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20230809_KTK_企業の財務戦略と知財プロフェッショナル ~東京証券取引所の“PBR1...

 20230809_KTK_企業の財務戦略と知財プロフェッショナル ~東京証券取引所の“PBR1倍割れ改善要請”を題材に~

2023年8月9日
KTK(関西特許研究会)東京地区知財研究班会合
企業の財務戦略と知財プロフェッショナル ~東京証券取引所の“PBR1倍割れ改善要請”を題材に~

Hisato Matsumoto

August 10, 2023
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  1. 自己紹介 2  キャリア • 企業知財部 6年 • 経営企画部 5年(米国公認管理会計士(USCMA)登録)

     全社中期経営計画の策定・推進、経営の仕組み整備・改革、など  「自社が考える経営戦略」と「資本市場(投資家)との対話(エンゲージメント)」の すり合わせ・ブラッシュアップ 等にも関与  KTKでの発表 • 「企業経営上の課題と知財プロフェッショナルの関わり方」を切り口に • 昨年、「改訂コーポレートガバナンスコード」「知財・無形資産ガバナンス」「価値共創ガイダ ンス」の内容および知財プロフェッショナルとしての関わり方についてディスカッション • 本日は、いわゆる「東証PBR1倍割れ改善要請」を題材に、企業価値向上と知財の関わ りについて考えたい
  2. 背景 東京証券取引所について 位置付け・スタンス 5 位置づけ • 「株式会社東京証券取引所(東証)」は「株式会社日本取引所グループ(JPX:Japan Exchange Group, Inc.)」の100%子会社。(JPXは自ら東証プライム市場へ上場)

    • 収益源は、株式等の取引手数料、上場企業の手数料、等 JPX/東証のスタンス JPXの「中期経営計画2024」における基本方針  Focus 1|企業のイノベーション・成⾧と資産形成の循環促進 • 企業の持続的成⾧を支援する環境の整備  成⾧企業への資金供給機能の強化  上場会社の企業価値向上の促進  地域経済活性化に資するIPOのエコシステム確立  上場廃止後の売買機会の提供 など • 資産形成に資する商品・制度の発展 • 市場インフラとしての利便性・レジリエンスの更なる向上  Focus 2|マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現 • 金利関連市場の機能強化 • デリバティブ市場の活性化 • デジタル化・情報利用の高度化  Focus 3|社会と経済をつなぐサステナビリティの推進 • サステナビリティ関連情報の発信に係る機能強化 • ESGに関連した指数の算出、関連ETF・先物等の上場 • エネルギー関連市場の活性化、排出量市場創設の推進 https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/management/mid-business-plan/tvdivq0000008p9w-att/mtmp_j_20220331.pdf
  3. 背景 東京証券取引所について 施策例①コーポレートガバナンスコード(CGC) 6 位置づけ: • 会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定 を行うための仕組み” • “実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとたものであり、これらが適切に実践されること

    は、それぞれの会社において持続的な成⾧と中⾧期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを 通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる” 内容サンプル 【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】 • 経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策 の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリ オの見直しや、設備投資・研究開発投資・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実 行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。 時系列 • 2015年 初版策定 経営戦略の策定・公表、株主との対話、ステークホルダーとの連携、等 • 2021年 改訂  「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の提言を踏まえ。  金融庁・東証が事務局となり、大学、民間企業、シンクタンク、法律事務所、コンサルティングファーム、等がメン バーとして、経産省・法務省がオブザーバーとして参加。  主な改訂内容はサステナビリティ・中⾧期的な持続的成⾧の観点など(人的資本・知的財産への投資等) https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/nlsgeu000006j7nu.pdf
  4. 背景 東京証券取引所について 施策例②市場区分見直し 7 従前の課題 ① 各市場区分のコンセプトが曖昧であり、多くの投資者にとって利便性が低い(東証二部・マザーズJASDAQの位置 づけ重複、等) ② 上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けの点で期待される役割を十分に果たせていない

    ③ 投資対象としての機能性を備えた指数が存在しない 区分変更 • 変更前:一部、二部、JASDAQ スタンダード/グロース、マザーズ • 変更後:プライム、スタンダード、グロース( 2022年4月1日より新区分へ移行) • 新規上場基準・上場維持基準も、新市場区分の各コンセプトに応じた基準に見直し https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/nlsgeu000006j7nu.pdf
  5. 背景 「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」 8 位置づけ • 新市場区分への移行は、あくまでも上場会社における企業価値向上の実現に向けた「スタートライン」であり、移行 後も継続的にフォローアップが必要 • 市場区分見直しの実効性向上に向けて、施策の進捗状況や投資家の評価などをフォローアップし、上場会社の企 業価値向上への取組や経過措置の取扱い、ベンチャー企業への資金供給などに関する追加的な対応について東

