プロシージャルワークフロー × Unreal Engine5 で挑む映像制作

2025年6月14日に開催されたTA Nightの講演資料となります。
Unreal Engine5でクオリティの高い画を出すためにやったこと、Substance 3D DesignerやHoudiniを使用した事例を説明します。

▍GUNCY'S - 関連リンク
HP (https://guncys.com/)
Zenn - 技術ブログ(https://zenn.dev/guncys)
CGWORLD.jp - Web連載記事 (https://cgworld.jp/regular/ue5/)

TA Night イベントページ: https://www.creativevillage.ne.jp/category/event-list/159742/

Transcript

1. プロシージャルワークフロー × UnrealEngine5 で挑む映像制作
2. 登壇者プロフィール テクニカルプランナー 小林 哲朗 3DCG/制作全般 ゲームエンジンに精通 CGIアーティスト 長田 晃輝 DCCツールを用いたアセット制作および ディレクションに従事 テクニカルアーティスト 伊藤 晴紀 モデリングやルックデブなどのアート ワークをはじめ、 UE5での機能実装など を行っている
3. 目録 1. 企画 2. 映像制作ワークフロー 3. 今までの進捗状況 4. Houdiniでの作業 5. Substanceやマテリアル設定など 6. UE5を使った画作り 7. 最新の映像
4. はじめに 　本プロジェクトは Unreal Engine5.1までの機能で制作した映像作品です。 また、本プロジェクトはプロダクトではなく R&Dプロジェクトです。 試行錯誤した内容や経験談などを中心にお話いたしますが、皆様のプロダクトの参 考になれば幸いです。
5. 1.プロシージャルワークフローで 少人数・高効率な 制作体制を築きたい 企画
6. 企画 ▪ 欧米のAAAゲーム開発において、最近ではプロシージャルワークフローが標準 的になってきている ▪ 日本国内でもプロシージャルワークフローの需要が、着実に増えてきていること を実感している i. https://www.youtube.com/watch?v=gCt4oLEQ2LU ii. https://www.youtube.com/watch?v=D0ERCi9mMZg iii. https://vimeo.com/273986776
7. 2.UE5を使ったコンテンツ を作ってみたい 企画
8. 企画 ▪ GUNCY'SではUnityを使った作品には関わるチャンスが多く、ナレッジも溜まっ てきているが UEの事例は少数なので実際に深堀りして使ってみたい ▪ フォトリアルな質感、ライティングの制作に関わったケースが少ないのでナレッ ジを溜めたい ▪ 映像コンテンツとしても品質の高い映像を実現したい
9. 映像作品を作ってみよう 企画
10. 本編映像
11. どうやって作っていくか 映像制作ワークフロー
12. • プロダクション ◦ ボリューメトリック撮影 ◦ プロップアートワーク ◦ UEレベルデザイン ◦ UEシーケンスコンポジット ◦ レンダリング ◦ AEコンポジット ◦ エンコード • プリプロダクション ◦ 企画 ◦ プロット ◦ 設定作成 ◦ コンセプトアート ◦ カラースクリプト ◦ コンテ ◦ プリビズ 映像制作ワークフロー
13. • プロダクション ◦ ボリューメトリック撮影 ◦ プロップアートワーク ◦ UEレベルデザイン ◦ UEシーケンスコンポジット ◦ レンダリング ◦ AEコンポジット ◦ エンコード • プリプロダクション ◦ 企画 ◦ プロット ◦ 設定作成 ◦ コンセプトアート ◦ カラースクリプト ◦ コンテ ◦ プリビズ 映像制作ワークフロー
14. 　今回は映像制作のデモンストレーションに近いため、 　様々な映像の技法を活かせる物語のプロットを考え、書き出していく。 プロット
15. ライブ配信者が、廃虚と化した大正ロマンの 洋館を探索する。 しかし、館の中では不思議な現象が次々と起 こる。 プロット
16. 設定作成 キャラや背景の時代考証など煮詰めていく
