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研究プレゼンテーションの方法 / Academic presentation for beginners

研究プレゼンテーションの方法 / Academic presentation for beginners

Masao Takaku

June 05, 2018
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  1. 前提 / 心構え (1) • 発表は「分かってもらってなんぼ」  聴衆が理解できなかった箇所は発表者の責任  聴衆のレベルにあわせた発表内容を考えること

    • 聴衆の注意力、意識レベルは低い  スライドで見せて、話して聞かせ、身振りで伝える  一回聞き逃したらおしまいでは伝わらない  本当に重要なことは隠さずきちんとスライドに書き込む  逆にスライドに書いておけばよいというのも無謀なので、きち んと話の中で説明もする  スライド細部のニュアンスを理解できる聴衆は皆無  数か月以上にわたる研究の詳細を理解させることはきわめて困 難なので、「分かった気にさせる」ことを目標に  言いたいことは簡潔に  「コンパクトにインパクト」を旨とせよ 2
  2. 前提 / 心構え (2) • 聴衆の理解のためには、すべての要素を使って説明する  文字(スライド内容)+音声(発話)+身振り • 「原稿を読む」発表は厳禁

     その場で実演する意味が無い  聴衆の理解を妨げる  読み上げスピードは聴衆が理解するにはペースが速すぎる  詰まったり、つっかえてもよいので、各スライドで言うべきこ とを伝えられるよう練習を重ねてから発表に臨むこと  なにより、非プロフェッショナルな印象を与える • 発表は単体で完結すること  中間発表や最終発表では、前回の発表に言及しないこと  誰も覚えている人はいないので… 3
  3. まず始めに:発表時間 • 発表時間を確認する  着手発表: 7分発表+4分質疑 etc.  時間厳守 •

    スライド枚数の目安は1枚40~60秒  7分ならば: 8~12枚程度 • 何度も練習を繰り返して、時間内に収まることを確認し ておく  タイマーを使って、実際にぶつぶつと発話しながら練習する  原稿無しでも内容を伝えるためには何度も何度も読み上げる 練習をすること  黙読、音読を組み合わせて何度も練習する  当然話しづらい点は、スライド構成や言葉使い、スライド内容 をどんどん直しながら練習すること 4
  4. 体裁 (1) • スライドデザインは原則として「4:3」を使用  ワイド画面のスクリーンを用いる場合を除く • 全てのページにスライド番号を入れる  「12枚目のスライドにある図ですが…」といっ

    た指摘がしやすいように  スライド番号も見やすいよう18ポイント以上の 大きさとする • 全てのスライドページには異なるタイトルを 入れる  同じタイトルになる場合は 「提案手法 (1)」, 「提案手法 (2)」など番号を振る 5
  5. 配布資料 • 学内の発表会等ではスライド資料を配っ て、聴衆との情報共有に用いる  学会研究会等では予稿論文を用いる • 選択肢は2つ  スライドをそのまま資料として配布

     内容を文章でまとめたレジュメ資料を配布  望ましいのは後者(時間的余裕等により決定) • スライド配布資料の場合  1ページあたり:4, 6, 8スライドのいずれか 7
  6. 発表時の発話内容 • 理想形は台本を作ったうえで… • 台本を見ずに話せるように練習する  ただし、台本通りに「朗読する」ことを目的にしないこと • 聴衆の理解を促すために、適切な間を入れたり、声の トーン、メリハリに留意すること

    • スライド切り替え時の発話とタイミングにも気を配る  「はじめに、◦◦を説明します」  「次に、ここで述べた◦◦ですが…」  全体の流れの中での位置付けを示し、聴衆に配慮する • スライド内容と発話内容は対応づくようにすること  2文以上、スライドに書いていない内容を発話すると聴衆は 付いていけなくなるため、キーワード程度はスライドに書い ておこう  練習しながら、スライドと発話双方を修正する 8
  7. プレゼンテーションの構成 • 原則として、IMRAD形式 で構成する  Introduction  → Materials &

    Methods  → Results  → Discussion  → Conclusion • Introduction(= なぜこの 研究を行うのか?)  表紙/タイトル  研究の背景  研究の目的  関連研究 • Material & Methods (=具 体的に何をする?)  システムの全体像  研究の流れ  提案手法の詳細 • Results(=どんな結果が出 た?)  評価実験等の研究結果 • Discussion(=考察 / 結果 から言えること) • Conclusion(=結論)  まとめ  今後の予定(課題) 9
  8. 表紙/タイトル • 1枚目にはタイトルを示すスライド • 必ず入れるべき項目  タイトル  氏名 

