Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

使える!数学!応用数学入門 / Introduction of applied mathematics

使える!数学!応用数学入門 / Introduction of applied mathematics

名城大学オープンキャンパス2022(7月30日,31日),情報工学部模擬講義の内容です.
・speakerdeckの仕様で動画が再生できません.Twitterに上げてあるものを見てください.
https://twitter.com/konakalab/status/1553570962364215296

konakalab

July 31, 2022
Tweet

More Decks by konakalab

Other Decks in Education

Transcript

  1. 使える!数学! 応用数学入門 情報工学部情報工学科 准教授 小中 英嗣(こなか えいじ)

  2. 数学を「使う」 高校で勉強する数学, どんな場面で使えるの?

  3. 数学を「使う」 今日の内容:数学が「現象を記 述すること」に使える 「ニュートンの運動方程式」からス タート 変数,関数,微分,指数関数,代数 方程式,複素数,オイラーの公式,三 角関数,ベクトルと内積,… 高校で勉強する数学, どんな場面で使えるの?

  4. ニュートンの運動方程式: 動きの規則とその原理 ニュートンの運動方程式 𝑚𝑎 = 𝐹 「質量𝑚の物体に力𝐹が加わったとき の加速度𝑎がこのように決まる」という 主張 今のところこの規則に反する現象は

    観測されていない 加速度とは? (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) (加速度)=(速度の変化量)/(経過時間) 数式を使って書ける
  5. 変数と関数とグラフ 変数と関数 変数:値が変わる量を文字(記号)で 表す仕組み 時間,位置,速度,加速度⇔𝑡, 𝑥, 𝑣, 𝑎 関数:変数同士の依存関係を表すし くみ

    「位置が時間ごとに変化する」⇔𝑥(𝑡) 簡潔に・わかりやすく表現する工夫 関数とグラフ グラフ:関数で結びつけられた変数 の関係を図示したもの
  6. 速度と微分 (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) 経過時間⇔Δ𝑡 𝑣 = 𝑥 𝑡 + Δ𝑡 −

    𝑥(𝑡) 𝑡 + Δ𝑡 − 𝑡
  7. 速度と微分 (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) 経過時間⇔Δ𝑡 「瞬間の」⇔Δ𝑡 → 0 𝑣 = lim Δ𝑡→0

    𝑥 𝑡 + Δ𝑡 − 𝑥(𝑡) 𝑡 + Δ𝑡 − 𝑡
  8. 速度と微分 (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) 経過時間⇔Δ𝑡 「瞬間の」⇔Δ𝑡 → 0 𝑣 = lim Δ𝑡→0

    𝑥 𝑡 + Δ𝑡 − 𝑥(𝑡) 𝑡 + Δ𝑡 − 𝑡
  9. 速度と微分 (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) 経過時間⇔Δ𝑡 「瞬間の」⇔Δ𝑡 → 0 微小な変化量⇔変数の前に𝑑をつけ る “difference” 𝑣

    = 𝑑𝑥 𝑑𝑡
  10. 速度と微分 (速度)=(位置の変化量)/(経過時間) 経過時間⇔Δ𝑡 「瞬間の」⇔Δ𝑡 → 0 微小な変化量⇔変数の前に𝑑をつけ る “difference” ×「微分を使うと位置から速度

    を求められる」 ◎「位置から速度を求める計算 を一般化したものが微分である」 加速度は位置を時間で二階微分 𝑣 = 𝑑 𝑑𝑡 𝑥, 𝑎 = 𝑑 𝑑𝑡 𝑣 = 𝑑2 𝑑𝑡2 𝑥
  11. ばねを含む運動方程式 フックの法則 「ばねを長く伸ばすには力がたくさん 必要」 ばねは伸ばしたら縮む⇔伸びと力は 逆向き⇔負号がつく ばねにつながれたおもりの運動方程式 𝑚𝑎 = 𝐹,

    𝐹 = −𝑘𝑥 ֞ 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥 𝑥(𝑡)とその微分を含んだ方程式: 「微分方程式」 物理の問題は微分方程式を解くこと である 𝐹 = −𝑘𝑥
  12. 微分方程式を解くための (高校での)準備 「微分したらどうなる関数」を知りたいのか? 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥 「微分したら自分自身の定数倍 になる関数」がわかるとうれしそ

    う 知ってる?
  13. 微分方程式を解くための (高校での)準備 「微分したらどうなる関数」を知りたいのか? 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥 「微分したら自分自身の定数倍 になる関数」がわかるとうれしそ