17. 字コンテ 絵コンテ Vコンテ コンテ
18. 字コンテ 演出や場面などをシーンごとに区切って書き出していく
19. 絵コンテ
20. Vコンテ 絵コンテを使いカット尺の確認
21. コンセプトアート
22. コンセプトアート
23. コンセプトアート
24. カラースクリプト コンテにカラーを上乗せして各カットの調子を確認する
25. カラースクリプト＋コンセプトアート
26. プリビズ
27. • プロダクション ◦ ボリューメトリック撮影 ◦ プロップアートワーク ◦ UEレベルデザイン ◦ UEシーケンスコンポジット ◦ レンダリング ◦ AEコンポジット ◦ エンコード • プリプロダクション ◦ 企画 ◦ プロット ◦ 設定作成 ◦ コンセプトアート ◦ カラースクリプト ◦ コンテ ◦ プリビズ 映像制作ワークフロー
28. ボリューメトリック撮影 実写をベースにそのままポリゴン化・モーション化し、保存する
29. 映像→ シェーダー or テクスチャ 4DViewsボリュ―メトリック 4DViewsとは？
30. 4DViewsボリュ―メトリック 各カットの演技を撮影していく
31. 4DViewsボリュ―メトリック UEでコンポジット【実演】
32. 4DViewsボリュ―メトリック
33. アセットの制作 ▪ 職人による温かみのある手作りのモデリング ▪ Houdini ▪ Substance
34. DCCで手作り 汎用性の必要が無い一点もののプロップ類
35. ボタン一つで自動的に対象の 環境・オブジェクトをターン テーブルとして撮影、 Flow PTにアップロードまでを 行うPlugin 自作Lookdev Plugin Flow PT UE パイプライン サーバ Flow PTでlookdev
36. Houdini
37. UE Houdini Houdini工程の流れ 洋館のレイアウト 各パーツの モジュール化 ユニークモデル 作成 HoudiniEngine で再構築 USD 出力 洋館の制作
38. 洋館の間取り・レイアウト
39. 洋館のレイアウト 洋館の間取り図 パラメータで間取りを 調整できるように
40. 洋館のレイアウト UEでカメラワーク確認
41. モジュール化
42. モジュール化 モジュール化とは… 壁や床を全て一つのモデルとして 作るのではなく、 面ごとに分割して作ること 部屋の大きさなどに柔軟に対応できるよ う、 必要な要素をパラメータ化する
43. モジュール化 画像は公式ドキュメントより抜粋 なぜモジュール化するのか 一体成型だとLumenのSurfaceCache が上手く計算できない（UE5.1当時） →モジュール化で解決！
44. モジュール化 壁モジュール
45. モジュール化 間取りに合わせて ラインを引く レイアウトに合わせて構築
46. モジュール化 レイアウトに合わせて構築 ラインを基に モジュールを生成
47. モジュール化 その他モジュールを配置
48. 窓モジュール
49. 窓モジュール ※コンセプトアートのため、最終的なデザインとは異なります
50. 窓モジュール 扉あり 扉なし ※コンセプトアートのため、最終的なデザインとは異なります 窓の種類
51. 窓モジュール 子供部屋 ステンドグラス ※コンセプトアートのため、最終的なデザインとは異なります 窓の種類
52. 窓モジュール 窓の形状それぞれのHDAを作成 窓の種類
53. 窓モジュール 窓モジュールのパラメーター
54. 窓モジュール ※コンセプトアートのため、最終的なデザインとは異なります 廃墟版
55. 窓モジュール 廃墟版
56. 窓モジュール 配置
57. ユニークモデル 固有の形状のものは、 モジュールではなく 一点物で作る
58. ユニークモデル 階段・エントランス
59. ユニークモデル 屋根・外壁の装飾
60. ユニークモデル 正面口・ベランダ
61. ユニークモデル 完成
62. USDワークフロー
63. USD パラメータ情報… アトリビュートに情報を格納 配置情報… 点群化して情報を格納 Houdiniからエクスポート
64. USD パラメータ情報… アトリビュートに情報を格納 配置情報… 点群化して情報を格納 Houdiniからエクスポート
