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電気工学II第8回 /eleceng2_08

電気工学II第8回 /eleceng2_08

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Kazuhisa Fujita

March 27, 2023
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  1. アンペールの法則 • 電流Iを閉経路Cで囲んだとする. • Cに沿って,磁束密度Bと経路の接線ベクトルtの内積を積分すると次のような 等式が成り立つ. • これをアンペールの法則という. • Nは経路Cの作る面の法線ベクトルである.

    • Sは閉経路の面積である. 閉経路𝐶 法線ベクトル𝒏(𝒓) 電流密度𝒊(𝒓) 電流 経路の接線ベクト ル𝒕(𝒓) 電場𝑩(𝒓) 位置𝒓 発展 න 𝐶 𝑩(𝒓) ⋅ 𝒕(𝒓)𝑑𝑠 = 𝜇0 න 𝑆 𝒊 𝒓 ⋅ 𝒏 𝒓 𝑑𝑆 経路に沿って𝐵を足したときの総和 経路内を貫く電流の総和
  2. アンペールの法則 • ׬ 𝐶 𝑩(𝒓) ⋅ 𝒕(𝒓)𝑑𝑠 = 𝜇0 ׬

    𝑆 𝒊 𝒓 ⋅ 𝒏 𝒓 𝑑𝑆 • 𝑩(𝒓) ⋅ 𝒕(𝒓)は経路方向の磁束密度の成分である. • よって,左辺は経路に沿って磁束密度を足したものである. • 𝒊 𝒓 ⋅ 𝒏 𝒓 は場所 𝒓 における単位面積あたりの閉経路が作る面を垂直に貫く電 流の量である. • よって,右辺は閉経路を貫く電流の総和である. 閉経路𝐶 法線ベクトル𝒏(𝒓) 電流密度𝒊(𝒓) 電流 経路の接線ベクト ル𝒕(𝒓) 電場𝑩(𝒓) 位置𝒓 発展
  3. 無限に長い直線導線に流れる電流が作る磁場の磁束密度 • 無限に長い直線導線に流れる電流が作る磁場を求める. • 図のように直線に対し垂直な半径rの円を考える. • アンペールの法則から次の等式が成り立つ. • 2𝜋𝑟𝐵 =

    𝜇0 𝐼 • よって,直線導線に流れる電流が作る磁場の磁束密度は • 𝐵 = 𝜇0𝐼 2𝜋𝑟 • 磁場は • 𝐻 = 𝐼 2𝜋𝑟 (磁束密度×経路長= 𝜇0 ×電流)
  4. 無限に長いソレノイドが作る磁場 • 図のように閉経路Cを考える. • 経路は長方形で電流に対して垂直で,かつ,磁場に対して平行 である. • そうすると,磁場は長辺に対し平行で短辺に対し垂直となる. • よって,アンペールの法則から次の式が成り立つ.

    • 𝐵𝑙 = 𝜇0 𝑛𝑙𝐼 • 𝐵𝑙は内部長辺に沿って磁束密度を積分したものである. • 経路内に𝑛𝑙本の導線があるので,経路内を流れる電流の総和は 𝑛𝑙𝐼である. • よって磁束密度は • 𝐵 = 𝜇0 𝑛𝐼 電流 コイル断面 𝑙 経路𝐶 内部 外部 磁場𝐵
  5. 問題 • 磁気の性質について正しいのはどれか.(臨床工学技士国家試験34) 1. 無限に長いソレノイドでは内部の磁束密度は一様である. 2. 有限長のソレノイドでは外部に一様な磁場が存在する. 有限長の場合,ソレノイドの端から端への磁場が発生し,ソレノイドから遠ければ遠いほど 弱くなる. 3.

