IIJmio meeting 33 無線通信の世界~第一弾:無線通信とは?~ https://techlog.iij.ad.jp/archives/3049
1© Internet Initiative Japan Inc.テクニカルトーク① 無線通信の世界~第一弾:無線通信とは?~株式会社インターネットイニシアティブIIJmio meeting 332022年9月17日(土)MVNO事業部 ビジネス開発部 ビジネス開発課石川 陽介
View Slide
2本シリーズについてテーマ「携帯電話の技術に触れてみる」携帯電話技術の進歩を紐解き移動体通信技術について聴講者の皆様と楽しく学ぶことをテーマとします第1回目:移動体通信第0~1世代目:無線通信とは?第2回目:移動体通信第1~2世代目:検討中…と全5回のシリーズ物になります第1回目は「無線通信とは?」・無線通信が求められた背景、どのような原理や仕組みで機能しているか解説していきます
3もくじ無線通信とは?AM無線機通話システムと変調電波がなぜ空間を伝わっていくのか通信方式の変化と次の世代に求められたこと
4通信と無線通信通信とは情報を伝送する事• 情報を相手に確実に伝えるようにする技術 = 通信技術• 情報を伝えたい状況に応じて技術を変化させ様々な通信技術が開発されました糸電話半鐘のろし無線通信とは?音(空気の震え)を糸に伝えて、音を伝える大きな音(空気の震え)を、遠くの人へ伝える煙を用いて、視覚で情報を伝える有線通信無線通信無線通信
5無線通信の課題無線通信において、課題や要求が生まれてきました• 環境ノイズ :周りがうるさい、暗い(闇)、障害物の陰、雨• 混信/盗聴 :特定の相手にだけ伝送したい• 新たな要求 :もっと遠くへ、もっと正確に情報を伝えたいうるさいなぁ!!半鐘大きな音(空気の震え)を、遠くの人へ伝える空気、環境ノイズに課題暗くて見えないのろし 煙を用いて、視覚で情報を伝える光、障害物や環境ノイズに課題無線通信とは?
6電波の発見と通信への応用解決方法として電波が注目され通信に革命を起こしました• 音や光より環境に影響されにくい• さらに遠くへ、正確に届けることが可能に• 電波の特性を使用することで、確実に通信ができる半鐘のろし火事(という情報)を伝えたい所在(情報)を伝えたい情報を、電波で正確に伝える無線通信無線通信とは?
7もくじ無線通信とは?AM無線機通話システムと変調電波がなぜ空間を伝わっていくのか通信方式の変化と次の世代に求められたこと
8無線通信の歴史と今回の説明の背景1897年 無線に音声を乗せることに成功1914年 第一次世界大戦では無線通信システムが軍事技術として普及しかし、当時は大きな無線機が必要で、限られた人しか利用できませんでしたグリエルモ・マルコーニ氏Wikipediaアマチュア無線の歴史より引用1820(文政 3) ・アンペール、アンペールの法則を発見1833(天保 4) ・ガウス、ウエーバ(独)、最初の電磁的電信機製作1837(天保 8)・モールス(米)、符号式電信機を発明・クックとホイートストン(英)、5針式電信機を発明1864(元治 1) ・マクスウエル(英)、電磁界理論を発表し、電磁波の存在を予言1886(明治19) ・志田林三郎、隅田川で誘電式無線電信を実験1887(明治20) ・ヘルツ(独)、電磁波の存在を実証1890(明治23) ・ブランリー(仏)、コヒーラ現象を発見1891(明治24) ・逓信省電気試験所設立1895(明治28) ・マルコーニ(伊)、無線電信を発明1897(明治30)・逓信省電気試験所の松代松之助、無線電信機開発に成功・ブラウン(独)、陰極線管(ブラウン管)を発明1900(明治33) ・フエツセンデン(米)、無線電話実験成功1901(明治34) ・マルコーニ、大西洋横断無線電信実験に成功電波博物館 から引用 https://www.cleandenpa.net/museum/AM無線機通話システムと変調
