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滑空スポーツ講習会2021 航空安全講習会 第1回/第2回 最近のATC事例および航空事故調査への対応について / jsa safety seminar 2021 ATC accident

JSA seminar
December 12, 2021

滑空スポーツ講習会2021 航空安全講習会 第1回/第2回 最近のATC事例および航空事故調査への対応について / jsa safety seminar 2021 ATC accident

公益社団法人日本滑空協会
2021/12/11、2022/01/22
講師 (公社)日本グライダークラブ 鈴木重輝

2022/01/24 ver04→ver05 に差し替えました
変更点
37ページ チャートを入れ替え、出典 JAPA様に修正
85ページ 重大インシデントの最初の3項目を更新

JSA seminar

December 12, 2021
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Transcript

  1. 板倉GF 読売加須GF 羽生GF 渡良瀬遊水地 谷中湖 G G G 11:59 離陸(Rwy33

    航空機曳航) 12:04 離脱(佐野上空2500ft) 上昇気流の強い条件下 館林、羽生方面を周回 13:03 古河上空で約5500ftに上 昇後、北に向かっていた 時 U680Aが正面から飛来 し、直上約6000ftを通過 した。 13:45 着陸(滞空1+46) G102航跡 See You Igc. file 7
  2. 百里 RJAH 入間 RJTJ U-680A航跡 Flight Radar 24 U-680A 飛行点検機

    (Flight Check Squadron) 入間基地に3機配備され自衛隊全基地の航空 保安無線施設の点検を行う。出典:航空自衛隊 8
  3. 古河 G 読売加須GF 谷中湖 高度 5428ft /1655m 速度 119km/h /

    64kts 高度 5900ft /1800m 速度 437km/h / 236kts 9
  4. 11

  5. 自衛隊パイロットの質問 1) 古河の上空で、こちらの機体は見えていたか? 2) 航空路Y588の存在を認識しているか。Y588は日光NDBから古河を 経由して大 宮に向かう航空路で、最低経路高度(MEA)は5000ft とAIPに記載されてい る。 3)

    板倉滑空場のグライダーの飛行エリアと高度は? グライダーパイロットの回答 1) そちらの機体は見えていた。 2) 区分航空図にあるY372 (MEA 7000)は認識しているが、Y588 記載されていな ので、AIP, TCAチャートで確認してみる。 3) 板倉滑空場から日光、筑波山方面へ飛び、高度は10,000ftへ達する。 自衛隊パイロット 航空路付近はMEAの500ft以下で飛んでもらいたい。エンジンの無いグライダーが長 距離、高高度を飛んでいるとは理解していなかっ た。見張りは重要なのでお互いに 気をつけよう。今回の事例は関係者に共有してほし い。 *和やかな雰囲気で再発防止のために情報交換でき、有意義だった。 着陸後しばらくして航空自衛隊入間基地の当該U680Aのパイロットからクラブに電話 があり、直接グライダーパイロットと話をしたいとのことで会話した。 12
  6. 板倉GF 入間AB NIKKO NDB AIP ENR 6 エンルートチャート Y588 MEA5000

    の記述あり(赤矢印が推定接近ポイント) 関宿GF 最低経路高度 MEA Minimum En-route Altitude 航空路、RNAV 経路、直行経路 および一部の洋 上転移経路の2 地点間に設定さ れる、IFRの航 空機が飛行でき る最低高度のこ と。航空保安無 線施設からの電 波の到達距離や 障害物からの距 離によって算出 される。 13
  7. 異常接近の定義 Definition of a “Near Mid-Air Collision” 航空機同士の異常接近を意味し、切迫度は接近した両機の相対速度や進 路により違うため、日本では明確な認定基準は設けていないが、米連邦航 空局FAAの定義は「半径150m・高度差60m以内」の接近。

    米空軍規則91ー223よる定義: 空中衝突を回避するために必要な急激 な回避操作を行った場合、またはそのような操作を行う可能性があっ た場合を異常接近と定義する。 [報告の義務] 航空法 第七十六条のニ 機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めた とき、その他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認 められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交 通省令で定めるところにより、国土交通大臣にその旨を報告しなけれ ばならない。 16
  8. 20

  9. 21

  10. 24

  11. 航空に使用される単位・数字 [AIM 273] VFR 機に対しては一般に 管制上の垂直間隔は 確保されないが、地表または水面から 900m (3,000ft) 以上の高度で巡航する場合は、

    原則 として表の高度を守らなければならない。 E BOUND W BOUND 1000ftの奇数倍 +500ft (2000ft間隔) 1000ftの偶数倍 +500ft (2000ft間隔) 巡航高度 VFR (1m=3.28ft 1ft = 0.3m) feet 高度 (Altitude) 25
  12. 12000ft 10000ft 8000ft 6000ft 4000ft FL280 FL260 FL240 FL220 FL200

    FL180 FL160 FL140 FL270 FL250 FL230 FL210 FL190 FL170 FL150 13000ft 11000ft 9000ft 7000ft 5000ft 3000ft 巡航高度 IFR 1000ft の奇数倍 (2000ft間隔) 1000ft の偶数倍 (2000ft間隔) W BOUND E BOUND 0° 179° 180° 360° 26
  13. 3500 4500 5500 5000 4000 E BOUND W BOUND VFR

