Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

20220415_KTK_改訂コーポレートガバナンスコードを入り口に企業と投資家の対話について考える

 20220415_KTK_改訂コーポレートガバナンスコードを入り口に企業と投資家の対話について考える

2022年4月15日
KTK(関西特許研究会)東京地区知財研究班会合
改訂コーポレートガバナンスコードを入り口に企業と投資家の対話について考える

Hisato Matsumoto

August 10, 2023
Tweet

More Decks by Hisato Matsumoto

Other Decks in Business

Transcript

  1. 自己紹介 松本 尚人(まつもと ひさと) 2  キャリア • 学生時代:工学系(物理化学・無機材料 等)

    • 2012年 精密機器メーカー新卒入社  企業知財部 6年(出願権利化活用・他社対策・海外拠点支援・子会社知財管理 体制整備 等)  経営企画部 4年(全社中期経営計画の策定・推進、経営の仕組み改善、等) ※ 知財とは経営機能・経営戦略の一環としての関与(事業、人財、技術、等々の 経営課題の1つ)  本日の発表の動機 • 知財部在籍中に触れることのなかった企業経営上のテーマ等をご紹介したい • 本日は、知財業界でも注目を集めた改訂コーポレートガバナンスコードを入り口に
  2. コーポレートガバナンスコード(CGC)とは 5  株式会社東京証券取引所(「東証」)による定義・意義 “会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、 透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み” “実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとたものであり、 これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成⾧と中⾧期的な 企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、 会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる”

    “プライム市場・スタンダード市場の上場会社は、コードの全原則について、グロース市場の 上場会社は、コードの基本原則について、実施しないものがある場合には、その理由を説 明することが求められます。” • Comply or Explain • 上場企業は、「コーポレートガバナンス報告書」を東証へ提出 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf
  3. コーポレートガバナンスコード(CGC)とは 6  構造 CGC ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

    ・・・ ・・・ ・・・ 基本原則 原則 補助原則 コンセプトから各論・具体論へブレイクダウン
  4.  5つの基本原則 【株主の権利・平等性の確保】 1. 上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその 権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。 また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。 少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境 や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行う べきである。

    【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】 2. 上場会社は、会社の持続的な成⾧と中⾧期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取 引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や 貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努める べきである。 取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊 重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。 コーポレートガバナンスコード(CGC)とは 7 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf *色文字・太字は松本が付与したもの 株主総会における議決権行使の利便性確保等 「ステークホルダーエンゲージメント」 経営理念・行動規範の策定・浸透等
  5.  5つの基本原則 【適切な情報開示と透明性の確保】 3. 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガ バナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に 基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤と なることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、 情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

    【取締役会等の責務】 4. 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成⾧ と中⾧期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、 (1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと (2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと (3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役 に対する実効性の高い監督を行うこと をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。 (一部割愛) コーポレートガバナンスコード(CGC)とは 8 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf *色文字・太字は松本が付与したもの 監督者として適切な意思決定・行動に導くため に果たすべき役割等
  6.  これまでの経緯 • 2015年策定、ガバナンスに実効性向上のためその後2018年・2021年に改訂 • 2021年の改訂のポイント サステナビリティ(ESG要素を含む中⾧期的な持続可能性)を巡る課題への取組み • 人的資本や知的財産への投資 •

    気候変動リスクへの対応 中核人材の多様性(ダイバーシティ) 取締役会の機能発揮(スキルマトリクス等) その他個別課題への対応(詳細割愛) コーポレートガバナンスコード(CGC)とは 10 2021年改訂で「知的財産」への言及が追加
  7. 知財・無形資産ガバナンスについて 12  関連個所 • 基本原則3【適切な情報開示と透明性の確保】 • 【原則3-1.情報開示の充実】 • 上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社の意思決定の透明性・公

    正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、(本コードの各 原則において開示を求めている事項のほか、)以下の事項について開示し、主体的な情 報発信を行うべきである。 i. 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画 ii. 本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方 と基本方針 iii. 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続 iv. 取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての 方針と手続 v. 取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指 名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf *色文字・太字は松本が付与したもの
  8. 知財・無形資産ガバナンスについて 13  関連個所 • 補充原則3-1➂ • 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適 切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営 戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべき

