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守る「だけ」の優しいEMを抜けて、 事業とチームを両方見る視点を身につけた話

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March 03, 2026

守る「だけ」の優しいEMを抜けて、 事業とチームを両方見る視点を身につけた話

「チームを守ること」に徹していたEMが、事業の厳しい要求と向き合う中で、サーバントリーダーシップの限界にぶつかり、自ら
  先頭に立つスタイルへ転換した経験談です。

  4人体制での生存戦略、新規プロジェクトでの即断即決への切り替え、そして介入のしわ寄せ――「盾の時代」と「槍の時代」を経て、DCF法をヒントに事業貢献とピープルマネジメントを同じ軸で捉える視点にたどり着くまでの話をしています。

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Mitsui

March 03, 2026
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Transcript

  1. この資料の構成 PA RT 1 — 盾の時代 崩壊寸前のチームを「生存」させるまで PA RT 2

    — 槍の時代 新規プロジェクトで「前に進める」に振り切った話 PA RT 3 — 判断軸 守りと攻めの迷いを整理する、自分なりの基準 Overview
  2. どう対応したか → 生存戦略としての「盾」 まずは「生き残ること」を最優先にした、徹底的な防御フェーズ。 外部の依頼を絞り込む 盾になり、チームを外圧から 守ることに徹する。開発リソースを 分散させず、生存のために一点集中。 WIP を極限まで絞る

    同時進行を減らし、 1 つずつ確実にやりきる。 スイッチングコストを排除する。 対話とモブプロで知識を共有 属人化を防ぎ、 4 人全員が動ける状態をつくる。 手戻りを削減し、品質を底上げ。 関連資料 — SpeakerDeck チームの立て直し施策をGoogle の「効果的なチーム」と見比べてみた https://speakerdeck.com/maroon8021/timunoli-tezhi-sishi-ce-wogoogleno-xiao-guo-de-natimu-tojian-bi-betemita Part 1 — 盾の時代
  3. 半年後の「成功」 チーム体制の回復 Before 4名 → After 8名 採用と異動によりメンバーが倍増。 「4 人の生存」状態から脱却し、体制を立て直した。

    デリバリーの安定 運用作業で手一杯の状態から脱却。 スプリントや数ヶ月単位の計画的実行が可能に。 この時点では、盾の戦略は正解だった。 Part 1 — 盾の時代
  4. 新規プロジェクトの始動 チームの立て直しが一段落した頃、別の新規プロジェクトが本格始動した。 過酷なロードマップ 3 ヶ月に一度、大きな山場(成果証明)が来るスケジ ュール。 START MILESTONE 急造の体制 自分が先行して進め、後からなんとか頭数を揃えた突

    貫工事の状態。 ドメイン知識の偏り 自分には知識があるが、他メンバーは少ない。属人化 の種がある状態でのスタート。 Me Member じっくりチームを作りたい。でも、現実はそれを待ってくれない。 Part 2 — 転換点 ? ? EM
  5. 私が信じていた「私にとっての理想のEM 像」 SUPPORT サーバントリーダーシップ チームの障害を取り除く メンバーが最大限パフォーマンスを発揮できるよう、環 境を整え、雑務を引き受け、背中を押す「支援者」に徹 する。 PSYCHOLOGICAL SAFETY

    ピープルマネジメントの徹底 心理的安全性の確保 1on1 を重視し、メンバーのキャリアや悩みに寄り添 う。個人の成長を第一に考え、信頼関係を構築する。 AUTONOMY ボトムアップの組織 権限委譲と自律 トップダウンの指示を避け、現場のメンバーが自ら考 え、決定できる自律的なチームを目指す。 「支えることさえやっていればいい」 事業の推進が大事なのはわかっていたが、 「ピープルマネジメントをやっているから」という理由で、厳しい現実と向き合いきれていなかった。 Part 2 — 転換点
  6. 「支援」が「停滞」に変わる時 支援 • 納得するまで待つ • 知識が揃うまで伴走する • 任せて自律を促す → 停滞

    ▲ 待つ間にも締め切りは近づく ▲ 伴走が間に合わない ▲ 学習を兼ねるため、どうしても遅い 「ピープルマネジメント」を、厳しい意思決定を避ける免罪符にしていた。 Part 2 — 転換点
  7. 変えたこと 意思決定の仕組みを、速度優先に切り替えた。 合意形成から即断へ 80 点取れるなら議論せず決める。可逆なら即 断、不可逆なら慎重に。 「決まらない」ことを 避ける。 采配と調整を一手に タスクの優先度・外部調整・不確実性の管理を

    まとめて引き取った。分散させるより判断が速 い。 設計の初動を引き取る ゼロから考える部分を巻き取る。詰まったら即 座に入り、チームが手を動かせる状態をつく る。 Part 3 — 槍の時代
  8. 変えなかったこと 全員で回す仕組みは、意図的に残した。 スプリント・デイリー・リファイ ンメント チームのリズムは壊さない。回す仕組みがある から走れる。スクラムのセレモニーは全て継続 した。 1on1 ・毎日の相談会 対話の場は守る。納得感が薄れるからこそ、意

