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エッジデバイス向け電源バックアップ基板の開発

K.Masaki
October 16, 2024

 エッジデバイス向け電源バックアップ基板の開発

第17回オープンエッジデバイス研究会発表資料

ソニークリエイティブラウンジ
2024/10/16(水) 19:00 〜 20:00
イベントリンク
https://openedgedevice.connpass.com/event/329066/

K.Masaki

October 16, 2024
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Transcript

  1. エッジデバイス向け電源バックアップ基板の開発 http://b-and-b-lab.jp/ 株式会社 B&B Lab. 代表 真崎 康平 [email protected] 2024.10.16

    第17回オープンエッジデバイス研究会@Sony - Creative Lounge Raspberry Pi Zero2 での活用例 基板裏面 主要回路部
  2. 〇概要 ・設立 2018年1月 ・資本金 300万円 ・主な業務 IoT機器の開発 http://b-and-b-lab.jp/ 〇代表取締役 眞崎

    康平(まさき こうへい) :ハードウェア開発担当 業務キャリア ・SONY半導体(鹿児島、熊本、福岡)で10年弱、イメージセンサ開発に従事 対応領域 画像処理ソフトウェア開発、ハードウェア制御(Visual C++, VBA) 製品評価手法開発(CCD/CMOSイメージセンサ) ハードウェア開発(アナログ、デジタル) ・風力発電パワーコンディショナ開発(4年) 九州大学 応用力学研究所との産学協働プロジェクトにて レンズ風車向けパワーコンディショナ(制御器)開発 大電力、高電圧回路設計 ・その他 医療ベンチャーetc. 〇共同設立者 中村 真理(なかむら しんり):クラウド、ファームウェア担当 業務キャリア ・バーテンダー ・診療放射線技師 ・ハイパーメディアクリエーター(自称) LINE API Expert
  3. 技術背景 ( 1/ 4 ) IoTといえば、ラズパイ! ▪メリット ・当初 教育用を想定して開発された経緯から安価かつ 容易に入手できる。

    ・比較的信頼性が高く、業務用途にも利用可能 ・PCなどと近いアーキテクチャーであるため、 IT事業を本業にしているビジネスからの参入が容易 ※パチモン互換品含む ▪デメリット ・ラズパイに限らず参入障壁が低いためセキュリティが、ガバガバのまま運用され サイバー攻撃の踏み台にされる問題が起きている ・停電などの電源断が起きた際に、OSのファイルシステムが破損して不具合が起こる リスクがある。遠隔地に設置する場合再起動不可などのトラブルが起これば現地 対応の必要がある。→ UPS的なソリューションが安定運用には必要 ・通信手段が確保されていないため、オプションで準備する必要がある 電源や屋外運用可能な筐体を準備するのには、意外にコストが掛かる。 ※太陽光発電システムの遠隔制御などで問題が指摘されている (例)太陽光発電施設向け当社遠隔監視機器へのサイバー攻撃報道について https://www.contec.com/info/2024/2024050700/
  4. 技術背景 ( 2/4 ) ラズパイばかりがIoTではない! エッジコンピューティングでも NVIDIA が優位? https://www.sony-semicon.com/ja/products/spresense/index.html 組み込みマイコン系エッジデバイスもあるよ!

    ▪課題 ・不意の電源断時の電源バックアップ問題 ・消費電力、発熱の処理問題 ・通信回線問題 ESP32 (Espressif Systems) https://www.espressif.com/en/products/socs/esp32 SPRESENSE (SONY) https://developer.nvidia.com/embedded/jetson-modules ▪メリット ・小型、低消費電力 ・通信機能内蔵の場合もある ▪課題 ・利用できるリソースが少なく 通信のセキュリティ確保など の技術課題 大
  5. 技術背景 ( 3/4 ) エッジコンピューティングの有望な応用先である スマート農業に向けて必要な要素とは? 九州大学農学研究院 環境農学部門 農業生産システム設計学研究室 https://www-ampsd.bpes.kyushu-u.ac.jp/?Page=Researches

    ユビキタス環境制御システム研究会 https://www.uecs.jp/ 〇組み込みマイコン系エッジデバイス 〇機械学習用エッジデバイス 弊社開発中 自動潅水コントローラー 高速植物フェノタイピング 向けエッジデバイス 〇クラウド連携向け Gatewayデバイス
  6. 技術背景 ( 4/4 ) スマート農業でエッジコンピューティングを実現する キー技術とは? →電源が大事! ▪屋外運用の技術的課題 ・電源は AC200V