9無線機と変調今回はこの無線機を紐解いてどのように無線通信ができるのか説明します• 構成部品が変わっても今の携帯電話と基本的な仕組みは同じ無線通信部分について説明するため、AM無線通話システムを例にご紹介いたします• 音による空気の振動を電波に変えて送るシステムと受信した電波を音に逆変換するもの• “AM”とは“Amplitude Modulation"の頭文字を取り日本語では「振幅変調」といいますここでは、電波がなぜ空間を伝わっていくか?の前に、変調の必要についてご紹介します電波を用いて通信するには専用の機械として、無線機が必要AM無線機通話システムと変調
10AM無線通話システムについて音声を電気信号に乗せた波と、信号発生器の波を変調器で混合し搬送波に乗せます(下図)• 信号発生器:一定周期で一定電圧を出力し搬送波を作る• 変調器:マイクと信号発生器の波をあわせるmio!電圧時間マイクの信号×電圧時間搬送波すごく早く振動=電圧時間変調後の信号拡大 拡大マイク 変調器増幅器送信器AM無線機通話システム 送信側の構成連続的な波形を変調することをアナログ変調と呼びます• アナログ:情報を連続的な量として扱うこと• 変調が電波を用いて通信する際に非常に重要な要素の一つマイク 変調器信号発生器信号発生器AM無線機通話システムと変調参考:AM変調計算式入力:m(t) 出力:s(t)s(t)=(1+m(t)) x c(t)c(t)=Acos(2πft+ φ) 搬送波
11変調が必要な理由と混信変調が必要な理由:搬送波と信号を混ぜ合わせ選択性を上げ、空間中で他の信号と混ざることを避けるため• 他の信号と混ざる状態は「混信」• 混信が生じると正しく情報を伝えることができないAM無線機通話システムと変調空気突撤劇!!退!!… ふむふむ突撤劇!!退!!…なんだぁ??突撃!!撤退!!…どっちだ??撤退!!突撃!!空間聞こえん…無線機買に行こう撤退!!突撃!!撤退!!突撃!!
12もくじ無線通信とは?AM無線機通話システムと変調電波がなぜ空間を伝わっていくのか通信方式の変化と次の世代に求められたこと
134つのキーワード 電波がなぜ空間を伝わっていくのか電荷共振現象周波数減衰
14電波が空間に出るには電荷というものが関わってきます• 電荷:プラスとマイナスの値を持つ粒子。動くことで電流が流れる• 電荷が動くことでそれまで静かだった空間に変化をもたらす• アンテナの上で電荷が移動 (変位電流が発生)することで周囲に磁界が発生• 電流に対して90度の角度で回転する力(磁界)が生まれる• 発生した磁界に対して、さらに電磁誘導が発生して電界が生まれる• この連鎖は理論上は果てしなく続いていくとされています• 電荷の移動で磁界と電界が交互に生じる波を合わせて電磁波と呼ぶ• 一般的には電磁波を電波(電磁界の波)と呼びます電荷と電磁波Wikipediaダイポールアンテナより引用電波がなぜ空間を伝わっていくのかこの電波の性質を表すために周波数というものがあります電流磁界アンペアの右ねじの法則
15電磁波の性質を表す式振幅と波長と周波数は次のように定義されています• 振 幅:波の1周期間での最大変位量の絶対値• 波 長:波の1周期(山と谷)の長さ• 周波数:1秒間で繰返される波の周期の回数• 周波数と波長は相互に変換可能• 1/2波長の長さのアンテナから効率的な電波発射ができる• この長さなら電荷がアンテナの上で最も激しく動く電圧時間波長 λ1秒0秒1秒間に繰返される周期の数=周波数振幅電波が空間を伝わる性質に周波数が大きな影響を与えます電波がなぜ空間を伝わっていくのか
16空間中の電波と減衰減衰:電波の空間中での振る舞いとして電波の強さが弱まる現象• 電波が減衰する要因• 空間の状態 :雨、建物、金属物などにぶつかり減衰• 電波の特性 :受信器までの距離の2乗に比例して減衰• 周波数特性 :周波数の2乗に比例して減衰• 特に周波数による特徴はアンテナ設計にも影響• 低周波より高周波が非常に減衰しやすい• 波長の関係から低周波のほうがアンテナが長く大きくなる800MHz2.1GHz28GHz約360m約27m 約950m約-90dBm で受信できる距離は…電波がなぜ空間を伝わっていくのか特定の周波数の電波を効率よく集めるため、共振という現象を使います