    一回巻き円形コイルの中心における磁場の大きさは,円形コイルの半径の2乗に 反比例する. 半径に反比例する. 4. 直線電流によって生じる磁場の大きさは,電流からの距離の2乗に反比例する. 距離に反比例する. 5. 永久磁石に使用する磁性体の比透磁率は約1である. 関係ない.
  6. 磁気ヒステリシスと自発磁化 • 横軸:磁場 H,縦軸:磁化 Mを 表す. • 矢印のループが「ヒステリシス 曲線(ヒステリシスループ,磁 化曲線)」を示す。

    • 磁場を強めると,磁化Mは飽和値 (Ms)まで増加する. • 磁界をゼロに戻しても,磁化は ゼロにならず,残留磁化が残る. • 逆向きの磁界をかけると,磁化 がゼロになる点(保磁力)があ る. 物質内部の自発磁化が打ち消し合っている. 外部磁場(逆磁場)と 物質の保磁力が釣り合 っている. 残留磁化
  7. 電磁誘導 • 導線を流れる電流が磁場を作る • 磁場を導線に近づけるとどうなるか? • 2つの回路を並べ片方に電流を流す.回路2のスイッチをON,OFFした瞬間に 回路1に電流が流れる.(ファラデー, 1831) •

    回路2の代わりに磁石を近づけたり遠ざけたりしても電流は流れる. • 回路に,磁場の変化を与えた時,電流が生じる.この現象を電磁誘導という. この時生じる電流と電圧をそれぞれ,誘導電流,誘導起電力という. 回路1 回路2 回路1 回路2
  8. 問題 • 図のような1回巻きのコイルの中心に向けて磁石を急速に動かした後,磁石を 停止させた.このとき,コイルに流れる電流について正しいのはどれか.(臨 床工学技士国家試験36) 1. 磁石の動きに関わらず,電流は流れな い. 2. 磁石が動いている間,電流はA→B→C

    の方向に流れる. 3. 磁石が動いている間,電流はC→B→A の方向に流れる. 4. 磁石が停止すると,電流はA→B→Cの 方向に流れる. 5. 磁石が停止すると,電流はC→B→Aの 方向に流れる.
  9. 問題 • 図のような1回巻きのコイルの中心に向けて磁石を急速に動かした後,磁石を 停止させた.このとき,コイルに流れる電流について正しいのはどれか.(臨 床工学技士国家試験36) 1. 磁石の動きに関わらず,電流は流れな い. 2. 磁石が動いている間,電流はA→B→C

    の方向に流れる. 3. 磁石が動いている間,電流はC→B→Aの 方向に流れる. 4. 磁石が停止すると,電流はA→B→Cの 方向に流れる. 5. 磁石が停止すると,電流はC→B→Aの 方向に流れる. 磁場の変化がないと誘導起電力は発生しない.
  10. 問題 • 次のおのおのの場合に,検流計Gに流れる電流は(ア),(イ),(ウ)のう ちどれか. (ア)右向きに流れる(イ)左向きに流れる(ウ)流れない 1. 図(a)で,磁石をコイル方向に動かす. 2. 図(a)で,磁石をコイルの中に留める. 3.

    図(a)で,磁石をコイルから遠ざける. 4. 図(b)で,スイッチを入れた直後. 5. 4の状態から十分長い時間がたったあと. 6. 5の状態からスイッチを切った直後.
  11. 問題 • 次のおのおのの場合に,検流計Gに流れる電流は(ア),(イ),(ウ)のうちどれか. (ア)右向きに流れる(イ)左向きに流れる(ウ)流れない 1. 図(a)で,磁石をコイル方向に動かす. 2. 図(a)で,磁石をコイルの中に留める. 3. 図(a)で,磁石をコイルから遠ざける.

    4. 図(b)で,スイッチを入れた直後. 5. 4の状態から十分長い時間がたったあと. 6. 5の状態からスイッチを切った直後. 移動方向 移動方向 磁石の磁場 磁石の磁場 誘導電流が作 る磁場 誘導電流が 作る磁場 左のコイルの磁場 直前まであった 左のコイルの磁場 誘導電流が作 る磁場 誘導電流が作 る磁場 1. (ア) 2. (ウ) 3. (イ) 4. (ア) 5. (ウ) 6. (イ) 1. 3. 4. 6.
  12. 誘導起電力の大きさ • 面積𝑆の閉じた導線𝐶を垂直に貫く磁束の密度を𝐵とすると,閉経路を貫く磁束𝛷は • 𝛷 = 𝐵𝑆 • である.誘導起電力は次のように表される. •

    𝑉 = − 𝑑𝛷 𝑑𝑡 • 誘導起電力=磁束の変化÷時間変化 • これをファラデーの法則という. • 𝑁回巻きのコイルでは • 𝑉 = −𝑁 𝑑𝛷 𝑑𝑡 • の起電力が生じる.
  13. 磁場中を移動する回路 • 磁場分布に接した瞬間を𝑡 = 0とすると,回路内の磁場 分布の面積は𝑣𝑡𝑙である. • 磁場の磁束密度を𝐵とすると,回路を貫く磁束は • Φ