    1000ftの奇数倍 +500ft (2000ft間隔) VFR 1000ftの偶数倍 +500ft (2000ft間隔) IFR 1000ftの偶数倍 (2000ft間隔) IFR 1000ft の奇数倍 (2000ft間隔) 27
  14. 1). 平日は自衛隊機、米軍機、事業機などの飛行が多いことに留意する。 2). 高度を維持できないグライダーとはいえ、航空路付近では他機が法定巡航高度で 飛来するということを意識し、また見張り義務、進路権を理解して対空警戒を十分に行う。 3). 空域を理解しVFRルールに則って飛行する。入域に許可や連絡が要る エリアおよび トラフィックの多いエリアを把握する。 管制圏、情報圏、PCA、飛行規制空域(訓練/

    試験空域、射撃訓練空域)、飛行制限空域、航空路、羽田到着経路など。 4). 滑空場から9km(5NM )圏外を飛行するときはトランスポンダを搭載する。 *管制区を飛行する航空機は、 VHF無線電話およびトランスポンダ (10,000ft / 3,050m 以上を 飛行する場合) の装備が義務 づけられている。 *日本グライダークラブ所属の高性能単座機・複座機は、トランスポンダを搭載してクロス カントリーを行なっているが、初級単座機のG102は未搭載。 トランスポンダを搭載することにより 1.管制機関からレーダーサービスを受けられる。 (ATCの習熟が必要) 2.TCAS(空中衝突防止装置)搭載機に容易に発見される。 29
  15. RJTU 宇都宮 CZ 4000 5nm TWR 126.2 RJTU 宇都宮 ACA

    RADAR 122.45 7000 4000 宇都宮進入管制区 RJTU Approach Control Area Class E G G 小山絹 妻沼 G 鬼怒川 G 真壁 ACA内にてVFR機は 連絡の義務はないが コンタクトすることで レーダーサービスを 受けられ、トラフィック 情報を得られる。 (トランスポンダが必要) 板倉 G 31
  16. 東京TCA 124.75 東京TCA 119.45 百里TCA 124.8 G 竜ヶ崎 SND 板倉

    大利根 G SYE 羽田 成田 東京TCA 10000 4000 関宿 横 田 進 入 管 制 区 TCA Terminal Control Area 進入管制区のうち、特にVFR機 の輻輳する空域で、VFR機に対 してTCAアドバイザリー業務が実 施される (トランスポンダが必要) ・レーダー交通情報の提供 ・レーダー誘導 ・位置情報の提供 etc. ★VFR機に交信の義務はないが 衝突防止のために積極的にコ ンタクトすべきである 百里TCA 124.8 東京TCA 124.75(羽田セクター) 119.45(成田セクター) G G 小山絹 真壁 百里 下総 霞ヶ浦 宇都宮 G 鬼怒川 32
  17. 33

  18. 34

  19. RJTT 22/23 ILS RJTT 22/23 LDA GODIN 8000 NOVEL 5000

    STEAM SCREW 4000 RJTT 羽田 笠間市 G G G G 関宿 板倉 小山絹 真壁 35
  20. 36

  21. 37 G G G G G G G G 小山絹

    霞ヶ浦 妻沼 関宿 読売加須 羽生 板倉 真壁 竜ケ崎 下総 大利根 宇都宮 筑波山 出典:日本航空機 操縦士協会 ホンダ G G 筑波 G 宝珠花
  22. 下総管制圏 3500ft 5000 4000 5000 守谷DME 5000 ・ ・ 関宿VOR

    G 関宿 KASGA (MHA 4000) NOVEL SCREW STEAM G 板倉 大利根 G 羽田 下総 スカイツリー 2080ft G 妻沼 羽田南風 運用時 ILS R/W22 ILS R/W23 到着経路 (STAR) G G 小山絹 真壁 38
  23. G G G G RJTJ 入間 RJTL 下総 ホンダAP 妻沼

    宝珠花 関宿 羽生 板倉 小山絹 SYE 関宿 VOR 読売加須 SCREW STEAM KASGA 4000ft G G G 羽田へ向かう 旅客機は SCREW付を 4000ft〜8000ft で通過する。 39
  24. ★VFR機は交信の義務 は ないが、 10,000ft以上 を飛ぶ時はコンタクトして レーダー交通情報を 得る事が望ましい。 (ただしトランスポンダ が必要) Incheon

    FIR 管制区管制所 ACC Area Control Center Control Area Class E “Everywhere” 日本領土上空(地表・水面から2000ft以上~上限高度なし) (QNH摘要区域内すべての区域). 図;AIM-J SAPPORO CONTROL TOKYO CONTROL FUKUOKA CONTROL ★管制区を飛行する航空機は、 VHF無線電話およびトランスポンダ (10,000ft / 3,050m 以上を 飛行する場合) の装備が 義務 づけられている (航空法 第60条ただし書きに より、許可を受ければVHF を 装備せず ともよい) 航空交通管制区 ★主にIFR機に管制業務が 提供され管制間隔が設定 される ( VFR機には要求に 応じて可能な範囲で交通情 報が提供される) KOBE CONTROL 41
  25. 横田進入管制区 YOKOTA Approach Control Area Class E 横田 VFR RADAR

    ADVISORY SERVICE AREA YOKOTA APPROACH SFC ~ 5500ft :120.7 6000~FL175 :118.3 FL230 FL180 12000 FL140 このエリアはTCAと同じ状況 の空域でVFR機が横田 APPROACH(USAF)から レーダーサービスを受けられる 8000 FL160 図;USAF 44
  26. 入間 6000 立川 3000 厚木 6000 横田 3000 調布 キャスナー