17共振現象共振現象:同じ共振周波数の音叉を並べて片方を叩くと、叩いていない側も振動します• 同じ波である電波を選択的に受信するためにも共振現象を利用電波の場合、アンテナの共振周波数を調整する1) アンテナの長さを調整(物理的な限界あり)2) 電気回路として調整共振周波数をあわせる回路を同調回路と呼ぶ• ラジオの選局で「バリコン」を調整しているのが同調搬送波に対し共振する周波数に調整することで、特定周波数の電波を効率的に拾うことが可能• 受信機では受信した電波を送信と逆の流れで音声に変換電波がなぜ空間を伝わっていくのか
184つのキーワードでふりかえりましょう 電波がなぜ空間を伝わっていくのか電荷 共振現象周波数 減衰• 電波は光と同じ仲間(電磁波)です。光と同じく真空中でも伝搬します。• 電波(電荷が移動することで発生する波)は、電界と磁界の時間的な変化(周波数で表される)が波として伝わるため、光同様周波数による様々な特性を有します。• また空間に多くの電波が飛び交っていても、共振現象という自然現象を用いて特定周波数の電波を効率よく集める事で、選択的に情報を伝えることができます。この時、その状態やその特性により減衰(弱くなる)しますが、受信後に増幅する事で解消します。• 音は真空状態や宇宙空間では伝えることができません。空気の波であり、空気がない環境では波が起きないためです。• 光は直進性が高く高速ですが、障害物があると情報を伝えることができません。ただ、障害物さえ無ければ星がきらめくように数万光年と言った長距離であっても届きます。電波がなぜ空間を伝わっていくのか
19電波の発見と通信への応用:今回の紹介を経て• 音や光より環境に影響されにくい• さらに遠くへ、正確に届けることが可能に• 電波の特性を使用することで、確実に通信ができる情報を、電波で正確に伝える無線通信電波がなぜ空間を伝わっていくのか電波を使った無線通信って、めっちゃ便利ですよね!▷ 光とは異なる性質を持ち、暗闇や障害物など環境ノイズの影響を受けにくい▷ 光と同じ仲間であるが、反射や回折など様々な特性で届きやすい▷ 共振現象を用いて特定周波数の電波を集める事で、選択的に情報を伝えることができる
20もくじ無線通信とは?AM無線機通話システムと変調電波がなぜ空間を伝わっていくのか通信方式の変化と次の世代に求められたこと
21携帯電話へとつながっていく 通信方式の変化と次の世代に求められたこと携帯電話
22携帯電話へとつながっていく無線機やトランシーバー(片方向通信)から携帯電話に成るためには→ 双方向で通信するための複信方式の検討が必要→ 基地局(中間ポイント)が必要1) 端末の上り周波数と下り周波数を同じにできる2) 基地局が無いと、AB間で通信する為に、Aの上り周波数はBの下り周波数Aの下りはBの上りになってしまう → 普及機が作れない通信方式の変化と次の世代に求められたことA B
234つのキーワードをつかって、なぜ空間を伝わるのかここに簡潔に書きたい携帯電話の技術に触れてみる携帯電話:片方向通信ではなく、双方向通信が必要TDD(時分割)1種類の搬送波周波数を使用し、送受信の時間をズラして通信する方法このような通信を半二重といいますトランシーバーは、送信終了時に他へトークンを渡し同時に送信することを防ぐと言うルールがあるFDD(周波数分割)2種類の異なった搬送波周波数を使用し、各システム毎に搬送波周波数を変える方法このような通信を全二重といいます上りと下りに別な搬送周波数を使います4つのキーワードをつかって、なぜ空間を伝わるのかここに簡潔に書きたい通信方式の変化と次の世代に求められたこと偶数分 送信奇数分 送信周波数A周波数B
24無線通信への要求無線通信は有用な技術のため、様々な要求が生まれました• 双方向通信 :トランシーバーから電話へ。複信方式の開発• テキスト(デジタルデータ)の効率的な通信 :変調方式の変化• 多重化 :多くの人が利用できる、周波数の効率的利用• 小型化 :省電力やバッテリーなど多くの付帯技術の発明・進化アナログ無線電話システムはデジタルデータの伝送には不向き• アナログだと伝送速度に限界が…遅い(約300bps※程度の速度)※カンサスシティスタンダードで記録したオーディオテープの読み出し速度が300bps程度ですデジタルデータ伝送では より混信を避ける工夫が必要• 音声は混信した場合、かろうじて人間が聞き分けることが可能• デジタル情報が混信した場合、送った”0/1”の組合せが変わってしまうため意味が変わるデジタルデータの伝送効率向上と電波の利用効率向上という要求に応えるため携帯電話は1G、2G、3G、4Gそして5Gへと進化していきます通信方式の変化と次の世代に求められたこと
