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W55RP20-EVB-Picoで三菱電機製インバータを動かしてみた

 W55RP20-EVB-Picoで三菱電機製インバータを動かしてみた

第25回オープンエッジデバイス研究会
ソニークリエイティブラウンジ
2025/06/18(水) 19:00 〜 20:00
イベントリンク
https://openedgedevice.connpass.com/event/356193/

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K.Masaki

June 18, 2025
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  1. W55RP20-EVB-Picoで三菱電機製インバータを動かしてみた http://b-and-b-lab.jp/ 株式会社 B&B Lab. 代表 真崎 康平 [email protected] 2025.06.18

    発表 第21回オープンエッジデバイス研究会 @ソニークリエイティブラウンジ(SONY 品川) WIZnet-W55RP20 2025.06.18 インバータ デモ環境 駆動ターゲット モータ(200W)
  2. 〇概要 ・設立 2018年1月 ・資本金 300万円 ・主な業務 IoT機器の開発、サービス開発(現在スマート農業向けにフォーカス) http://b-and-b-lab.jp/ 〇代表取締役 眞崎

    康平(まさき こうへい) :ハードウェア開発担当 業務キャリア ・SONY半導体(鹿児島、熊本、福岡)で10年弱、イメージセンサ開発に従事 対応領域 画像処理ソフトウェア開発、ハードウェア制御(Visual C++, VBA) 製品評価手法開発(CCD/CMOSイメージセンサ) ハードウェア開発(アナログ、デジタル) ・風力発電パワーコンディショナ開発(4年) 九州大学 応用力学研究所との産学協働プロジェクトにて レンズ風車向けパワーコンディショナ(制御器)開発 大電力、高電圧回路設計 ・その他 医療ベンチャーetc. 〇共同設立者 中村 真理(なかむら しんり):クラウド、ファームウェア担当 業務キャリア ・バーテンダー ・診療放射線技師 ・ハイパーメディアクリエーター(自称) LINE API Expert
  3. IoT エッジデバイスの課題 (1/3) ▪ESP32 / M5 Stack などでプロトタイピングは非常に楽に、スケールも現実的に https://m5stack.com/ 市販製品採用例

    https://www.espressif.com/ ▪一方、FA / 農業向けでは有線 Ethernet が要求される 工場のセキュリティ問題 → 野良 WiFi NG 農業:2.4GHz帯 の電波が植物の水分に吸収され届かないおそれ WiFi インターフェイスがインターネット接続 / スマホとの親和性高い 作物の生育に通信状態が 左右される
  4. IoT エッジデバイスの課題 (2/3) 有線 Ethernet を使おうとした途端にスケールのハードルが上がる ▪プロトタイピング ▪農業向けのスケール化例 電子工作とプログラミング ESP32にEthernetシールドをつないで性能を確認

    ※実際には4層基板 (例)弊社自動潅水コントローラ ESP32 + W5500 が現実解(SPI接続) プロトタイピング用のモジュールで試作検証 課題 ・WiFi I/F 有線と重複 →コスト、セキュリティ ・SPI接続の信号ラインの設計が大変 →信号品質の再現性 ・W5500 ⇔ RJ45 コネクタの設計が大変 →信号品質、部品の入手性 ※パルストランス内蔵コネクタ 採用で幾らか難易度が緩和 ・有線Ethernetの設定手段 WiFi 経由がお手軽 ・プロセッサの性能が高い / 高機能
  5. IoT エッジデバイスの課題 (3/3) W5500-EVB-Pico-PoE W55RP20-EVB-Pico 3つのチップをSiP(System in Package)に統合 低コストの有線イーサネットのソリューションはないだろうか? https://docs.wiznet.io/Product/ioNIC/W55RP20/overview-jp

    →WIZNet W55RP20 が有望株! RP2040 ¥104 W5500 ¥299 W25Q16JVUXIQ ¥61 計 461円 ※各部品1000個ロット購入時 ・実装コストも含めるとW55RP20が安価 ・高速信号(SPI)がパッケージ内配線 のため実装の再現性がとりやすい ・部品管理、調達コスト 小売価格(1個) 572円 WIZNet 純正評価ボードで比較 チップ統合で回路設計のハードルが下がる いずれも秋月通商/スイッチサイエンス等で購入可能
  6. WIZNet W55RP20の機能紹介と開発上の課題(1/3) ADI社のiCouplerの例 参考 SiPの内部イメージ W5500側 RP2040側 W55RP20 Datasheet より引用

