経理処理の自動化 ▪ 部門/子会社請求、固定資産登録>定例業務の高速化 • 1クリックで請求データをダウンロード • 専用フォーマットに貼り付けると請求書と内訳書を自動発行 24
  15. 2-5.「今より便利」を叶える機能(PC棚卸の自動化) 1.PC棚卸の自動化 在庫PCの台数が不足し、故障や交換オペレーションがうまく回らない  一方で複数台のPCを使用しているユーザーが多い >そのPCは本当に活用されている?使用していないなら返却してほしい。 • 棚卸方法の変更 ◦ 年に1回のアンケート方式から「使用実態にあわせた随時実施方式」へ変更 •

    棚卸対象の抽出 ◦ 「90日以上PCの使用ログが無い」端末を抽出 ◦ Slackで使用者へメッセージを送信 ◦ Slackメッセージ内の回答ボタンで回答>結果をシステムに反映 ◦ ユーザーへ回答に応じた作業案内を送信。 迅速な棚卸し+日常的に使用しているSlackで完結 PC利用サイクル&回答収集の高速化ができるのではないか? 25
  16. 2-5.「今より便利」を叶える機能(リース物件情報更新の自動化) 2.リース物件の追加/更新作業自動化 【これまでの方法】       入力      受領 転記  登録 リース会社  

    在庫/発注リスト  IT戦略部   登録形式  資産管理システム 【新システムでの方式】     入力        自動登録 リース会社    在庫リスト             資産管理システム 手数が半分以下に改善&情報反映の高速化 最新の状況がシステムに反映されている状態を実現 27  在庫リスト                 入力          入力          受領       登録 現 Google Workspace is a trademark of Google LLC.
  17. 2-5.「今より便利」を叶える機能(端末チェックの自動化) 3.端末ステータスチェック/更新の自動化 オフィスにある「貸出可能PCの実機」と「システム上のステータス」を一致させる作業。 【これまでの方法】        作成       展開   修正                               

    実施しない=貸出業務に影響 >ユーザー対応の悪化 対象抽出    PCチェック簿  実機確認  資産管理システム 【新システムでの方式】チェックと是正を自動化。人間の判断が必要なもののみリスト化              実機確認    自動チェック&是正    要対応リスト 自動チェックと是正機能により業務工数を半分以下に削減。 +実機の保管場所(倉庫+棚)情報を付与することで貸出業務の高速化を実現 28       展開                                  作成                                      毎月実施の 手間が大きい でも・・ このリストを 片付ければOK
  18. 2-5.「今より便利」を叶える機能(経理処理の自動化) 4.経理処理の自動化 リースPC費用を部門や子会社に請求する業務。 【これまでの方法】        作成       展開      発行                                                                  

    請求情報抽出   請求元データ  加工修正     請求書(1枚ずつ作成) 【新システムでの方式】請求データ生成を自動化              請求データ生成   請求書発行アプリ   請求書一括発行+内訳書も自動付与 請求書発行業務の工数を1/4程度に削減。 請求書発行アプリはServiceNow機能でなく「あえて」Googleスプレッドシートで実装 >子会社の増やインボイス制度対応など改修が多い 改修コストを初めから下げておく 29              請求データ生成   請求データ生成                請求データ生成      展開                                    発行    展開      発行                                作成                                     展開                                     作成       展開                                                                                     制度変更により 出力される請求情報が そのまま使えない +内訳書の送付依頼
  19. 2-6.システム開発の高速化 ServiceNow上での開発 • 必要な機能の洗い出し           ◦ 要件定義フェーズ ▪ 約3か月(22年2月~4月) • 業務の見直し

    • システムとのすり合わせ ◦ 設計/レビュー(22年5~6月) ▪ 約2か月     プロトタイプを使用したレビューを実施 ◦ 他システムとの連携実装 ▪ 約1か月(7月) ◦ 不足機能の作り込み ▪ 約1か月(8月) ◦ テスト/トレーニング ▪ 約1か月(9月) ◦ データ移行/システム切替 ▪ 3日(旧システム停止は1日のみ) 準備にじっくり時間をかけることで開発/切替を高速に実施 >システムの寿命が来る前に開始することで準備に時間を使える 連携システム改修以外の開発は担当者1人で完了。 30 業務の把握 業務フローの見直し 必要な機能は・・? プロトタイプレ ビューが 便利&速い 機能を開発 テストと トレーニング
  20. 人事システム※ 端末管理システム※ ・ActiveDirectory ・Jamf Pro ・LanScopeCat ・CrowdStrike データインポート ユーザー情報 インポート

    ユーザーへの通知 回答インポート 端末利用ログ情報 インポート 【システム全体の模式図】 社内各種マスタ※ ・会計情報 ・所属情報 最新情報 インポート 各システムとの連携はAPIによる。 SaaSと直接接続できない社内システム(※)との連携は連携システムを経由する。 最新情報 インポート 端末利用ログ情報 インポート 31 2-6.システム開発の高速化 認証機能
  21. 2-7.長く使い続けるための工夫 32 管理担当者によるセルフサービスカスタマイズ 考えられるシナリオ • ビジネスの変化 ◦ 子会社の増加、費用請求方法の変更 • 管理項目の追加

    ◦ 資産プロパティの追加 • 処理フローの変更 ◦ 環境や状況変化による業務の変化 発生のたびに「改修リクエスト」を出すのは利用者/開発者ともに大変 リクエスト>設計>実装>テスト>公開のプロセスは時間がかかる 【セルフサービスカスタマイズ】を可能にすることで 業務に適合したシステムを長く使い続けられる仕組みを構築 ・処理ロジック/フローの変更 ・プロパティの追加/編集 ・配賦/請求書のカスタマイズ
  22. 3.全体のまとめ IT部門の工数削減と対応速度向上は両立できる(が、それなりに手間と労力がかかる) • セルフサービス ◦ 自分でできることは自分でやる。困ったときはきちんとサポートする • 自動化 ◦ まずは身の回りの狭い範囲からルーチンワークを自動化。

    自動化の勘所をつかむ>ほかの作業も自動化できる 現状に無駄や非効率はないか?QCDのバランスは適切か? よく考慮して対象を決定した上での実行が必要 【目下の課題】 リモートワーク主体の働き方への変化=IT部門に求められるニーズも変化 寄せられる要望や増える運用工数。チャレンジすべき課題も様々。 「今より便利」をより速く届ける チャレンジは続きます。 36