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エッジ・フォグコンピューティングの成り立ちとネットワークインフラのこれから

 エッジ・フォグコンピューティングの成り立ちとネットワークインフラのこれから

近年、エッジコンピューティングという言葉をよく目にするようになりました。

エッジコンピューティングの「エッジ」とは、どこの/何のエッジ(端)なのでしょう?実はこれは、「クラウド」に対するエッジを指しています。ではエッジコンピューティングの「コンピューティング」とは何でしょうか?エッジコンピューティングは、ネットワークの中にコンピュータを埋め込みたい、という動機からスタートしています。

エッジコンピューティングの理解のためには、クラウドやネットワークの知識が少しだけ必要です。また、エッジコンピューティングはすっかりバズワード化しているため、全体像を少しだけ俯瞰的に眺めてみる必要もあります。

本資料では、エッジコンピューティングという考え方がなぜ登場してきたか、またエッジコンピューティングで何を実現することを目指しているのか、について解説していきます。
そして、それらの話を通じて、エッジコンピューティングを含めたネットワークインフラが今後どのような形になっていくのか、いくべきなのかについて語りたいと思います。

フォグについても資料内で触れていきます。

KIKUCHI Shunsuke

October 23, 2020
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Transcript

  1. エッジ・フォグコンピューティングの 成り⽴ちと、 ネットワークインフラのこれから Infra Study Meetup #7 2020/10/23 (C) Copyright

    1996-2020 SAKURA Internet Inc さくらインターネット研究所 上級研究員 菊地 俊介 さくらインターネット株式会社
  2. ⾃⼰紹介 2 菊地 俊介 (東京都出⾝、品川区在住) 所属 さくらインターネット研究所 学歴 早稲⽥⼤学⼤学院 理⼯学研究科

    電⼦・情報通信学専攻 修⼠課程修了 早稲⽥⼤学⼤学院 国際情報通信研究科 博⼠課程単位取得退学 職歴 富⼠通(株)富⼠通研究所に就職 ネットの研究やったり、SEやったり、 NICTに出向したり、トイレIoT作ったり さくらインターネットに転職 データ流通(FIWARE, NGSI)、OpenFogコンソーシアム(標準化)、 量⼦(アニーリング)コンピュータ、 AR/VR、モビリティ、RISC-V 専⾨ エッジ・Fogコンピューティング(分散系システムのあたり) ビジョナリーとして技術・社会、会社の将来を思い描く 趣味 新技術調査、鉄道、読書(主にSF)、最近はガンプラ作り @kikuzokikuzo https://note.mu/kikuzokikuzo https://www.facebook.com/ kikuzokikuzo
  3. 本資料の構成 1. エッジコンピューティングの成り⽴ち 1. ネットワークとクラウドの構成とエッジコンピューティング 2. エッジコンピューティングの分類 3. エッジコンピューティングの動向 4.

    広がるエッジコンピューティングの概念 5. エッジコンピューティングの想定ユースケース 2. エッジコンピューティングを作るには • エッジコンピューティングの内部構成、その要件 • エッジコンピューティングを実現するための技術 • 移動への対応 3. エッジコンピューティングのこれから • 今後のネットワークインフラの変化 4. まとめ 付1. Fogコンピューティングとは︖ 3
  4. 1.1 ネットワークとクラウドの構造(1) (エッジコンピューティングを理解するために)まず 前提となるネットワークとクラウドの構造を理解する 4 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網

    =LTE(4G) クラウド クラウド クラウド ⾃営網 ネットワーク装置(ルータ) サーバ アクセス網側︓エンドユーザが居る側 クラウド側︓サーバがある側 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク
  5. 1.1 ネットワークとクラウドの構造(2) • パターン1︓有線キャリアネットワークを利⽤して、 クラウド等のサーバへアクセスする 5 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網

    携帯電話網 =LTE(4G) クラウド クラウド クラウド ⾃営網 アクセス網側︓エンドユーザが居る側 クラウド側︓サーバがある側 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク
  6. 1.1 ネットワークとクラウドの構造(3) • パターン2︓携帯電話網から、クラウド等のサーバ へアクセスする 6 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網