    証に助言することを目的に、本フォローアップ会議を設置 • 事務局は東証、メンバーは、民間企業、シンクタンク、大学、資産運用会社、証券会社等。オブザーバーとして金融 庁・経産省が参加。 課題感 • プライム市場で、PBR1倍割れの企業が半数近く存在する状況。PBR1倍割れというのは、経営者が株価や 資本効率を意識していない状態。企業に危機感がないのが一番の問題。 • 一案として、取組のロードマップを公表し、それに基づき投資者と対話するというPDCAサイクルを回すことを求める ことが考えられる 施策 • 上場会社の資本コストや株価・時価総額への意識改革やリテラシー向上を促し、改善に向けた取組を促進 • 経営陣や取締役会において、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その状況や株価・時価総額の評 価を議論のうえ、必要に応じて改善に向けた方針や具体的な取組、その進捗状況などを開示することを要請 • 継続的にPBRが1倍を割れている会社には、開示を強く要請 時系列 • 2022年4月1日 新市場区分へ移行 • 2022年7月~2023年4月 フォローアップ会議実施(全10回) • 2023年3月31日 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の開示 https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/index.html
  6. 東京証券取引所からの要請内容 9 背景 • 従来より、コーポレートガバナンス・コードでは、企業が投資者をはじめとするステークホルダーの期待に応え、 持続的 な成⾧と中⾧期的な企業価値向上を実現するためには、資本コスト・資本収益性を十分に意識した経営資源の 配分が重要という観点から、資本コストを意識した経営(原則5-2)について示されています。 • 一方で、現状では、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE8%未満、PBR1

    倍割れと、資本収益性や成⾧性といった観点で課題がある状況であり、市場区分見直しに関するフォローアップ会 議では、こうした現状を踏まえ、今後の各社の企業価値向上の実現に向けて、経営者の資本コストや株価に対する 意識改革が必要との指摘がなされています。 • 本資料は、こうした現状や議論等を踏まえ、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて重要と考えられる対 応をまとめたものであり、上場会社の皆様に積極的な実施をお願いするものです。 趣旨 • 本対応を実施していただく趣旨は、持続的な成⾧と中⾧期的な企業価値向上を実現するため、単に損益計算書 上の売上や利益水準を意識するだけでなく、バランスシートをベースとする資本コストや資本収益性を意識した経営 を実践していただくことです。 • 具体的には、取締役会が定める経営の基本方針に基づき、経営層が主体となり、資本コストや資本収益性を十分 に意識したうえで、持続的な成⾧の実現に向けた知財・無形資産創出につながる研究開発投資・人的資本への投 資や設備投資、事業ポートフォリオの見直し等の取組みを推進することで、経営資源の適切な配分を実現してい く ことが期待されます。 • 資本収益性の向上に向けて、バランスシートが効果的に価値創造に寄与する内容となっているかを分析した結果、 自 社株買いや増配が有効な手段と考えられる場合もありますが、自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応 を期待するものではありません。継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成⾧を果たすための 抜本的な取組みを期待するものです。 • また、これらの取組みを進めるにあたっては、企業が独自の方法により、その方針や目標、具体的な内容を投資者に わかりやすく示し、投資者からの評価を得ながら、開示をベースとした投資者との積極的な対話を通じて、取組みをブ ラッシュアップしていくことが期待されます。 https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf
  7. 東京証券取引所からの要請内容 10 対象 • プライム市場・スタンダード市場の全上場会社 対応  資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、以下の一連の対応について継続的な実施 • 現状分析