    う 知ってる?  𝑑 𝑑𝑡 𝑥 𝑡 = 𝑐𝑥 𝑡 高校数学っぽい書き方だと…  𝑓 𝑥 ′ = 𝑎𝑓(𝑥)
  14. 微分方程式を解くための (高校での)準備 「微分したらどうなる関数」を知りたいのか? 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥 「微分したら自分自身の定数倍 になる関数」がわかるとうれしそ

    う 知ってる?  𝑑 𝑑𝑡 𝑥 𝑡 = 𝑐𝑥 𝑡 高校数学っぽい書き方だと…  𝑓 𝑥 ′ = 𝑎𝑓(𝑥) 𝑒𝑎𝑥 ′ = 𝑎𝑒𝑎𝑥
  15. 指数関数と𝑒(ネイピア数)を 知っておくべき理由 Q: どうして𝑒って知らないといけない の? A: 𝑒𝑎𝑥が上の条件を満たす特別にき れいな関数だから. 余談: 𝑒は物理ではなく金融(福利の

    利息の計算)の問題を考える必要に迫 られて導出された定数 𝑒𝑎𝑥 ′ = 𝑎𝑒𝑎𝑥
  16. 微分の記号として 𝑑 𝑑𝑥 が便利な理由 𝑒𝑎𝑥 ′ = 𝑎𝑒𝑎𝑥

  17. 微分の記号として 𝑑 𝑑𝑥 が便利な理由 𝑑 𝑑𝑥 𝑒𝑎𝑥 = 𝑎𝑒𝑎𝑥

  18. 微分の記号として 𝑑 𝑑𝑥 が便利な理由 「左から何かを施す演算」として見通しが良い. 「左から微分したもの」(左辺)と「左から定数をかけたもの」(右辺) が「等しい」(等号)という主張,がわかりやすい 𝑑 𝑑𝑥 𝑒𝑎𝑥

    = 𝑎𝑒𝑎𝑥
  19. 微分の記号として 𝑑 𝑑𝑥 が便利な理由 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥

  20. 微分の記号として 𝑑 𝑑𝑥 が便利な理由 関数𝑥(𝑡)として, 「二階微分したら」(左辺) 「自分自身の負の定数倍」(右辺) 「と等しくなる」(等号) が解である(それを見つけなさい!) という主張.

    𝑑2 𝑑𝑡2 𝑥 = − 𝑘 𝑚 𝑥
  21. 指数関数とばねの問題 ⇒代数方程式(二次方程式) 𝑚 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝑘𝑥, 𝑥 𝑡 =

    𝐶𝑒𝑠𝑡 ֞ 𝑚𝐶𝑎2𝑒𝑠𝑡 = −𝑘𝐶𝑒𝑠𝑡 ֞ 𝑚𝑠2 = −𝑘 𝑠の二次方程式が現れた! 𝑚𝑠2 = −𝑘, ∴ 𝑠 = ±𝑗 𝑘 𝑚 (𝑗2 = −1) 複素数(虚数)が現れた!
  22. 二次方程式と複素数を 知っておくべき理由 運動方程式は二階微分方程式 指数関数が解の候補 二次方程式に帰着される⇒解けない 二次方程式があると困る 波を理解するために必要

  23. 指数関数の肩に複素数って,何なの? 𝑠 = ±𝑗 𝑘 𝑚 = ±𝑗𝜔0 𝑥 𝑡

    = 𝐶1 𝑒𝑗𝜔0𝑡 + 𝐶2 𝑒−𝑗𝜔0𝑡 知識:ばね・重り系なので位置は単 振動となるはず オイラーの公式 利点:オイラーの公式を使って指数 関数と複素数を組み合わせる ⇒振動とその微積分が簡単に書ける ようになる 𝑒𝑗𝜔𝑡 = cos 𝜔𝑡 + 𝑗 sin 𝜔𝑡
  24. 確認:2階微分してみる 三角関数 𝑥 𝑡 = 𝐴 sin 𝜔𝑡 ֞ 𝑑2𝑥

