IIJmio meeting 33 5Gと端末にまつわる問題 https://techlog.iij.ad.jp/archives/3049
©Internet Initiative Japan Inc. 1株式会社インターネットイニシアティブ西田 聖IIJmio meeting 335Gと端末にまつわる問題
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©Internet Initiative Japan Inc. 2自己紹介• 氏名: 西田 聖(にしだ たかし)• 出身: 大阪府• 経歴– 2016年入社。法人向けモバイルサービスの開発・運用を担当していた– 2020年 ~ 現在「5G」や「ローカル5G」を中心とした、モバイルに関する各種の技術検証・調査対応に従事中
©Internet Initiative Japan Inc. 3もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 4もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 5はじめに• 「5G」:サービス・端末 両面で身近に– IIJmio をはじめとした各社にて「5G」サービス提供中– 5G対応端末も増えてきた• 5G には大きく分けて SA/NSA 2 種類の方式があるが、現在キャリア網で主流なのは後者– SA/NSA 方式の詳しい説明は、過去の IIJmio meeting 資料をご参照くださいhttp://techlog.iij.ad.jp/archives/2745http://techlog.iij.ad.jp/archives/2798– IIJmio でご提供しているのも、NSA 方式の 5G です。• NSA 方式の 5G では、その仕組みゆえに通信品質悪化・アンテナピクト表示に問題が発生することがあります。– 今回は問題の概要と、実機調査にて分かってきたことをご紹介します。
©Internet Initiative Japan Inc. 6もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 75G NSA 通信のしくみについておさらい• 5G NSA とは– Non-Stand-Alone– 既存 4G 網を利用することで、5G 機能の一部を早期展開可能とした方式• 既存 4G 網に、5G 基地局(gNB)を追加して実現– 端末は、4G 基地局 (eNB) ・5G 基地局 (gNB) の両方を使うこととなる• …このことが、この後ご紹介する問題につながってきます。
©Internet Initiative Japan Inc. 8もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 95GNSAと通信品質悪化について• こんなことはありませんか?– 「5G」って表示されてるのに、特定の場所で何だか遅い・パケ詰まる....– 私も個人的に(未だに)困っている事象– 局所的に発生するので、基地局-端末間で何かが起きていそう• 原因は「セルエッジでの通信品質劣化」?– セルエッジ=gNB からの電波が弱い状況で、通信品質が劣化する– この品質劣化が、実利用に本当に影響するのか?どれほど影響するのか?について調べてみましたのでご紹介します。4Gエリア5GエリアgNBeNBgNB のセルエッジにいる端末
©Internet Initiative Japan Inc. 105GNSAと通信品質悪化について• 調査手法– KDDI網利用– 2022年の某日、IIJ飯田橋オフィス近辺にて調査– スマートフォンにてファイルダウンロードを実施しながら移動– 通信が詰まる・遅くなる場面を再現、スループットと電波受信状況の関係を調査• 調査には、IIJmio meeting 7 でも利用した、Meritech 社のSigma-LA/PA ツールを利用しました。(端末の Qualcomm チップから各種情報を取得・解析可能)
©Internet Initiative Japan Inc. 115GNSAと通信品質悪化について• 調査結果– 4G 側 RSRP ほぼ一定の状況で、5G 側 SS-RSRP の悪化とスループット低下が連動。5G 側 SS-RSRP が悪化すると、「むしろ4G利用の方が速い」状況に陥る。→ 「セルエッジでの通信品質劣化」が確かに、実利用に影響していそうスループット5G 側受信状況(SS-RSRP)4G 側受信状況(RSRP)4G 4G5GNSA5GNSA4G/5GNSA種別
©Internet Initiative Japan Inc. 12もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 135GNSA と 端末の電波強度表示• 5GNSA の通信品質には、5G 側の電波受信状況が大きく影響していそう• ....が、ここでふと疑問がでてきた。– 通信が遅い状態でもアンテナピクトの電波強度には変化がない。なぜか?– そもそも、5GNSA 通信時のアンテナピクトは何を表しているのか?• 4Gと5Gのどちらの状況?それともどちらでもない何かか?• 実機・ソースコード(AOSP)の両面で調査。結論: 「5GNSA 通信時のアンテナピクトでは、 5G側の電波受信状況の判断は難しい」– 具体的な調査方法や結果をこの後紹介します。