     自社の資本コストや資本収益性を的確に把握  その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価 • 計画策定・開示  改善に向けた方針や目標・計画期間、具体的な取組みを取締役会で検討・策定  その内容について、現状評価とあわせて、投資者にわかりやすく開示 計画策定・開示 • 取り組みの実行  計画に基づき、資本コストや株価を意識した経営を推進  開示をベースとして、投資者との積極的な対話を実施 取組みの実行 • 毎年(年1回以上)、進捗状況に関する分析を行い、開示をアップデート  分析・評価の観点(例) • 資本コストを上回る資本収益性を達成できているか、達成できていない場合には、その要因 • 資本コストを上回る資本収益性を達成できていても、たとえばPBRが1倍を割れているなど、十分な市場評価 を得られていない場合には、その要因  資本コストを上回る資本収益性を達成できていても、PBRが1倍を割れているなど十分な水準に達してい ない場合には、成⾧性が投資者から十分に評価されていないことが示唆されます。  PBR・PER等は、時系列の変化や、同業他社との比較などの観点でも、自社の現状について分析・評 価することが考えられます。 https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf
  8. 経営指標等の補足 全体像 13 ① PBR(Price Book-value Ratio) ② 資本効率関連 •

    資本収益性:  ROE(Return On Equity)  ROIC(Return On Invested Capital) • 資本コスト:  WACC(Weighted Average Capital Cost) ③ 株価関連 • PER(Price Earning Ratio) • 理論株価の算出モデル  DCF法(Discounted Cash Flow)  DDM法(Discounted Dividend Model)  マルチプル法 ④ 経営指標の要素分解 • PBRの要素分解 • ROEの要素分解(デュポン分解)
  9. 経営指標等の補足 ①PBR 14  PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率) • 定義: PBR

    = 株価 一株当たり純資産 = 時価総額 純資産総額 • 意義:純資産(株式発行額や過去の利益の積み上げ)に対する株価の水準。 「PBR1倍割れ」の状態は、資本市場が評価した株価・時価総額が”解散価値”(仮に会社が解散 した場合、資産を売却して負債を返済した残りを株主で配分)を下回っている状態 資産 純資産 (自己資 本) 負債 時間 株価/時価総額 貸借対照表/バランスシート(BS) (一株当たりでの表現) (全株式での表現)
  10. 経営指標等の補足 ②-1 資本効率 15  資本効率  投下資本(Invested Capital):投資家(株主・債権者)から調達してビジネスに投入している資金 

    資本収益性:投下資本に対してどの程度利益を創出できているか。投資家から見た投資対効果の指標 • ROE(Return On Equity:自己資本利益率): • 定義: ROE = 当期純利益 自己資本 • 意義:株主から調達した資本(自己資本)に対する収益性 • ROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率): • 定義: ROIC = 税引き後営業利益 投下資本(=負債+自己資本) • 意義:株主+債権者からの資本(自己資本+負債)に対する収益性 資産 純資産 (自己資 本) 負債 利 益 売 上 総 額 コ ス ト
  11. 経営指標等の補足 ②-2 資本コスト 16  資本コスト  投資からの資金調達の対価として期待・要求されるリターン • 負債コスト:金利コスト(借入・社債等の利息)

    • 株主資本コスト:配当・株価向上(厳密な算出は困難も、CAPM(Capital Asset Price Model:資本 資産価格モデル)等のモデルで試算) • WACC(Weighted Average Capital Cost:加重平均資本コスト):負債コストと株主資本コストを調 達額で加重平均した代表値  意義 • 資本収益性が資本コストを下回っている場合(”資本コスト割れ”)、会計上の利益は黒字であっても、調達 資金のコストを考慮すると赤字に相当する状態(= ”企業価値を毀損”⇔”企業価値を創造”)  ROE ⇔ 株主資本コスト (株主からの資本による収益性とコストの対比)  ROIC ⇔ WACC (株主+債権者からの資本による収益性とコストの対比) ※負債コストは明確に利益計算上に登場するのに対し、株主資本コストは利益には影響がない(キャッシ ュフローには影響)ため、自社にて意識的に把握・対応が必要 ※ROEは8%がひとつの目安(2014年8月公表の「伊藤レポート」での提言)
  12. 経営指標等の補足 ③ 株価関連 17  PER(Price Earning Ratio:株価収益率):利益額(実績/予想) • 定義:

