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Behavioral Economics is the Ultimate Discipline

Behavioral Economics is the Ultimate Discipline

yasunori_takahashi

March 14, 2025
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  1. ▪ 「認知のクセ」=「脳の情報処理の仕⽅」 「脳の情報処理の仕⽅」そのものに「歪み」が存在する 代表的な理論「システム1 vs システム2」 ‧システム1: 直感、システム2: 論理 ‧⼈間が脳で情報処理をする際にはこの2つを場⾯場⾯で使い分けている

    ‧システム1  ‧素早く情報を把握、判断する。熟考するのではなく、直感や感情などを基にヒューリス   ティック(認知の近道)を使う ‧システム2  ‧脳は集中してじっくり情報を捉え、過去の経験などを照らし合わせ、情報を分析した上   で把握、判断する。 第1章:認知のクセ
  2. ▪ 正解は... 「バット1ドル5セント、ボール5セント」 しかし、反射的に「バット1ドル、ボール10セント」と答えてしまう  => 認知のクセによる⾮合理な意思決定 反射的に間違えた答えが出た後に、本当にあっているのかどうかの⾃⼰チェックをし、 「反射的な答え(システム1)vs 考えた答え(システム2)」を⽐較し後者を選ばなければな らない。

    システム1 とシステム2は無意識下で連動し、複雑に絡み合いながら同時に動いている システム1 を⽩⾊、システム2を黒⾊とすると... 時と場合によって、薄い グレーになったり、濃いグレーになったりする (真っ⽩、真っ黒はない) 第1章:認知のクセ
  3. ▪ マクドナルドのアンケート調査の失敗 「もっと健康的でヘルシーなメニューを増やして欲しい」というアンケートであがってくる 多くのユーザの声に答える形で「サラダマック」を発売。しかし、ヒットせずすぐ終売に。 ‧⼈がマクドナルドを利⽤する時はどんな時か?  => 忙しい時。疲れている時。⾃分で料理するのが⾯倒な時。   「しっかりと考えて利⽤する」のではなく「なんとなくパッと利⽤する」   つまり、システム1の意思決定がされる ‧アンケートに回答する時はどんな時か?

     =>忙しい時、疲れている時に回答はしない。じっくり考えてシステム2の意思決定がされ   る。合理的で理想的な⾏動を頭に浮かべて回答する。 また、会社が意思決定をする会議における意思決定においても、しっかり考えてからの意思 決定になるのでシステム2の意思決定が⾏われることが多い。 顧客理解を深める時はシステム1の観点でも⾏うべき(商品特性による) 第1章:認知のクセ
  4. ▪ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ③ 埋没コスト 「スキー旅⾏を計画。A 州プラン: 100ドルとB州プラン: 50ドルの予約⾦を⽀払済。  B州の⽅が雪質がよく、設備が新設されてより楽しめそう。」 「A州‧B州

    のプランが同⽇の予約であることが発覚。どちらにしか⾏けない。返⾦はな し。」 「どちらの旅⾏に⾏きたいですか?」 => 半数以上の⼈が A プランを選択 ‧より⼤きな初期投資を⾏ったから。 ‧⼀度何かを始めたら、たとえ成果が出ていなくても、そこに費やした時間/お⾦/労⼒を  取り戻そうと継続してしまう  ‧⼀⽣懸命進めているプロジェクトが途中「うまくいかないかも?練り直した⽅が良いか   も?」という状態になっても中断できない 第1章:認知のクセ
  5. ▪ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 確証バイアス ‧何かを思い込んだらそれを証明するための根拠、⾃分に都合の良い情報や信じたい調査結果 ばかりを集め始めてしまう 確証バイアスを減少させる⽅法 A. ⾃分の提案に部下から FB

    をもらう場合には最初に「『この内容は素晴らしい』と同意し て欲しいわけではない。⽬的はクオリティを⾼めること。あなた視点の改善点を FB して ほしい」と伝える B. 敢えて反対意⾒を求める a. MTG で「悪魔の代弁者」という役割を設け、敢えて異を発⾔してもらう b. 現⾏のプラン A だけではなく、反対となるプラン B を考えてみる 第1章:認知のクセ
  6. ▪ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ 概念メタファー A. 「左のボトル」 ⼈は無意識のうちに「細⻑いもの = ⾼級」「低くて幅があるもの =

    気楽」を感じる 細⻑い‧背の⾼いものをみると「⼒」「権威」「⾼級感」を感じ、 太く短い‧背の低いものをみると「安⼼」「親しみやすさ」を感じる 第1章:認知のクセ
  7. ▪ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑨ 「時間」も認知のクセになる:「双曲割引モデル」 Q1: 今⽇100ドルもらうのと1ヶ⽉後に120ドルもらうのと、どちらがいいか? => 多くの⼈が「今⽇100ドルもらう」と回答。現在志向バイアス。 Q2: 1年後に100ドルもらうのと1年1ヶ⽉後に120ドルもらうのと、どちらがいいか?