    1700 本田 G G G 関宿 妻沼 板倉 羽田 3000 ・ HYD 横田 VFR RADAR ADVISORY SERVICE AREA YOKOTA APPROACH 6000~FL175 : 118.3 SFC ~ 5500ft : 120.7 FL175 2000 FL155 7500 7500 2000 G 羽入 HIGH TRAFFIC AREA 2000ft~4000ft VFR機は異常な接近を 避けるため、特にこの エリアにおいては注意 して飛行すべきである。 横田アプローチからVFR レーダーアドバイサリー を受けることを推奨する。 レーダー・アドバイザリー ・サービスを受けない 航空機は1500ft以下で 通過することを推奨する。 High Traffic Area 4000 2000 AIP JAPAN 45
  27. 横田 厚木 羽田 調布 HONDA AIRPORT MENUMA GLIDER AREA 1900

    立川 入間 1000 MENUMA GLIDER & HONDA PARACHUTE JUMPING AREAS 妻沼および本田周辺には 入間・横田の出発・到着経路 があり、またGCAトラフィック パターンも近いので要注意 本田のPJは把握しており、降 下前にALL STATIONSへ 一方通信で注意喚起している 妻沼のグライダーの飛行も 把握していて、周辺を飛行 する航空機には注意喚起して いる(トランスポンダ非搭載の 機体もレーダーに捉えている) カスナー 図;USAF 46
  28. 板倉滑空場 民間訓練試験空域 関東甲信越 KK 2000ft 2500ft 4500ft G 入間・横田・厚木から Area

    H / Area 3 へ 入域・出域する軍用機 のルート(5000ft以上) 横田基地へ 進入・出発 する旅客機 のルート (5000ft以上) 妻沼空域 G 47
  29. KSUU Fairfield Travis AFB ・ GOT RJTU 宇都宮 G RJTY

    横田 36-18 板倉 妻沼 RJTF 調布 G Flight Radar 24 48
  30. 50

  31. 空中衝突防止装置 TCAS Traffic alert and Collision Avoidance System TCASはトランスポンダ(C/Sモード)を搭載し、作動させている機(相手機) を発見し、相対距離・方位・高度を求め、未来の相対位置を計算する。

    そして衝突の危険度に応じて、シンボルをNAVIGATION DISPLAY上に 表示し、警報音を発する。また回避操作のためのPITCH COMMANDを PRIMARY FLIGHT DISPLAY上に示す。 TCASはトランスポンダ非搭載機を発見することは出来ない。 トランスポンダ搭載機 TCAS 搭載機 51
  32. 自機 WIND WEATHER ECHO WAY POINT (FIX) ACTIVE ROUTE MAG

    HEADING TRACK ANGLE ND (Navigation Display) 54
  33. “TRAFFIC TRAFFIC” OTHER TRAFFIC PROXIMATE TRAFFIC TRAFFIC ADVISORY (TA) 予想最接近点の約40秒前

    空中衝突防止装置 TCAS Traffic alert and Collision Avoidance System 57
  34. OTHER TRAFFIC PROXIMATE TRAFFIC TRAFFIC ADVISORY (TA) 予想最接近点の約40秒前 “ CLIMB

    CLIMB CLIMB” RESOLUTION ADVISORY (RA) 回避指示 予想最接近点の約25秒前 “ DESCEND DESCEND DESCEND” 回避操作実施 空中衝突防止装置 TCAS Traffic alert and Collision Avoidance System 58
  35. 松本 VOR 117.6 MBE 松本 RJAF FE 2157ft 霧ヶ峰 FS

    130.625 FE 5414ft 事例 松本空港における旅客機と モーターグライダーの異常接近 2011-9-11 松本空港へVORアプローチにより 最終進入中の旅客機エンブラエル ERJ 170にモーターグライダーが 接近し、旅客機のTCASの回避指示 =RESOLUTION ADVISORY (RA) が発せられ、パイロットが回避操作を 行なった。 接近点 MBE 11NM G 59
  36. TCAS CLIMB !! “ CLIMB CLIMB CLIMB” RESOLUTION ADVISORY (RA)

    回避指示 高度約5050ft (対地高度2900ft) MBE 11NM 高度差 約200ft 事例 2011-9-11 松本空港における旅客機と モーターグライダーの異常接近 60
  37. 63

  38. 概要 個人所属アレキサンダー・シュライハー式ASK23B型JA2382機は、2008年(平成20年) 12月28日(日)、レジャーのため、飛行機曳航により板倉滑空場を離陸し、曳航機から離 脱した後、同滑空場に進入中、15時12分ごろ、最終進入経路下にある立木(約20m)に 右主翼が衝突して墜落し、機体を大破した。同機には、機長のみが搭乗していたが、死亡 した。 航空事故調査報告書 AA2009-8 運輸安全委員会(JTSB) 2009

    (平成21年) 9月18日 原因 本事故は、同機が同滑空場への最終進入中、高度が低かったにもかかわらず同機長が エアブレーキを開いたため、高度を失って最終進入経路下にある立木の頂部に同機の 右主翼が衝突したことにより、墜落したものと考えられる。同機長がエアブレーキを開い た理由は、明らかにすることができなかった。 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 64
  39. 接地帯 から450m ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 航空事故報告書 2006年 9月 訓練開始 2007年11月

