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NAVITIMEの経路はこうして作られる

 NAVITIMEの経路はこうして作られる

2018/02/28に開催された「ITS Tech Study #01」で発表した資料です。

NAVITIME JAPAN
PRO

February 28, 2018
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Transcript

  1. NAVITIMEの経路はこうして作られる
    ~4100万人の移動を導く経路探索の流儀~
    株式会社ナビタイムジャパン
    ルートグループ 福士 達央
    2018/2/28

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  2. アジェンダ
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     自己紹介・会社紹介
     経路探索エンジン紹介
     種類
     要素
     コストモデル
     経路探索開発のポイント
     経路品質
     性能
     評価方法
     今後

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  3. 自己紹介
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  4. 自己紹介
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     福士 達央(ふくし たつおう)
     経歴
     2008 ナビタイムジャパン新卒1期生として入社、現在10年目
     2008-11 海外地図データ開発
     2011-17 道路系経路探索開発
     2015-17 横断PJ PM 地図リプレイス/台湾トータルナビ対応
     2017- 道路系経路探索 PM
     スキル
     C/C++
     地図データ
     アルゴリズム
     リバースエンジニアリング
     プロジェクトマネジメント
    野球部 港区2017秋大会優勝

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  5. ナビタイムジャパン紹介
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  6. ナビタイムジャパン紹介
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     基本情報
     社員数: 400名
    (2018年2月時点)
     平均年齢: 31.2歳
    (2017年9月時点)
     エンジニア:80%
    (2017年9月時点)
     事業内容
     コンシューマ系(公式・協業)
     ユーザ数
     延べ月間UU数:4100万人
    (2017年12月末時点)
     有料会員数:480万人
    (2017年12月末時点)
     法人系

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  7. ナビタイムジャパン紹介
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     会社の成り立ち
     社長・副社長が経路探索エンジンの研究者
     1998年に世界初のトータルナビゲーションが完成
     2000/03/01 ナビタイムジャパン設立
     経営理念
     「経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する」
     ナビタイムにとっての経路探索
     経路探索の技術を軸に事業を展開
     コア技術である経路探索には強いこだわり
    本日はその経路探索の開発の裏側を
    こっそりお教えします

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  8. 経路探索エンジン紹介
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  9. 経路探索エンジン紹介 ~種類~
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    公共交通 道路

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  10. 経路探索エンジン紹介 ~種類~
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    公共交通 道路
    本日は
    こちら

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  11. 経路探索エンジン紹介 ~要素~
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    経路探索
    アルゴリズム
    NWデータから
    最適経路を
    高速に算出する技術
    コスト
    計算
    どの道路を
    通るのが良いか
    価値を決める技術
    道路
    NWデータ
    様々な属性を含む
    リンク・ノードで
    モデル化した地図
    ・理論的
    ・情報工学
    ・グラフ理論
    ・経験的
    ・交通工学
    ・心理学
    リンク/ノード単位で
    コスト取得
    どのような道路か
    属性を取得
    リンク・ノードの
    接続関係を取得
    ・地図データコンバート
    ・交通情報生成

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  12. 経路探索エンジン紹介 ~一般化費用コストモデル~
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    時間優先探索 距離優先探索
    時間
    金銭
    煩雑さ
    コスト
    時間
    距離
    金銭
    煩雑さ
    コスト
    多様なコスト要因に対して重みづけが可能
    時間
    金銭
    煩雑さ


    時間係数
    金銭係数
    煩雑さ係数


    =コスト
    コスト係数
    (主にポリシー)
    ベクトル
    内積
    コスト要因
    (主に事実)

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  13. 経路探索開発のポイント
    ~経路品質~
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  14. 14
    多様なユーザに満足してもらうために

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  15. 15
    多様なユーザに満足してもらうために
    1. 1経路の最適性向上
     1経路でできるだけ多くのユーザを満足させる
    2. 多様な別経路の提案
     満足できないユーザに対して、異なる性質の経路を提供
    最適な1経路
    別経路
    別経路
    ユーザが満足できていない部分を両方のアプローチで埋めていく

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  16. 16
    改善サイクル
    ルートに不満
    ルート指摘
    送信
    調査
    分類・集計 改善対応
    ナビ反映
    不満解消

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  17. 17
    改善サイクルのポイント
    1. ルート指摘
     ルート専用の指摘の口が
    ある
     直近のルートのリクエス
    トも合わせて送信
    詳細な調査が可能に!