    携帯電話網 =LTE(4G) クラウド クラウド クラウド ⾃営網 アクセス網側︓エンドユーザが居る側 クラウド側︓サーバがある側 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク
  7. 1.1 ネットワークとクラウドの構造(4) • パターン3︓ • ⾃営網内部から⾃営サーバと外部のクラウド等のサーバへアクセスする • 外部ユーザ(有線キャリア・携帯キャリア)が⾃営サーバにアクセスする 7 地域IP網

    =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 =LTE(4G) クラウド クラウド クラウド ⾃営網 アクセス網側︓エンドユーザが居る側 クラウド側︓サーバがある側 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク オンプレ設備
  8. 1.1 ネットワークとクラウドの構造 – 2010年代後半からの質的変化の要求 キーポイント︓IoTの登場 8 クラウド IoT機器 各種 アクセスネットワーク

    往復 伝搬遅延 =間に合わない︕︕ 【参考】 • ⼈(4.8km/h)が1秒間に進む距離︓1.3 m • ⼈の反応速度︓300 msec ↓ • ⼈の動きに対応するための応答速度︓100 msec • ⾃動⾞(100km/h)が1秒に進む距離︓28 m (1m進むのに0.035秒=35 msec) ↓ • ⾃動⾞に対応するための応答速度︓10 msec ⼈の反応速度より早く反応するシステムが求められる︕
  9. 1.1 ネットワークとクラウドの構造 – エッジコンピューティングの登場 クラウドを現場(=エッジ)側に延伸していく、 これがエッジコンピューティング 9 地域IP網 =フレッツ網 コア網=

    インターネット網 携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク
  10. 1.2 エッジコンピューティングの分類 – 誰がエッジコンピューティングを作るのか(2) 11 モバイル(キャリア)ネットワーク 有線(キャリア)ネットワーク ⾃営(有線)ネットワーク RAN Mobile

    Backhaul the Internet クラウド (⼤規模D.C.) 基地局 局舎 アクセス網 (NTT東⻄) BackBone ⾃営網 ⾃営D.C. Local5G デバイス 3種のアクセスネットワーク MEC型 IIC型(OT発展型) クラウド延伸型 MEC : Multi-Access Edge Computing →携帯キャリアがすすめるエッジコンピューティング IIC : Industrial Internet Consortium →産業機器業界がすすめるエッジコンピューティング クラウド事業者がすすめる エッジコンピューティング 誰がエッジサーバを⽤意するか =アクセスネットワークとの関わり⽅、から エッジコンピューティングは3種類に分類できる。
  11. 1.3 エッジコンピューティングの動向(5) • AWS Outposts • AWSのオンプレ向けエッジコンピューティングソリューション • サーバ利⽤料⾦は、クラウド(EC2)の15%増し程度の模様 •

    https://dev.classmethod.jp/articles/aws-outposts-cost-assessment/ • 3年間継続利⽤を約束 • Outposts->クラウド(イン)のデータ転送は無料、アウトは有料(EC2 と同様) 16 https://aws.amazon.com/jp/outposts/
  12. 1.2 エッジコンピューティングの分類 – 誰がエッジコンピューティングを作るのか(2) 17 モバイル(キャリア)ネットワーク 有線(キャリア)ネットワーク ⾃営(有線)ネットワーク RAN Mobile

    Backhaul the Internet クラウド (⼤規模D.C.) 基地局 局舎 アクセス網 (NTT東⻄) BackBone ⾃営網 ⾃営D.C. Local5G デバイス 3種のアクセスネットワーク MEC型 IIC型(OT発展型) クラウド延伸型 MEC : Multi-Access Edge Computing →携帯キャリアがすすめるエッジコンピューティング IIC : Industrial Internet Consortium →産業機器業界がすすめるエッジコンピューティング クラウド事業者がすすめる エッジコンピューティング 誰がエッジサーバを⽤意するか =アクセスネットワークとの関わり⽅、から エッジコンピューティングは3種類に分類できる。
  13. 1.3 エッジコンピューティングの動向(6) Industrial Internet of Things Distributed Computing in the