    = 𝑣𝑡𝑙𝐵 • である.よって,回路に発生する誘導起電力は • 𝑉 = 𝑑𝛷 𝑑𝑡 = 𝑑 𝑑𝑡 𝑣𝑡𝑙𝐵 = 𝑣𝑙𝐵 • となる. • ただし,回路全体が磁場中に入ると磁場変化はなくな り誘導起電力は0となる. 磁場 回路 移動 𝑙 磁場 回路 移動 𝑙 𝑣 𝑣
  14. 磁場中を回転する回路 • 図のように,一様な磁場中で回路を磁場に対し垂直な軸 の周りで一定の速度で回転させたとき,起電力が発生す る. • 回路の回転の角速度を𝜔,𝑡 = 0の時の角度を𝜃0 とすると

    ,回路を貫く磁場は • Φ = 𝐵𝑆 sin 𝜔𝑡 + 𝜃0 • である. 𝐵 sin 𝜔𝑡 + 𝜃0 は回路に対し垂直な磁束密度の 大きさを表す. • よって誘導起電力は • 𝑉 = − 𝑑𝛷 𝑑𝑡 = − 𝑑 𝑑𝑡 𝐵𝑆 sin 𝜔𝑡 + 𝜃0 = −𝐵𝑆𝜔 cos(𝜔𝑡 + 𝜃0 ) • となる. 𝜃 面積𝑆 磁束密度𝐵 𝜃 𝑩 𝐵𝑣 = 𝐵 sin 𝜔𝑡 + 𝜃0 回転軸 回路
  15. 問題 • 初期状態では巻数10回の円形コイルに0.2Wbの磁束が直交している.コイル面 に時計まわりに1秒あたり5rad(ラジアン)回転させるとk,コイルに発生す る起電力の振幅[V]はどれか.(臨床工学技士国家試験32回) 1. 0.4 2. 1 3.

    2 4. 10 5. 25 磁束密度𝐵 θ 1巻きのコイルを 貫く磁束 𝐵𝑆 cos 𝜃 θ 1巻のコイルを貫く磁束は 𝐵𝑆 cos 𝜃 = 𝐵𝑆 cos 𝜔𝑡 よって𝑛回巻のコイルを貫く磁束は 𝐵′ = 𝑛𝐵𝑆 cos 𝜔𝑡 誘導起電力は 𝑉 𝑡 = − 𝑑Φ 𝑑𝑡 = 𝑛𝐵𝑆𝜔 sin 𝜔𝑡 よって振幅𝑉は 𝑉 = 𝑛𝐵𝑆𝜔 𝑛 = 10,𝐵𝑆 = 0.2,𝜔 = 5だから 𝑉 = 10 × 0.2 × 5 = 10𝑉 コイル 𝜃の取り方でsinとcosが変わることに注意する. とは言っても,どちらも結果は同じになる. 0.2Wbの磁束が直交とは𝐵𝑆 cos0 = 𝐵𝑆 = 0.2を意味する. 𝑛 = 10個のコイルがあると思う.
  16. 問題 • 図に示すように,長方形(2𝑚 × 1.4𝑚)の導線が磁場のない領域から,0.2m/s の速度で磁束密度10Tの磁場を通過して,再び磁場のない領域に抜けた.導線 に流れる電流の時間変化をグラフにかけ(0sから30s).ただし,0sのとき図 の位置に導線はある.電流は時計回りを正とし,回路全体の抵抗を10Ωとす る. 磁場

    回路 移動 2m 𝑣 = 0.2m/s 1.4m 1m 3m 0sから5s,12sから20s,27sから30sでは,磁場の変化が 無いので誘導電流は発生しない. 5sから12sまでは,回路内に磁場の変化があるため誘導電 流が生じる.このときの誘導起電力は |𝑉| = 𝑑 𝑑𝑡 𝐵𝑙𝑣𝑡 = 𝐵𝑙𝑣 = 10 × 2 × 0.2 = 4𝑉 また,誘導電流は反時計回りの方向に流れる.よって誘導 電流は 𝐼 = − 4 10 = −0.4𝐴 となる.
  17. 問題 • 図に示すように,長方形(2𝑚 × 1.4𝑚)の導線が磁場のない領域から,0.2m/s の速度で磁束密度10Tの磁場を通過して,再び磁場のない領域に抜けた.導線 に流れる電流の時間変化をグラフにかけ(0sから30s).ただし,0sのとき図 の位置に導線はある.電流は時計回りを正とし,回路全体の抵抗を10Ωとす る. 磁場