    PER = 株価 一株当たり当期純利益 = 時価総額 当期純利益 • 意義:類似の業種・ビジネスモデルの企業では同水準と仮定すると、同業他社比較での株価の割安・割高の 目安。成⾧期待感も織り込まれる(成⾧期待→株価高=高PER)。逆にPERが定まると株価が算出可能。  理論株価の算出モデル(以下は例) • DCF法(Discounted Cash Flow):  企業が将来生み出すキャッシュフロー総額(ΣCF)の現在価値から企業価値を算出 • DDM法(Discounted Dividend Model):  将来期待される配当額総額(Σ配当)の現在価値から時価総額・株価を算出 • マルチプル法(倍率法・類似会社比較法):  対象会社と類似の業種・ビジネスモデルの企業のPERと対象会社の利益から企業価値を算出 株価 = 当期純利益(実績/予想) × PER ※実際には、投資家から見た種々の要因が影響して株価を形成。直近の業績、中⾧期的な成⾧戦略に対する 納得感・信頼感・期待感・リスクなど 利 益 コ ス ト 時間 株価/時価総額 売 上 総 額
  13. 経営指標等の補足 ④-1 要素分解 PBR 18  PBR(Price Book-value Ratio;株価純資産倍率) •

    定義: PBR = 株価 一株当たり純資産 = 時価総額 純資産総額 • 要素分解: PBR = PER × ROE の関係 PBR = 株価 一株当たり純資産 = 株価 一株当たり利益 × 一株当たり利益 一株当たり純資産 時価総額 純資産総額 = 時価総額 利益総額 × 利益総額 純資産総額 資産 純資産 (自己資 本) 負債 時間 株価/時価総額 貸借対照表/ バランスシート (BS) (一株当たりでの表現) (全株式での表現) PER ROE ※簡易的な分解であり必ずしも 完全に相互独立ではないため 切り口としての捉え方
  14. 経営指標等の補足 ④-2 要素分解 ROE 19  ROEの要因分解(デュポン分解) • 定義: ROE

    = 当期純利益 自己資本 • 要素分解: 𝐑𝐎𝐄 = 売上高当期純利益率 × 投下資本回転率 × 財務レバレッジ の関係 𝐑𝐎𝐄 = 当期純利益 自己資本 = 当期純利益 売上高 × 売上高 総資産 × 総資産 自己資本 総資産 純資産 (自己資 本) 負債 利 益 コ ス ト 売 上 総 額
  15. パート2 まとめ 20 PBR ROE 利益率 投下資本回転率 財務レバレッジ PER 持続的な利益・キャッ

    シュフローの成⾧期待  PBRは様々な要素を含む総合的な指標であり、要因を分解して改善を検討・議論可能。
  16. 東京証券取引所からの要請内容 22 背景 • 従来より、コーポレートガバナンス・コードでは、企業が投資者をはじめとするステークホルダーの期待に応え、 持続的 な成⾧と中⾧期的な企業価値向上を実現するためには、資本コスト・資本収益性を十分に意識した経営資源の 配分が重要という観点から、資本コストを意識した経営(原則5-2)について示されています。 • 一方で、現状では、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE8%未満、PBR1

    倍割れと、資本収益性や成⾧性といった観点で課題がある状況であり、市場区分見直しに関するフォローアップ会 議では、こうした現状を踏まえ、今後の各社の企業価値向上の実現に向けて、経営者の資本コストや株価に対する 意識改革が必要との指摘がなされています。 • 本資料は、こうした現状や議論等を踏まえ、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて重要と考えられる対 応をまとめたものであり、上場会社の皆様に積極的な実施をお願いするものです。 趣旨 • 本対応を実施していただく趣旨は、持続的な成⾧と中⾧期的な企業価値向上を実現するため、単に損益計算書 上の売上や利益水準を意識するだけでなく、バランスシートをベースとする資本コストや資本収益性を意識した経営 を実践していただくことです。 • 具体的には、取締役会が定める経営の基本方針に基づき、経営層が主体となり、資本コストや資本収益性を十分 に意識したうえで、持続的な成⾧の実現に向けた知財・無形資産創出につながる研究開発投資・人的資本への投 資や設備投資、事業ポートフォリオの見直し等の取組みを推進することで、経営資源の適切な配分を実現してい く ことが期待されます。 • 資本収益性の向上に向けて、バランスシートが効果的に価値創造に寄与する内容となっているかを分析した結果、 自 社株買いや増配が有効な手段と考えられる場合もありますが、自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応 を期待するものではありません。継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成⾧を果たすための 抜本的な取組みを期待するものです。 • また、これらの取組みを進めるにあたっては、企業が独自の方法により、その方針や目標、具体的な内容を投資者に わかりやすく示し、投資者からの評価を得ながら、開示をベースとした投資者との積極的な対話を通じて、取組みをブ ラッシュアップしていくことが期待されます。 https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf 再掲
  17. 東京証券取引所からの要請内容 23 対象 • プライム市場・スタンダード市場の全上場会社 対応  資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、以下の一連の対応について継続的な実施 • 現状分析