    自家用上級合格 2008年 3月 ASK23Bグループへ入会 2008年12月28日 事故 当日がASK23B の初飛行 総飛行時間. 42時間 総発航回数. 148回 年齢 50歳 機長の経歴 66
  40. 板倉滑空場 渡良瀬川 東北道 ミカモ山 (760ft) 離脱3000ft 滑空場北約6km 佐野市 事故機推定飛行経路 14:59

    離陸 15:03 離脱(3000ft) 15:10 ダウンウインドコール 15:12 事故発生(飛行時間13分) 2008年12月28日(日) ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 68
  41. 2008年12月28日(日) 15:12 目撃者Bの証言 (教官) 自分が搭乗したDuo Discusの分解をしていた時、当該 ASK23Bが曳航されて離陸して行くのを見た。ピッチコン トロールが不安定な状態で、ややポーポイズし、曳航機 より低い位置についていたが、徐々に落ち着いて上昇し ていった。これでは進入時にピストで無線でアドバイズす

    る必要があると思い、Duoをトレーラーへ収納したあとピ ストへ歩いて向かった。 その時、すでにファイナルにいる同機を発見した。通常 ならファイナルの立木の3倍程度の高度で進入してくる のだが、同機の高度は静穏時より低く、ピストへ「低い!」 と叫んだが声は届かなかった。そして低いにもかかわら ず、エアブレーキが開いたのが見えたので、「あれっ!」 と目を疑った。エア!ブレーキはすぐに閉じたが、機首を やや上げるような動きの後、立木の頂部付近に右翼か ら接触し、右に回りながら垂直に落ち、バンという音が した。見ていた時間は10秒以内だった。 走ってピストに行くと数人のクラブ員がいたが、誰も事 故を見ていなかった。「グライダーが落ちたぞ!」と叫ん で、リトリーブ車にクラブ員一人と飛び乗り、堤防の側 まで行って車を降り、堤防を登って現場へ駆けつけた。 運輸安全委員会 航空事故報告書 70
  42. 15:38 栃木県下都賀総合病院へ搬送 17:50 外傷性胸部大動脈破裂により死亡と診断 2008年12月28日(日) 15:12 墜落 15:22 墜落現場 15:26

    救急車到着(事故から14分後)、警察パトカー数台、消防車も到着 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 75
  43. 2008年12月28日 ・病院での対応 :クラブ員3名が病院で待機し医師より説明を受けた ・機長の家族への連絡 ・現場の保全 ・東京航空局(羽田情報官)へ連絡: 航空事故報告書(法79条)、現場見取り図、現場写真の提出→航空事故と判定 運輸安全委員会と事故調査スケジュールの確認→翌29日(月)に事故調査を実施 ・マスコミ対応 (広報担当理事が対応)

    「これから運輸安全委員会や警察に協力して調査を進める予定。 詳細はそれから判明します」と答えておく。 ・保険会社へ連絡:鑑定人との交渉の段取り ・警察対応: 栃木県藤岡警察による事情聴取 (後述) 事故後のクラブの対応状況 JSC危機管理マニュアルに従い、分担して対応した ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 77
  44. a.機長は、次に掲げる事故または重大なインシデント (1028項e)が発生した場合 には、国土交通大臣への報告書を所定の様式により空港事務所もしくは空港 出張所または航空局安全部運航安全課に提出しなければならない。 もし機長が報告することができないときは当該航空機の使用者が報告しなけれ ばならない。 【法76条】 (報告の義務) AIM-J 1028

    ① 航空機の墜落,衝突または火災 ② 航空機による人の死傷または物件の損壊 ③ 航空機内にある者の死亡 (自然死,自己または他人の加害行為に起因する 死亡,航空機乗組員・客室乗務員または旅客が通常立ち入らない区域に 隠れていた者の死亡を除く) または行方不明 ④ 他の航空機との接触 ⑤ その他航行中の航空機が損傷 (発動機,発動機覆いまたはフェアリング等 のみの損傷を除く)を受けた事態 (当該航空機の修理が大修理に該当し ない場合を除く) 【規則165条の2 , 165条の3】 航空事故 ACCIDENT 78
  45. FAIB (空港事務所)へ報告: 1) 航空事故報告書(法79条)、現場写真、現場見取り図の提出。 *写真、見取り図は細部について再提出を求められることがある。 2) 情報官より航空事故、重大インシデント あるいは事故扱いとしない等の判定がなされる。 航空事故 ACCIDENT

    3) 航空事故または重大インシデントと判定された場合、運輸安全委員会(JTSB)と連絡を とり、事故調査のスケジールを決める。 *航空事故が発生するおそれがあると認められる事態 重大インシデント SERIOUS INCIDENT (事件、出来事、事態) *情報官は航空局内で協議して判定する。 *判定まで5〜6時間かかることもある。 *航空事故・重大インシデントとも運輸安全委員会による事故調査が行われる。 84
  46. e. 機長は、航行中他の航空機との衝突または接触のおそれがあったと認めたとき、 その他上記a項の事故が発生するおそれがあると認められる以下に掲げる事態 (自衛隊の使用する航空機について発生したものを除く) が発生した場合には定め られた様式により国上交通大臣にその旨を報告しなければならない【法76条の2】 1). 閉鎖中の滑走路、他の航空機が使用中の滑走路、指示された滑走路とは異なる 滑走路および誘導路からの離陸またはその中止 2).上記1)の掲げる場所または道路その他航空機が通常着陸することが想定されな