    => 多くの⼈が「1年1ヶ⽉後に120ドルもらう」と回答。 合理的に考えれば1⽇24時間、今⽇と明⽇、1ヶ⽉後は同じ価値。 しかし「今⽇と1ヶ⽉後」は⼤きな差でも、「1年後と1年1ヶ⽉後」は⼤した差ではなくな る 第1章:認知のクセ
  8. ▪ 「認知のクセ」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 解釈レベル理論 ⼈間の意識が向くのは「今」であり、今については「現実的かつ具体的」に考える 逆に、1週間後、1ヶ⽉後、1年後と考えることが先になるにつれ思考は「抽象的」になっ ていく 例) ‧旅⾏会社が夏のハワイ旅⾏を PR

    したいときに時期によって PR 内容を変える必要がある  ‧夏まで時間がある場合 => 顧客が思い描くのはハワイの海や雰囲気など抽象的なイ    メージ  ‧夏直前の場合 => 顧客の思考は、⾶⾏機の出発⽇‧帰国⽇、発着時刻、ホテルの⾷事   の内容、申し込み時期による割引の有無等の具体的なものに変化する 第1章:認知のクセ
  9. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ① 系列位置効果 逆に、⾯接官として応募者を採⽤する場合に「初頭効果」や「新近効果」の影響を受けていな いか、しっかり考えた⽅が良い ‧社内企画のプレゼン  ‧選ばれたい場合   ‧その会議の直後に意思決定される場合 =>

    最後にプレゼンすべき   ‧その会議の数⽇後に意思決定される場合 => 最初にプレゼンすべき  ‧選ばれたくない場合    => 中盤の順番でプレゼンすべき ⚫ 消費者の選択肢への影響 「地元のワインに対する調査」と称して3種類のワインをテイスティングさせて好きなワイン を選択させる。(※実は全て同じワイン)  => 55%の⼈が「最初に飲んだワイン」を選択 第2章:状況
  10. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ② 単純存在効果 他⼈が周りにいるだけで意思決定が変わる ‧実験  ‧被験者に5ドルを私、⼩売店で電池を1つ買ってきてもらう。どの電池でも良い。お釣り   は被験者のものになる。 ‧結果  ‧電池コーナーの周りに他の客がいない時

    => 33%が⼀番⾼いメーカーの電池  ‧電池コーナーの周りに他の客が1⼈いる時 => 42%が⼀番⾼いメーカーの電池  ‧電池コーナーの周りに他の客が3⼈いる時 => 63%が⼀番⾼いメーカーの電池 他の客は、ただ存在しているだけだったにも関わらず意思決定に影響を与えている 被験者は「他の客に影響を受けた」とは⾃覚しておらず、「なぜその電池を選んだのか?」と 質問しても「このメーカーの⽅が⻑持ちすると思ったから」と回答した 第2章:状況
  11. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 選択オーバーロード 選択肢が多すぎることで相⼿は選べなくなってしまう Amazon でトイレットペーパーと検索すると数万件がヒットする 1つ1つの商品を⽐較検討し、⾃分にベストな商品を選択するには膨⼤な時間と労⼒がかかる 買うことそのものをやめてしまう可能性もある ⼀⽅で、選択肢の多さサービスの「売り」になる

    選択肢が少なすぎると⼈は興味を持たない 「選択肢は多い⽅が良い」という思い込みを利⽤して、何種類も同じような商品を販売する 顧客はそれを魅⼒に感じ、集まってくる => 選択オーバーロードを⽣み出し、結果、消費者はどれも選ばないという状況 第2章:状況
  12. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ 選択オーバーロード ⼈間は多くの選択肢があることを好む⼀⽅で、多すぎると決められないという⽭盾、⾮合理で ある => 「選択アーキテクチャー」という考えの誕⽣ ‧Amazon: おすすめ商品、価格順‧新しい順‧⼈気順のフィルター

