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特別区協議会「重回帰分析でみる自殺の現状と対策」

d-lab 北陸大学
March 11, 2021
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 特別区協議会「重回帰分析でみる自殺の現状と対策」

田尻ゼミ 公益財団法人特別区協議会と研究発表会を開催|TOPICS|北陸大学
https://www.hokuriku-u.ac.jp/sptopics/202103170911.html

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March 11, 2021
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  1. 研究のきっかけ • 1月23日朝日新聞朝刊にて 自殺者数が増加していると いう記事を発見。 • 同記事にはコロナの影響では ないか、との記載があり 本当にそうなのか、 という疑問をもとに

    調査に乗り出した。 自殺、11年ぶり増 女性大幅増・小中高生過去最多 昨年、速報値 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20210123000406.html 朝日新聞1月23日朝刊 4
  2. 17 変数名 出典・備考 1人当たり賃金(万円) 厚生労働省-賃金の推移より 完全失業率(%) 総務省統計局が毎月実施する「労働力調査」から計算。 有効求人倍率(%) 総務省統計局が毎月実施する「労働力調査」から計算。 1人当たり酒類消費推量(ℓ)

    国税庁HPより(沖縄のみ沖縄国税事務所から集計) 配偶関係(人) 国勢調査-人口等基本集計より 日照量(時間) 気象庁HPより。各都道府県の月別日照量を年平均で計算。 いじめ認知件数(人) 文部科学省の調査より 精神疾患患者者数(人) ReMHRAD(リムラッド:地域精神保健医療福祉資源分析データベース )より6月30日の精神科外来受診患者のち主たる病名が精神保健福 祉法第5条の「精神障害者」である者とした。 犯罪件数(件) 警察庁Webサイト-警察白書統計資料、2-1都道府県別刑法犯の認知 件数、検挙件数、検挙人員で刑法犯総数認知件数とした。 離婚率(%) 人口動態調査 人口動態統計 確定数 離婚 都道府県別にみた年次別離婚件数・離婚率(人口千対) 世代別自殺者数=世代ごとの自殺者数/総人口
  3. 結果(もともとのデータ、モデル比較) •被説明変数:自殺者数 •もともとのデータで重回帰分析を行ったとき、 ほとんどの年、項目で (決定係数が0.9代にあり) 自殺者はこれらの自殺変数で90%以上 説明できている、との結論がでた。 •しかしこれは異常に高すぎる、 との指摘を受けたため一人当たりに 換算して数値をみていくことになった。

    修正済み決定係数は全て0.9以上ある。 18 2011.自殺者(全体) 2015.自殺者(40代) 2018.自殺者(女) 一人当たり賃金 0.2402397 -0.1109444 *0.6287162 いじめ認知件数 0.0190802 0.0005563 ***0.0008128 完全失業率 -65.9309575 -7.6423080 **-26.4781955 有効求人倍率 ***-742.5307873 10.4812685 **-32.7578704 一人当たり酒類消費推量 ***0.2352936 -0.0553752 ***0.7102976 精神疾患患者数 0.0389855 0.0005293 *0.0091921 日照量 -0.8912732 0.1987459 ***-0.6010083 配偶関係 (未婚) ***0.0001390 配偶関係(有配偶) -0.0000224 配偶関係(死別) 0.0002018 配偶関係(離別) -0.0000215 離婚率 -20.1690172 犯罪件数 ***0.0111451 -0.0001864 *0.0031538 Observations 47 47 47 AdjustedR2 0.946 0.981 0.964 note *p<0.1=赤 **p<0.05=黄色 ***p<0.01=緑
  4. 結果(2015.一人当たり換算、比較) 19 • 被説明変数:自殺者数/総人口 • 一人当たり換算に換算した結果、 2015年の自殺変数と人口1人当たり の自殺者数との関係は一気に弱くな った。 •

    決定係数は0.300にわずかに届かな いという結果に 全体 男 女 一人当たり賃金 *-0.0000003 *-0.0000002 -0.0000001 いじめ認知件数 -0.0001314 0.0000639 -0.0001954 完全失業率 0.0000150 0.0000078 *0.0000072 有効求人倍率 0.0000104 0.0000061 0.0000043 一人当たり酒類消費推量 0.0000004 0.0000003 0.0000001 精神疾患患者数 0.0088022 0.0025480 0.0062542 日照量 0.0000007 *0.0025480 0.0000001 配偶関係 (未婚) 0.0000186 -0.0004014 0.0004200 配偶関係(有配偶) 0.0000755 -0.0001927 0.0002682 配偶関係(死別) 0.0009029 0.0002625 **0.0006404 配偶関係(離別) *-0.0025400 -0.0016283 -0.0009117 離婚率 犯罪件数 -0.0004358 -0.0015408 -0.0001954 Observations 47 47 47 AdjustedR2 0.277 0.274 0.244 note *p<0.1=赤 **p<0.05=黄色 ***p<0.01=緑
  5. 結果(2018.一人当たり換算、比較) 20 • 被説明変数:自殺者数/総人口 • 比較的新しいデータである2018年において 、 決定係数は全体、男では0.710以上を 記録している •