    い場所への着陸またはその試み 3).着陸時発動機覆い、翼端その他の航空機の脚以外の部分を地表面に接触させた 事態 4). オーバーラン、アンダーシュート、および滑走路からの逸脱 (航空機が自ら 地上走行できなくなった場合に限る) 5). 非常脱出スライドを使用して非常脱出を行った事態 6). 飛行中において地表面または水面への衝突または接触を回避するため航空機 乗組員が緊急の操作を行った事態 7). 発動機の破損 (破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る) 重大インシデント SERIOUS INCIDENT AIM-J 1028 85
  47. 8). 飛行中における発動機 (多発機の場合は2以上の発動機) の継続的な停止または 出力もしくは推力の損失 (動力滑空機の発動機を意図的に停止した場合を除く) 9). 航空機のプロペラ,回転翼,脚,方向舵,昇降舵.,補助翼またはフラップが損傷し、当該 航空機の航行が継続できなくなった事態 10).

    航空機に装備された1または2以上のシステムにおける航空機の航行の安全に障害 となる複数の故障 11). 航空機内における火炎または煙の発生および発動機防火区域内における火炎の発生 12). 航空機内の気圧の異常な低下 13). 緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏 14). 気流のじよう乱その他の異常な気象状態との遭遇、航空機に装備された製置の故 障または対気速度限界. 制限荷重倍数限界もしくは運用高度限界を超えた飛行に より航空機の操縦に障害が発生した事態 15). 航空機乗組員が負傷または疾病により運航中に正常に業務を行うことができなか った事態 16). 物件を機体の外に装着し、つり下げ、または曳航している航空機から、当該物件 が 意図せず落下し、または緊急の操作として投下された事態 17). 航空機から脱落した部品が人と衝突した事態 18). 前各号に掲げる事態に準ずる事態 【規則166条の4】 重大インシデント SERIOUS INCIDENT AIM-J 1028 86
  48. 2012年 4月7日(土)富士川滑空場 フジグライダークラブ所属 グローブ式グローブG109B型 (動力滑空機・複座) JA109B 着陸後の滑走路からの逸脱. 重大インシデント SERIOUS INCIDENT

    11:19 事故発生 11:40 東京空港事務所へ報告 写真、図面の送付を数回行う 機長、整備士も電話で報告 18:10 重大インシデントと判定される (報告の7時間後) 89
  49. <概要> フジグライダークラブ所属グローブ式グローブG109B型JA109Bは、 平成24年(2012)4月7日(土)、機長及び同乗者が搭乗し、慣熟飛行の目的で 富士川滑空場を11時10分に離陸した。同機は連続離着陸訓練のため11時19分、 同滑空場に着陸した際、機体が右に偏向し滑走路から逸脱してかく挫した。 同機は小破したが、負傷者はいなかった。 <原因> 本重大インシデントは、同機が着陸の際、右主脚が損傷したため機体が右に偏向 し、滑走路を逸脱してかく挫したことによるものと推定される。 右主脚が損傷したことについては、右主脚を固定していた内側取付部のナットの

    ネジ山が損傷して取付ボルトから外れ、外側取付部のみでは右主脚を保持できな くなり、更に前方外側ナットも同様に損傷して右主脚が後方に回転したことによ るものと推定される。 ナットのネジ山が損傷したことについては、使用されてい たナットが製造者が指定したものではなく、製造者の指定するナットよりも強度 が低かったため、機体が落着した際にナットの引張強度を上回る引張荷重が掛か ったことによるものと推定される。なお、指定されていないナットの取付経緯に ついては明らかにすることができなかった。 航空重大インシデント調査報告書 AI2013-4 2013-9-27 (1年5ヶ月後に公表) 93
  50. 2008年 12月29日(月) ・ 地権者(作業場所有者) ・ ASK23Bオーナー会 O氏 ・ 目撃者代表 B

    藤岡警察・運輸安全委員会による合同現場検証 1000-1240 (2+40) ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 94
  51. 目撃者Aの証言 (教官) さらに別のクラブ員とTWINⅡで飛行し、着陸後、機体 をリトリーブしながら、当該機がダウンウインドへ入っ たころから見ていた。この時の高度は、700ft以上に 見えたが風が強い状態にしてはやや低めと感じた。 速度は速く保たれていた。 ベースレグでの位置も通常時より遠くはなかった ようだったので、指定地(布板)にはむりだが、 滑走路内には着陸できると思った。

    ファイナルではやや低めだが、安定して進入して いた。突然2度エアブレーキが開くのが見え、 高度が低いのになぜエアブレーキを使うのかと 思った。いずれもすぐに閉じたがその影響で 機体は沈下し、2度目にはさらに沈下率が 増した。そして15:12 立木に接触して墜落した。 すぐピストへ行き、電話で救急車を要請した。 当日はグループ機の教官をしていたが、風が 強いので、クラブ員の動向にも注意を払っていた。 経験の浅いクラブ員がTWINⅡをソロで飛ぼうと していたので、この風ではソロは止めた方がよいと 忠告して、自分が同乗した。 運輸安全委員会 航空事故報告書 108
  52. 1340 -1435 (0+55) ・警察(刑事1名)、運輸安全委員会(2名)合同で 機体関係書類、航空日誌、 コピー提出(オーナー会) 1450-1605 (1+15) 運輸安全委員会(JTSB)事情聴取 ・航空事故調査官