    Edge Technical Report が出た。(2020/10/20) 19 https://www.iiconsortium.org/press-room/10-20-20.htm
  14. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(1) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 20 エッジ領域においてコンピューティングすれば、それはもうエッジコンピューティング
  15. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(2) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 21 Micro-DataCenterタイプのエッジコンピューティング。 汎⽤サーバをエッジ領域に設置して利⽤。⽤途も汎⽤。
  16. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(3) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 22 ⾃動⾞(V2X) タイプ。 エンドデバイ ス(⾞)⾃⾝ がエッジノー ド相当で重い 処理を担当。 網側は連携や 情報集約など。 要件厳しい⽤ 途想定。
  17. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(4) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 23 エッジAIタイプ。 エンドデバイスがエッ ジノード相当。デバイ スの進化で頑張る。
  18. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(5) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 24 センサ収容、スモー ルエッジタイプ。 (単機能)センサな どを⼩型エッジノー ドなど(ラズパイな ども)で収容する。
  19. 1.4 広がるエッジコンピューティングの概念(6) ※ Z. Zhou et al.: Edge Intelligence: Paving

    the Last Mile of Artificial Intelligence With Edge computing, Proceedings of the IEEE, Vol. 107, 1738 2019. 25 どれが正しいエッジコンピューティング、どれが偽物、というものではない。 対象としているエッジコンピューティングがどのタイプかを意識しないと、議論がかみ合わないので注意。 センサ収容、スモー ルエッジタイプ エッジAIタイプ ⾃動⾞(V2X) タイプ Micro-DataCenterタイプ
  20. 1.5 エッジコンピューティングの特徴 26 現場内での⾼速なやりとり クラウド 端末 端末 • サーバの⽤意、拡張が簡単 •

    ⼤パワー・⼤容量を使える • 低コスト • 仮想化技術 • 設備を⼀括して⽤意 • 空間・電⼒に余裕のある場所 + ・低遅延で使える ・エッジ内での共有がしやすい ・通信費が下がる ・利⽤者の近傍に設置 あとからゆっくり ⼤規模処理 外に出して良い情報だけに フィルタ、加⼯ 今だけココだけ、 を素早く処理 特徴(メリット) その理由 クラウド エッジ
  21. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース エッジコンピューティングの特徴である、 • 低遅延(速い応答速度) • 現場内での情報共有 • 上流(クラウド)との通信量の削減 を活かせるアプリケーションの想定として以下等がある。

    27 • CDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク) • DR(ディザスタリカバリ) • eスポーツ(イベント、ストリーミング) • AR/VR、画像認識 • コネクティッドカー • ⾦融取引 • イベント等での多視点共有システム 等
  22. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース(1) • ゲーム(e-sports) • 専⽤会場などが設⽴され始めている • ゲーム⾃体はローカルPCで実⾏する • プレイヤー間での連携のためのサーバ

    • リアルタイム性を確保するため、データ通信、システムデザインに相当の⼯夫(の模様) • エッジで収容することに合理性がある。が、システムアーキテクチャから⾒直す必要があ る(かも)、ゲームメーカーとの協調が必要。具体的なサービス形態を設計するのはまだ 難しい。 28 https://esports-world.jp/column/1702 https://weekly.ascii.jp/elem/000/001/763/1763144/ ゲーム内の通信処理 クラウド 端末 全国ランキング など 会場内でのゲーム プレイ内容の統合 e-sport会場 想定されるエッジ適⽤構成
  23. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース(2) • ゲーム(ストリーミング) • Googleが「Stadia」をスタート(2019年11⽉22⽇)(⽇本未対応) • nVidiaはAU/Softbankと組んで「GeForce Now」をスタート(2020年6⽉) •

    Microsoftは「Project xCloud」(2020年9⽉サービスイン予定→2021年初頭にずれ込み) • SONY「PlayStation Now」は2015年9⽉から • (「Apple Arcade」 (2019年9⽉)はダウンロード型) • Stadiaは「エッジ利⽤」とは明⾔されていない • GeForce Nowは携帯網の出⼝すぐにセンターを設置している(模様)でエッジコンピュー ティング形態 29 https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1911/24/news009.html https://www.nvidia.com/ja-jp/geforce-now/
  24. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース(2)-2 • GeForce Nowの(想定される)構成 30 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網

    携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク 携帯網(au/softbank)からそこそこ速い、それ以外からもそれなりに速い、を実現。
  25. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース(3) • Connected Car • Cellular V2Xという技術が 注⽬を集めている •