    回路 移動 2m 𝑣 = 0.2m/s 1.4m 1m 3m 20sから27sまでは,回路が磁場から出ていくので回路内の磁場 の変化があり誘導電流が生じる.このときの誘導起電力は |𝑉| = 𝑑 𝑑𝑡 𝐵𝑙𝑣𝑡 = 𝐵𝑙𝑣 = 10 × 2 × 0.2 = 4𝑉 また,誘導電流は時計回りの方向に流れる.よって誘導電流は 𝐼 = 4 10 = 0.4𝐴 となる. A
  18. 自己インダクタンス • 電流が変化すると磁場も変化するため,その磁場の変化のため回路に誘導起電 力が発生する.誘導起電力はΦ = 𝐿𝐼だから • 𝑉 = −

    𝑑𝛷 𝑑𝑡 = −𝐿 𝑑𝐼 dt • と表せる. • 𝐿を自己インダクタンスという.単位はH(ヘンリー)=Vs/A 電流 回路 磁場Φ発生 発生した磁場を打 ち消す方向に誘導 電流が発生 磁場Φを打ち消そうとする磁場
  19. コイルの自己インダクタンス • 単位長さあたりの巻数𝑛,長さ𝑙,断面積𝑆のコイルの自己インダクタンスを求める. • コイルに電流𝐼を流したときその内に発生する磁場の磁束密度は • 𝐵 = 𝜇0 𝑛𝐼

    • である.コイル全体を貫く磁束はコイル一巻きを貫く磁束に巻数をかけたものなので • Φ = 𝑛𝑙𝐵𝑆 = 𝜇0 𝑛2𝑙𝑆𝐼 • よって自己インダクタンス𝐿は • − 𝑑𝛷 𝑑𝑡 = − 𝑑 𝑑𝑡 𝜇0 𝑛2𝑙𝑆𝐼 = −𝜇0 𝑛2𝑙𝑆 𝑑 𝑑𝑡 𝐼から • 𝐿 = 𝜇0 𝑛2𝑙𝑆 𝑛𝑙が総巻数
  20. 問題 • 透磁率𝜇 = 6.3 × 10−3の鉄心に単位長さ(1[m])当たりn=1000回一様に巻かれ た無限長ソレノイドの断面積を𝑆 = 100[𝑐𝑚2],流れる電流を𝐼

    = 5[𝐴]とすると き,1[m]当たりの自己インダクタンスを求めよ. 𝐿 = 𝜇𝑛2𝑙𝑆 = 6.3 × 10−3 × 10002 × 100 × 10−4 = 63H/m
  21. 問題 • 図のように,巻数nの中空コイルに周波数𝑓の交流電圧Vを加え,電流Iを流し たとき,正しいのはどれか.(臨床工学技士国家試験32回) 1. 巻数nを増加させると,電流Iは減少する. 𝐿 = 𝜇0 𝑛2𝑙𝑆,

    ሶ 𝑉 = 𝑗𝜔𝐿 ሶ 𝐼より ሶ 𝑉 = 𝑗𝜔𝜇0 𝑛2𝑙𝑆 ሶ 𝐼, ሶ 𝐼 = ሶ 𝑉 𝑗𝜔𝜇0𝑛2𝑙𝑆 なので巻数を増加させると電流は減少する .よって正しい. 2. コイル径を大きくすると,電流Iは増加する. 径を大きくすると𝑆が大きくなるので,径を大きくすると電流は小さくなる.よって間違い.
  22. コイルのエネルギ • インダクタンス𝐿のコイルに電流𝐼を流したときに貯まるエネルギー𝑊は次のよ うに書ける. • 𝑊 = 1 2 𝐿𝐼2