    : 2名(1名は飛行訓練中、滑空機の運航はそれほど知らない) ・クラブ員5名 : 目撃者2名、ASK23B会員1名、 運航リーダー、AFR担当教官(12/20) 聴取内容 ・事情聴取者の氏名、連絡先 ・クラブの活動状況全般および当日の運航状況(ブリーフィング内容)、天候 ・機長の飛行経歴、当該機の経験、訓練進捗状況、AFR時の様子、当日の動向、健康状態 ・機体の状況(組立、飛行時) ・目撃の状況、事故後の対処 ・高度が低くなった要因 :風の影響、目測・状況判断、機体の性能・操縦特性、心理状態 ・エアブレーキを開いた原因(推定): ロック解除、閉位置の確認、パニック(過去の事例) ・クラブ組織資料、運航資料・滑走路図面(オペレーションハンドブック・各種規定等)の提出 運輸安全委員会 JTSB による事情聴取 (ハンガーサロン) 12月29日(月) 問題点 :聴取開始前、サロンには刑事1名が書類審査をしていたが、事故調査官の聴取に同席 したい意向を示した。しかし事故調査と警察の捜査は相反することを説明して断り、刑事退出後 に聴取を開始した。 110
  53. 2012年4月7日(土) フジグライダークラブ所属 グローブ式グローブG109B型(動力滑空機・複座) JA109B 着陸後の滑走路からの逸脱. 富士川滑空場 2012年4月8日(日) 運輸安全委員会 事故調査官2名による事故調査 *警察の事故調査はなかった

    現場検証 1時間半 事情聴取 4名(機長、同乗者、目撃者2名) 計3時間 *ハンガー個室にて一人づつ1時間から40分程度聴取され、録音もされた。 重大インシデント SERIOUS INCIDENT 111
  54. 推定要因(クラブによる解析) ・飛行前に何度も、風が強いので高いパスで進入せよと教官、クラブ員に指摘されて いたのだが、実行されなかった。訓練中は強風時の進入はある程度経験していたが、 身についていなかった。(当日複座で飛べば体験できた) ・滑空機の飛行経験が少なかった。総飛行時間42時、機長時間7時間、最近3カ月1回) にもかかわらず、強風時に慣れてない初めての単座機で飛行し、適切な操縦が出来 なかった。 ・直前に飛行機の訓練をしていたため、滑空機のパスへの切り替えができていな かった。 パスが低くなった原因

    パスが低いのにエアブレーキを開いた原因 ・エアブレーキのロックを解除して押さえていたが吸い出された。 ・ファイナルでは必ずエアブレーキを開かなければならない、といったような機械的な操作をした。 ・高度が低くなり、エアブレーキが開いてるかもしれないと思って操作してみた。 ・高度が低くなり、パニックに陥いってしまった。 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 115
  55. 15:12 事故発生 15:30 警察現場到着(パトカー数台) ・現場保全 ・氏名所属申告(鈴木) ・事故概要説明 ・後ほどハンガークラブルームにて事情聴取の段取りをした 16:40 –

    21:00 (4+20) 藤岡警察(警部補2名)による事情聴取(ハンガークラブルームにて) 被聴取クラブ員(5名) ・目撃者:A・Bの調書作成 ・運航リーダー、曳航パイロット、飛行参加者(教官) 聴取内容 ・聴取者全員の住所、氏名、連絡先 ・クラブの活動状況全般および当日の運航状況、天候 ・機長の個人情報、飛行経歴、当日の動向および健康状態 ・目撃の状況、事故後の対処 ・グライダーの構造、舵の動き(エアブレーキなど)、飛行原理、操縦法、曳航方法 ・免許取得までの訓練過程 おおよそ以上の事柄を5名で説明し、A・B供述で調書が作成され、確認の あと署名捺印し た。その後ハンガーにて参考にTWINⅡとハスキーを見学させた。 2008年12月28日(日) 栃木県藤岡警察による事情聴取 ・事故当時滑走路にいた全クラブ員(26名)を集合させ、事情聴取のため住所氏名を申告 せよと要請されたが、任意捜査であることを確認して拒否し、関係者のみの協力に限定した。 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) 118
  56. 2008年12月28日(日) 栃木県藤岡警察による事情聴取 19:30 ASK23B オーナー会 代表H氏、 ASK23Bの耐空検査員Y氏が東京より現場に到着した ところ、事情聴取され、調書を作成された。 20:00-21:00 (1+00)

    聴取内容 H氏 (現場の駐車場にて) ・グライダー経歴 ・グライダー免許の取得手順、訓練方式 ・ASK23Bグループの設立経緯、活動状況、機体の運用状況 21:30 – 23:00 (1+30) 聴取内容 Y氏 (藤岡警察署 取調室にて) ・耐空検査員歴 ・耐空検査の検査内容 ・当該ASK23Bの整備状況 ・耐空検査状況 ・その他、病院で待機していたクラブ員3名も病院にて事情聴取された。 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) ・警察の事情聴取は任意捜査であれば拒否できる。協力する場合、人数は限定し(当事者は 名前の確認などに留めるのが望ましい)、調書の署名捺印も拒否できる。疑問があれば 弁護士に相談する。(危機管理マニュアル参照) 119
  57. 栃木県藤岡警察への対応 ・その後の警察対応窓口は鈴木が代表となった。 ・何回か電話で質問された。 ・2月に飛行再開後も飛行日に警察がやってきて、ファイナルの下で進入機を撮影していた。 ・ピストに来て、フライトサービスと飛行中の機体との無線のやり取りを聞いていた。 ・3月に再度5名の事情聴取をしたいので、警察署へ出頭せよと言ってきた。 弁護士とも相談し、任意捜査であることを確認して拒否した。 理由:・すでに述べることはすべて述べたのでこれ以上は断る。 ・事故原因は専門家の運輸安全委員会が調査している。 ・破損した作業場の所有者、畑の所有者にクラブから謝罪して損害賠償し、