    ⾞が周囲と連携するための 技術 • LTE/5Gの技術をベースに しながら、各種V2Xを実現 する • V2Nはクラウド、V2I/I2V がエッジに相当(Road Side Unit =RSUと呼ぶこ とが⼀般的) 32 https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/ rd/technical_journal/bn/vol27_4/vol27_4_006jp.pdf V2Xの各形態 • ⼤量のインフラを打つ必要があるため、参⼊しずらい 【参考】 全国の信号機数︓208,251(2018年、警察庁資料) 全国の電柱の本数︓3578万本(2016年、国⼟交通省資料)
  26. 1.5 エッジコンピューティングの想定ユースケース(5) • エッジAI : エンドデバイス⾃⾝で画像処理等する • 解析した結果をクラウド側に送信して利⽤する(スタンドアローンな系ではない) • 学習モデルを⽣成するのにクラウドを利⽤する形態が多い

    34 https://www.itmedia.co.jp/news/ articles/2003/19/news050.html この図では、「エッジ側」がエンドデバイスなのか そうでないのかが、曖昧に⾒える。 (記事本⽂内ではきちんと解説されている。) エッジAIデバイスの数々 https://www.picuki.com/tag/M5stickV https://www.nvidia.com/ja- jp/autonomous-machines/embedded- systems/jetson-nano/ Jetson-Nano (NVIDIA) M5StickV
  27. 2.1 エッジコンピューティングの内部構成、その要件 エッジコンピューティングの(究極の)⽬標 • 現場での制限なしのコンピューティングの利⽤、その環境の構築 • コンピューティングおよびネットワーク利⽤の最適化(地産地消化) エッジコンピューティングの(より現実的な)⽬標 • エッジとクラウドをシームレスに使えるコンピューティング環境の実現

    • クラウド、エッジそれぞれの特徴を活かす 35 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク クラウドをエッジに延伸することで、 クラウドエコシステムを活かす リソース・性能を⾃由・動的に 選択・組み合わせ可能に 移動に対応する アクセスネットワークの機能を取り込む …
  28. 2.2 エッジコンピューティングを実現する技術(クラウド側) 「エッジとクラウドをシームレスに使えるコンピューティング環境の実現」 に向けて • AWS WaveLength, Anthos for Telecom,

    Azure Edge with Carrier • AWS Outposts, Azure Private Edge, Azure Stack HCI • Service Mesh, KubeEdge • Nerves(Elixir) 36 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク クラウドをエッジに延伸することで、 クラウドエコシステムを活かす リソース・性能を⾃由・動的に 選択・組み合わせ可能に
  29. 2.2 エッジコンピューティングを実現する技術(アクセス網側) 「クラウド、エッジそれぞれの特徴を活かす」に向けて • 5G(Local5G) • MEC • IP Anycast

    (IPルーティング) 端末の移動をサポートするのは難しい 37 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク 移動に対応する アクセスネットワークの機能を取り込む …
  30. 2.3 移動への対応(1) • サーバの移動 • エンドユーザの近傍のサーバでプログラム(/ジョブ/タスク)を動かす • →(ライブ)マイグレーション、エッジデプロイ • エンドデバイスの移動

    • エンドユーザ(⼈)に付随してデバイスが移動する際に、サーバとの接続 が切れないようにする • →携帯通信システム(LTE/5G)、MobileIP • エンドユーザの(物理的に)近傍のサーバに接続する • →︖IP Anycast ? DNS ? • 移動サポートの難しさ • 適切なアクセス先エッジノード(サービス)をどうやって探す・決めるか • どうやってそのサービスにアクセス(ルーティング)させるか • 期待したように動いているかの監視 38
  31. 2.3 移動への対応(2) • 移動サポートの難しさ • 適切なアクセス先エッジノード(サービス)をどうやって探す・決めるか • どうやってそのサービスにアクセス(ルーティング)させるか • 期待したように動いているかの監視

    39 地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク • 現状では、携帯網・キャリア網(地域IP網)から外に出ていく経路は1通りしかない。 • →5Gでは複数の外部接続をサポートする。 • →キャリアネットワークでは網設計次第(PPPoE, IPoEのGWをどこに設置するか)。 • 端末側で、通信先サーバを選択しなければならなくなる可能性も。 • ...監視︖ →今後の業界を巻き込んだ検討が求められる。 ︖
  32. 3. ネットワークインフラのこれから 40 エッジ時代のインターネットインフラに向けて • エッジを意識したクラウド(サーバ)技術の拡張 • エッジを意識したアプリ・プログラム技術の拡張 • 地域での横のつながり、地域ネットワークの(再)構築

