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中国女子のリオ五輪金メダル獲得の理由を戦術面から検証する ~「2mの長身選手がいたから優勝した...

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December 14, 2024
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中国女子のリオ五輪金メダル獲得の理由を戦術面から検証する ~「2mの長身選手がいたから優勝した」は本当なのか? ~

日本バレーボール学会 第22回大会(2018/03/18)
一般研究発表 演題番号 No. 6

作成者|縄田 亮太

動画でご覧になりたい方は、こちらをご参照ください → https://www.youtube.com/watch?v=Bny68ZW4754

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December 14, 2024
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Transcript

  1. (※4)縄田 亮太, 大沢 仁:ディグフォーメーションがディフェンスに及ぼす影響に関する検討 - 2014年世界選手権女子決勝中国チームのデータから - バレーボール研究, 21(1), 87,

    2017 (※3)縄田 亮太, 木曽 司, 川村 貴彦:アタックの攻撃参加人数とファーストタッチの返球位置から見る攻撃の構成に関する検討 - 2014年世界選手権女子(決勝)アメリカ対中国戦の中国チームのデータから - バレーボール研究, 20(1), 86, 2016 中国女子チームがロンドン五輪からリオ五輪の間の4年間 で、戦術面のアップデートを遂げているとすれば、それを具 体的に検証することが、東京五輪に向けて、日本バレー界喫 緊の課題であるはずだ。 我々は昨年・一昨年と、2014年世界選手権女子大会の中 国チームを対象に、オフェンス・ディフェンス戦術を分析報 告している(※3,4)ことから、今回2016年リオ五輪での中国 チームを分析対象としてデータ収集、過去のデータと比較検 討することで、郎平氏再就任後の4年間の間に、中国が戦術 面でどのようにアップデートされたかを具体的に検証し、日 本シニア代表チームが進むべき方向性を明らかにすることを 目的に、本研究を行うこととした。
  2. 方 法 Photo by FIVB 【2014年世界選手権】 銀メダル 平均身長 186.7±8.0cm リベロを除いた平均身長

    188.2cm 【2016年リオ五輪】 金メダル 平均身長 188.8±8.1cm リベロを除いた平均身長 190.4cm *参考 【2012年ロンドン五輪】 日本に敗れベスト8 平均身長 184.3±8.9cm 【2008年北京五輪】 銅メダル 平均身長 187.2±5.6cm 2014年世界選手権決勝と、リオ五輪決勝トーナメント(準々決勝・準決勝・ 決勝)の中国チームのオフェンス・ディフェンスに関するデータを比較検討
  3. 結 果 と 考 察 ① 「時間差攻撃」から「シンクロ攻撃」へ ~ サイドアタッカーの1stテンポ化 ~

    Up date 2014年から2016年にかけて、3人参加が基本は変わっていなかった。 しかし、攻撃参加人数がアタック成績に及ぼす影響は異なっていた。 このような結果になったのは、攻撃参加するサイドアタッカーの助走動作 が変化し( 2ndテンポから1stテンポへ )、シンクロ遂行率が高まったこ とが寄与していると考えらえる。
  4. 2014 世界選手権 決勝 攻撃パターン 結果 攻撃参加 4人 攻撃参加 3人 攻撃参加

    2人 攻撃参加 1人 得点 3 16 13 5 失点 6 1 継続 3 13 5 8 内訳 6 35 18 14 8.2% 47.9% 24.7% 19.2% レセプションアタック時における攻撃パターンと成績 50.0% 45.7% 72.2% 35.7% 4人 3人 2人 1人 アタック決定率 50.0% 28.6% 72.2% 28.6% 4人 3人 2人 1人 アタック効果率 17.1% 7.1% 4人 3人 2人 1人 アタック失点率 3人参加が基本であるが、参加人数を増やすことで効果が上がらず 0.0% 0.0%
  5. 攻撃パターン 結果 攻撃参加 4人 攻撃参加 3人 攻撃参加 2人 攻撃参加 1人

    得点 11 55 19 4 失点 1 7 7 1 継続 9 47 16 10 内訳 21 109 42 15 12.4% 54.4% 24.4% 8.8% 52.4% 50.5% 45.2% 26.7% 4人 3人 2人 1人 アタック決定率 47.6% 44.0% 28.6% 20.0% 4人 3人 2人 1人 アタック効果率 4.8% 6.4% 16.7% 6.7% 4人 3人 2人 1人 アタック失点率 3人参加が基本で、参加人数を増やすことで効果を上げている 2016 リオ五輪 決勝トーナメント レセプションアタック時における攻撃パターンと成績
  6. 攻撃パターン 結果 シンクロ 4 シンクロ 3人 シンクロ 2人 シンクロ0人 得点

    2 17 失点 15 継続 1 0 25 内訳 0 1 3 57 0% 1.5% 4.4% 94.1% 決定率 0.0% 66.7% 29.8% 失点率 0.0% 0.0% 26.3% 効果率 0.0% 66.7% 3.5% 攻撃パターン 結果 シンクロ 4 シンクロ 3人 シンクロ 2人 シンクロ 0人 得点 13 12 6 35 失点 2 1 2 14 継続 3 3 7 45 内訳 21 19 18 110 12.5% 11.3% 10.7% 65.5% 決定率 72.2% 75.0% 40.0% 37.2% 失点率 11.1% 6.3% 13.3% 14.9% 効果率 61.1% 68.8% 26.7% 22.3% 2014 世界選手権 決勝 2016 リオ五輪 決勝トーナメント トランジションアタック時における攻撃パターンと成績 トランジションアタック時でもシンクロ攻撃を目指している シンクロ人数別の比較
  7. 結 果 と 考 察 ② 「Aパスだけ」から「Bパスでも」へ ~ 脱Aパス主義 ~

