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ネット際での押し合いのメカニズムについての検討

 ネット際での押し合いのメカニズムについての検討

ネット際での押し合いのメカニズムについての検討
Discussion about the mechanics of joust above the net

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MinchiMinchi

May 01, 2021
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  1. ネット際での押し合いのメカニズムについての検討 Discussion about the mechanics of joust above the net

    鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 情報コース 三村泰成 1
  2. 目次 1.はじめに 2.押し合い(Joust)とは? 「力の釣合い」と「ボールの挙動」 3.ルールと実際の運用 4.空中で「押す」とは? 5.押し合い(Joust)の分類 6.押し勝つ条件 7.まとめ 2

  3. 解説 1.はじめに 3 https://www.fivb.org/ https://www.fivb.org/ https://www.facebook.com/VolleyballWorld/ 1. 現行ルールではダブルフォールトがないので「押し合い(ボールが静 止)」の後にプレーが継続する. 2.

    一般的には,「押し勝った側」が勝つ傾向にある. 3. 高速度カメラで見ると,「最後まで触ったのは押し勝った側」という事 例が増えている. →チャレンジ案件ではないはず⁉ 力学的に何が起きているかを考察する ルールの運用や解釈はさておき, 何が起きているかを考察する.
  4. 2.押し合い(JOUST)とは? 「力の釣合い」と「ボールの挙動」 4

  5. 2.1 「押し合い(Joust)」という状態 5 選手A 選手B • Joust: 馬上の一騎打ち. • 昔はネット上で同時に触ってボールが停止すると

    「ダブルフォールト」 • 現在は,ボールが停止してもプレーを継続. 現在のバレーボールでは,「押し合い(一騎打ち,Joust) が頻繁に繰り広げられている.
  6. 解説 2.2 ボールに作用する力に着目 (ボールが止まる) 選手A 選手B FBD(Free Body Diagram) 自由物体図

    6 ボールに作用する力のみを考 える. 着目する物体が宇宙空間に浮 いている図をイメージし,その物 体のみの力の釣合いを考えた ものを「自由物体図」と呼ばれ る. ボールは静止しているので左 右から同じ大きさ,同じ方向の 力が作用しているはずである.
  7. 解説 2.3 選手Aに作用する力に着目 (ボールが止まる) 7 選手A 作用・反作用 FBD 選手B 作用・反作用

    FBD 今度は選手A,選手Bについて 着目する. 選手A,選手Bともにボールから, 押される力が発生し,同じ大き さで逆方向の力がそれぞれに 作用することとなる.
  8. 解説 2.4 ボールに作用する力に着目 (選手Bが押し勝つ) 選手A 選手B FBD 8 :力ベクトル :ボールの移動方向

    選手Bが押し勝つ場合を考える. ボールが動くためには,選手B が選手Aよりも大きな力で押す 必要がある. 力の大きい方向に加速するは ずである. 力がボールに作用すれば, ボールは加速します.
  9. 解説 3.ルールと実際の運用 9 RULES OF THE GAME VOLLEYBALL CASEBOOK 2020

    Edition 3.15 After a simultaneous contact above the plane of the net, the ball landed outside the court of team A. Who gets next service? Ruling If the contact is truly simultaneous by opponents exactly above the net, where both players have the right to play the ball and it lands outside a court, it is the fault of the team on the opposite side. Team A gets service. ネット上で同時の接触後,そのボールがコート外に落ちた場合,ネットを基準にボー ルの反対側の選手が振れたものとし,落ちた反対側のチームの反則とする. チームA チームB チームA チームB Aの得点 Bの得点 押し勝った方の得点に なることが多い. 実際の運用 押し勝った方が最後に 触っていることが多い. ビデオ判定に持ち込まれた場合 ルール ルール上は,ボールがコート外 に落ちた場合,最後にボールを 触ったチームの反対側のチー ムのポイントとなる. ネット上で同時に触った場合は, 押し勝った側のボールがアウト であれば,押し負けた側のポイ ント,インであれば押し勝った側 のポイントになるようである. しかしながら,現行では,ほとん どすべて「押し勝った側」のポイ ントになっている. 肉眼では,「押し負けた側が 最後に触っている」ように見え ており,そのような判定になっ ているようである.
  10. 4.空中で「押す」とは? 10

  11. 解説 4.1 空中で何もせずに押されると… 11 空中で手を押されると,身体重 心を中心に回転しながら後方飛 ぶはずである. 何もしなければ押し返すことはで きない. では,どうやって,押し返してい

