日本体育測定評価学会第22回大会/第5回身体科学研究会 合同大会 シンポジウム, 2023.3.12
集団スポーツの動きに関するデータ分析の概要と今後の展望1藤井 慶輔 名古屋大学 大学院情報学研究科理化学研究所・JSTさきがけ研究室HP:日本体育測定評価学会第22回大会第5回身体科学研究会 合同大会 シンポジウムmail: [email protected]twitter: @keisuke_fj
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本日の話1. 自己紹介2. スポーツのデータ解析の背景3. スポーツ知識と機械学習を組合せた分析a. 動きの特徴を学習し攻撃・守備戦術を分類b. 選手の動きを軌道予測から評価4. その他の話題• ドローン、姿勢推定、強化学習5. まとめ2
自己紹介: 藤井 慶輔(ふじい けいすけ)3対人動作分析(2012)立命館大学にて計測半面での5対5 (2015)東海大学にて計測年 所属 対象 アプローチ2008-14 京大人環 個人・対人運動(1対1)を計測データ解析NBAのゲームデータ (SportVU)2014-17 名大保体センター(学振PD)運動制御モデル集団運動(1対1~多対多)を計測データ解析・理論モデル化2017-19 理研AIP(研究員)集団運動(提供されたデータを利用→再び計測)機械学習を用いたデータ解析・理論モデル化2019- 名大情報(助教)2021- 同上 准教授東海大学にて計測(2022)
集団スポーツの動き4スポーツ選手: 相手と争い、(集団では)味方と協力する– 巧みな動きや、柔軟なチームワーク、予測できない結果– どのように定量的に測定、分析、評価するか?– 計測・モデル化技術の発達から、データ解析の発展が期待赤がNeymar選手(NHKの撮影協力) NBA 2013-2014のプレシーズンゲーム
動機: 選手位置データをどう応用するか?現場の戦術的な分析は、まだ多くがビデオの目視(モデル化が困難)ビデオ編集ソフトウェア(Sportscode)プレイ頻度分析(Synergy)選手・ボール位置推定(SportVU)導入自動化11自動化が実現されれば、研究者や監督者など専門家の負担軽減や、観客・初心者などの理解促進などが期待される位置計測と統合して定量的に評価する技術が開発されたら:
私たちが数年後に実現したいAIスポーツ解析の世界(スポーツのデジタルツイン)(実績: 関連学会受賞歴:23件、論文発表数:66件、招待講演39件、関連特許3件)これを皆さまと一緒に達成したいです!応援お願いします(後半)※現実世界から収集したデータを使い、仮想空間上に同じ環境を再現する技術
本日の話71. 自己紹介2. スポーツのデータ解析の背景3. スポーツ知識と機械学習を組合せた分析a. 動きの特徴を学習し攻撃・守備戦術を分類b. 選手の動きを軌道予測から評価4. その他の話題藤井慶輔、武石直也、方城素和、稲葉優希、河原吉伸、複雑な集団運動におけるネットワークダイナミクスの物理的に解釈可能な分類,Scientific Reports, 10, 3005, 2020日本バスケットボール学会 第6回大会 口頭発表賞
#1 #1 #2 #2 …Time X(m) Y(m) X(m) Y(m) …3.508 4.910 1.823 0.811 -0.710 …3.517 4.910 1.823 0.811 -0.711 …3.525 4.911 1.823 0.811 -0.713 …3.533 4.911 1.823 0.812 -0.715 …3.542 4.911 1.824 0.812 -0.716 …… … … … … …位置データから攻撃・守備戦術を自動分類選手とボールの位置データwww.bostonglobe.com8位置データ時間を区切る特徴作成自動分類(学習なしプレーの種類・有無など③②① 特徴を作成して、学習なしで分類② 特徴を作成して、機械学習で分類③ 特徴を、機械学習で抽出して分類/ 抽出教師データ/ あり)
①特徴を作成して機械学習なしで分類(ルール)スクリーンに対するチームディフェンスをルールに基づき分類して、柔軟な戦術性を評価 [Fujii+16, Sci Rep]そのまま 一瞬助ける 役割切替スイッチ?スクリーン、スイッチ、動き出し、方向ユーザー方向?ユーザー方向?スクリナー方向?リング方向?スイッチした方が近い?(主語はスクリナーDF)マンツーヘッジスイッチ その他スイッチ回数危機のレベル☺ 解釈しやすい、少ないデータでOK 領域特有で一般化しない9
②特徴を作成して機械学習で自動分類(実際: vはd次元空間)サポートベクターマシン(SVM)による境界面の学習v1v2オン/オフボールスクリーンの種類:90%以上の正答率 [Zhang+22, IJCSS]特徴を作成(例)スクリーンの特徴→☺ 特徴は解釈しやすい 特徴の作成方法が一般化しない10
③特徴を機械学習で抽出して分類11☺ 一般的な運動の特徴を抽出 抽出情報の解釈に困難な時も1. 入力系列 2. 特徴を抽出 3. 分類(a)と根拠の解釈(b)(各スライド窓で分解)空間モード時間モード(b) 分類根拠を解釈スクリーン無スクリーン有(グラフ動的モード分解)[Fujii+20, Sci Rep]守備戦術(ゾーン/マンツー)(a) 2つの分類課題 攻撃戦術(スクリーン有無)