    地域IP網 =フレッツ網 コア網= インターネット網 携帯電話網 クラウド クラウド クラウド ⾃営網 オンプレ設備 (有線)キャリアネットワーク 携帯ネットワーク どこにでもコンピューティングリソースがあり、⾃在に利⽤できるような時代に向けて、 インターネットインフラの⾰新が進む(ことを期待)
  33. 4. まとめ • エッジコンピューティングの成り⽴ち • レイテンシ、通信量などにおけるクラウド利⽤の限界を想定して、 ユーザ近傍にサーバを置く解が求められて • エッジの設置場所はアクセス網の構造に依存する(モバイルキャ リア、有線キャリア、⾃営の3通り)

    • エッジのビジネス構造は、主要プレーヤーが誰かによって、クラ ウド型、MEC型、IIC型の3通り • 主要クラウドベンダーの取り組みが進んでいる • エッジの想定使⽤形態(ユースケース)は広がっている(Micro- DCタイプ、⾃動⾞タイプ、センサ収容タイプ、エッジAIタイプ) • エッジコンピューティングを作る • サーバ(クラウド)側で「エッジサーバ」を増やすだけでは済ま ない • アクセス網を超えた通信のための仕組み導⼊が必要 • 今後網構造⾃体の変⾰が必要 41
  34. 付2. エッジを前提とした今後のシステムアーキテクチャのあるべき形 • エッジも利⽤するシステムが⽬指すべき⽬標、到達点 • 初期のシステム構築が簡単にできる • 障害時に構成変更できる • 移動(体)により構成変更できる

    • エリア(領域)、レイヤ(階層)による論理構造(包含関係な ど)がとれる • エッジも利⽤するシステムが達成すべき(動的な)特徴、 メリット • 早くつながる • エッジ接続・クラウド接続の切替が早い、端末がサーバに早くつながる • 簡単につながる • エッジ接続・クラウド接続の切替時の接続認証等が楽 • データの移動量が少ない • (エッジにおいて)必要なデータだけクラウドに出せる • (クラウドにおいて)必要なデータだけエッジから引き出せる 45
  35. 付3. エッジアプリ例 イベント空間共有システム • ライブ・コンサート等イベントでのユーザ間での視点 映像のリアルタイム共有 • 観客はそれぞれ、カメラと表⽰装置をもつ • 観客は各⾃のカメラ画像をエッジノードにuploadする

    • 同時に、エッジノードにuploadされた画像を⾃由に downloadし閲覧可能 • ⾃分が⾒ていないアングルのライブ映像をリアルタイムで受 信閲覧できる。 47 マルチアングル共有 エッジサーバ クラウド 周辺状況含めて オーバーレイ可能
  36. 付3. エッジアプリ例 環境⾳の可視化とその共有 • AppleのAirPods Proには外部⾳取 り込みモードがあるが、取り込む ⾳は特に操作されていない。 • 近年の補聴器は、内部に聞こえる

    ⾳を(聞こえやすさの観点から) 操作しているケースがある。 • 聞きたい⾳だけ聞く、聞かなけれ ばいけない⾳は聞く、それ以外は 消す、ということができないか。 • 環境⾳情報をイヤホンやスマホで はなく、リソースに余裕がある ネットワーク側で処理できないか。 • さらに、複数の⼈(デバイス)で 取得した環境⾳情報を共有して、 本来は聞こえない⾳を聞く、可視 化するなどができないか。 48 https://academist-cf.com/journal/?p=10604
  37. 付3. エッジアプリ例 屋外型AR/VRシステム(モビリティ衝突警告サポート) • パーソナルモビリティ向け衝突回避通知、⾃動回送 • アプリ概要︓電動キックボード・セグウェイ等・⾃転⾞向けにブ ラインドカーブでの衝突回避のための警告通知を出す。 • 構成︓モビリティデバイス⾃⾝が能動的にMECノード(上の路⾯

    状況把握アプリ)に接続して現在位置および想定進⾏⽅向・速度 を通知、またMECノードの外部カメラ等で携帯電話等を持たない 通⾏⼈や障害物の状態を把握、これらの情報から衝突の危険性が ある場合に各デバイスに通知を出す。 • MECとして実現する意味︓低遅延での折返しが必要、カメラ画像 のプライバシー処理にCPUパワーが必要 49
  38.          