    𝑑𝑡2 = −𝐴𝜔2 sin 𝜔𝑡 = −𝜔2𝑥(𝑡) 指数関数 𝑥 𝑡 = 𝐶𝑒±𝑗𝜔𝑡 ֞ 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = −𝐶𝜔2𝑒±𝑗𝜔𝑡 = −𝜔2𝑥(𝑡) どちらも「二階微分したら自分自身の負の定数倍になる関数」 𝑒𝑗𝜔𝑡 = cos 𝜔𝑡 + 𝑗 sin 𝜔𝑡
  25. 電気回路を微分方程式で書いてみる 電磁誘導 「電流の変化を妨げる方向に誘導起電 力が生じる」 𝑅𝐼 𝑡 + 𝐿 𝑑𝐼 𝑑𝑡

    = 𝐸(𝑡)
  26. 抵抗・コイル回路の微分方程式を 複素数だけで解いてみる 𝐸 𝑡 = 𝐸0 𝑒𝑗𝜔𝑡 𝐼 𝑡 =

    𝐼0 𝑒𝑗𝜔𝑡 𝑅 + 𝑗𝜔𝐿 𝐼0 𝑒𝑗𝜔𝑡 = 𝐸0 𝑒𝑗𝜔𝑡 ∴ 𝐼0 = 𝐸0 /(𝑅 + 𝑗𝜔𝐿) 𝑅𝐼 𝑡 + 𝐿 𝑑𝐼 𝑑𝑡 = 𝐸(𝑡)
  27. 抵抗・コイル回路の微分方程式を 複素数だけで解いてみる(続き) 𝐼0 = 𝐸0 𝑅+𝑗𝜔𝐿 正弦波を確定させる3つの要素 振幅𝐴,位相𝜃,角周波数𝜔 振幅(比):複素数の絶対値 位相(差):複素数の偏角

    角周波数:変わらない 𝐼0 = 𝐸0 ⋅ 1 𝑅 + 𝑗𝜔𝐿 = 𝐸0 𝑅2 + 𝜔𝐿 2 ∠𝐼0 = ∠𝐸0 + ∠ 1 𝑅 + 𝑗𝜔𝐿 = ∠𝐸0 − ∠(𝑅 + 𝑗𝜔𝐿) 𝐴 sin(𝜔𝑡 + 𝜃) 複素数の四則演算だけで 振幅と位相の変化がわかる
  28. 複素数の絶対値と偏角の関係を 知っておくべき理由  𝑧1 𝑧2 = 𝑧1 𝑧2 , ∠

    𝑧1 𝑧2 = ∠𝑧1 + ∠𝑧2 三角関数(正弦波)が解となるような微分方程式を四則演算だ けで解ける 複素数の絶対値と偏角が正弦波の振幅比と位相差に対応
  29. 複素数の絶対値と偏角の関係を 知っておくべき理由  𝑧1 𝑧2 = 𝑧1 𝑧2 , ∠

    𝑧1 𝑧2 = ∠𝑧1 + ∠𝑧2 三角関数(正弦波)が解となるような微分方程式を四則演算だ けで解ける 複素数の絶対値と偏角が正弦波の振幅比と位相差に対応 人類が現在持ちうる,最も簡潔で簡単な微分方程式の解法 ×複素数,なんだかよくわからないし存在しないとか言われている し勉強するの無駄じゃないの…? ◎複素数まで数を拡張するだけなのに,四則演算で微分方程式が 解けるなんて感動的!!!!!
  30. 微分方程式を複素数で解く例 𝑑𝑥 𝑑𝑡 + 𝑥 = sin 𝑡 ⇒ 𝑗

    + 1 𝑋0 = 1 ⇒ 𝑋0 = 1 1+𝑗 ⇒ 𝑋0 = 1 2 , ∠𝑋0 = − 𝜋 4 ∴ 𝑥 𝑡 = 1 2 sin 𝑡 − 𝜋 4 (検算) 𝑑𝑥 𝑑𝑡 = 1 2 cos 𝑡 − 𝜋 4 , 𝑑𝑥 𝑑𝑡 + 𝑥 = 1 2 cos 𝑡 − 𝜋 4 + 1 2 sin 𝑡 − 𝜋 4 = sin 𝑡 = (右辺) 複素数の四則演算だけで 振幅と位相の変化がわかる
  31. ここからは駆け足で! ベクトルと内積と分解 ベクトルの分解 ベクトルの内積 Ԧ 𝑥 Ԧ 𝑒 𝐿 =