本日の話1. 自己紹介2. スポーツのデータ解析の背景3. スポーツ知識と機械学習を組合せた分析a. 動きの特徴を学習し攻撃・守備戦術を分類b. 選手の動きを軌道予測から評価4. その他の話題12寺西真聖, 筒井和詩, 武田一哉, 藤井慶輔, サッカーにおける軌道予測に基づくチームメイトの得点機会創出の評価, Machine Learning and DataMining for Sports Analytics 2022 (MLSA‘22) in ECML-PKDD’22, 2022第11回日本統計学会スポーツデータ解析コンペサッカー部門 優秀賞
なぜ集団スポーツで選手軌道予測をするか?→ コーチの頭の中で行われてきた過去/新しい局面にて、異なる選手/チームだとどう動くかなどのシミュレーションが期待ビデオ編集ソフトウェア(Sportscode) 選手・ボール位置推定(SportVU)現場での戦術的分析は、主にビデオ等の目視に基づくしかし、位置計測に基づき軌道が予測できたら:選手軌道予測[Fujii+20]34
提案: Creating Off-Ball Scoring Opportunity (C-OBSO)A1(評価対象)が予測よりD1選手を引き付けてA2に貢献A2のスペースをA1が作った!𝟎. 𝟎𝟎𝟕𝟗C−OBSO: 𝑉A1= 𝑉A2− 𝑉A2′0.0409 0.0330(実際) (予測)14予測(薄色)より、A1がD1を引き付けた
参考:ボール非保持の評価 𝑽𝒌 (OBSO [Spearman18])コート上の地点 𝑟に価値(下記3要素)を割り当てる• 占有率(Control):𝐶𝑟• 遷移率(Transition):𝑇𝑟• 得点率(Score):𝑆𝑟ある試合状態𝐷における得点確率を 𝑽𝒌とし、以下のように表す𝑽𝒌= 𝑃 𝐺 𝐷 = Σ𝑟∈ℝ×ℝ𝑃(𝐶𝑟∩ 𝑇𝑟∩ 𝑆𝑟|𝐷)→ボールが来たらどれだけ点を入れられるか(ポジショニング)を評価占有率 𝐶 遷移率 𝑇 得点率 𝑆ボール非保持の評価OBSO15
結果例: J1 2019 横浜FMのC-OBSOと年俸*との関係• C-OBSOと年俸は正の相関(𝜌 = 0.45, 𝑝 < 0.05)だがOBSOは相関なし• C-OBSO-年俸の外れ値は、(最)優秀選手賞を受賞C-OBSOは選手の総合評価(年俸,個人賞)を説明できる可能性あり16*1 Soccer-Money.net https://soccer-money.net (アクセス日2021/1/9)優秀選手賞最優秀選手賞
どこにポジショニングすればよいか一目でわかる(コーチングに活用)大学チームアナリスト: ポジショニングの良し悪しは主観でしか伝えられない従 来)(主観で)ここにパスを出せば良かったのに…(どこに出したらどれくらい良かった?)本技術)このパスよりも、ここに出した方が得点チャンスが ** %増加する!※筑波大学蹴球部と共同研究中大学チーム監督: プレー映像のまとめだけでなく良し悪しも参考にしたい応用例: 空間の価値を計算し、選択肢と評価値を提示
本日の話1. 自己紹介2. スポーツのデータ解析の背景3. スポーツ知識と機械学習を組合せた分析a. 動きの特徴を学習し攻撃・守備戦術を分類b. 選手の動きを軌道予測から評価4. その他の話題• ドローン、姿勢推定、強化学習5. まとめ18
集団スポーツ以外:姿勢推定を使った分析19バドミントンのストローク評価[Ding+22, IEEE Access]フィギュアスケート(準備中)競歩の反則判定[Suzuki+22IEEE GCCE]
より戦術的なモデル化:強化学習20Google Research Football (2019)強化学習: 現在の状態から、報酬に基づき取るべき行動を決定エージェント(方策 𝜋)状態 𝑠行動 𝑎報酬 𝑅環境・他者• 最近研究が増えているが、アルゴリズムの改善がメインで、実データとの関連が議論されていない• 最近:GFootballとJリーグの試合を比較(パスの観点から)[Scott+22, ICAART]• 現在実データとシミュレータのギャップを埋める研究を投稿中[Fujii et al. 2023](選手評価に利用したい)
自分たちで:ドローンや魚眼カメラで選手位置を推定21サッカー: SoccerTrack [Scott+22, CVSports]その他(バスケ・ハンド):準備中 (現在東海大、筑波大、蕪湖職業技術学院(中国) 、名古屋大が連携)
データ分析に関する私たちの課題22映像を見て評価することが前提で、一部のトップしかデータがない!私たち(分析する研究者)にとって…課題① 映像や前処理データを入手するのが大変課題② 出力結果の解釈・検証や選手への伝え方が難しい選手や、教えるコーチ、現場で測定される研究者にとって…課題③計測・分析するのに非常に時間がかかる課題④経験がないと大量の映像から参考情報が得られない多くの人に情報を簡単に共有するためには、両者が協力して、映像や分析コードを共有/公開することが必要 (オープンサイエンス)(現在東海大、筑波大、蕪湖職業技術学院(中国) 、名古屋大が連携)
本日のまとめ• スポーツ知識とAI (機械学習)を組合せた分析• 攻撃・守備戦術を分類• 選手の動きを軌道予測から評価• その他の話題: ドローン、姿勢推定、強化学習23AIで可能になる新しいスポーツ解析の世界(スポーツデジタルツイン)詳細はHP:謝辞:共同研究者の皆さま、支援頂いた研究費(HP参照)多くの人に動きの情報をオープンサイエンスで簡単に共有できる世界を実現したいので、お気軽にご連絡ください!mail: [email protected]twitter: @keisuke_fj(藤井 慶輔)