    思決定の背景を伝える場が必要だった。 重要機能の実装はメンバーに 設計・実装・レビューは任せる。 「自分がつく った」実感を奪わない。EM が全部やったら前 と同じ。 全員で回す仕組みは守り、全員で決める仕組みは手放した。 Part 3 — 槍の時代
  9. 介入の収支 + 得たもの スピード 事業の前進速度が劇的に向上 成果 実績に基づく信頼の獲得 推進力 非常時を乗り越えた突破力 −

    しわ寄せが出たところ 透明性 意思決定プロセスのブラックボックス化 合意形成 メンバーの納得感の欠如 自律性 挑戦と失敗から学ぶ機会の損失 事業は進んだ。でも、この進め方にはしわ寄せもあると感じた。 Part 3 — 槍の時代
  10. DCF 法:企業価値の構造 V = ​ t=1 ∑ n (1 +

    r)t CF ​ t V  企業価値 CF  期間t のキャッシュフロー ≒ 事業成果 r  割引率 ≒ 不確実性・組織リスク t  時間 — 遅れるほど価値が目減りする EM の判断は CF (事業成果) と r (組織リスク) を通じて企業価値に影響する。 t Part 4 — 理論と哲学
  11. 企業価値の算定イメージ(DCF 法) 将来のフリーキャッシュフロー(FCF )を割り引いて合算したものが、企業価値。 企業 価値 FCF FCF FCF …

    FCF 現在 1年後 2年後 3年後 n年後 FCF(現在価値に割引後) 割引分(時間・リスクによる目減り) Part 4 — 理論と哲学
  12. 「事業貢献」= CF を大きくすること よく言う「ビジネス貢献」 。DCF の文脈では、分子のCF (事業成果)を大きくすること。 通常の事業成果 FCF t=1

    FCF t=2 FCF t=3 企業価値 = V → 事業成果を上げた場合 FCF t=1 FCF t=2 FCF t=3 企業価値 = V ▲ Part 4 — 理論と哲学
  13. 組織リスク(r )が企業価値を削る 同じ事業成果(CF = 100 )を3 年間出しても、組織リスクが高いと企業価値は大きく変わる。 同じCF r =

    5% 健全な組織 95 1年後 91 2年後 86 3年後 企業価値 V V = 272 r = 20% 属人化・信頼毀損 83 1年後 69 2年後 58 3年後 企業価値 V V = 211 ▼23% 現在価値(PV) 割引分 同じ成果を出していても、組織リスクの差が企業価値を分ける。 Part 4 — 理論と哲学
  14. 補足:本発表における「企業価値」の定義 金融理論をそのまま適用しているわけではなく、EM の意思決定を整理する思考モデルとして使っています。 「企業価値」という言葉の意図 厳密なDCF 法の V は「事業価値」を指しますが、本発表ではプロダクトだけでなく組織・文化・採用など会社全体の資産に責任を持つEM の視座を示すため、広義の「企 業価値」を採用しています。

    割引率 r = 組織リスク 金融上の r は資本コスト(不確実性) 。本モデルでは属人化・採用難・信頼毀損といった「組織リスク」を、事業成果が実現する確率を下げる不確実性として定義してい ます。 組織リスク(r )↑ → 不確実性が増大 → 企業価値(V )↓ 計算ツールではなく、判断の共通言語 短期的な成果(CF )か、中長期的な組織健全性(r )か ── トレードオフを「企業価値への寄与」という同じ土俵で比較するための思考モデルです。 Part 4 — 理論と哲学
  15. 判断の軸と、実行の引き出し 判断 WHAT 実行 HOW CF(キャッシュフロー)を上げる 事業価値の向上・売上貢献 組織リスク r を下げる

    不確実性の低減・持続可能性 先頭に立つ(槍) 自ら手を動かし突破する 支える(サーバント) メンバーの障害を取り除く 任せる(権限移譲) 信頼して結果責任を持つ 結論
  16. EM として意識したいこと 1 手広くやる必要がある 事業貢献「だけ」 、組織マネジメント「だけ」では不 十分。両方の視点を持ち、状況に応じて柔軟に動く 必要がある。 2 目線合わせ・期待値調整

    手広くやるからこそ、何に注力するかを周囲と合意 形成する。期待値のズレを防ぎ、信頼を積み重ねる ための必須アクション。 3 「自分がどうありたいか」 役割が曖昧で広範だからこそ、流されないための 「軸」が必要。自分のスタンスを明確にし、迷った ときの指針にする。 Engineering Manager とは、不定形な課題 に対し、自らの意志 で形を与えていく役割である。 結論
  17. fin