    である。 • 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活 動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立さ れた開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充 実を進めるべきである。 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf *色文字・太字は松本が付与したもの
  9. 知財・無形資産ガバナンスについて 14  関連個所 • 基本原則4【取締役会等の責務】 • 【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)】 • 取締役会は、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことを主要な

    役割・責務の一つと捉え、経営陣からの健全な企業家精神に基づく提案を歓迎しつつ、 説明責任の確保に向けて、そうした提案について独立した客観的な立場において多角的 かつ十分な検討を行うとともに、承認した提案が実行される際には、経営陣幹部の迅速・ 果断な意思決定を支援すべきである。 • また、経営陣の報酬については、中⾧期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健 全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである • 補充原則4-2➁ • 取締役会は、中⾧期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取 組みについて基本的な方針を策定すべきである。 • また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源 の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成⾧に資する よう、実効的に監督を行うべきである。 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf *色文字・太字は松本が付与したもの
  10. 知財・無形資産ガバナンスについて 15  「知的財産への投資」の位置づけ(講師の理解) • 企業の主目的の1つ/投資家の期待=持続的な企業価値(≒キャッシュフロー)の向上 • 将来の業績を予測するための補完情報として、企業の競争力に影響を与える強み/資産 を考慮。特に「有形資産」(工場・設備等)よりも「無形資産」(顧客基盤・技術・人材 等)の寄与への注目。

    =非財務情報/非財務指標 • 将来の無形資産価値を推察する拠り所としての現在の無形資産投資 → 無形資産への「投資」(差異化技術の獲得、人材の育成・獲得 等)は、 競争優位性の獲得・維持による持続的成⾧に寄与していることが重要 時間 競争力強化しつつ 新市場開拓で成⾧継続? 市場飽和で停滞? 他社キャッチアップ ・シェア喪失で低迷? 業績 (今) 今の業績 (財務指標) 将来の業績は?
  11. 知財・無形資産ガバナンスについて 16  内閣府 知財戦略推進事務局の動き • CGC改訂を受け、「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイ ドライン」(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver1.0 を策定・公表 

    2021年6月 改訂CGC公表  2021年8月~2022年1月 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関 する検討会」会合(全10回)  2022年1月28日 知財・無形資産ガバナンスガイドライン公表 • 位置づけとして、「価値協創ガイダンス」(次章でご紹介)に沿った形で、特に知財投資・ 活用戦略について深掘りしたもの
  12. 知財・無形資産ガバナンスについて 17  知財・無形資産ガバナンスガイドライン • サブタイトル: 「~知財・無形資産の投資・活用戦略で決まる企業の将来価値・競争力~ (投資家や金融機関等との建設的な対話を目指して)」 • 知財・無形資産のスコープ:

    特許権、商標権、意匠権、著作権といった知財権に限られず、 技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、 信頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、 これらを生み出す組織能力・プロセスなど、幅広い知財・無形資産を含めている 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  13. 知財・無形資産ガバナンスについて 19  5つのプリンシプル(原則) ① 「価格決定力」あるいは「ゲームチェンジ」につなげる • 知財・無形資産を活用したビジネスモデルを積極的に展開し「価格決定力」につなげる • 発想の大転換を伴うイノベーションによる競争環境の変革(ゲームチェンジ)につなげる

    ② 「費用」でなく「資産」の形成と捉える • 知財・無形資産の投資を「資産」の形成と捉え、安易に削減の対象としないよう意識 ③ 「ロジック/ストーリー」としての開示・発信 • 投資家等に知財・無形資産投資活用戦略を「ロジック/ストーリー」として説得的に説明 ④ 全社横断的な体制整備とガバナンス構築 • 社内の幅広い知財・無形資産を全社的に統合・把握・管理 • 戦略の策定/実行/評価を取締役会がモニターするガバナンス構築 ⑤ 中⾧期視点での投資への評価・支援 • 短期的には利益を圧迫しても、大胆な知財・無形資産への投資を理解し支援する姿勢 • 中⾧期的にESG課題解決につながる戦略について、その経営判断を後押しする積極的 なアクション 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  14. 知財・無形資産ガバナンスについて 20  7つのアクション i. 現状の姿の把握 • 自社の現状のビジネスモデルと強みとなる知財・無形資産の把握・分析を行い、自社の 現状を正確に把握する。 (↑強み分析等の手段としてのIPランドスケープ等)