    おまけ コイルの誘導起電力は 𝜙 𝑡 = 𝐿 𝑑𝐼 𝑡 𝑑𝑡 となる.微小時間Δ𝑡の間に電荷𝐼 𝑡 Δtの電荷がコイルを通過するので,外から Δ𝑊 = 𝜙 𝑡 𝐼 𝑡 Δt の仕事をしなければならない.よって,時刻0から𝑡1 までになされる仕事は 𝑊 = න 0 𝑡1 𝜙 𝑡 𝐼 𝑡 dt = 𝐿 න 0 𝑡1 𝑑𝐼 𝑡 𝑑𝑡 ⋅ 𝐼 𝑡 dt = 𝐿 න 0 𝑡1 1 2 𝑑 𝑑𝑡 𝐼2 𝑡 dt = 1 2 𝐿 𝐼2 𝑡 0 𝑡1 = 1 2 𝐿𝐼2
  23. 相互インダクタンス • 図のようにコイルを並べ,回路1に電流𝐼1 を流すと磁束Φ1 ができる.その磁束 は回路2の内部を貫く. • 磁束 Φ1 は電流𝐼1

    に比例するので,回路2内部の磁束Φ2 も電流𝐼1 に比例するだろ う.つまり磁束Φ2 は次のように書ける. • Φ2 = 𝐿21 𝐼1 電流 𝐼1 回路1 磁束Φ1 発生 回路2 磁束Φ2 貫く 磁束2=定数×電流1と書ける.
  24. 相互インダクタンス • 磁束Φ2 が時間変化すると回路2に誘導起電力𝑉2 が生じる. 𝑉2 は次のように書け る. • 𝑉2

    = − 𝑑Φ2 𝑑𝑡 = −𝐿21 𝑑𝐼1 𝑑𝑡 • 逆の場合も同様に • 𝑉1 = − 𝑑Φ1 𝑑𝑡 = −𝐿12 𝑑𝐼2 𝑑𝑡 • 実は, 𝐿12 = 𝐿21 であり,これを相互インダクタンスという. 電流 𝐼1 回路1 磁束Φ1 発生 回路2 誘導起電力発生 磁束Φ2 貫く 磁束Φ2 に逆らう磁場が発生
  25. 2つのコイルの相互インダクタンス • それぞれ単位長さあたりの巻数𝑛1 , 𝑛2 ,長さ𝑙1 , 𝑙2 ,断面積𝑆1 ,

    𝑆2 の2つのコイル 1,2が図のように重ねてある. • コイル1に電流𝐼1 を流したとき,コイル内部に発生する磁場の磁束密度は • 𝐵 = 𝜇0 𝑛1 𝐼1 • となる.コイル2を貫く磁束は,コイル一巻きあたり𝐵𝑆1 でコイル2の巻数は 𝑛2 𝑙2 だから • Φ2 = 𝐵𝑆1 𝑛2 𝑙2 = 𝜇0 𝑛1 𝑛2 𝑙2 𝑆1 𝐼1 • である.よって,相互インダクタンス𝑀は • 𝑀 = 𝜇0 𝑛1 𝑛2 𝑙2 𝑆1
  26. 変圧 • 自己インダクタンスを𝐿 の回路1に流れる電流を𝐼1 𝑡 とする.回路に電流を流すに は,電流の時間変化によって生じる誘導起電力に見合う電圧𝑉1 (𝑡) をかけなければ ならない.よって

    • 𝑉1 𝑡 = 𝐿 𝑑𝐼1 𝑡 𝑑𝑡 • となる.一方,回路2に生じる起電力は相互インダクタンス𝑀とすると • 𝑉2 𝑡 = −𝑀 𝑑𝐼1 𝑡 𝑑𝑡 • 式を整理すると • 𝑉2 𝑡 = − 𝑀 𝐿 𝑉1 (𝑡) • となる. • つまり,回路1にかけた電圧の M L 倍の電圧が回路2に生じる. 電圧𝑉1 電流 𝐼1 回路1 磁場Φ1 発生 回路2 𝑀 𝐿 𝑉1 の誘導起電力発生 磁束Φ2 貫く
  27. 変圧 • また,回路に同じ長さ同じ面積のコイルを2つ使った場合,自己インダクタン スと相互インダクタンスは • 𝐿 = 𝜇0 𝑛1 2𝑙𝑆,