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    改善サイクルのポイント
    2. ルート改善専用のチームが存在
     調査・分類・集計を集中して実施
    中央分離帯データ
    投入後
    指摘が0件に!
    例)中央分離帯未考慮による指摘の集計

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  19. 19
    改善サイクルの今後
    3. ユーザとのコミュニケーションの活性化
    さらなるユーザ満足度向上へ
    ルートに不満
    ルート指摘
    送信
    調査 ナビ反映
    不満解消
    分類・集計 改善対応
    ユーザとの
    やり取り
    コミュニティ
    改善の通知

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  20. 20
    所要時間精度
     経路品質の指標
     所要時間精度:
    30分の経路に対して誤差±5分以内の経路が90%
     所要時間=標準速度と交通情報による速度 から算出
     順調時はさほど難しくない
     混雑・渋滞時に速度を正しく捉える・予測できることが重要
     交通情報データ情報源・種類と対応状況
     VICSとプローブを組み合わせて利用
    リアルタイム 短期予測 長期予測
    VICS / プローブ ○ ○ ○

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  21. 21
    所要時間精度
     Re:dashを使って日々の精度を集計
     集計結果を分析し、改善に活用

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    経路品質改善の直近の取り組み

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  23. 23
    経路品質改善の直近の取り組み
     NT-FILTER

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  24. 24
    経路品質改善の直近の取り組み
     NT-FILTER

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  25. 25
    経路品質改善の直近の取り組み
     NT-FILTER

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  26. 26
    経路品質改善の直近の取り組み
     NT-FILTER
     課題
     ノイズが多い
     運用コスト高い
     改善
     AIを利用したノイズ除去実施

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  27. 27
    機能追加の直近の取り組み
     事故リスク地点回避(阪神高速様と共同)
     時間・距離・料金だけでなく、安心・安全のニーズが高まる
     各道路の事故リスクを算出し、リスクの大きさに応じてコスト
    を付与して回避
     事故リスク算出方法
     過去の事故実績のある道路を状況に応じて分類
     事故リスク算出用のモデル式を推定

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  28. 28
    機能追加の直近の取り組み
     事故リスク地点回避(阪神高速様と共同)
     経路に反映

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    機能追加の直近の取り組み
     事故リスク地点回避(阪神高速様と共同)
     難しいポイント
     遠回りになりすぎない範囲での経路チューニング
     基本、一般道と比べて高速は事故が少ない
     単純に適用すると高速使いまくる
     外部データ利用
     事故リスクの推定(外部)とナビタイムの経路探索とで、扱う
    NWデータが異なる
    » 形状や属性のマッピング作業が必要
    推奨 リスク考慮
    25.00%
    30.00%
    35.00%
    40.00%
    45.00%
    有料 一般幹線 一般
    推奨 チューニング 単純
    バランスは維持
    経路割合

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  30. 経路探索開発のポイント
    ~性能~
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  31. 31
    オリンピックを見て実感

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  32. 32
    正確さと速さの両立は難しい

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  33. 33
     理論上最適経路を導くアルゴリズムは古くから存在
     日本の道路NW
     数百万~数千万単位のノード・リンクで構成
     日時規制やリアルタイム交通情報などのリアルタイム性を適用
     サービスの要求に耐えられない
    経路品質とパフォーマンスはトレードオフ

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     経路品質を極力落とさずパフォーマンス向上を実現
     アルゴリズム
     ダイクストラ・A*・階層化 など
     開発言語:C++
     データ形式:独自バイナリ形式
     技術トレンド的にはやや古め
     性能面の制御がしやすい
     近年のクラウド化や並列処理技術の進歩
     現状の経路品質とパフォーマンスのバランスに変化
     経路品質向上にも寄与
    経路品質とパフォーマンスはトレードオフ

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  35. 35
     事前処理による経路探索の高速化
     経路探索処理の並列化
    性能改善の取り組み

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  36. 経路探索開発のポイント
    ~評価方法~
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  37. 37
     一般的な単体テスト
     プロダクト品質を担保
     経路探索エンジン
    プロダクト品質に加えて
     経路品質
     パフォーマンス
    の評価も同時に実施する必要がある
    コードの単体テストのみでは不足

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  38. 38
     チューニングや機能追加するたびに、全国車を走らせて
    フィールドテスト! ができればいいのだが...
    評価作業
    大変!
    コストかかる
    時間かかる!
    改善サイクルまわらない

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  39. 39
     実際のユーザの経路探索リクエストを利用
     ランダムに十分な量をサンプリング
     実際のユーザの分布と同様のテストケース
     改修前後のデータ・エンジンで、それぞれ経路探索を実行
     結果比較
    評価作業
    都心部:多
    地方部:少

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     経路品質
     経路探索エラー発生有無
     経路サマリー数値比較・統計的評価
     時間
     距離 など
     ビューワで経路を引いてみて目視確認
     求められる品質に応じて、確認する件数を決定
    評価作業
    前 後 差分

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     パフォーマンス
     実行時間の比較・統計的評価
     差分の平均・最大
     割合だけでなく絶対値も
     優劣の程度から判断
     評価作業工数
     小規模な改善ならば
     経路チューニングと合わせて数日~1週間程度で実現
     自動化など改善の余地がまだある
    評価作業

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  42. 今後
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  43. 今後
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     経路探索ログや移動ログを活用した経路探索
     交通コンサルの分析結果を経路にも反映
     渋滞予測強化

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