    ii. 重要課題の特定と戦略の位置づけの明確化 • メガトレンドのうち自社にとっての重要課題を特定したうえで、注力すべき知財・無形資 産の投資・活用戦略の位置づけを明確化する。 iii. 価値創造ストーリーの構築 • 自社の知財・無形資産の価値化がどのような時間軸でサステナブルな価値創造に貢献 していくかについて達成への道筋を描き共有化する。 iv. 投資や資源配分の戦略の構築 • 自社の現状の姿と目指すべき姿を照合しギャップ解消のための投資や経営資源配分 等の戦略構築しその進捗をKPI設定等で適切に把握する。 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  15. 知財・無形資産ガバナンスについて 21  7つのアクション(続き) v. 戦略の構築・実行体制とガバナンス構築 • 取締役会で知財・無形資産の投資・活用戦略の充実した議論の体制整備、社内の 幅広い関係部署の連携体制の整備等に取組む。 vi.

    投資・活用戦略の開示・発信 • 法定開示資料の充実だけでなく任意の開示媒体、広報活動、事業見学等も効果的 に活用し知財・無形資産の投資・活用戦略を開示・発信する。 vii. 投資家等との対話を通じた戦略の錬磨 • 投資家や金融機関その他の主要なステークホルダーとの対話・エンゲージメントを通じて 知財・無形資産の投資・活用戦略を磨き高める。 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  16. 知財・無形資産ガバナンスについて 22  社内における連携体制・人材育成(企業知財部の在り方) • “これまで、知財に関する課題は知財部門に任せればよいという意識が強く、しかも、社内 における知財部門のスコープが技術や特許に偏っているなど、経営戦略を支える力が弱かっ たことが、知財・無形資産の投資・活用戦略が経営戦略・事業戦略の中心に位置づけら れてこなかった大きな要因となっていたと考えられる。” •

    “社内において知財・無形資産の投資・活用戦略の構築・実行を支える体制としては、例 えば、経営企画部門、事業部門、知財部門といった部門が中心になり得ると考えられる。 このような部門、組織が中心となり、社内の幅広い関係部署と連携しながら、知財・無形 資産の投資・活用戦略の構築・実行を支えていく体制の構築が不可欠である。” 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf 知財部門のスコープ拡大による 広義の「知財」戦略の推進の実現性?
  17. 知財・無形資産ガバナンスについて 24  知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等に期待される役割 • “企業が自社の知財・無形資産の強みを分析・評価し、それをいかに競争力の強化につな げていき、その維持・強化のために戦略的な投資を行っていくかを検討する上で、こうした観 点からの課題の評価分析支援を行う知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等 の機能の活用は有効。” ←企業向けコンサル

    • “企業が開示・発信する知財・無形資産の投資・活用戦略を、投資家や金融機関が効果 的に活用することを可能とするためには、企業が公開している知財・無形資産等を含む情 報を評価・分析し、投資家・金融機関等に可視化した情報データとして提供したり、評価 分析を支援する知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等の機能の活用があり 得る。” ←投資家向けデータサービス • “AIによるビッグデータ解析も交えて、知財・無形資産活用に関する分析・評価サービスを 提供している企業が出てきており、気候変動等の環境制約の下でも⾧期的にプラスの企 業価値を可能とする知財・無形資産の分析・評価を提供しようとしている。今後、ESG投 資の高まりや、今般のコーポレートガバナンス・コード改訂が追い風となって、評価・分析サー ビスの需要が喚起され、こうした知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等のクラ スターが育成されることが期待される。” 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  18. 知財・無形資産ガバナンスについて 25  知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等に期待される役割(続き) • “弁理士、弁護士、会計士等も、コンサルティング機能を備えることで、こうしたクラスター の一角を形成し、企業の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築や実行に貢献してい くことが期待される。” • “知財・無形資産の専門調査・コンサルティング会社等のクラスターは、企業が開示・発信