    RP2040 Datasheet より引用 課題: RP2040の目玉機能?である、 PIOインターフェイスで接続する前提の設計であるため 新規開発、検証が必要 RP2040 (Raspberry Pi Pico MPU) とW5500 (Ethernet I/F) と外付けフラッシュが統合 内部接続ブロック図
  7. WIZNet W55RP20の機能紹介と開発上の課題(2/3) メーカーのWIZNet では、 lwIP (lightweight IP)ベースの開発環境を正式にサポート、検証を行っている。 ただし、Arduino Ethernet ライブラリとの互換性はない。

    Ethernet ライブラリ互換で使える変換レイヤーが準備されている。 EthernetCompat.h (WIZNet の推奨するボードライブラリに内蔵) コード例 課題残件 〇MAC アドレス HW依存のユニークIDが必要 → RP2040 のAPIでフラッシュROM のユニークIDを読出サポート フラッシュのIDを加工して流用 →左コード例 ※インターネットに直結しない前提 (ローカルのネットワーク運用) であればテキトーでも重複なければ 問題は生じない
  8. WIZNet W55RP20の機能紹介と開発上の課題(3/3) 皆さんの本音:Web I/FでHWを操作したい!!!! どうしたらいい? 〇USER LED(GPIO19)操作 〇電源電圧モニタ(VSYS) :ADC3 〇ユーザ関数実行

    引数:パラメータ指定 返り値:実行結果 IPアドレス:ハードコーディング 〇Web 画面サンプル 電圧モニタ:1秒更新 User LED 点滅をチェックボックスで操作 ユーザー関数実行結果(ログ表示) https://github.com/Unicorn556/WebServerMain_W55RP20 コードはGitHubで 公開 ユーザー関数パラメータ →サンプルデモアプリ準備しました Web 実装内容 ・Web API 風エンドポイントでWebハンドラ実装 ・U/Iの動作は javascript で実装(プログラムで生成) ・機能を追加実装する場合は既存コードを例示し chatGPT 等に要望を指示すれば容易に対応可能 ▪サンプルデモ内容 雑なコードでスイマセン
  9. インバータ制御 ハードウェア編 (3/6) ▪エッジデバイス側 I/F ※今回専用基板を起こしましたが、 ユニバーサル基板で十分です RS485 トランシーバ RS485

    トランシーバ 〇W55RP20-EVB-Picoとの結線 → RS485 のインターフェイスを実装すればよい HW該当箇所 該当部分回路図 インバータ と接続 インバータ と接続 再掲:インバータ側ピンアサイン、接続方法 UART + Data Enable (DE) : 3線で接続 同一ピンアサインで 互換品多数 RJ45コネクタ
  10. インバータ制御 ハードウェア編 (4/6) ▪エッジデバイス側 I/F 詳細 RS485トランスミッタは5V 品が豊富 (3.3V品もあるが少ない) →5V品をマイコンの3.3V

    I/F に接続する際 対策が必要 抵抗分圧 分圧比 1.56 5V → 3.21V に分圧 マイコンの3.3V 入力に適合 レシーバ出力 トランスミッタ入力、Data Enable 入力 →マイコンの 0/3.3V 出力直結可能 Maxim(アナデバ) MAX485 データシートより抜粋 ※念の為データシートで確認 入力 ▪波形のオシロでの確認推奨 実際に以下のトラブル ・部品の実装ミス ・想定外のプログラム動作 シリアル通信終了前にプログラム上の処理が 終わる →DE(Data Eneble) が通信終了前に非アクティブ →バッファのフラッシュ処理必要 大体のところは ChatGPT は適切なコード 生成するが、チェックは甘いので実機確認大事
  11. インバータ制御 ハードウェア編 (5/6) ▪制御電源どうする問題 注 記 ②、⑧番ピンは、パラメータユニット用の電源です。 RS-485通信を行うときは、使用しないでください。 →ダメと言われれば 使いたくなるのが人情