    𝑀 = 𝜇0 𝑛1 𝑛2 𝑙𝑆 • と書けるから回路2のコイルの電圧は • 𝑉2 (𝑡) = − 𝑛2 𝑛1 𝑉1 (𝑡) • となる. • コイルの巻数で電圧の大きさを変えることができる.誘導起電力を用い電圧を 変えることを変圧という. • 変圧を実現する回路素子を変圧器という. • 実際に変圧器は2つのコイルから構成される. 電圧𝜙1 電流 𝐼1 回路1 磁場Φ1 発生 回路2 𝑀 𝐿 𝜙1 の誘導起電力発生 磁束Φ2 貫く
  28. 問題 • 2 つのコイル間の相互インダクタンスが 0.5H のとき、一方のコイルの電流が 1ms の間に 10mA か

    ら 12mA に変化すると、他方のコイルに生じる誘導起電 力の大きさ[mV]はどれか。(臨床工学技士国家試験29回) 1. 50 2. 100 3. 250 4. 500 5. 1000
  29. 問題 • 2 つのコイル間の相互インダクタンスが 0.5H のとき、一方のコイルの電流が 1ms の間に 10mA か

    ら 12mA に変化すると、他方のコイルに生じる誘導起電 力の大きさ[mV]はどれか。(臨床工学技士国家試験29回) 1. 50 2. 100 3. 250 4. 500 5. 1000 𝑉2 𝑡 = −𝑀 𝑑𝐼1 𝑡 𝑑𝑡 だから 𝑉2 = −0.5 × 12 − 10 × 10−3 1 × 10−3 = −1V
  30. 変圧器 • 1次側のコイルの巻数を𝑛1 ,2次側のコイルの巻数を𝑛2 とする. • 1次側のコイルに電圧𝑉1 をかけた場合,2次側のコイルで発生する電圧𝑉2 は •

    𝑉2 = 𝑛2 𝑛1 𝑉1 • となる. • また,1次側および2次側の電力を𝑃1 ,𝑃2 とすると • 𝑃1 = 𝑉1 𝐼1 = 𝑃2 = 𝑉2 𝐼2 • となり,それぞれの電力は等しい(理想的には). 電流 𝐼1 1次側 磁場発生 2次側 誘導起電力 𝑉2 𝑛1 回巻き 𝑛2 回巻き
  31. 変圧器の回路記号 変圧器の回路記号 巻数比 𝑛1 : 𝑛2 電圧の関係:𝑉2 = 𝑛2 𝑛1

    𝑉1 電力の関係:𝑃1 = 𝑃2 = 𝐼1 𝑉1 = 𝐼2 𝑉2 電圧𝑉1 電圧𝑉2 電流𝐼1 電流𝐼2 一次側 二次側 電流 𝐼1 1次側 磁場発生 2次側 誘導起電力 𝑉2 𝑛1 回巻き 𝑛2 回巻き
  32. 例題 • 図の回路において次の値を求めよ. 1. 電圧𝑉2 2. 電流𝐼1 3. 抵抗𝑅𝐿 1.

    𝑉2 = 𝑛2 𝑛1 𝑉1 = 1 10 × 100 = 10 2. 𝑃 = 0.4 × 10 = 100𝐼1 𝐼1 = 0.04A 3. 𝑅𝐿 = 𝑉2 𝐼2 = 10 0.4 = 25Ω
  33. 問題 • 変圧器の 200回巻きの1次側コイルに 100V の正弦波交流電圧を加えた.この 変圧器の2次側コイルから 50V の電圧を取り出したい場合,2次側コイルの巻 数

    [回] はどれか.ただし,変圧器は理想変圧器とする(臨床工学技士国家試 験28回). 1. 50 2. 100 3. 200 4. 500 5. 800
  34. 問題 • 変圧器の 200回巻きの1次側コイルに 100V の正弦波交流電圧を加えた.この 変圧器の2次側コイルから 50V の電圧を取り出したい場合,2次側コイルの巻 数

    [回] はどれか.ただし,変圧器は理想変圧器とする(臨床工学技士国家試 験28回). 1. 50 2. 100 3. 200 4. 500 5. 800 巻数をNとすると, 50 = 𝑁 200 × 100 𝑁 200 = 50 100 よって𝑁 = 100.
  35. 問題 • 変圧器の一次側に1A の正弦波電流を流すと、二次側抵抗 10Ωの両端に5V の電圧が生じた。一次側コイルの 巻数が 100 回であるとき、二次側コイルの 巻数はどれか。ただし、変圧器は理想変圧器とする。(臨床工学技士国家試験