    ‧TikTok: 最初から動画が選択されている ‧Netflix: おすすめドラマの予告動画 ‧その他  ‧商品の品質表⽰がわかると消費者は購⼊しやすくなる  ‧ディシジョンツリーの活⽤ ▪選択肢は「10個」ばベスト 実験: この中に欲しいペンがあったら1本購⼊してください。なければ購⼊不要です。 => 10本の時に購⼊率が最も⾼く90% 第2章:状況
  13. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ プライミング効果 ⾊、⾳楽、位置、匂いといった刺激が無意識のうちに⼈の意思決定に影響を与えている 実験: ⾃動⾞販売の EC サイトを2つ作り、それぞれのサイトで「安全重視モデル」と「価格重 視モデル」の両⽅を販売。

    1つのサイトは緑⾊を基調としたサイト、もう1つは⾚⾊を基調としたサイト。 結果: ‧緑⾊を基調としたサイトでは、価格重視モデルを選んだ⼈ 66%、安全重視モデル 34% ‧⾚⾊を基調としたサイトでは、価格重視モデルを選んだ⼈ 50%、安全重視モデル 50%  → ⾚⾊を基調としたサイトでは「危険」というイメージが⾼まり、安全重視が増 第2章:状況
  14. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ プライミング効果 その他の例) ‧ワインショップで、フランスを連想させる BGM を流すと83%の客がフランスワインを購⼊ ‧CEO から従業員のメッセージに、⽬標の達成を連想させるワードを⼊れるようにしたとこ 

    ろ、従業員のパフォーマンスが15%、業務効率が35%向上した プライミング効果は、本⼈に「選ばせられた、状況に決定させられた」という意識はなく、 「⾃分で主体的に選んだ」と思っている 第2章:状況
  15. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 期待値はどちらも100万円にも関わらず、 1 では A を選ぶ⼈の⽅が多く、2 では

    B を選ぶ⼈の⽅が多い 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 第2章:状況
  16. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 — 1. どちらを選びますか? A:100万円が無条件で⼿に⼊る

    B:コインを投げ、表が出たら200万円が⼿に⼊り、裏が出たらなにも⼿に⼊らない — 1 では負債がない状態 = 損失がない状態 その状態で利益(100万円)が提⽰されると利益(100万円)が⼿に⼊らないという損失の回 避を優先する => 選択肢 B の「何も⼿に⼊らない状態 = 損失」を回避する 第2章:状況
  17. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 「⼈間は⽬の前に利益を提⽰されると利益が⼿に⼊らないという損失の回避を優先し、⽬の前 に損失を提⽰されると損失そのものを回避しようとする傾向がある」 — 2. あなたは200万円の負債を抱えています。どちらを選びますか? A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる

    B:コインを投げ、表が出たら負債が全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない — 2 では負債がある状態 = 損失がある状態 ⽬の前に損失(200万円の負債)を提⽰されると損失(200万円の負債)そのものを回避しよ うとする => 選択肢 B の全額免除に意識がいく 第2章:状況
  18. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ プロスペクト理論 1 では B の「10分先のスーパーで卵を買う」を選んだ⼈が多く、2 では A

    の「この家電量販店 で洗濯機を買う」を選んだ⼈が多い お得になる絶対額ではなく、率で「お得かどうか」を判断している 100万円の⾞を1万円引きされてもあまり嬉しくないのに、スーパーの買い物では、数⼗円〜 数百円安くなっているだけでも嬉しく感じる ⾦額の⼤きさと、主観的に感じる価値は⼀致せず、⾦額の絶対値が⼤きくなるほど感覚が鈍感 になる (⼤きな買い物ほど、本当は、値切れるだけ値切ったほうがいいはずなのに⾦銭感覚が⿇痺し てしまう) 第2章:状況
  19. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑧ アンカリング効果 最初に提⽰された数値が基準になり、その後に続くものに対する判断が⾮合理に歪んでいく 実験: ワインをいくらで買うか? 「このワインを n 円で買いますか?」

    n にはその⼈の携帯番号の下2桁*1000円の数字を⼊れる。 例えば... 携帯番号が XX45 の⼈は、n = 45,000円。XX10 の⼈は 10,000円 。 下2桁が⼤きい⼈ほど⾼額になるので、「買いません」と答える。 「買いません」と答えた⼈に「では、いくらなら買いますか?」と質問する。 例えば、上の例だと「このワインに45,000円も出したくない。買わない。」と答えた⼈にこの 質問をすると「んー、じゃあ、まぁ20,000円なら」という回答がある、という感じ。 第2章:状況
  20. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 脳の意思決定は時間帯で変化する 刑務所での仮釈放になりやすい時間帯がある!? 仮釈放する = 更⽣しているか?再犯は⼤丈夫か? システム2の慎重な意思決定が求められる 仮釈放になりやすい時間帯:

