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それって技術の仕事!? 仕様の輻輳問題(SS2023in仙台 FPセッション)

それって技術の仕事!? 仕様の輻輳問題(SS2023in仙台 FPセッション)

本 FP では,多くのエンジニアが経験する「仕様の輻輳問題」を取り上げて議論する.仕様の輻輳を「エンジニア個人に対して仕様にまつわる調整事項がエンジニア個人に集中し,開発進捗に大きな影響を生じる状態」と定義した.仕様の輻輳の状態が悪化すると,エンジニアの「心理的輻輳」を引き起こし,それが更に仕様の輻輳を悪化させる.仕様の輻輳は多くの現場でエンジニア個人が解消しようとしているが,本来は PM(Project Manager)の
仕事である.べき論はあるが,日々の実際としてエンジニア個人はどう対応すべきだろうか.エンジニア側かつ文化や人間的側面から議論する.

Akira Ikeda

June 13, 2023
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Transcript

  1. 自己紹介 池田 暁 • 所属:クオリティアーツ(個人事業主) • 経歴: • 情報通信や医用,自動車分野でソフトウェア品質を中心に業務(社員数多) •

    2002年~:日立グループ3社 • 日立情報通信エンジニアリング,日立ハイテク,日立Astemo • Web分野で業務(社員数小~中) • 2021年~:ビズリーチ • 2023年~:マネーフォワード • 社外活動: • SS2023実行委員会 • NPO法人ASTER(ソフトウェアテスト技術振興協会) • AFFORDD(派生開発推進協議会) • NaITE(長崎IT技術者会) ←9/15に長崎で技術イベント「長崎QDG」やります 2
  2. 背景と課題 • 近年,ITプロジェクトの対象が複雑化し,工数ベースの請負作業から,DX など対象分野のスキルや,機械学習/仮想環境のスキルなど,スキル重視ベ ースへと変化している.高度なスキルを持つエンジニア(コアエンジニア と呼ぶ)パフォーマンスを引き出すことがプロジェクト管理の中で重要な 課題となっている. • コアエンジンニアがジレンマに陥り,そのパフォーマンス低下を引き起こ す仕様の輻輳問題は,実装段階以前にステークホルダー間で調整し,契約

    や仕様のコミットが必要な様々な要件を決められず,先送りして実装段階 へ投げることが主な原因と推測される.我が国独特のあいまいな契約や工 程完了のコミット文化が影響している. • 文化や組織,人間的な原因を含んでおり,技法や技術だけで解決できない 課題であり,かつ状況が深刻化することでプロジェクトや企業の開発競争 力にも影響することから,FPのテーマとして取り上げる. 6
  3. 概要・・・変化 • 機能の増大と複雑化が拡大 • その原動力:OSSなど権利制約が緩和され流用技術の拡大 • スキルが「作る」(自由度)から「連携と設定」(制約)に変化 • 仕様作りに大きな変化【技術的輻輳】 •

    要件と実現方法とのギャップ拡大 • 全体が解るコアエンジニアでも難しいタスク • 見えてる世界の差が拡大【文化的輻輳】 • 利用者,調達者,営業,などステークホルダ • 設計者,実装者,テスト設計,品質保証,などなど 7
  4. (参考)仕様の輻輳を引き起こす事象 の例 • 仕様に関する,発注者と受注者での認識が異なっている • 開発とは同期していない,ビジネス面からのリリース変更や機能追加のさ しこみが生じる(確定していた要求が変わる) • 前工程で要求が固まっていない,(顧客が)誤って承認してしまった等の 理由で,あとで要求の変更や追加,優先度付の変更が発生する

    • 顧客側の手続きや納期的な面からの調整 • 仕様の実装のために複数の顧客担当者との調整が必要な場合 (例えば,サブシステム同士と繋げるためのインタフェース実装) • ステークホルダーの連携不十分による,異なった, 同期しない仕様変更の発生 11
  5. 仕様の輻輳を抑えるのは本来PMの仕事だが • 顧客との,仕様の内容変更や優先度・重要度,スケジュールやリソース配分等の調整は 本来PMが実施するべきことであり,プロセスで解決するべき問題である.だがエンジニ ア個人は,その生真面目さにより個人技で解決を図ろうとして沼にはまってしまう. • 仕様の輻輳が起きた場合はその解決をPMやステークホルダーに調整や判断を委ねる. • 委ねるためには,仕様の対立や輻輳における全体像を理解し, 然るべき対策に分け,そのうえで委ねる必要がある.

    • もちろん仕様の輻輳そのものも理解する必要があるし, テークホルダーが仕様の輻輳にどのようなかかわり方をしているか, さらにはその大きな背景である,国内特有の受発注文化等も. • 理解することが多いため,モデル化等の方法を使い全体理解を しやすくすることが必要. モデルがあることでステークホルダー間での仕様の輻輳の抑制について 議論がしやすくなる. 14
  6. 再掲:概要・・・変化 • 機能の増大と複雑化が拡大 • その原動力:OSSなど権利制約が緩和され流用技術の拡大 • スキルが「作る」(自由度)から「連携と設定」(制約)に変化 • 仕様作りに大きな変化【技術的輻輳】 •