    30回) 1. 20 2. 100 3. 200 4. 1000 5. 2000 巻数比 100: 𝑛2 電圧𝑉1 電圧5V 1A 電流𝐼2 一次側 二次側 10Ω オームの法則より 𝐼2 = 5 10 = 0.5A 1次側と2次側で消費される電 力は等しいので, 𝑉1 × 1 = 5 × 0.5 よって𝑉1 = 2.5Vである. 巻数比と電圧の関係から 𝑛2 𝑛1 = 5 2.5 よって,𝑛2 = 200である.
  36. 問題 • 図の変圧器の一次側電流𝐼が2Aのとき,電圧𝐸[𝑉]を求めよ.ただし,変圧器の 巻数比は2:1とする(臨床工学技士国家試験31回) . 1次側と2次側の電力は等しいので 𝐼𝐸 = 𝐼2 𝑉2

    = 𝑉2 2 𝑅 𝑉2 = 𝑛2 𝑛1 𝐸だから 𝐼𝐸 = 𝑛2 𝑛1 2 𝐸2 𝑅 𝐼 = 𝑛2 𝑛1 2 𝐸 𝑅 𝐸 = 𝐼𝑅 𝑛2 𝑛1 2 = 2 × 10 1 2 2 = 80𝑉 𝑉2 𝐼2
  37. 問題解説 • 図の変圧器で一次側のコイルの巻数が100回であるとき二次側のコイルの巻数[回]はどれ か.ただし,変圧器での電力損失は無視できるものとする.(第41回ME2種) 1. 20 2. 50 3. 100

    4. 200 5. 500 2次側の回路に流れる電流は 𝐼 = 2 10 = 0.2A 2次側の電力𝑃2 は 𝑃2 = 2 × 0.2 = 0.4W 1次側と2次側の電力は等しいので 𝑃1 = 𝑉1 𝐼1 = 𝑃2 = 0.4 W 𝑉 = 𝑃2 𝐼1 = 0.4 1 = 0.4V つまり巻数は 𝑉2 = 𝑛2 𝑛1 𝑉1 𝑛2 = 𝑛1 𝑉2 𝑉1 = 100 × 2 0.4 = 500 100回巻 𝑃2 = 𝑉2 𝐼2
  38. 問題 • 1次巻線数𝑛1 ,2次巻線数𝑛2 の理想変圧器について正しいのはどれか.(27回 ) a. 交流電圧の変換に用いられる. b. コイルの発生する誘導起電力を利用している.

    c. 1次と2次のインピーダンス比は巻数の2乗に反比例する. d. 1次電圧を𝑣1 ,2次電圧を𝑣2 としたとき𝑣1 𝑣2 = 𝑛2 𝑛1 が成立する. e. 1次電流を𝑖1 ,2次電流を𝑖2 としたとき𝑖2 𝑖1 = 𝑛1 𝑛2 が成立する.
  39. 問題 • 1次巻線数𝑛1 ,2次巻線数𝑛2 の理想変圧器について正しいのはどれか.(27回) a. 交流電圧の変換に用いられる. b. コイルの発生する誘導起電力を利用している. c.

    1次と2次のインピーダンス比は巻数の2乗に反比例する. d. 1次電圧を𝑣1 ,2次電圧を𝑣2 としたとき𝑣1 𝑣2 = 𝑛2 𝑛1 が成立する. e. 1次電流を𝑖1 ,2次電流を𝑖2 としたとき𝑖2 𝑖1 = 𝑛1 𝑛2 が成立する. a. 正しい. b. 正しい. c. 𝑍1 = 𝑣1 𝑖1 , 𝑍2 = 𝑣2 𝑖2 , 𝑍1 𝑍2 = 𝑣1𝑖2 𝑣2𝑖1 = 𝑛1 2 𝑛2 2 ,よって巻数の比の2乗である.そもそも文章がおかしいが… d. 𝑣2 = 𝑛2 𝑛1 𝑣1 , 𝑣2 𝑣1 = 𝑛2 𝑛1 だから間違い. e. 𝑖1 𝑣1 = 𝑖2 𝑣2 𝑖2 𝑖1 = 𝑣1 𝑣2 = 𝑛1 𝑛2 よって正しい.