Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

リサーチの前に詩を描く

hiranotomoki
December 10, 2022

 リサーチの前に詩を描く

日本人デザイナーの特徴は、母国語が「日本語」であることです。主語と述語の関係が曖昧で、情緒的表現(間接表現)がしやすい日本語でつくられる詩は、そこに多くの文脈(コンテキスト)を含ませます。

本セッションでは、デザインを駆動させていくための詩の活用方法や事例、日本人デザイナーとしてデザインアプローチ時に抑えるべき大切な観点は何かなどの実践知をご紹介します。

hiranotomoki

December 10, 2022
Tweet

More Decks by hiranotomoki

Other Decks in Design

Transcript

  1. Spectrum Tokyo Design Fest 2022 | Day 2
    リサーチの前に詩を描く

    - 日本語の特性を活かしたMyデザイン思考 -
    平野友規(Hirano Tomoki)

    株式会社ユーザベース コーポレート執行役員 執行役員 CDO

    株式会社UB Ventures クリエイティブパートナー

    View Slide

  2. 本日は、素敵な登壇の機会をいただきありがとうございます。

    View Slide

  3. 本日のメッセージ(結論)
    私たち日本人は、日本語をつかって「曖昧で情緒的」に世界を捉えている

    そんな日本文化と相性が良いのは「詩」である

    衝動と情熱を詩で表現し、世界観をつくる

    それを起点に「日本型デザイン思考」を回す

    そのデザインアプローチこそが「My デザイン思考」


    みなさんも、自分だけのデザインアプローチを探してみてください!

    View Slide

  4. 自己紹介

    View Slide

  5. 株式会社ユーザベース コーポレート執行役員 CDO

    株式会社UB Ventures クリエイティブパートナー


    多摩美術大学情報デザイン学科卒業、東京藝術大学大学院デザイン専
    攻修了。2017年にDesign school Kolding(デンマーク)のLab for
    social designで客員研究員。トランスコスモス、コンセントを経て、
    2011年にトライアンド(現 デスケル)を設立。 2019年にユーザ
    ベースのSPEEDA事業に参画。


    主な仕事は、SPEEDAのデザインマネジメント、三菱重工業の社会イ
    ンフラ事業のDX推進に向けたビジョン策定支援、RICOH THETAの新
    規事業開発時におけるUX / UIデザイン。


    iF コミュニケーションデザイン賞、German Design Award、

    グッドデザイン賞ベスト100など受賞。
    悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意思によるものである

    by アラン(フランスの哲学者)


    学ぶ心さえあれば、 万物すべてこれ我が師である

    by 松下幸之助(Panasonic創業者)
    プロフィール 人生観

    View Slide

  6. Source: https://www.designskolenkolding.dk/en

    View Slide

  7. Designers from Design School Kolding should


    use design to develop products, systems and organisations, which promote sustainable ecology.

    contribute with a deep and trained sense of and knowledge about aesthetics, function and users
    together with other subjects and professions.

    create connections by listening to others and by processing materials with your hands, mind and
    heart.

    work in cross-disciplinary teams on challenging and solving large societal problems and issues of our
    time, such as climate change, lack of welfare and social inequality.

    engage and use the tools of the design process in research collaborations and research networks
    nationally and internationally
    Mission
    Source: https://www.designskolenkolding.dk/en/about-school

    View Slide

  8. View Slide

  9. View Slide

  10. DSKDのSocial Design Labは、教育、医療、福祉などに焦
    点を当てたデザインの研究機関


    ラボのチームに所属するデザイナーは「デザインのやり方
    (方法)」を企業や組織に提供する

    新しい知識、アイデア、コンセプトが生まれ出るようなワー
    クショップのファシリテーターを担う

    DSKDは「研究(research)」「芸術的開発(artistic
    development)」「実践(practice)」の3つを大切してい


    「Doing is Thinking」や「Making is Thinking」といった
    原則がその中心にある

    プロジェクトを通して、デザインラボは「意味のあるプロダ
    クトやサービス」の開発と社会実装に対し、デザインがのよ
    うに貢献したのか?といった知識と事例を生み出す
    Social Design Lab

    View Slide

  11. Source: http://danishdesignaward.com/en/nominee/tactus/?catid=

    View Slide

  12. はじめに

    View Slide

  13. 一般的なデザイン思考

    View Slide

  14. 抽象・論理によって
    探して集める

    Research
    分けて比べる

    Analysis
    アイデアを出す

    Ideation
    作り試す

    Prototyping
    解決を考える
    課題を考える
    具象・経験によって

    View Slide

  15. 1
    2 3
    4
    抽象・論理によって
    探して集める

    Research
    分けて比べる

    Analysis
    アイデアを出す

    Ideation
    作り試す

    Prototyping
    解決を考える
    課題を考える
    具象・経験によって

    View Slide

  16. 一般的な「デザイン思考」のよくあるお話
    E 分析でつまずF
    E 分析から出たアイデアが面白くなP
    E 「デザイン思考って本当に役立つの?」と不信感が出る

    View Slide

  17. 2017 - 2018年。

    「デザイン思考」は本当に役に立つのか?