©Internet Initiative Japan Inc. 14実機調査• 調査方法– アンリツ社 基地局シミュレータ(5G NR対応)を利用– シミュレータからの電波出力を様々に変化させ、端末画面のアンテナピクトと、端末での 4G/5G 受信状況(アプリで取得)の関係を調査。• 5G の受信状況を一定にして、4G 受信状況を様々に変化させる• 4G の受信状況を一定にして、5G 受信状況を様々に変化させるMT8000A(5G用)MD8475B(4G用)シールドボックス試験端末・Android 1台4Gアンテナ5Gアンテナピクト表示 とアプリで取得した受信状態(後述)を比較
©Internet Initiative Japan Inc. 15実機調査• 実機調査結果– 今回試験で利用した Android 端末においては、5GNSA 通信時も、4G側の受信状態が表示されている。• 5G 側の受信状態が(ほぼ)一定の状態で、4G 側の受信状態を悪化させると、アンテナピクトが連動して変化する• 4G 側の受信状態が(ほぼ)一定の状態で、5G 側の受信状態を悪化させても、アンテナピクトに変化はない
©Internet Initiative Japan Inc. 16調査結果• ソースコード調査– Android Open Source Project で公開されているソースコードを調査。– CarrierConfig に、関連する制御パラメータあり。– デフォルト値は true(=4G 側の電波状況を表示)• 市販の Android 端末(8端末)に設定されている値を調査、”false” は無し• 独自実装が存在する可能性もあるが、あえて 5G 側を表示している端末は無さそう。• では、何か代わりとなる方法はあるのか?→ 次頁へ続く/*** There are two signal strengths, NR and LTE signal strength, during NR (non-standalone).* Boolean indicating whether to use LTE signal strength as primary during NR (non-standalone).* By default this value is true.** @hide*/public static final String KEY_SIGNAL_STRENGTH_NR_NSA_USE_LTE_AS_PRIMARY_BOOL ="signal_strength_nr_nsa_use_lte_as_primary_bool";実機調査も踏まえると、5GNSA 通信時のアンテナピクトは(5G側ではなく)4G 側の受信品質を表していると思って良さそう
©Internet Initiative Japan Inc. 17端末での電波状態確認方法• Androidの場合– 様々なアプリあり。• 右記例は「LTE Discovery」• (SS-)RSRP が参考になる。経験的に -90dBm 以下だと状況が悪い。– 注意点: 使えるか使えないかは端末依存• Android に存在する API で値を取ってくるもの• 8 端末中、2 端末は表示 NG• iPhone の場合– 通常のアプリで状態確認できるものは見当たらなかった– みんな大好きフィールドテストモード• (iOS 15 の場合) All Metrics → Nr Rach Attempt 配下に「cell_rsrp」が存在。こちらで 5G 側の状況確認ができていそう• 「フィールドテストモードを開いた後、機内モードONOFF」しないと、最新状態に更新されない!?
©Internet Initiative Japan Inc. 18もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 19「5G」表示と端末実装問題について• 話は変わって....• 5G NSA における、端末の RAT 表示に関してお話しします。• IIJmio meeting #27 でも少し触れましたが、5G NSA利用時、どの状態のとき、画面に「5G」が表示されるか?は、端末の実装に依存します。• どうしてそういったことになるのか。発生原理、および実機で調べてみた結果をご紹介します。
©Internet Initiative Japan Inc. 20(前提知識)4つの無線状態• RAT 表示: 無線区間の状態• 5G NSA では、無線区間で eNB と gNB を併用することから、4 つの状態が存在する– ①: 5GNSA 対応(Upper Layer Indicationあり)の eNB にて、4G 通信している(RRCConnected)– ②: eNB に加えて gNB も利用、5G 通信している(RRC Connected)– ③: 5G 利用可能だが待受け状態(RRC Idle)– ④: NSA 対応の eNB のみ利用可能、待受け(RRC Idle)eNB(4G) gNB(5G)ULIあり通信中(RRC Connected)待受け(RRC Idle)①eNB(4G) gNB(5G)ULIあり②eNB(4G) gNB(5G)ULIあり③eNB(4G) gNB(5G)ULIあり④どの場合に「4G」となり、どの場合に「5G」となるかは端末実装依存キャリア端末と、一部 SIM フリー端末では実装が異なる
