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論文紹介:Link recommendation algorithms and dynamics of polarization in online social networks

論文紹介:Link recommendation algorithms and dynamics of polarization in online social networks

ウェブ・ソーシャルメディア論文読み会
https://sites.google.com/view/web-socialmedia-study/home
で発表した資料です

元論文は
Link recommendation algorithms and dynamics of polarization in online social networks
Santos, F. P., Lelkes, Y., & Levin, S. A., PNAS, 2021
https://doi.org/10.1073/pnas.2102141118

Genki Ichinose

May 19, 2023
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Transcript

  1. Link recommendation algorithms and dynamics of polarization in online social

    networks Santos, F. P., Lelkes, Y., & Levin, S. A. PNAS, 2021 https://doi.org/10.1073/pnas.2102141118 静岡大学 学術院工学領域 数理システム工学系列 准教授 一ノ瀬元喜 第5回ウェブ・ソーシャルメディア論文読み会 2023年5月18日
  2. 論文のまとめ • 一言まとめ • オンラインの社会ネットワークで共通の友達を持つ人に優先してリンクを つなげていくと意見の分極化が進んでしまう • もう少し詳しく 1. 政治的な意見はオンラインの社会ネットワークに影響される時代

    2. そのネットワーク上のつながりはリンクの推薦アルゴリズムによって形成される 3. ネットワークの構造的類似性(どれだけ共通の友達を持つか)に基づいた リンク推薦アルゴリズムの意見ダイナミクスへの影響をシミュレーションモデルで調査 4. 従来の研究では,意見の類似性に基づいたリンクの張替えで意見の分極化を議論 本研究では,構造的類似性のみに基づくリンクの張替えで意見の分極化が起こり うることを発見 分極化の例としてここに 論文のFig.1のCのグラ フとネットワークの図を載 せていた
  3. はじめに • 政治的な意見は オンラインの社会ネットワークに影響される時代 • 意見の分極化が起きてしまうことが重大な問題 • 誰と新たにつながるかは,オフラインの時代には人々の意思によって決定 • オンラインの時代には,プラットフォーム側がリンク推薦アルゴリズムによって

    誰と新たにつながるかに介入 • 例:Facebookの知り合いかもやTwitterのおすすめユーザー • このリンク推薦アルゴリズムによる新たなつながりの形成が意見の分極化に 与える影響を知りたい • リンク推薦アルゴリズムはいろいろ考えられるが,ここでは構造的類似性に基づいて 新たなつながりを提案 意見分極化の例としてThe Network Science of Echo Chambers and Why It Mattersの図をここに載せてい た
  4. モデル:意見の更新 • ネットワーク上の𝑁個体が社会的影響を受けて意見を時間的に変更する • 各個体𝑖は意見𝑥𝑖 ∈ (−∞, +∞)を持つ • 𝑥𝑖

    の符号:あるトピック(例:ワクチン接種)に対して 賛成(+)か反対(ー)か • 𝑥𝑖 の大きさ:賛成とか反対の強さ • 意見の変化 • 意見は隣人からの(平均的な)影響を受けて変わる 𝑥𝑖 𝑡 + 1 = 𝛾𝑥𝑖 𝑡 + 𝐾 ෍ 𝑗 𝑁 𝐴𝑖,𝑗 tanh 𝛼𝑥𝑗 𝑡 /𝑘𝑖 • グループ内では次第に1つの意見に収束 つながっている人からの影響 • 0 < 𝛾 < 1:安定化効果.時間が経つに連れ意見が弱まる • 𝛼:社会的影響.𝛼 = 0なら他人に影響されない. 𝛼が大きい→社会的影響大 • −1 < tanh 𝑥 < 1 : 意見の社会的インパクトの非線形的な効果 (中立に近い意見に敏感) • 𝐴𝑖𝑗 :隣接行列,𝐾:社会的な相互作用の強さ,𝑘𝑖 :𝑖の次数
  5. モデル:ネットワークの更新 • 個体はリンクを切って新しいリンクを形成する • これは通常,個体の意思に基づいて行われる. がしかし,SNSはリンク推薦アルゴリズムにより, 新しい接続を提案してくる • 本研究では,共通の友達の数(構造的類似性)という 推薦アルゴリズムを考える