    学籍番号  所属  日付  発表会の名称 • 発表時には簡潔に  氏名とタイトル程度でよい  「~発表させていただきます」は丁寧すぎる表 現なので禁止発話  単に「発表します」と言えばよい。 10
  9. スライド:研究の背景 • なぜ、あなたの研究をしなければならないかを簡潔 に述べること  研究のストーリーを意識する • 大上段に振りかぶって話を始める必要はない  「インターネットの普及と情報化社会の到来により…」

     これでは、全発表者が同じ話からするはめになる • 細かすぎる話から入ると意味が通用しない  「3次元データ共有におけるVDCとGCの課題を解決する ため…」  あまりに詳細な話やニッチな専門用語から話を始めると 当該領域のひと以外は聞く気をなくしてしまうので、専 門外のひとにも研究の意義が伝わるよう話を始めること 12
  10. スライド:研究の目的 • 最も重要なスライド!!!  聴衆が何を質問しようか考え、発表全体を振り 返る際には、このスライドを見ることにより、 あなたが何をしたいかを確認する • 発表全体で整合する必要あり 

    研究の背景、研究方法で述べる内容と矛盾しな いように  研究の背景から見て、この目的が導かれる妥当性は あるか?  この目的に沿って、研究手法が選択される妥当性は あるか? 13
  11. スライド:評価実験 / 研究結果 • 実験を行った場合は、実験の詳細を最初に説明する  対象としたデータ、クエリセット等  正解データは人手によるか、既存データか? 

    被験者(実験参加者): 人数、年齢等  実験計画(独立変数、依存変数、被験者{内,外}実験計 画等)も簡潔に説明する • 結果は図表でわかりやすく説明する  統計的分析結果も図表内に表現する  p値, 有意差, サンプルサイズなど  着目してほしい結果や個々に取り上げて議論したい結 果箇所には着色等して、見てほしい部分をアピールす ること 17
  12. スライド:参照文献 • 参照文献の役割:自分自身の主張を核心部に限定する  他者の主張に依拠する部分を明記することが参照文献の役割 • スライドタイトルは「参照文献」とする  「参考文献」では Further

    Readings  「引用文献」では Quotations のニュアンスがでてしまう恐れあり • スライド内容の中での参照方法は2種類のいずれか  番号:[1][2]  名前+年: [青山ら:2009]  いずれにせよ、最終スライドまたは該当スライド下部に書誌事項を 示す • 書誌情報の記載はSIST02準拠で • 「参照文献」スライドに対する口頭説明はせずともよい、もしく は、さっとスライドを流して「まとめ」スライドで質疑を受ける 20
  13. 質疑応答 • 発表とは違い、完璧に準備することは難しい • まずは聞かれたことに正面から答えること  「研究の意味が分からない」と聞かれたら、「わたしは◦◦という 点で意味がある」と答えればよい  「裏の意味」を忖度する必要はない

     「よく分からないのですが…」と言われたら、本当に分からないことがある という単純な質問と思って答える  意外なほど単純な前提を理解できておらず、研究全体を誤解した質問が出 ることも多い  自分の研究のアプローチを一番熟知しているのは発表者なので自信 をもって答えよう • ゼミでの発表練習の際に出た質問は確認しておくこと • 余裕があれば、発表用とは別の質疑用スライドを作っておきたい  詳細なデータなどスライドには入れられないが、質問受けた時に示 しながら議論ができるように  場合によっては、配布資料に「補足用スライド」として入れておく 21
  14. 発表の後に • 質疑応答メモ(3点セット)を作っておこう 1. 受けた質問 2. 自分が答えた内容  自分の質疑内容を発表者自身がその場でメモすることは難しい ので、共同研究者、ほかのゼミ学生に協力を求めておくこと

    3. あとから振り返って「本当はこう答えるべきだった」とい う答え  次回の発表に向け、また研究の進捗に役立てる • できれば、質問してもらった先生と話をしておく  相手が研究の意図を誤解している場合がある  または、自分の答え方が質問者の意図を誤解している場合も ある  説明が分かりづらい箇所があったか、見逃している関連研究 等の指摘を受けた場合はその詳細を必ず確認しておくこと 22