      付4. さくらインターネット研究所 中⻑期(5〜10年)ビジョン 線表 50 ビジネス適⽤検討期 新 ビ ジ ネ ス 領 域 新 技 術 研 究 領 域 技術的黎明期 中規模 データセンター (政令指定都市) 情報システムはスマホから⾶び出し、現場(環境)に溶けこんでいく。 集中・分散の ハイブリッド 可搬型・ビル型・ ⼩型データセンター (300拠点︖) センターレス 分散システム クラウドと同じパワー・使い勝⼿を低遅延で ラズパイのカバー領域(=現場のデータ処理)を 吸い上げる(現場での脱PC、脱スマホ) 現場にたくさんあるものを、賢くする 常にコンピュータのアシストがある (ビッグブラザーの時代) イ ン フ ラ 領 域 ビジネス化(開発)期 機械学習・AI 分散システム(エッジ・フォグ) 量⼦コンピューティング ⾳声インタフェース LPWA ARMクラスタ 5G サーバ/ストレー ジ・ネットのPod化 クラウド・コンテナ のコンポーネント化 スマートシティ・スマートビル (データ公開・API開放) データ流通 衛星データ (位置データ活⽤PF) モビリティ・ロボティクス 2019版 コンテナ・サービスメッシュ ⽬標RTT 2msec ⽬標RTT 20msec
  39. 付4. 研究所ビジョン 超個体型データセンターコンセプト (1/2) 超個体型データセンター : Super Organism Data Center

    序⽂ • クラウド時代の⼀極集中構造が限界に達し、エッジコンピュー ティングによる半集中の階層構造を利⽤しつつも、さらに分散 化が進み、あらゆるデバイスや場所にデータセンター的な機能 が溶け込んでいく。 • しかし、各コンピューティングは独⽴した個体として機能しな がらも、総体としては統率されているようにみえたり、⼩・中 規模データセンターがハブとなって結果的に全体がうまく繋が れ、構成されていく。その様は、分散された各個体と集中する 各個体が群体をなしており「超個体的」であるといえる。 • 各コンピューティングが⾃律的に分散と集中のハイブリッド構 造をとるような環境を「超個体型のデータセンター」、各デー タセンターを総体として透過的に扱えるOSを「超個体型データ センターOS」と定義する。 51
  40. 付4. 研究所ビジョン 超個体型データセンターコンセプト (2/2) 1. 現在はデータセンターに巨⼤なコンピューティングリソースが存在してい るが、今後は、レイテンシ・セキュリティ・コスト等の要件から、あらゆ る場所や社会(組織)にコンピューティングリソースが溶け込んでいくこ とになる。 2.

    それら分散したコンピューティングリソースは、単独でコンピューティン グパワーを提供するにとどまらず、その場所や社会の要求に応じて、⾃律 的に、分散あるいは有機的に結合し、現場・クラウドそれぞれが縦横に結 びついたハイブリッド構造をとれるように機能する。 3. そのようなシステムにより実現されるものは、⼈々の⾝近に存在し、リア ルタイムかつインテリジェンスにユーザを⽀えながら、しかし同時にバッ クエンド側が有機的に結合することにより、かつてないマシンパワーとリ ソース量を動員することで現場最適かつ全体最適をも実現するSuper Organism Worldである。 4. さくらインターネット研究所はこのようなビジョンのもと、Super Organism Worldを実現する超個体型データセンターシステムやそれを統 括管理する超個体型データセンターOS等の研究開発を推進していく。 52
  41. 付4. 「超個体型データセンター」コンセプトの主張ポイント • あらゆる場所に溶け込むコンピューティングリソース • ユーザ近傍のコンピューティングリソースを使うことにより 低レイテンシなコンピューティング体験を実現可能に • エッジ領域のコンピューティングリソースの総和は、 クラウドと同等かそれを凌ぐ。

    • 必要に応じて複数のコンピューティングリソースを利⽤して パワフルなコンピューティング体験を実現可能に • ノードがN台増えるに従ってN乗のコンピューティング パワーを実現可能(にしたい) • (せめて、N台でN倍に) 53