65. USD USD ROPで出力 Houdiniからエクスポート
66. USD UEにインポート 簡易的なWidgetでUSDを インポート
67. USD UEにインポート HoudiniEngineで 再構築
68. USD 完了
69. 洋館のディティールや その他プロップ等
70. ベッド
71. 壁紙
72. 本
73. シャンデリア
74. 柱のレリーフ
75. 柱のレリーフ 画像の輪郭を抽出
76. 柱のレリーフ ノイズでDisplacement
77. 柱のレリーフ ノイズでDisplacement
78. 柱のレリーフ 完成
79. Substance 3D Designer
80. Substance 3D Designerとは
81. 1. リファレンスを視る a. 構成する要素を分解し、部品化をする 2. マテリアルを作成する a. 細かく部品化した形状をシェイプで再現する b. 部品化したシェイプを変形しバリエーションを出す c. 色々なパターンのシェイプを並べてる d. 並べたシェイプを元に色や質感を足していく マテリアル作成の考え方
82. リファレンスを視る (FREEP!K- Damask seamless pattern background )より引用 https://www.freepik.com/free-vector/damask-seamless-pattern-background_1534426.htm
83. リファレンスを視る
84. マテリアルを作成する
85. 完成
86. 完成
87. 完成
88. 作成したマテリアルを Unreal Engine5 へ読み込む
89. Unreal Engine5 マテリアル 透明 布 親マテリアル ガラスA 布A インスタンス ガラスB 布B アセットA アセットB アセットC
90. Unreal Engine5 マテリアル
91. タイルテクスチャ ユニークテクスチャ テクスチャの運用 タイルテクスチャとユニークテクスチャ
92. タイルテクスチャ デカールを使用する
93. タイルテクスチャ UVセットを分ける
94. タイルテクスチャ UVセットを分ける
95. ユニークテクスチャ
96. ユニークテクスチャ UDIMの使用
97. Substanceマテリアルを UEへ直接インポートする Substance 3D for Unreal Engine https://www.fab.com/ja/listings/292bb370-f146-4d1e-89c2-afbdb26cea6b
98. Substanceマテリアルを UEへ直接インポートする
99. Unreal Engine 5について NaniteとLumen
100. Naniteの概要 クラスタとフォールバックメッシュ
101. Lumenの概要 NaniteとLumen Card r.Lumen.Visualize.CardPlacement 1
102. ▪ Naniteにおける注意点 ◦ ソフトエッジ ◦ フォールバックメッシュ ▪ Lumenにおける注意点 ◦ サーフェスキャッシュ ◦ アーティファクト ◦ 現状最適解だったレイトレの設定 Lumenとメッシュの関係性
103. メッシュ： Nanite ソフトエッジでないと Nanite力が発揮しない
104. メッシュ： Nanite 1f目 2f目 Nanite:off Nanite:on • フォールバックメッシュに注意 ◦ たまにライティングの影響がおかしい箇所が発生する ◦ Naniteオンのままメッシュをエクスポートすると FBMが出てくる
105. メッシュ： Lumen メッシュに厚み（ or 閉じたメッシュ）がないと Lumenを活かせない
106. メッシュ： Lumen • ピンク：GIが効かない（反射が黒くなる） ◦ 解決法 ▪ 複雑ではない形状にオブジェクトを 切り分ける。 （完全には直らないこともある） [Surface Cache] 表示モード • サーフェスキャッシュ：穴形状はつらい
107. アーティファクトの出現（ Nanite） メッシュ： Lumen