    朝⼀、ランチ休憩後、午後の休憩後 => 朝や休憩後、脳がリフレッシュしている時間帯 時間の経過と共に徐々に脳が疲れていき、考える⼒が低下しリスクの少ない意思決定になる。 ネット広告の時間帯 ‧⾼額な商品(家、⾞ etc)は朝早い時間帯の配信が効果的(脳が元気な状態) ‧衝動買い的に購⼊して欲しい商品(ファストフード、ファッション)は⼣⽅から夜の脳が疲 れている時間帯の配信が効果的 第2章:状況
  21. ▪ 「状況」に関連する⾏動経済学の理論 ⑩ 脳の意思決定は時間帯で変化する 刑務所での仮釈放になりやすい時間帯がある!? 仮釈放する = 更⽣しているか?再犯は⼤丈夫か? システム2の慎重な意思決定が求められる 仮釈放になりやすい時間帯:

    朝⼀、ランチ休憩後、午後の休憩後 => 朝や休憩後、脳がリフレッシュしている時間帯 時間の経過と共に徐々に脳が疲れていき、考える⼒が低下しリスクの少ない意思決定になる。 ネット広告の時間帯 ‧⾼額な商品(家、⾞ etc)は朝早い時間帯の配信が効果的(脳が元気な状態) ‧衝動買い的に購⼊して欲しい商品(ファストフード、ファッション)は⼣⽅から夜の脳が疲 れている時間帯の配信が効果的 第2章:状況
  22. ▪ そもそも「感情」とは何か? 喜怒哀楽のようにはっきりとした感情 => エモーション 喜怒哀楽のようにははっきりとしない感情 => アフェクト  ‧スタバが好きな⼈がスタバのロゴをたまたま⾒たら「おっ」と気分が上がる  ‧タバコが苦⼿な⼈がタバコと聞いただけでちょっと嫌な気持ちになる

    アフェクトの⽅が⽇々の⽣活の中で抱く機会が多い => 意思決定に与える頻度が多い ただ、潜在意識に働きかけるので気がつきにくい ⾔語化できない、なんとなくという類のもの その⼈がこれまでの⼈⽣で蓄積してきた微々たる感情がその⼈のアフェクトを作っている 第3章:感情
  23. ▪ アフェクトの伝染 ⼀緒にいる⼈が楽しそうだと⾃分も楽しくなる。釣られ笑い。もらい泣き。 Facebook の実験 Aグループ: ポジティブな投稿がタイムラインに流れてこないようにした Bグループ: ネガティブな投稿がタイムラインに流れてこないようにした Aグループ

    => ネガティブな投稿が⽬につくようになったことから⾃⾝もネガティブな投稿をす るようになった Bグループ => ポジティブな投稿が⽬につくようになったことから⾃⾝もポジティブな投稿をす るようになった 第3章:感情
  24. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ① ポジティブ‧アフェクト(拡張 - 形成理論) ポジティブな感情は視野や思考の幅を広め、ストレスによる⾝体と⼼の不調を整えてくれる 能⼒‧活⼒‧意欲が⾼まり、⼈脈や活動の範囲が広がる 仕事の効率も質も上げ、⼼⾝のストレスを軽減させる すぐにできるポジティブ‧アフェクトの活⽤例

    ‧家族の写真をデスクに飾る ‧楽しかった思い出の写真をスマホの背景にする ‧ストレスの多い会議のあと、温かい飲み物を飲んでほっとする ‧休み明け仕事にいくのが億劫な⽉曜⽇はお気に⼊りの洋服で出勤する アフェクトは淡いものなのですぐ消えるが、逆にすぐ⽣み出すことができる 第3章:感情
  25. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ② ネガティブ‧アフェクト 実験:「⾃分はいかに仕事ができるか」というスピーチコンテスト。 被験者を2つのグループに分けてコンテスト前にそれぞれ次の⾔葉を呟くように指⽰ グループA:「私はワクワクしている」 グループB: 「私は平常⼼で落ち着いている」 結果、「⾃分は有能な社員だ」と⾃信たっぷりにスピーチができ、好評価を得たのは...