    その謎を解明するため、平野はデンマークの奥地へと向かった―。


    そこで、出会った衝撃の真実。


    平野が出会ったデンマークのデザイナーは、

    デザイン思考を疑っていなかった。


    そして、デンマーク語でつくられていた

    デザイン思考を補助するツールキット・応用したツールキットを生み出していた。

    View Slide

  18. デンマーク語でつくられていた

    View Slide

  19. こうして

    僕の「My デザイン思考」の旅がはじまった

    View Slide

  20. 日本語と英語

    View Slide

  21. 日本語
    約10000語
    主語と述語の関係は「曖昧」
    情緒的表現(間接表現)がしやすい
    ハイコンテキスト文化(文脈依存)
    必要な語彙数
    構造
    表現
    利用状況

    英 語
    約3000語
    主語と述語の関係は「明確」
    論理的表現(直接表現)がしやすい
    ローコンテキスト文化(言語依存)

    View Slide

  22. Narrative Mode
    「物語」で考える・伝える・捉える
    「個別的」な「意味」をつくる
    「理由」を「解釈」する
    多義的で妥当的(曖昧)
    仕様
    成果
    理解
    性質

    Paradigmatic Mode
    「論理」で考える・伝える・捉える
    「一般的」な「真理」をつくる
    「原因」を「説明」する
    一義的で厳密的(明確)
    Source: 心理学者ジェローム・ブルーナの議論を下敷きに整理

    View Slide

  23. 日本文化と西洋文化

    View Slide

  24. View Slide

  25. View Slide

  26. Source: https://www.kyohaku.go.jp/jp/collection/meihin/kinsei/item02/ Source: https://www.senshu-u.ac.jp/library/collection/gallery/gallery24.html
    俵屋宗達<鶴図下絵和歌巻> ウィリアム・モリス<チョーサー著作集>

    View Slide

  27. 日本文化
    多神教・八百万神
    自然は「尊重」するもの
    「関係(集団)」中心で考える
    分けない・曖昧を許容しやすい

    例:古今和歌集(四季で分類)
    宗教観
    自然観
    考え方
    性格

    よくある西欧文化
    一神教
    自然は「支配」するもの
    「人間(個人)」中心で考える
    分ける・曖昧を許容しにくい

    例:年代かAtoZで分類

    View Slide

  28. 私たち日本人は、日本語をつかって

    「曖昧で情緒的」に世界を捉えている

    View Slide

  29. 日本型のデザイン思考

    View Slide

  30. こんなにも世界の捉え方がちがうのに

    同じ「デザイン思考」で良いのだろうか?

    View Slide

  31. もっと日本人が得意とする「デザイン思考」があるのではないか?

    View Slide

  32. View Slide

  33. Source: https://ja.wikipedia.org/wiki/三日月宗近 Source: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003059.000032953.html

    View Slide

  34. Source: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000495.000005593.html

    View Slide

  35. 曖昧
    記号化
    情緒
    意味づけ

    View Slide

  36. 「モノ(具体物や記号)」を見ながら

    曖昧で情緒を考えること、比喩を考えること、意味付けすることは超得意!

    View Slide

  37. 1
    2 3
    4
    抽象・論理によって
    探して集める

    Research
    分けて比べる

    Analysis
    アイデアを出す

    Ideation
    作り試す

    Prototyping
    解決を考える
    課題を考える
    具象・経験によって

    View Slide

  38. 4
    3 2
    1
    抽象・論理によって
    探して集める

    Research
    分けて比べる

    Analysis
    アイデアを出す

    Ideation
    作り試す

    Prototyping
    解決を考える
    課題を考える
    具象・経験によって

    View Slide

  39. “(デザインは)「やって・みて・わかる」”
    須永剛司, 1986

    View Slide

  40. “描いた具象のデザイン(成果物)を観察し、その特徴を
    列挙する。次に、その特徴が解決するだろう課題を列挙
    する。最後に課題とリサーチ結果を照らし合わせて、繋
    がりそうな課題を選ぶ。”
    平野友規, 2022

    View Slide

  41. View Slide

  42. DSCL METHOD CARDS

    View Slide

  43. Source: https://dscl.jp/

    View Slide

  44. DSCL METHOD CARDSは「デザインおばけ」が解説する、誰もがデザインの力を使えるようになることを目指
    したツールキットです。メソッドを読んで学ぶのではなく、絵で見て楽しんで、その意図を掴む。その役割として
    「デザインおばけ」が存在します。DSCL METHOD CARDSは、何をするべきか(Doing)を1コマで描き、直
    感的に伝えます。「やってみたい」から出発する、ツールキットです。
    DSCL METHOD CARDS

    View Slide

  45. My デザイン思考

    View Slide

  46. 日本文化、日本語の特性に合わせた「日本型のデザイン思考」で

    何を「つくる」のか?