    Up date 攻撃参加3人の状況は、2014ではAパスの範囲で実現していた。 一方、2016ではAパスの範囲に加え、Bパスの範囲でも実現している。 つまり、シンクロ3を実現するのにAパス依存ではないことが示唆された。 また、Bパスが「in system」となったことで、結果としてシンクロ遂行率 の高まりにも寄与していると考えられる
  8. 以上-未満 色 25%以上 20% - 25% 15% - 20% 10%

    - 15% 5% - 10% 5%以下 なし シンクロ/参加者 シンクロ/参加者 シンクロ/参加者 4 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E 3 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E 2 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E Game Game Game 距離1 5 距離1 2 11 13 1 距離1 1 6 3 距離2 1 距離2 1 5 3 距離2 3 3 3 距離3 距離3 距離3 距離4 距離4 距離4 距離5 距離5 距離5 距離6 距離6 距離6 距離7 距離7 距離7 距離8 距離8 距離8 SLOT SLOT SLOT 攻撃参加4人 攻撃参加3人 攻撃参加2人 攻撃参加人数ごとのレセプション返球位置 2014 世界選手権 決勝 3人参加はAパスの範囲内で遂行されている また、2人参加の範囲も包含されている
  9. シンクロ/参加者 シンクロ/参加者 シンクロ/参加者 4 7 6 5 4 3 2

    1 0 A B C D E 3 7 6 5 4 3 2 1 0 A B C D E 2 7 6 5 4 3 2 1 0 A B C D E Game Game Game 距離1 5 9 2 1 距離1 2 7 10 23 13 4 距離1 1 3 6 12 8 3 距離2 2 距離2 6 7 7 3 距離2 1 1 6 2 1 距離3 距離3 2 1 距離3 1 1 距離4 距離4 距離4 距離5 距離5 距離5 距離6 距離6 距離6 距離7 距離7 距離7 距離8 距離8 距離8 SLOT SLOT SLOT 以上-未満 色 25%以上 20% - 25% 15% - 20% 10% - 15% 5% - 10% 5%以下 なし シンクロ4 シンクロ3 シンクロ2 シンクロ人数ごとのレセプション返球位置 2016 リオ五輪 決勝トーナメント シンクロ3はA・Bパスの範囲内で遂行されている また、2人参加の範囲も包含されている
  10. 結 果 と 考 察 ③ 「カニさん(※5) 」から「スイング」へ ~ より速く、より高く

    ~ http://www.fivb.org/TechnicalEvaluation/Competitions/wch2014women/intr o Up date (※5)バレーボールクロニクル, 2017 FIVB の Technical Evaluation によると、2014年世界選手権女子大会の上位4 チームは「中国を除いてスイングブロックが浸透していた」と報告している。一方、 2016ではポジションに関わらず、スイングブロックの徹底がされ、世界標準である スイングブロックがチームのコンセプトとして、徹底されていることが示唆された。
  11. 2014 世界選手権 決勝 27.2% 72.8% スイング カニさん スイング カニさん 試技

    割合 試技 割合 ミドル 21 36.2% 37 63.8% ミドル以外 7 15.6% 38 84.4% 合計 28 27.2% 75 72.8% 移動を伴うブロックの移動方法(移動を伴わないものは除く) ポジション別の試技および割合 移動方法の割合 → ポジションに関わらず、カニさんブロック
  12. 79.0% 21.0% スイング カニさん スイング カニさん 試技 割合 試技 割合

    ミドル 23 69.7% 10 30.3% ミドル以外 26 89.7% 3 10.3% 合計 49 79.0% 13 21.0% 移動を伴うブロックの移動方法(移動を伴わないものは除く) ポジション別の試技および割合 移動方法の割合 2016 リオ五輪 決勝のみ → ポジションに関わらず、スイングブロックを徹底
  13. 結 果 と 考 察 ④ 「ボックス」から「ペリミター」へ ~ 相手のシンクロ攻撃に対する守り ~

    2014ではボックス&オフブロッカーマンアップでの対応であったが、 スイングブロックが浸透したことによって、バンチリードの効果が表れ、 3枚ブロックやストレートを意図的にあけてスパイクを誘導するような 形が見受けられた。それに連動するように、2016では相手の攻撃に位 置に関わらずペリミターで対応しており、トータルディフェンスが効果 的に機能してることが示唆された。 Up date
  14. 本研究はVolleyball Labのグループ研究の 一環として行われたものです Volleyball Labとは バレーボールを客観的な根拠に基づき理解すること (Evidence-based Volleyball :EBV)を 目的とするグループです.

    Volleyball Labメンバー ・浅野 暢介 ・大沢 仁 ・小田部 剛 ・垣花 実樹 ・川村 貴彦 ・北口 剛一 ・後藤 浩史 ・午坊 健司 ・佐藤 文彦 ・住田 達二 ・角力山 淳 ・辻村 茉莉江 ・手川 勝太朗 ・縄田 亮太 ・原 まなみ ・三上 岳 ・三村 泰成 ・百生 剣太 ・渡辺 寿規