    相手方も納得している。 ・遺族には事故の経緯について十分説明し、納得してもらった。 警察: ・皆さんの無罪を証明するためにも是非協力してほしい。 ・4月に警察から今回の件の捜査は終わるとの連絡が来た。 ASK23B機 事故 (板倉滑空場) ・警察の捜査は基本的に犯罪捜査であって、事故の原因究明ではない。 ・業務上過失致死・業務上過失障害・航空危険罪により訴追される。 ・パイロットのみならず、クラブ管理者、機体所有者、機体整備者、訓練教官なども罪に 問われる恐れがある。 120
  58. 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 【目次】 昭和49・6・19・法律 87号 改正昭和52 ・法律 82号 【略】航空危険行為処罰法 《分野》国交-交通-航空、内閣-警察-警備・公安、法務-刑事-刑法 (航空の危険を生じさせる罪)

    第1条 飛行場の設備若しくは航空保安施設を損壊し、又はその他の方法で航空の危険を 生じさせた者は、3年以上の有期懲役に処する。 (航行中の航空機を墜落させる等の罪) 第2条 航行中の航空機(そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされた時からこれらの乗降 口のうちいずれかが降機のため開かれる時までの間の航空機をいう。以下同じ。) を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲 役に処する。 2 前条の罪を犯し、よつて航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、又 は破壊した者についても、前項と同様とする。 3 前2項の罪を犯し、よつて人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは7年以上の懲役 に処する。 (過失犯) 第6条 過失により、航空の危険を生じさせ、又は航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若し くは覆没させ、若しくは破壊した者は、10万円以下の罰金に処する。 2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は20万円以下 の罰金に処する。 121
  59. 4. 警察に事情聴取や現場検証を依頼された場合の留意事項 ① 当事者は自分の気持ちを整理し、冷静に対処すること。自分の認識できる範囲で 事実関係を把握し、メモしておく(メモは誰にも渡さない)。 ② 警察捜査の目的は犯罪捜査であり、通常の事故で適用されるのは航空危険罪や業務 上過失致死傷罪であって、パイロットは過失や注意義務違反を問われる。参考人 と言われても被疑者として扱われる。 ③

    過失の認定にあたっては、「一般的パイロットならその結果を予見できたか、 あるいは結果を避ける手段があったか、また、十分その職務を果たしたか」が 重要な観点となる。 JSC 危機管理マニュアル <添付資料6> パイロットが事故に遭遇した場合のガイドライン ④ 犯罪があると判断される場合、警察官によって刑事捜査が開始されるが、強制捜査と 任意捜査に分かれるので、必ずどちらかを確認すること。過去の事例では航空事故の 場合、初動捜査は任意で行われる。任意捜査は拒否できるが、出来る限りの協力を するというスタンスを明確にする。 ⑤ 対応は運航スタッフまたはJSC理事があたり、当事者はなるべく面前に出さないこと が望ましい。疲れているなどの理由をつけ、名前の確認などに限らせる) 当日の参 加者全員の聴取などの要請は拒否する。 ⑥ 警察官の職務・氏名・連絡先を必ず確認する。(名刺をもらうこと) ⑦ 聴取時間のリミットを決めておく。際限なく時間がかかる場合は次の機会にしてもらう ⑧ 事故は複合要因にて発生するもので、道義的責任と刑事責任をはっきり分け、安易に 当事者の過失であるような発言は避け、憶測で事故原因などに言及しない。 123
  60. ⑨ 警察は航空の専門家ではないので、専門用語・技術用語は個人的解釈をしたり、別の 言い方をせず、そのまま用いて的確に答え、憶測・予想・仮定の話、知らないことの 供述を避け、事実のみを述べる。相手に航空機の運航を教えてやるような気持ちにな ってはならない。供述は裁判になった場合、証拠として用いられるので、質問と供述 した内容は必ず詳しくメモをとっておく。 ⑩ 自分に不利な供述は強制されないので述べる必要はない。(黙秘権が認められている) 事故を避けるために行った努力・操作を強調し、自己に有利な点を主張する。 ⑪

    供述調書は自分が納得できるまで十分に吟味し、内容のメモをとり、他のクラブ関係 者にも確認してもらい、訂正すべきところは指摘すること。(後日、裁判の証拠に使 われた場合、事実と違っていると言っても訂正はされない)。弁護士と相談するまで 署名捺印をしない。 ⑫ 技能証明書や個人ログブックなどのコピーの提出を求められた場合、拒否が望ましい が、提出する場合は使用目的、提出先を明確にしてもらうこと。 JSC 危機管理マニュアル <添付資料6> パイロットが事故に遭遇した場合のガイドライン 124
  61. 128

  62. 運輸安全委員会( Japan Transport Safety Board ) 航空事故調査委員会 1974年(運輸省) ・1971年の雫石事故(全日空B727機と自衛隊F86F戦闘機が空中衝突し162名が死亡)および 東亜国内航空YS11ばんだい号事故(函館横津岳に墜落し68名死亡)を契機として、1974年に