     自社の資本コストや資本収益性を的確に把握  その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価 • 計画策定・開示  改善に向けた方針や目標・計画期間、具体的な取組みを取締役会で検討・策定  その内容について、現状評価とあわせて、投資者にわかりやすく開示 計画策定・開示 • 取り組みの実行  計画に基づき、資本コストや株価を意識した経営を推進  開示をベースとして、投資者との積極的な対話を実施 取組みの実行 • 毎年(年1回以上)、進捗状況に関する分析を行い、開示をアップデート  分析・評価の観点(例) • 資本コストを上回る資本収益性を達成できているか、達成できていない場合には、その要因 • 資本コストを上回る資本収益性を達成できていても、たとえばPBRが1倍を割れているなど、十分な市場評価 を得られていない場合には、その要因  資本コストを上回る資本収益性を達成できていても、PBRが1倍を割れているなど十分な水準に達してい ない場合には、成⾧性が投資者から十分に評価されていないことが示唆されます。  PBR・PER等は、時系列の変化や、同業他社との比較などの観点でも、自社の現状について分析・評 価することが考えられます。 https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf 再掲
  18. PBR・企業価値と知財の接点 24 PBR ROE 利益率 投下資本回転率 財務レバレッジ PER 利益・キャッシュフローの持 続的成⾧への期待

    • PBRの改善は企業経営上の主要課題。 • 従来の延⾧線上的な知財活動を超えて、企業の財務価値にどのように貢献し得るか
  19. PBR・企業価値と知財の接点 ①ROEへの寄与 25 ROE 利益率 投下資本 回転率 財務 レバレッジ 経営戦略上の論点

    知財面での関与 •提供価値向上、コストダウンに よる高収益性確保 •事業ポートフォリオ見直しによ る高収益化 など •知財権ポートフォリオによる競争優位性確保 •オープンイノベーション等による高収益性実現 •知財情報活用したマーケティング・事業企画支援 (既存事業の強化/再編、新規事業、等) •自社知財権の棚卸等を通じた客観評価から事 業ポートフォリオ見直しへ向けたインプット・提言 •運転資本効率化(売掛金 回収短期化、在庫削減、仕 入債務⾧期化) •固定資産の効率化(設備投 資の厳選) •ビジネスモデル・バリューチェーン 構造の見直し(パートナー連 携・ファブレス化による資産削 減等) など •?? •借入の増加や株主還元(配 当・自社株買い)の実施・ 財務レバレッジ増加による資 本効率向上(ROE改善)と 財務健全性悪化とのバランス を考慮して設計 など •?? •環境債の発行による負債コストの抑制において、 自社環境技術の可視化によるエビデンス強化等 ? ディスカッション用
  20. PBR・企業価値と知財の接点 ②PERへの寄与 26 PER 利益・キャッシュ フローの持続的 成長への期待 ディスカッション用 経営戦略上の論点 知財面での関与

    •中⾧期の方向性(パーパス・ ビジョン・マテリアリティ等々)と 中期的な取り組みの具体化 •自社無形資産(技術・人的 資本)の可視化・投資の戦 略・進捗の開示 など •知財IR的な活動など?  短期:現在の業績の裏付けとして、無形資 産の強みの仕上がり状況・活かされ方  中期:強みを持って立ち上げ中のビジネスに よる収益期待の醸成(先行指標➀)  ⾧期:次の強み構築のための無形資産投 資の方針と状況(先行指標➁)
  21. 全体まとめ 27 東証要請 • 株価・資本効率を意識した経営を議論する指標としてPBRを用いることは合理的 • ただしPBRは様々な要素を含む総合的な経営指標であるため、改善を議論する上では要素分解することが有用 • ROE(デュポン分解含め)・PERでの分解は有効な切り口の1つ 知財プロフェッショナルとしての関わり

    • 本日のディスカッション資料は、フレームワーク・切り口の紹介を意図 • 企業経営者の重要課題(悩み事)を起点として知財活動の課題設定を行うことで、新たな課題抽出に繋げら れる可能性。要素分解・仮説を持って経営層と議論・フィードバック得ることで新たな気づきが得られる可能性 • 日々の知財活動についての報告・評価・リソース獲得・プレゼンス向上においても、経営層が理解する言語での説 明が効果的 ディスカッション用