    Ԧ 𝑥 cos 𝜃 = Ԧ 𝑥 ⋅ Ԧ 𝑒 Ԧ 𝑒 𝜃
  32. ここからは駆け足で! ベクトルと内積と分解 直交ベクトルへの分解  Ԧ 𝑥 = Ԧ 𝑥 ⋅

    𝑒1 𝑒1 + Ԧ 𝑥 ⋅ 𝑒2 𝑒2 前提  𝑒1 = 𝑒2 = 1  𝑒1 ⋅ 𝑒2 = 0 𝑒1 𝑒2 Ԧ 𝑥
  33. 内積を関数に拡張する 関数の内積 内積:同じ位置の要素の積を足す  Ԧ 𝑝 ⋅ Ԧ 𝑞 =

    𝑝𝑥 ⋅ 𝑞𝑥 + 𝑝𝑦 ⋅ 𝑞𝑦 直交関数への分解 前提  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 0 𝑖 ≠ 𝑗  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 1 𝑖 = 𝑗 𝑓, 𝑔 = න 𝑎 𝑏 𝑓 𝑥 𝑔 𝑥 𝑑𝑥 𝑓 𝑥 = ෍ 𝑛=1 ∞ 𝑓 𝑥 , 𝑒𝑛 𝑥 𝑒𝑛 (𝑥)
  34. 内積を関数に拡張する 直交関数への分解 前提  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 0 𝑖

    ≠ 𝑗  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 1 𝑖 = 𝑗 𝑓 𝑥 = ෍ 𝑛=1 ∞ 𝑓 𝑥 , 𝑒𝑛 𝑥 𝑒𝑛 (𝑥) 直交ベクトルへの分解 𝑒1 𝑒2 Ԧ 𝑥
  35. 内積を関数に拡張する 直交関数への分解 前提  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 0 𝑖

    ≠ 𝑗  𝑒𝑖 ⋅ 𝑒𝑗 = 1 𝑖 = 𝑗 𝑓 𝑥 = ෍ 𝑛=1 ∞ 𝑓 𝑥 , 𝑒𝑛 𝑥 𝑒𝑛 (𝑥) 直交ベクトルへの分解 𝑒1 𝑒2 Ԧ 𝑥 ベクトルの分解→関数の分解 につながる
  36. 正弦波の和でいろいろな関数を作る 赤線の関数を異なる円の 和で作る 「フーリエ級数展開」

  37. 正弦波の和でいろいろな関数を作る 4 𝜋 sin 𝑡 + 1 3 sin 3𝑡

    + 1 5 sin 5𝑡 + ⋯
  38. 正弦波の和でいろいろな関数を作る 赤線の関数を異なる円の 和で作る 「フーリエ級数展開」

  39. 正弦波の和でいろいろな関数を作る 赤線の関数を異なる円の 和で作る 「フーリエ級数展開」

  40. 正弦波の和でいろいろな関数を作る 赤線の関数からギザギザ の部分(雑音)を取り除く (ディジタル)「フィルタ」 音声・画像処理の一例

  41. さらに駆け足!:漸化式 漸化式 𝑛を時刻だと思うと… 例:𝑎𝑛 = 𝑘𝑎𝑛−1 + (1 − 𝑘)

  42. さらに駆け足!:漸化式 漸化式 「時間とともに変化する規則」の計算 実は微分方程式にとても近い 音声/画像処理に使われている 𝑛を時刻だと思うと… 例:𝑎𝑛 = 𝑘𝑎𝑛−1 +

    (1 − 𝑘)
  43. 漸化式を使った音声処理 (のシンプルな例) 𝑏𝑛 : 元の音 𝑎𝑛 :処理後の音 𝑎𝑛 = 0.3259𝑎𝑛−1

    + 0.3375 𝑏𝑛 + 𝑏𝑛−1
  44. 漸化式を使った音声処理 (のシンプルな例) 𝑏𝑛 : 元の音 𝑎𝑛 :処理後の音 𝑎𝑛 = (もうちょっと複雑な式)

  45. 30分では語りつくせませんが… 「勉強」と「研究」 「勉強」と「研究」はつながっている 高校までの数学・物理は情報工学の 強力な武器! 「受験のため」ではもったいない!! △研究では今まで全く知らない高度 な手法を使う ◎研究では「すでに知っている/知ら れている方法」で解けるかどうかを最

    初に検討 しっかり数学を学んでから大学に来てください! 数学が「役に立つ」日々が待っています!!
  46. 教員SNSなど Twitter@konakalab  https://twitter.com/konakalab Webサイト https://www-ie.meijo- u.ac.jp/~konaka/index.html 発表済みスライド https://speakerdeck.com/konakalab イラスト素材

    「いらすとや」 https://www.irasutoya.com/