    運輸省内に設置された。 2001年(国土交通省) 航空・鉄道事故調査委員会 ・1991年の信楽高原鉄道列車衝突事故(滋賀県、42名死亡)および 2000年の地下鉄日比谷線 脱線衝突事故(5名死亡)を契機に改編された。➞(2005年 JR 宝塚線事故 107人死亡) ・2001年 「重大インシデント」が調査対象となる。 航空事故調査委員会 航空・鉄道事故調査委員会 運輸安全委員会 JTSB 2008年10月1日 (国土交通省) ・航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁の事故調査部門が統合され、国土交通省の外局と して設立し、権限が強化された。(懲戒審判部門は海難審判所として国交省の機関となった) 航空・鉄道事故調査委員会 + 運輸安全委員会 海難審判所 海難審判庁 事故調査部門 懲戒審判部門 129
  63. 国家運輸安全委員会 ( National Transport Safety Board ) 運輸安全委員会 ( Japan

    Transport Safety Board ) 組織 国土交通省外局 大統領直属 (政府機関から独立し 強力な権限を持つ) 人員 委員 12人 委員 5人 調査官 105人 調査官 230人 調査対象 航空・鉄道・船舶事故 航空・鉄道・船舶・高速道路・パイプライン 調査の優先権 警察の捜査が優先される。 警察の捜査よりも優先権がある (現場検証、証拠物件の押収、 関係者の取り調べ) 「事故調査報告書が 「事故報告書を刑事裁判の 刑事裁判の証拠となりうる」 証拠に採用することは不可」 ⇩ ⇩ 1972年に警察庁と運輸省とが テロ、ハイジャックなど犯罪性の 相互協力を定めた覚書が根拠 ある事件ではFBIなどが捜査する 130
  64. ・1999年12月 事故調査委員会は「機長の操縦桿操作に問題があった」という操縦ミスを主な原因とする報告書を 公表した。 ・2002年5月 名古屋検察庁は事故調査報告書の記述を基に機長を業務上過失致死傷で起訴した。 (事故報告書を裁判の証拠とすべきでないと、国内・海外のエアラインパイロットの組織が 運輸大臣へ抗議した) ・2004年7月 名古屋地方裁判所は、「操縦桿操作はあったが、それが負傷者の発生に結びつくとまでは 予見できなかった」として無罪を言い渡した。検察は無罪を不服として控訴した。

    ・2007年1月 名古屋高裁は、技術者の証言や飛行記録などを科学的かつ詳細に検討し、「意図的な操縦桿操作 はなかった。事故当時の状況に対する機長の説明は傾聴に値する」と述べて完全無罪の判決を出し、 事故調査報告書の事実認定を否定する司法判断が確定した。検察は上告を断念し無罪が確定した。 ・起訴の根拠となった事故調査報告書の結論が、裁判所や多くの専門家によって否定されたわけで、 名古屋高裁の判決は、その公平性と科学性が法律専門誌でも高く評価された一方、判決を機に学者 やマスコミからも事故調査委員会の調査内容に疑問の声が出ている。 JAL706便事故 135
  65. 航空や鉄道の重大事故が起きた時、当事者の刑事責任を問う警察の捜査が、事故原因の究明を目指す国 (運輸安全委員会)の調査より優先されがちな現状について、前原誠司国土交通相は12日、仕組みを見直す 考えを示した。原因究明を重視する観点から、事故調査が優先されるようにできないか検討する。 米国や欧州の一部では国の事故調査機関の権限が強く、警察の捜査からは完全に独立している。当事者に刑 罰を科さない代わりに、原因調査に協力させる制度もある。誰かを罰するよりも、真の原因を突き止めることが、再 発防止に役立つとの考えからだ。 しかし日本では、たとえば2001年の日航機同士のニアミス事故で、空港到着直後の機内で警察が操縦士から 事情聴取するなど、捜査が優先されるケースが目立つ。また、捜査からの調査の独立性があいまいで、1997年に 三重県上空で日航機が乱気流に巻き込まれた事故では、事故調査報告書が機長の刑事裁判で証拠として使われ た。

    こうした状況では、「事故の当事者は刑事処分を恐れて国の調査に真実を話すことをためらうようになり、原因 究明の妨げになる」と航空関係者らが指摘してきた。 前原国交相は同日夕、日航機墜落事故の追悼慰霊式で、「事故の原因をすべての段階で明らかにしていく事故 調査の実現」を図ると言及。その後の取材に「事故調査が優先されるような具体的な話し合いを運輸安全委と警察 庁で行っていきたい」と話した。 捜査と調査の関係については、72年に警察庁と旧運輸省とが、互いに協力することを定めた覚書が根拠となって いるが、この是非についても「今後の研究テーマと考えている」と見直す可能性を示唆した。欧米のような免責制度 を導入するかについては「予断を持たずに議論していく」と述べるにとどめた。 日航機事故の遺族らでつくる「8・12連絡会」の美谷島邦子事務局長は「調査と捜査をきちんと分けると国交相が 話したことは大きな進歩だ」と評価した。作家の柳田邦男さんも「事故防止と安全対策のために、真実を話しやすい よう、刑事処分は免責されるようにすべきだ」と話した。 大事故「捜査優先」見直し 国交相方針、原因究明重視へ 2010/8/13 朝日新聞 137
  66. 140