108. メッシュ： Lumen 謎の影は Cast ray traced shadowが有効の時 参考：Modular Seaside Town　 https://www.unrealengine.com/marketplace/ja/product/modular-seaside-town
109. メッシュ： Lumen • 解決法 ◦ プロジェクト設定 or ライト からCast Ray Traced Shadowをオフ ◦ （r.RayTracing.NormalBiasを上げる） ◦ （メッシュの厚みを増やす） ◦ （パストレを使う） • メッシュの厚みを増やす • Path Tracer
110. メッシュ： Lumen Naniteを主体とするプロジェクトならば … ▪ Ray Traced Shadow ▪ Ray Traced SkyLight は理由がない限りオフが安定していておすすめです。 使うときはメッシュの形状に気を付けましょう。
111. ライティング ▪ 印象的なライティングにするには ◦ ライトシャフト ◦ フェイクを混ぜる ◦ Fogの制御
112. ライトシャフト 光が差し込むシャフト
113. ライトシャフト 光源を見つめる方向のシャフト
114. • Intensityを爆上げする • Volumetric Scattering Intenityを爆上げする • Cast Volumetric Shadowをオンにする ※ExperimentHeightFogのVolumetroc Fogをオンにしてあること ライトシャフト
115. 往々にして、メッシュの隙間から fogが漏れ出すので、 白い豆腐などを適宜配置し、 fogを遮断することができる。 ちなみに、 5.2以降で精度がかなり改善されている。 【実演】 ライトシャフト
116. ライトシャフト スポットライトなどを使えばムラのある光漏れを擬似的に再現できる
117. Fogを綺麗に出したい r.VolumetricFog.GridPixelSize を8から2に下げて精度を高める（重くなる）【実演】
118. フェイクを混ぜる 印象的に見せたい箇所へのライティング
119. • 太陽方向を明確にしたい • 正面階段のディティールを見せたい • 次カットに映る柱時計の位置を明確に • 崩壊部に寒々しさが欲しい フェイクを混ぜる
120. ▪ 太陽方向用 AreaLight • 階段用AreaLight • 柱時計用SpotLight • 影用青ライト フェイクを混ぜる
121. フェイクを混ぜる
122. ライトの置きすぎ注意 Attenuation Radiusが重なったライトが 1つのメッシュに 16個より多く当たると起こる
123. r.Shadow.Virtual.OnePassProjection.MaxLightsPerPixel • デフォルト： 16 • 改善後：32 上げすぎると相応に負荷が高まるので、 ゲーム制作の際は気を付けること
124. カットの管理 ▪ 1カットごとにシーケンスを分けてレンダリング ◦ 安定性、レンダリング中のトラブルの早期発見を図る ▪ 必要に応じて MRQのプリセットを使い分ける ◦ CVarsの使い分け
125. カットの管理 コンソール変数（ CVars）の使い分け
126. カットの管理 CVarsの使い分け【実演】 ジェネラルなCVars設定：残像発生 カット専用CVars設定：くっきりFog
127. CVarsの使い分けメモ • r.VolumetricFog.HistoryWeight ◦ デフォルト： 0.9 ◦ 調整後：0.02 • r.VolumetricFog.TemporalReprojection ◦ デフォルト： 1.0 ◦ 調整後：0.0 • r.VolumetricFog.GridPixelSize ◦ デフォルト： 8.0 ◦ 調整後：2.0
128. ▪ 紆余曲折在りつつも、ひとまず映像作品が出来上がってきた 映像作品ができるまで
129. 今後はプロシージャルワークフローで少人数・高効率な制作体制を 実際のプロダクトへ適用していこうと考えています。 今回の発表で UEの特徴や性質、工夫できる箇所など 皆様の参考になるものがあれば幸いです。 おわりに
130. ご清聴ありがとうございました。 株式会社GUNCY’S 小林哲朗 / 伊藤 晴紀 / 長田 晃輝