    三菱電機汎用インバータ FREQROL-D700 パラメータユニット用電源負荷特性 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 0 100 200 300 400 500 600 負荷電流 [mA] 出力電圧 [V] 150mA @4.75V (公称値 -5%) 350mA @4.5V (公称値 -10%) 500mA でフの字特性 測定条件 負荷:自作電子負荷 (AliExpress市販基板改造) 測定器:DMM B-35T(OWON) ×2 ※5分程度ウォーミングアップ 〇公式の情報が無ければ、勿論リバースエンジニアリング 実測結果からの仕様の予想 ・電流定格は 150mA と思われる(※1) ・ピーク供給能力を定格予想値の 2倍の300mAと想定。 (※2) ・500mA で出力トリップ(※3) ※1: USB 2.0 規格では、5V±5% が許容範囲とされるので その許容値に準拠と仮定する。 ※2 : 最大電圧ドロップの許容値を-10% と仮定しそこから マージンを持たせた設定 ※3 : 挙動とキリの良い値であることから設計値だと思われる。 三菱電機汎用インバータ FREQROL-E700シリーズ 取扱説明書(応用編)[IB-0600274]
  12. インバータ制御 ハードウェア編 (6/6) ▪制御電源どうする 問題実機検証 〇実負荷としてWIZnet-W55RP20 を接続し検証 ・単独テスト(外部から5V 供給) Ethernet

    無効時 88mA / 有効時 140mA →推定定格電流範囲内 ・接続テスト(インバータ側から電流を供給) 供給電圧 4.78V (公称値 -4.4%) → VSYS Min 4.3V 範囲内 問題なし (※1) (※1)W55RP20-EVB-PICO https://docs.wiznet.io/Product/ioNIC/W55RP20/w55rp20-evb-pico Operation Conditionより 注意: 本検証は実機を解析して得られた検証結果を元に記載して おります。 動力を取り扱うため安全上問題ないか、各自の責任の元 またはメーカのサポートに問題の有無を確認してください。 4芯キャプタイヤ ケーブル(0.15sq) WIZnet-W55RP20 搭載ボード インバータ テストベンチ(後述) この基板が気になる方はこちら↑ 〇検証環境
  13. インバータ制御 ファームウェア編 (1/3) 三菱電機汎用インバータ FREQROL-E700シリーズ 取扱説明書(応用編)[IB-0600274] より引用 開発者向けの情報は公開されている.... が 問題点

    ・量が膨大(この例で 334 page) ・サンプルコードが古く(Visual C++6.0) 更新されてない、実践的でもない ・実機で試しながらでないと実質ムリ(Chat GPT でコードは作れるが完全ではない) 開発資料イメージ 三菱電機の製品サイトでDL可
  14. インバータ制御 ファームウェア編 (2/3) マニュアルをChat GPT の力を借りながら 読み解き Arduino のコードに実装 概要

    ・モデムなどのATコマンドに近い制御イメージだが可読性が低くターミナル経由の手動操作はムリ ・コマンドのパターンが複数あり実装が面倒(ステートマシンで処理分岐が妥当) ・処理失敗のリトライ、排他処理、実用上は非同期処理 must → マルチコアを活用し専用スレッドで処理、命令はキューに貯めて実行 三菱電機汎用インバータ FREQROL-E700シリーズ 取扱説明書(応用編)[IB-0600274] より引用
  15. インバータ制御 ファームウェア編 (3/3) 作りは荒いですが、GitHub でコードをシェアします 制御用コード (RP2040向け) 制御用クラスイメージ 使用方法イメージ 操作用

    U/I イメージ (Web U/I) モータ操作 回転数設定 稼働ステータスは リアルタイムに更新 (200msec 周期で更新) https://github.com/Unicorn556/WebServerMain_inv コードはGitHubで 公開 注記 ・現在 FREQROL-D700 シリーズのみ 動作が確認できています。 他の世代の製品に適用するためには 調整が必要な可能性があります。 ※CharGTPのアシストで容易?
  16. インバータ制御 周辺回路接続編 インバータは三相200V入力前提なので、100V で使う場合は200Vに昇圧が必要です。 ステップアップ トランス ステップアップトランス →海外向け電化製品を使用するための製品として市販 インバータ UVW(三相)

    +E(接地) AC100V(単相) ステップアップ トランス 適宜ブレーカーなどの保護を を入れてください。 AC200V (単相) 電源は 任意の2端子 に接続してく ださい (単相入力) 三相誘導モータ インバータ
  17. まとめ ・WIZNet W55RP20 は エッジデバイスの有線Etnernet ソリューションに 有用だと確認できました。(コスト、設計の簡素化などの観点) ・ 評価ボード W55RP20-EVB-Pico

    を使った 有線 Ethernet 向けの Web I/F を持つ Arduino サンプルを開発しました(公開予定) ・ RS485 経由で三菱電機FA向けインバータが上記環境で制御可能なことを 確認できました。