    View Slide

  47. 創造的衝動 と 本物の情熱

    View Slide

  48. “プロジェクトの起点にすべき衝動とは、もっと素朴な感覚として、
    「面白そう」とか「作ってみたい」とか、「こんなことを試してみ
    たい」「こうしたら、どうなるんだろう」といったような、子ども
    の頃から持っているような、原初的な感覚に近いものです。”
    安斎勇樹, 2019

    View Slide

  49. “「本物の情熱」は、寝ても覚めても頭にこびりついて、離れない情
    熱のことです。お風呂に入っている時も、寝ようとしている時も、歩
    いている時も、勝手に考えてしまう。無意識の中でも考えるように
    なっていることは「本物の情熱」といえます。”
    梅田優祐, 2019

    View Slide

  50. 衝動と情熱を詩で表現する


    詩で世界観をつくる

    View Slide

  51. 感情表現を凝縮した言葉。物語性が含まれるので読み手を
    主人公(書き手)の立場へ誘導する。言語の表面的な意味
    (だけ)ではなく美学的・喚起的な性質を持つ。
    人の主体的な意義づけによって成り立つ世界についての見
    解。世界観を感じた状態というのは、その場で何か客観性
    のある事実や例題、論証などの資料を見て「理解」したと
    いうことではない。
    詩 世界観

    View Slide

  52. 日本語
    約10000語
    主語と述語の関係は「曖昧」
    情緒的表現(間接表現)がしやすい
    ハイコンテキスト文化(文脈依存)
    必要な語彙数
    構造
    表現
    利用状況

    英 語
    約3000語
    主語と述語の関係は「明確」
    論理的表現(直接表現)がしやすい
    ローコンテキスト文化(言語依存)

    View Slide

  53. Narrative Mode
    「物語」で考える・伝える・捉える
    「個別的」な「意味」をつくる
    「理由」を「解釈」する
    多義的で妥当的(曖昧)
    仕様
    成果
    理解
    性質

    Paradigmatic Mode
    「論理」で考える・伝える・捉える
    「一般的」な「真理」をつくる
    「原因」を「説明」する
    一義的で厳密的(明確)
    Source: 心理学者ジェローム・ブルーナの議論を下敷きに整理

    View Slide

  54. 曖昧
    記号化
    情緒
    意味づけ

    View Slide

  55. 感情表現を凝縮した言葉。物語性が含まれるので読み手を
    主人公(書き手)の立場へ誘導する。言語の表面的な意味
    (だけ)ではなく美学的・喚起的な性質を持つ。
    人の主体的な意義づけによって成り立つ世界についての見
    解。世界観を感じた状態というのは、その場で何か客観性
    のある事実や例題、論証などの資料を見て「理解」したと
    いうことではない。
    詩 世界観
    詩の特徴は、日本語、日本文化との相性が良い。日本人に最適な表現ツール

    View Slide

  56. View Slide

  57. Source: https://designbase.uzabase.com/

    View Slide

  58. View Slide

  59. その名は、SaaS(Software as a Service)


    Dropbox、Zoom、Slack

    私たちの働く環境は、多くのサービスに支えられている


    ファイルは、クラウドへ

    打ち合わせは、オンラインへ

    出社は、リモートへ


    SaaSは、人々の働き方を変える可能性に溢れている

    だが、SaaS業界にデザイナーは少ない

    こんなにも、ビジネスを変える可能性があるのに

    デザインの力が足りていない


    この状況を変えるには

    デザイナーとSaaSをつなげ

    そこで働くデザイナーの姿を、その輪郭線を

    描く必要がある


    SaaSはトレンドで終わるのか?

    それとも、産業として後世に残るのか?


    もっと、人々が創造的に働く世界を目指して

    デザインの力で、SaaSを加速させる日


    SaaS Design Conference

    View Slide

  60. View Slide

  61. View Slide

  62. 本日のメッセージ(結論)
    私たち日本人は、日本語をつかって「曖昧で情緒的」に世界を捉えている

    そんな日本文化と相性が良いのは「詩」である

    衝動と情熱を詩で表現し、世界観をつくる

    それを起点に「日本型デザイン思考」を回す

    そのデザインアプローチこそが「My デザイン思考」


    みなさんも、自分だけのデザインアプローチを探してみてください!

    View Slide

  63. 4
    3 2
    1
    抽象・論理によって
    探して集める

    Research
    分けて比べる

    Analysis
    アイデアを出す

    Ideation
    作り試す

    Prototyping
    解決を考える
    課題を考える
    具象・経験によって

    View Slide

  64. Thank you

    View Slide