    する情報や外部のデータ等を分析し、改訂コーポレートガバナンス・コードや本ガイドラインを 踏まえた企業の知財・無形資産の投資・活用戦略に基づく取組状況を明らかにすることで 、投資家や金融機関等が企業の取組を適切に評価できるようにする環境を整備することも 期待される。” 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0(概要) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline/pdf/shiryo2.pdf
  19. 知財・無形資産ガバナンスについて 26  知財プロフェッショナルとしてのアプローチ(例) • 技術・知財権への投資効果向上  研究開発テーマから競争力強化・業績向上(成⾧性・収益性)までのロジック/ストーリ ーの把握(構築支援含め)とそれへの寄与を意識した知財活動 

    投資効果の検証(考え方含め)・今後へのフィードバック  無形資産としての技術・知財権の棚卸とメリハリ対応(不要資産の処分、重要資産の最 大活用)  保有する技術・知財権の相対価値可視化、新規投資テーマ選定への示唆出し • その他の無形資産戦略への貢献の可能性  人財、ブランド、顧客関係、等 投資 資産形成 競争力の 獲得・維持 業績向上 これまでも言われてきたテーマの重要性を 改めて再確認
  20. 価値共創ガイダンスについて 29  投資家との対話について • 基本原則5【株主との対話】 • [考え方] • 「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」の策定を受け、

    機関投資家には、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な 「目的を持った対話」(エンゲージメント)を行うことが求められている。 • 上場会社にとっても、株主と平素から対話を行い、具体的な経営戦略や経営計画など に対する理解を得るとともに懸念があれば適切に対応を講じることは、経営の正統性の 基盤を強化し、持続的な成⾧に向けた取組みに邁進する上で極めて有益である。また 、一般に、上場会社の経営陣・取締役は、従業員・取引先・金融機関とは日常的に接 触し、その意見に触れる機会には恵まれているが、これらはいずれも賃金債権、貸付債 権等の債権者であり、株主と接する機会は限られている。経営陣幹部・取締役が、株 主との対話を通じてその声に耳を傾けることは、資本提供者の目線からの経営分析や 意見を吸収し、持続的な成⾧に向けた健全な企業家精神を喚起する機会を得る、と いうことも意味する。 投資家との対話フレームワーク「価値共創ガイダンス」へ
  21. 価値共創ガイダンスについて 30  経産省による定義・意義 • “「価値協創ガイダンス」とは、企業と投資家を繋ぐ「共通言語」であり、企業(企業経営者) にとっては、投資家に伝えるべき情報(経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等)を 体系的・統合的に整理し、情報開示や投資家との対話の質を高めるための手引です。” → 企業による情報開示における考慮(中期計画、統合報告書、有価証券報告書、等)

     経緯 • 2017年5月公表 • 2022年改訂予定?(2021年12月に改訂案議論)  構造 • 全体図(フレームワーク)+個別解説 企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス」(価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 - ) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ESGguidance.html
  22. 価値共創ガイダンスについて 32 4.2.2. 技術(知的資本)への投資 34. 広い意味での技術(知的資本)は、企業が競合と差別化し、競争優位を確かなものにする ための源泉である。研究開発や事業開発、生産、物流、販売、サービス提供に至るまで、企 業における技能や知識、ノウハウ等の暗黙知を形式知化し、イノベーションにつなげていくこと は、企業にとって重要な経営課題である。 35.