    (実際のSNSもこの推薦アルゴリズムを使っている) • 個体𝑖は以下の確率で個体𝑗に新しいリンクを張る 𝑠𝑖,𝑗 = 𝑁𝑖 ∩ 𝑁𝑗 𝜂 / ෍ 𝑘 𝑛 𝑁𝑖 ∩ 𝑁𝑘 𝜂 • 従来のモデルでは意見𝑥に基づいてリンクの切り貼り.本研究では𝑠𝑖,𝑗 に基づいて • 𝑁𝑖 ∩ 𝑁𝑗 :𝑖と𝑗の共通の友達の数 • 𝜂:構造的類似性の重み.𝜂 = 0なら類似性関係なくランダムにリンク張る. 𝜂 > 0→類似性が大きいほどリンクを張られやすくなる • 毎ステップ,切られるリンクはランダム.新しいリンクの接続は𝑠𝑖,𝑗 の確率で.
  6. 結果:𝛼と𝜂が大きいと意見の分極化が起こる • 結果の説明 • A:𝛼が小さい(他人から影響が少ない)ので, 意見は中立に収束 • B:𝛼を大きくすると一方の意見に過激化 (グループ内では次第に意見は1つに収束するので) •

    C:さらに𝜂を大きくすると複数のグループに分かれる 各グループで意見は収束→意見の分極化が発生 • 2つのパラメータを変える • 𝛼:社会的影響 • 𝜂:構造的類似性の重み 設定 • 𝑁 = 100, 𝛾 = 0.99, 𝐾 = 0.1 • 初期の意見 • [−1,1]の一様乱数 • 初期のネットワーク • WSのSWネットワーク (貼り替え確率0.1) • 赤は𝑥が+で,青は- 色の濃さは|𝑥| 論文のFig.1をここに載せていた
  7. 結果:𝛼と𝜂の影響の全体像 • 軸 • 𝛼:社会的影響 • 𝜂:構造的類似性の重み • 分極化と過激化の尺度 •

    分極化:𝑥の標準偏差 • 過激化: 𝑥の絶対値の平均 • 結果の説明 • 𝛼が大きいほど意見の過激化が進み, さらに𝜂が大きくなると意見の分極化が発生 論文のFig.2をここに載せていた
  8. モデルの拡張:反対意見を忌避することの影響 • これまでのモデル 𝑥𝑖 𝑡 + 1 = 𝛾𝑥𝑖 𝑡

    + 𝐾 ෍ 𝑗 𝑁 𝐴𝑖,𝑗 tanh 𝛼𝑥𝑗 𝑡 /𝑘𝑖 • 反対の意見を聞くと中立に収束していくことを仮定 (𝑥𝑖 と𝑥𝑗 の符号が異なると0に近づくので) • 最近の研究で,反対の意見に触れると,返って元々の意見に固執する という指摘→バックファイア効果 • どっちの方向性もあるからどっちもモデルに取り入れる • 収束化ノードを𝜌,分極化ノードを1 − 𝜌の割合でモデルに導入 • どっちになるかは初期設定で決まり,時間的に変わらない • これまでのモデルは𝜌 = 1と同じ • 反対意見に対する異質性を取り入れたモデル 𝑥𝑖 𝑡 + 1 = 𝛾𝑥𝑖 𝑡 + 𝐾 ෍ 𝑗 𝑁 𝐴𝑖,𝑗 tanh 𝛼𝜎𝑖 𝜎𝑗 𝑥𝑗 𝑡 /𝑘𝑖 • ※こちらの式を使うのは分極化ノードのみ 𝜎𝑖 :𝑥𝑖 の符号 𝜎𝑖 𝜎𝑗 =++= + =+−= − =−+= − =−−= +
  9. 結果:反対意見を忌避すると分極化が進む • 軸 • 𝜂:構造的類似性の重み • 𝜌:収束化ノードの割合 • 𝜌 =

    1だと全員,反対意見を聞くと 中立に近づく • 𝜌 = 0だと全員,反対意見を聞くと より自分の意見を強める • 結果の説明 • 𝜌が小さい,つまり分極化ノードの割合が高いほど, 意見の分極化が進む • 𝜌が入ってくると複雑なことが起きますが,説明が難しいので省略 • 反対意見を忌避すると分極化が進んでしまうが,別のリンク推 薦アルゴリズム(構造的に似てないノードにつなぐ)を使うこと で分極化を減らすことができる(データは付録に載ってる?) 論文のFig.4をここに載せていた 論文のFig.5をここに 載せていた
  10. まとめ • ネットワーク上で他人の影響を受けて意見を変更を行う シミュレーションモデル • 構造的類似性(どれだけ共通の友達を持つか)に基づく リンク推薦アルゴリズムの意見の分極化への影響 • モデル上では,共通の友達を多く持つ人に優先してつながっていく 操作が行われる

    • 他人の影響を受けて,さらに構造的類似性の重みが強いと 意見の分極化が促進されてしまう • 反対意見を忌避する人がいると意見の分極化はさらに進んでしまう • ただし,構造的に似てないノードにつなぐリンク推薦アルゴリズムによって これは防げる 分極化の例としてここに 論文のFig.1のCのグラ フとネットワークの図を載 せていた