    対応も必要 三相動力200Vしか来てない場合もある。 ・屋外環境なので過酷である -20℃(少なくとも氷点下) ~ 80 ℃程度(放熱不十分の夏場) その環境下で⾧寿命、低コスト、高信頼性、安全性が求められる。 ・台風などの自然災害での停電のおそれ または予防的措置として事前に電源を落とす場合もある。 ・現場で対応可能な手段が限られる。 キーボードでシャットダウンコマンドを実行などはあり得ない 使えてスマホ程度。 ・小型化 防雨BOXなど耐環境性の筐体に格納必要。それを支える架台も 工事が必要。コア部分が小型化出来れば、付随する部分が劇的に低コスト化
  7. 使用技術 ( 2/4 ) 充放電回数が多くても劣化が少ない 電気二重層キャパシタは、充放電回数が多くても劣化しにくいという特⾧を持ちます。大きな電流量で数十万から数百万サイクルの充電・ 放電を行っても耐えられるとされており、性能の劣化が非常に少ないことから⾧く使用することも可能です。充電・放電を繰り返し行う用 途においては、充放電回数により劣化しにくいことが大きなメリットだと感じられるでしょう。 急速な充放電に対応している 急速な充電・放電に対応していることも電気二重層キャパシタの大きな特⾧です。急速充放電に対応できる理由は、電気二重層キャパシタ

    の出力密度が高いことに端を発します。そのため大きな電流を流しても充電・放電がスムーズに行うことが可能です。 環境にやさしい 電気二重層キャパシタは、環境にやさしい素材から作られています。従来の蓄電池では鉛やカドミウムなど環境に悪影響を及ぼす素材や金 属が使用されていたため、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池はその他の蓄電池へと置き換えられてきました。 しかし電気二重層キャパシタには鉛やカドミウムは使われておらず、電力材料としては活性炭が使用されることが一般的。 自然物である活 性炭を採用した電気二重層キャパシタは、環境にやさしい蓄電デバイスとして注目を集めています。 幅広い温度範囲で使用できる 使用する温度範囲が幅広いことも電気二重層キャパシタの特⾧と言えます。使用できる温度範囲は鉛蓄電池と同等程度とされているため、- 15℃から45℃までの温度に耐えられるはずです。 ただし、電気二重層キャパシタは使用時に内部で発熱が起こるうえに、周囲の温度が高くなるほど寿命が短くなると言われます。 寿命の⾧ さを期待すると使用温度範囲は低めが理想ですが、低温・高温の場所でも使用に耐えうる温度範囲の幅広さを備える蓄電デバイスです。 完全放電することができる 電気二重層キャパシタは、完全放電が可能です。その他の二次電池は溜めこんだ電力を完全に放出することができませんが、電気二重層 キャパシタは充電したエネルギーの残量が0Vになるまで放電できるためより多くのエネルギーを取り出せます。内部に残るエネルギー残量 により電圧の変動は起こるものの、完全放電できることは電気二重層キャパシタの大きな特⾧です。 電気二重層キャパシタの基礎知識 https://jp.rs-online.com/web/content/discovery/ideas-and-advice/electric-double-layer-capacitors- guide?srsltid=AfmBOoqMNyeOSyT4zd5Aw3kmuuJnXUAuY8ngNluTyxBO5yVHDxOMM8aS 解説しよう: 電気二重層コンデンサとは?
  8. 使用技術 ( 3/4 ) ▪具体的にはなんなの? ・非常に静電容量がデカいコンデンサ 通常よく見る同じくらいの大きさの最大 4700μF (マイクロファラッド) 前述の製品は