25Voice+TEXTVoiceVoice+TEXT+Picture+VideoVoiceTEXTPictureVideoStreamOnlineGameetc.無線通信と携帯電話の進化変調方式の進化は携帯電話の進歩とも言える• 初期無線電話~携帯電話第1世代ではアナログ変調です• これは音声を伝えることが当時の無線電話の役割だったからですそして無線電話を多くの人が使える社会ニーズが生まれました• 「特定の組織しか使わない」から「一般に普及する」必要性があります• 「大型無線設備」から「誰でも持ち運びできる端末」必要性がありますそこで第1世代携帯電話システムが誕生しました• 小型で大勢の人が通信できる要件を満たせる技術が生まれました携帯電話についてはdocomo様のサイトより借用トランシーバーはhttps://ja.wikipedia.org/wiki/SCR-536より借用AM/FM FM BPSK QPSK/16QAM 64QAM/256QAMVoice通信方式の変化と次の世代に求められたこと
26第1世代携帯電話第1世代携帯電話で多くの携帯電話基礎技術が実装• 使用する周波数と地域を分割した小ゾーン方式• 基地局同士でのハンドオーバー機能• 電波帯域を有効に使うマルチチャネルアクセス無線これらの技術が登場し、いよいよ私達に近い携帯電話が登場してきます• 次回はいよいよ第1世代携帯電話の世界に突入しますhttps://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd111110.html総務省 通信白書令和2年より引用通信方式の変化と次の世代に求められたことhttps://nendai-ryuukou.com/keitai/年代流行より引用
27おまけ:無線の勉強をしてみようと思う方におすすめな教材無線技術を勉強してみようと思う方に、おすすめの書籍と教材のご紹介です書籍:上級ハムになる本無線通信の仕組みや各要素などが一冊でコンパクトにまとまっており入門用としてオススメ教材:ワンダーキット(共立プロダクツ) 電子AMラジオキットDSPを使ってないキットがオススメ。ワンチップ化されてしまっているキットだと回路図と構成図を見比べて学習するというのが難しいため
28参考文献・参考サイト参考文献絵でわかる電磁気学 | 橋本 正弘基礎通信工学|福田明RFワールドNo.09 今さらきけない電波伝搬のABC参考サイト総務省 通信白書令和2年より引用https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd111110.html情報通信学会 小形情報端末を作り出したエレクトロニクス より引用https://app.journal.ieice.org/trial/100_9/k100_9_896/index.htmlWikipediaアマチュア無線の歴史より引用https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E7%84%A1%E7%B7%9A%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2電波博物館 資料編:電波の歴史 から引用https://www.cleandenpa.net/museum/gaku/g02.htmlWikipediaダイポールアンテナより引用https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8AWikipedia SCR-536より引用https://ja.wikipedia.org/wiki/SCR-536年代流行 より引用https://nendai-ryuukou.com/keitai/イラストいらすとや よりhttps://www.irasutoya.com/
29IIJ-BKLT999-0001