    「グループA」 不安や緊張というネガティブな感情は簡単に消えるものではなく、下⼿に「上がっていない。 私は⼤丈夫だ」と抑え込もうとすると逆効果になる。それゆえにネガティブ‧アフェクトを認 識し、その上でポジティブ‧アフェクトに変換する 第3章:感情
  26. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ③ キャッシュレス効果 キャッシュレスは、「お⾦を使ってしまった」という⼼理的痛みを感じにくい ネガティブ‧アフェクトが⽣まれいにくくなってしまい、結果、簡単に使ってしまう ⾃⼰投資として使ったほうがいいお⾦ => カードで⽀払う 払うことの痛みを感じ、使うのを惜しんでしまっては⾃⼰投資できない。

    (痛みを感じたからこそしっかり⾃⼰投資するモチベーションにつながる考え⽅もある) ちょっとした楽しみ‧贅沢 => 現⾦で払う 「お⾦を使った」という感覚を⾼められ、より楽しみや贅沢を強く実感することができる。 無駄遣いもしなくなる。 第3章:感情
  27. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ③ キャッシュレス効果 実験:レストランでのメニュー表記 同じメニューのデザインや料理の種類でメニュー表を記載 唯⼀異なるのは⾦額部分のみ A: ⾦額部分を 「XXXX

    $20.00」と「料理名+$⾦額」で表記 B: ⾦額部分を 「XXXX 20.00」と「料理名+⾦額」で表記 => B のメニューを受け取った客の⽅が⼤幅に消費が増⼤ 頭では⾦額とわかっているが、「お⾦を払う」という⾏動が⼼理的に響かず、簡単にお⾦を 使ってしまうという結果 第3章:感情
  28. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ⑤ コントロール感(理論名ではない) ⼈は「常に⾃分で意思決定し、⾏動している。⼈⽣をコントロールしている」と考えている し、そうしたいという欲求がある。 実社会では、なかなかそうはいかないもの。常にコントロール感を感じられるとは限らない。 悲しかったりストレスが溜まっていたりすると買い物をしたくなる(ストレス発散の爆買) => ⼼理的なコントロール感を取り戻したいという気持ちの表れ

    買い物は⾃分の意思で選んだものを⾃分のお⾦で⾃分のものにできる。つまり、簡単に 「⾃分でコントロールしている」と感じられる⾏動 実験では、ec サイトに置いて、決済まで進まずとも、気に⼊った商品を選んでカートに⼊れて もらう操作をするだけで、悲しみやストレスが軽減するという結果になった。 怒っている⼈に同実験をやったが、怒りは軽減しなかった。「怒り」というのは悲しみやスト レスよりも、より特定の「状況」や「⼈」が標的となっているため。 第3章:感情
  29. ▪ 「感情」に関連する⾏動経済学の理論 ⑥ 不確実性理論 「不確実性」も「コントロール感」と同様ネガティブな感情を⽣み出し、⾮合理な意思決定に 影響を及ぼす。 病院で「がんの疑いがあります」と⾔われた⼈を対象に⾏った調査。 「がんの疑いがあります」と告げられた直後は皆⼀様にネガティブな感情が強くなる 「結局、がんでなかった⼈」  ‧「がんではありませんでした」と⾔われた直後、急激にストレス値が軽減した

    「実際にがんだった⼈」  ‧「がんでした」と⾔われた直後、ストレス値が急上昇したが、数⽇経過するとストレス値  は、「がんでした」と告げられる前よりも下がっていた。   => がんかどうかわからない状態の⽅がストレス値が⾼かった。対応策を⽴てたり、考える ステップに進むことができる状態になった。 不確実性が⾼い状態の⼼理的な負荷の⾼さが調査でわかった 第3章:感情
  30. エピローグ:社会における⾏動経済学 ▪「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 クイズ ⽇焼け⽌めの宣伝コピー。どちらのコピーを魅⼒的に感じますか? A: あなたならできる!A → B → C

    の⼿順でとても簡単です。⽇焼け⽌めのボトルを⻭磨き粉 の側に置いて、毎朝使えばいいだけです! B: 研究によると、この⽇焼け⽌めはたとえ短い時間だけ太陽の下で過ごすとしても、⽼ 化、⽇焼け、⽪膚がんに対して効果を発揮します。
  31. ▪「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ① 制御焦点理論 性格特性を知るためのテスト A => 促進焦点タイプ B => 予防焦点タイプ