    100 F (ファラッド) → 約 1万2000倍 ・しかし耐圧は低い 通常使う電解コンデンサは最低 16V 位 前述の製品は 2.7V 貯められるエネルギーの理論値 W = 1/2 * C * V2 [J] で計算すると... 364.5 [J] ・リチウムイオン電池のように使い方を間違えても爆発炎上しない。 →PL法などの対応を考えると魅力的である。 ・低温に強い 比較的安全と言われる、リン酸鉄リチウムイオン電池は低温に弱い。 弾の威力のはなし http://sweeper.a.la9.jp/gun/heisa/burret.htm (c) 赤塚不二夫
  9. 使用技術 ( 4/4 ) ▪具体的にはどう使うの? →専用ICあります。 LTC4041 2.5A スーパーキャパシタ・バックアップ・パワー・マネージャ https://www.analog.com/jp/products/ltc4041.html

    https://www.analog.com/jp/resources/evaluation-hardware-and- software/evaluation-boards-kits/dc2642a.html LTC4041 デモ用ボード 2.5A スーパーキャパシタ・バックアップ・ パワー・マネージャ ご立派な評価ボードもあります♪ ¥16,647@Digikey それでは設計!
  10. 回路図 (3/3) IC のステータスを オープンドレイン出力 →ラズパイのGPIOで 監視してバックアップ動作 の制御 評価ボードから アレンジしたポイント

    AC 100V- 240V対応の 出力 2A AC / DC モジュールを搭載 ・ヒューズ ・サージ保護 ・プッシュイン ターミナル を実装 電源入力 出力ターミナル
  11. L1 L2 L3 L4 アートワーク (2/2) ▪リファレンスデザイン ▪本報告の設計 二層 両面基板(銅箔

    35um t=1.6) を出来るだけGNDを分断しないように 設計(低コスト化と性能の両立を意識) 全4層基板 残りはベタGNDと配線層
  12. 完成品の外観 AC電源入力 100V 240V ステータス表示 LED 2A出力 AC/DC コンバータ 100F

    2.7V スーパーキャパシタ ×2 ステータス信号 等接続コネクタ DC電源供給&固定 秋月電子で購入可能 な端子(M3ネジ)
  13. 実デバイスでの評価 (1/4) ※当然ながら単独での評価は実施済み(報告省略) LPWA BG96 Cat M1/NB1/EGPRS Mini PCIe https://www.quectel.com/ja/product/lpwa-bg96-mpcie/

    Quectel Wireless Solutions LTE モジュール(USB接続) 裏面 Raspberry Pi Zero 2 基板間 信号連結部分 基板搭載前 ベースボード写真 W5500 Ethernet module 試作のため 市販モジュールを使用 テストベンチ → Raspberry Pi Zero 2 を搭載 USB 接続アダプタ を製作
  14. 実デバイスでの評価 (2/4) ・キャパシタ充電時間 1:31 ・バックアップ持続時間(USB未接続) 6:26 ・バックアップ持続時間 (USBキーボード、マウスドングル、ハブあり) 4:55 参考

    Raspberry Pi Zero 1 持続時間 ( USB接続なし ) 7:05 使用基板 Raspberry Pi Zero 2 WH 使用OS Raspberry Pi OS (64-bit) Release date: July 4th 2024 https://www.raspberrypi.com/software/ 検証条件 起動後安定状態になってから、 コンセントを引き抜いてカウント開始 報告前日、夜検証したばかりなので平均値 やバラつきは未検証
  15. 実デバイスでの評価 (3/4) GPSは アンテナの LNAが出来てるか 次第? LTEモデムは Linux 上から認識できたことを確認 基板に搭載したデバイスの動作確認

    SPI接続の Ethernet モジュールは Linux 上から認識 (eth0) 接続実験が成功したので、別デバイス で実績のある回路ブロックで再設計 (予定)
  16. まとめ ・屋外運用のエッジデバイスで必要性の高い、UPS機能付きの電源基板 を開発しました。 ・AC電源(100V-240V) を直接安全に接続でき、非常にコンパクトな防水 ケースにターゲットデバイスごと格納可能です。 その結果、市販の防雨ボックスと併用することで高い耐環境性と 信頼性でエッジデバイスの運用が可能となります。 ・今回、Raspberry Pi

    Zero 2 と LTE モジュール及び、Ethernet インター フェイスを搭載した基板でテストを行い、十分なバックアップ時間 を確保できることが確認できました。 ・今後の応用として、Raspberry Pi Compute module 4 や Nvidia Jetson などのハイパフォーマンスのエッジコンピュータに適用 できる可能性があります。そのためには電源仕様の検討などが必要です。 ・今回盛り込めなかった機能として、エネルギー残量が分らないため どれだけ電源シャットダウンにマージンがあるか不明という問題点 が残件としてあります。この件は、キャパシタ電圧をモニタリング する機能の搭載が必要だと考えています。なお、仕様にはそのための 仕込みは入れています(I2C インターフェイス)