    投資家が企業の競争力を評価する上で理解すべきことは、当該企業の競争優位を左右す る技術が競合他社と比較してどのように優れているのか(勝てるのか)、あるいは現時点では 劣後している場合、どのぐらいの速さでどのようにそれを克服するのか、そのためにどのような戦 略投資を行うのかということである。 36. 企業にとって、一般的な情報開示のみならず、工場見学や技術説明会等、投資家との様々 な接点を通じて自社の知的資本が生み出す価値に対する理解を得る機会を利用することも 重要である。 37. 競争優位の軸となる技術(知的資本)は、企業の事業領域や産業によって異なるが、以 下では多くの企業に関連する研究開発及び IT・ソフトウェア投資に関する開示や対話におい て重要な点を示す。 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)(2017年5月公表) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance.pdf
  23. 価値共創ガイダンスについて 33 4.2.2.1.研究開発投資 38. 研究開発投資をどのように競争優位につなげ、⾧期的かつ持続的な価値向上に貢献する技 術資産としていくかという戦略は、企業経営者の重要な意思決定であり、投資家が⾧期的な 視点から企業を評価するために理解すべき事項である。 39. 他方、研究開発投資の収益・企業価値への貢献(研究開発効率)については、研究が複 数の開発に波及するなど因果関係が複雑なこと、基礎研究では製品等に至らないこと、収益

    が実現するまでに時間がかかること等客観的な評価が難しい面がある。 40. 投資家が研究開発投資を評価する上で重視するのは、それがどのようにビジネスモデルの中に 位置づけられているかということである。例えば、研究開発費の総額だけでなく、セグメントごと の研究開発費や研究開発テーマの市場性、バリューチェーン上のポジション変化、強みの源 泉(研究者の専門性や数等)等を示す客観的事実や投資回収時期を判断する材料が 示されることは有益である。 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)(2017年5月公表) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance.pdf
  24. 価値共創ガイダンスについて 34 4.2.2.1.研究開発投資(続き) 41. 投資の結果としての特許・ライセンス等に関しては、数だけでなく参入障壁を構築するビジネス モデル上有益かという「質」に関する情報を投資家は重視している。 42. これらの情報は、一般的に企業において把握されており、何らかの形で開示されていることも 多い。投資家が重視するのは、企業の競争条件に関わる機密情報等ではなく、これら情報 がビジネスモデルや戦略の中でどのように位置づけられ、どのような視座や事実を基に成果が

    評価され、経営判断と連動するのかである。 43. さらに、3.3.1.で示される「非連続(破壊的)イノベーション」への対応や、それを生み出す 観点からも、研究開発への投資は重要な要素である。このようなイノベーションの性質上、投 資段階での評価は難しいが、投資家にとって、研究開発の領域・テーマの背景にある社会課 題や市場の重要性、収益化に向けた具体的な目標、従来と異なる組織体制や方法論等が 示されることは有益である。 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)(2017年5月公表) https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance.pdf
  25. 価値共創ガイダンスについて 36 ステークホルダーを 惹きつける経営理念 の打ち出し 社会課題との関係 における機会や リスクの捉え方 業界俯瞰とポジショニング 競争優位の源泉

    成長戦略に影響を 及ぼす主要リスク 中期的に目指すゴールと その手段としての 投資戦略(無形資産含む) 戦略の肝と その進捗の可視化 自社として保有すべき 事業の見極め
  26. 価値共創ガイダンスについて 38  価値共創ガイダンスの有用性・活用 • 本来の目的は、投資家と企業との対話・戦略議論のフレームワーク • 知財プロフェッショナルにとっても、自社・クライアントの企業戦略分析・課題抽出・企画提案 にも活用可(3C分析等の汎用的なビジネスフレームワークとも整合) •

    多くの企業がこれら要請を意識した情報開示を進めており、 公開情報からの定性情報の 入手も一定程度可能となっている(中期経営計画、統合報告書、有価証券報告書等) • 経営者の言語を用いた対話の試みによるコミュニケーションの促進
  27. まとめ 40  資本市場の動向 • コーポレートガバナンスの実効性向上へ向け投資家との対話(エンゲージメント)の要請 • 対話のフレームワークの一例としての価値共創ガイダンス • 将来の競争優位性の先行指標としての無形資産戦略への注目

    • その現れとしてのCGC改訂・知財・無形資産ガバナンスガイドライン  知財プロフェッショナルとしての活用 • 自社・クライアントの経営層の悩み事(=経営課題)の理解 • 自社・クライアントの経営戦略・ビジネスモデルの把握・議論のフレーム • 知財活動を無形資産投資・活用戦略の一環と位置付けることによる課題抽出・対応 • 経営者の共通言語の活用によるディスカッション・戦略提言のレベルアップ