    るのか?
  12. 解説 4.2 固定されたボールを押す time force 力の時間推移 12 状態1 状態2 図のように床に支柱設置されて

    おり,その先にボールが固定さ れているとする. 状態1ではジャンプしてボールに 触っているだけである. 手でボールを押すためには,状 態2のように,下肢で角加速度 を発生させてあげる必要がある. 時間にすると,押せるのは,おそ らく,ほんの一瞬である.おそら く 0.2秒程度くらいだと思われる.
  13. 解説 4.3 空中で互角に押し合う 13 選手A 選手B time force 力の時間推移 time

    force 選手A 選手B 空中で互角に押し合うには,全く 同じタイミングで押し合う必要が ある. 選手Aと選手Bが押し合ったとし て,ここで,横軸に時間,縦軸に 力としたグラフを考える. 力の時間推移は,全く同じにな る.作用反作用の関係で,必ず, タイミングは,ほぼ,一致する. このグラフの面積のことを「力 積」と呼ぶ.
  14. 解説 4.4 「後押し」側が押し勝つ 14 選手A 選手B time force 力の時間推移 time

    force 選手A 選手B 選手Bが選手Aよりも,一瞬だけ, 遅れて押し始める場合を考える. 点線がマックスパワーで押せた 時の力積とすると,選手Aは,自 分の能力を発揮することはでき ず,選手Bの方が少しだけ長く押 せることとなる. 純粋な押し合いの場合,「後出 し」が有利になる.
  15. 5.押し合い(JOUST)の分類 15

  16. 解説 5.1 Joust(パターン1) 16 先手(スパイカー): 片手で持ってプッシュして押し出す. 後手(ブロッカー): スパイクコースを塞ごうとする.力 のベクトルを合わせられず,簡単 に押し負ける.

    先手が押し勝ち 目視の判定: 先手のポイント. ビデオ判定: 先手が最後まで触っていると判定. ボールがアウトであれば,後手の ポイント. 先手 後手 :力ベクトル :ボールの移動方向
  17. 解説 5.2 Joust(パターン2) 17 先手 後手 先手(スパイカー): 片手で持ってプッシュして押し出す. 後手(ブロッカー): 力のベクトルを合わせ,ボールを

    持って押し返す. 後手が押し勝ち 判定: 後手のポイント.
  18. 解説 5.3 Joust(パターン3) - その1 - 18 先手 後手 先手(スパイカー):

    片手で持ってプッシュした後,(図 はその2)外に弾き出す. 後手(ブロッカー): プッシュに対応して押し返すが, 「弾く」に対応できず. 後手が押し勝ち <その2につづく>
  19. 解説 5.3 Joust(パターン3) - その2- 19 <その1からのつづき> 目視の判定: 現行であれば,「コート外のどこ に出そうが先手側のポイント」

    ビデオ判定: 最後に触ってるのは後手になる ことが多いが,ほぼ,同時. 先手 後手
  20. 解説 5.4 Joust(パターン4) 20 先手: 両手で持ってプッシュして押し出す. 後手: コースを塞ごうとする.力のベクト ルを合わせられず,簡単に押し負 ける.

    先手が押し勝ち 目視の判定: 先手のポイント. ビデオ判定: 先手が最後まで触っていると判定. ボールがアウトであれば,後手の ポイント. 先手 後手
  21. 解説 5.5 Joust(パターン5) 21 先手 後手 先手: 両手で持ってプッシュして押し出す. 後手: 力のベクトルを合わせ,プッシュに

    対応して両手で持って押し返す. 後手が押し勝ち (純粋な押し合いの場合は後 出しが有利) 判定: 後手のポイント. 一般的に想像する「押し合い」 とは,この状態かもしれない.
  22. 解説 5.6 Joust(パターン6) -- その1-- 22 先手 後手 先手: 両手で持って前方にプッシュ

    →別方向に弾き出す(押し出す). (図はその2) 後手: プッシュに対応して両手で押し返 す. <その2につづく>
  23. 解説 5.6 Joust(パターン6) -- その2-- 両手で持って押し出す 前方にダンクシュート 23 <その1からのつづき> 後手が押し勝ち

    目視の判定: 現行であれば,「コート外のどこ に出そうが先手側のポイント」 ビデオ判定: 最後に触ってるのは先手になる. ボールがアウトであれば後手の ポイント.
  24. 解説 5.7 Joust(パターン7) -- その1-- 24 先手: 両手で持って前方にプッシュ →後方に放り出す. (その2に続く)

    後手: プッシュに対応して両手で押し返 す. <その2につづく>
  25. 解説 5.7 Joust(パターン7) -- その2-- 両手で持って 後方に投げ捨てる 25 <その1からのつづき> 先手が一方的に勝つ.

    目視の判定: 現行であれば,「コート外のどこ に出そうが先手側のポイント」 ビデオ判定: 最後に触ってるのは先手になる.
  26. 解説 6.押し勝つ条件 26 1. 先手: 1. 相手に押させない(力のベクトルを合わせない). 2. こちらが積極的にボールを持って,相手が持てないよ うにする.

    2. 後手: 1. 先手がやってくることを先読みする. 2. 力のベクトルを合わせ「押し合い」に持ち込む. 3. 「押し合い」に持ち込めば,後手も持つことが出来る. 4. 先手のやることを読み切ることが出来れば,後手にも 勝算はあり,場合によっては,後手が有利になる. 先手,後手の勝つ条件 をまとめてみました.
  27. 7.まとめ 27 • 押し合い(Joust)という力学現象を明らかにした. – 「力の釣合い」と「ボールの挙動」 • ルールと実際の運用 • 空中で「押す」とは?

    • 押し合い(Joust)の分類 • 押し勝つ条件 • まとめ