    ‧制御焦点理論  ⾃⼰理解と他者理解に⽋かせない⾏動経済学の理論  ⼈が⽬標を達成するときの動機には⼤きく「促進焦点」と「予防焦点」がある  例えば、新しいプロジェクトを任せられたら...  促進焦点タイプ:成功したいから頑張る  予防焦点タイプ:責任者として失敗したくないから頑張る  同じ「頑張る」でも動機が異なる エピローグ:社会における⾏動経済学
  32. ▪「⾃⼰理解‧他者理解」と⾏動経済学 ② 「最⼤化」と「満⾜化」 A => 最⼤化タイプ  意思決定において重視するのはベストかどうか。  最善の選択をしよう広範囲に及ぶ情報収集をし検討を⾏う。  ⼀度決⼼しても迷い「もっと良い選択肢があるのでは」と、決⼼後にまた情報収集を再  開することもある。意思決定に時間がかかる。決断できない、迅速な対応が苦⼿。

    B => 満⾜化タイプ  意思決定において重視するのは容易さと効率性。  ある程度ニーズを満たす選択肢を⾒つけたら、情報収集をやめ、直感やテキトーに選択  肢を選ぶ。⼀度決めたら迷うことは少ない。ベストではなくベターで満⾜する。 仕事とプライベートや対象のものやことで「最⼤化」と「満⾜化」が変わる エピローグ:社会における⾏動経済学
  33. ▪「サステナビリティ」と⾏動経済学 ホテルに宿泊している客のタオル交換の頻度を毎⽇ではなく何⽇かに1回に促して、節⽔や 環境汚染への影響を削減したい... メッセージ1: 環境保護にご協⼒を! ‒ ゲストの皆様へ。滞在中、同じタオルを再利⽤することで、⾃然への敬意と環境を守る姿勢を⽰せます。 メッセージ2: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒

    ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、当ホテルの環境保護プログラムに賛同したおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤しています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってください。 メッセージ3: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、この部屋(##号室)に宿泊したゲストいのおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤することで、環境保護プログラムに加わっています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってくださ い。 エピローグ:社会における⾏動経済学
  34. ▪「サステナビリティ」と⾏動経済学 ホテルに宿泊している客のタオル交換の頻度を毎⽇ではなく何⽇かに1回に促して、節⽔や 環境汚染への影響を削減したい... メッセージ1: 環境保護にご協⼒を! ‒ ゲストの皆様へ。滞在中、同じタオルを再利⽤することで、⾃然への敬意と環境を守る姿勢を⽰せます。 メッセージ2: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒

    ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、当ホテルの環境保護プログラムに賛同したおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤しています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってください。 メッセージ3: 環境を守る仲間に加わりましょう! ‒ ゲストの皆様へ。2003年秋の調査では、この部屋(##号室)に宿泊したゲストいのおよそ75%のゲストが、滞在中、タオルを再利 ⽤することで、環境保護プログラムに加わっています。あなたもぜひタオルの再利⽤を通じて、環境を守る仲間に加わってくださ い。 エピローグ:社会における⾏動経済学 37.2% 44.0% 49.3%
  35. ▪「DEI」と⾏動経済学 Diversity: 多様性、Equity: 公平性、Inclusion: 包括性 ⾊々なバイアスが DEI を妨げる要因になっている — ⾬が降る夜、ある男性が息⼦を抱きかかえて病院に駆け込んで来ました。緊急⼿術が必要と

    なり、当直医が駆けつけます。当直医は男の⼦の顔を⾒た途端、叫びました。 「その⼦は⾃分の息⼦だ!私には⼿術できない...!」 エピローグ:社会における⾏動経済学
  36. ▪「DEI」と⾏動経済学 このストーリーに違和感を感じましたか? もし、違和感を感じたとするとどんな違和感ですか? 感じた違和感が「男の⼦を抱きかかえてきた男性 = ⽗親、当直医 = ⽗親」で⽗親が2⼈い る?という違和感であれば、無意識のうちに、「当直医(医師) =

    男性」というカテゴ リー化がされているということ。 あなたが持っているジェンダーバイアス ◼ 対応例 ‧オーケストラのバイオリニストのオーディションの際に、審査員と応募者の間に幕を降ろ して純粋に⾳⾊のみでオーディションを⾏う(⼥性の合格率が向上) ‧映画の主⼈公の変化。主⼈公(ヒーロー) = ⽩⼈男性、というステレオタイプの払拭  ‧スターウォーズ、ディズニー エピローグ:社会における⾏動経済学