    要件と実現方法とのギャップ拡大 • 全体が解るコアエンジニアでも難しいタスク • 見えてる世界の差が拡大【文化的輻輳】 • 利用者,調達者,営業,などステークホルダ • 設計者,実装者,テスト設計,品質保証,などなど 本FPセッションでは こちらの観点を中心に議論 15
  7. 問題は何か • ITエンジニアの深刻な課題 • 自身の分野外との(対人)交渉スキル問題 • 現象:「仕様の輻輳」に陥る • 主任務が遂行できない •

    異文化遭遇で「狼狽える」 • 業務やプロジェクトへの影響 -> 失敗 • 本人への影響 -> 心理的疲労 17
  8. 提案は • 職業人としてのITエンジニア訓練 • 特にリーダ予備役に対して • ステークホルダとの対峙力 • 2つの要素 •

    1.メンタルマッチョ/防具 • 2.専門性による貢献/発動スキル 会場議論ではこちらを議論 19
  9. 1.メンタルマッチョ/防具 • 1.1メンタルマッチョ • ITエンジニアのメンタル.マッチョ化 • かなり困難 • メンタルマッチョ人材のITエンジニア化 •

    こっちの方が現実的 • 但し,ITスキルの深さより交渉人ロール • 1.2 防具 • 心理的危険を防護するスキル • 異文化交流スキル • 異なる文化・習慣への対応スキル • 分別スキル • 仕様化などITの世界 • ビジネス交渉や社会習慣(世渡り 20
  10. 2. 専門性による貢献/発動スキル • 2.1 協働感と役割 • まず仲間感を作るスキル • × エンジニア感を出す=異質のアピールでまずい

    • まずは仲間感 • ステークホルダとの価値共有 • そのなかでの役割,貢献の主張 • 全体像の把握と相手の立ち位置認識が必要 • 2.2 発動スキル • 相手から見て特別な貢献スキル • 主業務である仕様化スキル(対外態度) • 対ステークホルダとの対峙線(役割) • 特に,内側・・・全体像を理解し • 何が,何時迄に,いくら(資源)で可能か • 実践上の見積もり 21
  11. まとめ • 職業人としてのスキル不足 • 現材の人材育成:専門スキルばっかし • 結果,同種スキル集団内でしか働けない • つまりアシスタント養成? •

    OJTで成熟できるはずだが • 結果的には残念な状況 • 実学としてのエンジニアリング • 技術リーダ育成 • 職場経験型の破綻 -> 変化に対応できていない • どんなスキルが必要でその習得方法は? • 技術面 • 全体像の把握,シンセシス • リーダシップ面 • 異文化交流,変革型 22
  12. 議論の進め方 • 議論3つを時間を切って進めます • 白熱してても時間満了で次の議論に移ります • 輻輳の構造として,エンジニア(チーム)と相手(外)とする • チーム内での輻輳は今回議論スコープ外 (ex.エンジニアvsエンジニア,エンジニアvsマネージャ)

    • 発表者と発言者の1vs1の議論ではなく,会場にいる全員での議論とな るように発言者はお気遣いください • 特に,当事者であるエンジニアの方々の積極的な発言を期待します (若手の方、ぜひ!) • 関連した新たな視点の提供や問題表明も歓迎です 25
  13. 議論2 メンタルマッチョ/防具 に関して • 1.1メンタルマッチョ • ITエンジニアのメンタル.マッチョ化 • かなり困難 •

    メンタルマッチョ人材のITエンジニア化 • こっちの方が現実的 • 但し,ITスキルの深さより交渉人ロール • 1.2 防具 • 心理的危険を防護するスキル • 異文化交流スキル • 異なる文化・習慣への対応スキル • 分別スキル • 仕様化などITの世界 • ビジネス交渉や社会習慣(世渡り 27
  14. 議論3 専門性による貢献/発動スキル について • 2.1 協働感と役割 • まず仲間感を作るスキル • ×

    エンジニア感を出す=異質のアピールでまずい • まずは仲間感 • ステークホルダとの価値共有 • そのなかでの役割,貢献の主張 • 全体像の把握と相手の立ち位置認識が必要 • 2.2 発動スキル • 相手から見て特別な貢献スキル • 主業務である仕様化スキル(対外態度) • 対ステークホルダとの対峙線(役割) • 特に,内側・・・全体像を理解し • 何が,何時迄に,いくら(資源)で可能か • 実践上の見積もり 28
  15. 今後の議論 • 「仕様の輻輳」「心理的輻輳」の定義 • 「仕様の輻輳」「心理的輻輳」のモデル表現 • モデルの活用検討や活用のためのスキル定義 • スキル獲得のための教育 •

    その他関連する事柄 これらをSSのWGで継続議論をしていきます! 関心がある方はぜひ議論に加わっていただきたいです! 30
  16. 続きは,WGにて • WG6: エンジニアの処世術 ~企業人の側面~ • リーダ: 池田 暁(クオリティアーツ),増田 聡(東京都市大学),金田

    直純,衣 笠 俊,横山 晃生(NDKCOM) • 概要 (200 ~ 300 字): • 日本企業の多くは,業種業務で独特の雇用文化・風習を持っており,エンジニア に対しても常識として,その風習に従うことを暗黙に求めている.仕様を厳密に 決めないと仕事が進まないITエンジニアにとって,この風習に接する機会が少な いことから,様々なジレンマを生んでいる. • エンジニア側からは,心理的安全などの声が上がっているが,雇用側や発注側も 合理的な意思疎通ができない課題を抱えている.一種のダイバーシティ問題に属 すのかもしれないが,問題を整理し出口を求める. 31