    しかし総人口女の方では、いまだ0.400を わずかに上回る数値にすぎないため、 他に要因となる変数が存在していることが 推測できる。 全体 男 女 一人当たり賃金 **-0.0000021 **-0.0000018 -0.0000003 いじめ認知件数 *-0.0000026 -0.0000013 *-0.0000012 完全失業率 0.00008073 0.0000763 0.0000045 有効求人倍率 **-0.0001905 **-0.0001355 -0.0000549 一人当たり酒類消費推量 ***0.0000116 ***0.0000072 ***0.0000044 精神疾患患者数 ***-0.0000286 ***-0.0000203 ***-0.0000083 日照量 ***0.0000089 ***0.0000067 **0.0000022 配偶関係 (未婚) 配偶関係(有配偶) 配偶関係(死別) 配偶関係(離別) 離婚率 *-0.0003172 -0.0001835 *-0.0001337 犯罪件数 ***-0.0000113 ***-0.0000095 -0.0000018 Observations 47 47 47 AdjustedR2 0.718 0.718 0.408 note *p<0.1=赤 **p<0.05=黄色 ***p<0.01=緑
  6. 結果(60代、比較) 21 • もう少し詳細を見ていくと、2018年 、60代の1人当たり換算の数値に 特徴があることがわかった。 • 2015年と2018年の分析結果を比 べると急に自殺のメカニズムが変 化していることがわかる。

    • またどちらも離別、離婚率におい て係数は負で有意なP値を取って いる 2015 60代の自殺者数/全人口 2015 60代の自殺者数/60代 の人口 2018 60代の自殺者数/全人口 2018 60代の自殺者数/60代 の人口 一人当たり賃金 -0.0000001 -0.0000004 ***-0.0000009 ***-0.0000042 いじめ認知件数 -0.0002386 -0.0018288 -0.0000001 -0.0000008 完全失業率 0.0000045 0.0000247 0.0000274 0.0001593 有効求人倍率 -0.0000023 -0.0000118 **-0.0000434 -0.0001812 一人当たり酒類消費推量 0.0000000 0.0000003 ***0.0000046 ***0.0000303 精神疾患患者数 0.0005187 0.0042068 ***-0.0000034 ***-0.0000257 日照量 0.0000001 0.0000009 ***0.0000030 ***0.0000192 配偶関係 (未婚) -0.0003768 *-0.0028587 配偶関係(有配偶) -0.0002188 *-0.0020777 配偶関係(死別) 0.0001282 -0.0002103 配偶関係(離別) *-0.0007230 **-0.0057588 離婚率 ***-0.0001351 **-0.0005979 犯罪件数 -0.0001404 -0.0017397 ***-0.0000022 ***-0.0000134 Observations 47 47 47 47 AdjustedR2 0.312 0.152 0.773 0.700 note *p<0.1=赤 **p<0.05=黄色 ***p<0.01=緑 被説明変数 説明変数
  7. 結果(10代・20代、比較) 22 • もともとのデータでいかに決定係数が高 かろうと、1人当たり換算したとたん決定 係数が低く出ることがほとんどだった • 特に2015年、1人当たり換算10代(各世帯 )において決定係数は-0.033を示している •

    このことから10代の自殺者は他の世代と は異なるメカニズムで生じている事がわ かる 2015 10代の自殺者数/10代 の人口 2015 20代の自殺者数/20代 の人口 2018 10代の自殺者数/10代 の人口 2018 20代の自殺者数/20代 の人口 一人当たり賃金 0.000000 0.000000 0.000000 0.000004 いじめ認知件数 -0.000370 -0.003418 -0.000002 0.000003 完全失業率 0.000005 **0.000052 -0.000040 0.000379 有効求人倍率 0.000003 0.000060 -0.000082 0.000008 一人当たり酒類消費推量 0.000000 0.000000 0.000000 0.000003 精神疾患患者数 0.008487 -0.002933 -0.000003 *-0.000033 日照量 0.000000 **0.000002 0.000001 **0.000020 配偶関係 (未婚) 0.000446 0.001084 配偶関係(有配偶) 0.000357 0.000411 配偶関係(死別) 0.000507 **0.003016 配偶関係(離別) 0.000270 **-0.006891 離婚率 -0.000165 -0.000528 犯罪件数 -0.000160 -0.002685 0.000003 ***-0.000048 Observations 47 47 47 47 AdjustedR2 -0.033 0.326 0.099 0.267 note *p<0.1=赤 **p<0.05=黄色 ***p<0.01=緑 被説明変数 説明変数
  8. 政府の自殺対策 2006年6月 自殺対策基本法成立 10月 自殺予防総合対策センターの設置 2007年 「自殺総合対策大綱」(閣議決定) 2009年 地域自殺対策緊急強化基金(内閣府100億円)の設置 2012年8月

    自殺総合対策大綱改定(閣議決定) 2015年6月 自殺総合対策の更なる推進を求める決議(参議院厚生労働委員会) 2016年3月 自殺対策基本法一部改正法成立(議員立法、4月1日施行) 4月 自殺総合対策推進センターとして機能強化 2017年 「自殺総合対策大綱」(閣議決定) 23
  9. 参考文献 • エミール・デュルケーム 『自殺論』(中央公論新社,2018) • 朝日新聞「 自殺、11年ぶり増 女性大幅増・小中高生過去最多 昨年、速報値 」2021年1月23日付朝刊

    • 厚生労働省「自殺の統計:各年の状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsu_year.html • 警察庁「生活安全の確保に関する統計等:令和2年中における自殺の状況」 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査:賃金の推移」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html • 総務省統計局「労働力調査」 https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html 30
  10. 参考文献 • 厚生労働省「人口動態調査:人口動態統計」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html •厚生労働省「自殺対策」 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/ • セゾン自動車火災保険株式会社“「電話に」苦手意識を感じる”人が約4割!現代のコミュニケーション手段をセゾン自動車火災保険 が調査!.PRTIMES.2020-05-08 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000033692.html(参照2021-03-06)

    •自殺者の実態とその分析に関する一考察 (上平忠一,2012) •『自殺論』以降の自殺の社会学(平野孝典,2019) •新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による 「自殺者数」増加推計シミュレーション (京都⼤学レジリエンス実践ユニット,2020) 32