©Internet Initiative Japan Inc. 215G表示の端末実装• キャリア 5G NSA 端末の実装– 「国内事業者間で合意済み」とされている実装• 「既存帯域のNR化に伴うユーザー保護方策の検討について」– https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/5th_generation/technical/02kiban14_04000801.html– gNB で通信できる可能性があれば、「5G」– ただし gNB を使った通信ができない場合は「4G」eNB(4G) gNB(5G)ULIあり通信中(RRC Connected)待受け(RRC Idle)①eNB(4G) gNB(5G)ULIあり②eNB(4G) gNB(5G)ULIあり③eNB(4G) gNB(5G)ULIあり④4G5G 5G5G
©Internet Initiative Japan Inc. 225G表示の端末実装• 一部 SIMフリー端末でみられる実装– 4Gのみで通信している場合(①)も「5G」と表示している。eNB(4G) gNB(5G)ULIあり通信中(RRC Connected)待受け(RRC Idle)①eNB(4G) gNB(5G)ULIあり②eNB(4G) gNB(5G)ULIあり③eNB(4G) gNB(5G)ULIあり④5G5G 5G5G同じ基地局・同じ周波数での通信でも、端末によって 「4G」「5G」の表示が異なる
©Internet Initiative Japan Inc. 235G表示の端末実装• 実機調査– 2022 年 3 月、市販の SIM フリーAndroid 端末(8端末)の挙動を独自調査– 5端末が「一部 SIMフリー端末でみられる実装」、3端末が「キャリア 5G NSA 端末の実装」となっていた機種名 実装種別Nubia RedMagic6 一部 SIMフリー端末でみられる実装ASUS Zenfone8 キャリア 5G NSA 端末の実装AQUOS sense6 SH-M19(64GB) キャリア 5G NSA 端末の実装XPERIA 10 III Lite 一部 SIMフリー端末でみられる実装Google Pixel 5a (5G) 一部 SIMフリー端末でみられる実装Xiaomi 11T Pro キャリア 5G NSA 端末の実装moto g50 5G 一部 SIMフリー端末でみられる実装OPPO A55s 5G 一部 SIMフリー端末でみられる実装
©Internet Initiative Japan Inc. 24もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 25「4G落ち」現象について• 5G NSA 端末を利用時、こんな経験はありませんか?– 最初は RAT 表示が「5G」だった– 通信させると、少したってから「4G」に変わる• いくつか原因は考えられますが、RAT表示のタイムラグが関係しているかもしれません。次頁で紹介します。5G 4G
©Internet Initiative Japan Inc. 26RAT 表示変化のタイムラグ• RAT 表示の画面反映にはタイムラグあり– 検証している限り、RAT 表示のピクトへの反映には、おおむね 10-15 秒程度掛かっている• それにより、下記のような事象が発生する。– ふと、スマホを開いた時には「5G」が表示される– 通信してしばらくすると、場所を変えてないのに「4G」に変化このケースでは、「後から4Gに落ちた」ように見えるが内部的には ④→①への遷移。実は最初から 5G 通信ができていない。eNB(4G) gNB(5G)フラグあり通信中(RRC Connected)待受け(RRC Idle)①eNB(4G) gNB(5G)フラグあり②eNB(4G) gNB(5G)フラグあり③eNB(4G) gNB(5G)フラグあり④4G5G 5G5G
©Internet Initiative Japan Inc. 27もくじ• はじめに• 5G NSA の仕組みについておさらい• 5GNSAと通信品質悪化について– 「通信が遅い」とき、何が起こっているのか?– 5GNSA と 端末の電波強度表示• 「5G」表示と端末実装問題について– 「5G」と表示していても、5G通信していない?– 「4G落ち」現象について• まとめ
©Internet Initiative Japan Inc. 28まとめ• 5G NSA に関する、下記様々な問題と関連する調査結果をご紹介してきました。– 5G NSA の仕組みについておさらい• 「4G 基地局と 5G 基地局の両方を使う」故に、様々な問題が発生する。– 5GNSAと通信品質悪化について• 5G側の電波受信状態が、5G NSA 通信時の通信品質を決める一つのカギ。• ....だが、ピクト表示だけでは 5G 側の電波受信状態を判断できない。– 「5G」表示と端末実装問題について• 端末の実装によって、どのような状態で「5G」と表示するかが異なる• 表示変化にはタイムラグがあり、「4G落ち」時は最初から 5G 通信出来ていない場合があるエンドユーザーの皆様が安心・快適に5Gを使っていただけるようIIJでは今後も様々に調査検証を進めていきます。